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「そしてララは、遺跡の守護者となる」、「シャドウ オブ ザ トゥームレイダー」開発者インタビュー
2018年9月11日 11:00
今回開発者2人によるプレゼンテーションが行なわれた「シャドウ オブ ザ トゥームレイダー」。その後、インタビューを行なった。インタビューでは本作のディレクターであるダニエル・ビッソン氏と、シニアプロデューサーを務めるマリオ・シャブティーニ氏に特にアピールしたい要素を含め、3部作ならではの想いの強さを聞いた。
特に印象深かったのは、「ララと遺跡の関わり」である。卑弥呼、不死の預言者と出会ったララは、今作で世界の終わりを引き起こす恐ろしい伝承に直面する。リブートした「トゥームレイダー」3部作に開発者達はどのような想いを託したのか、テーマ性も聞くことができた。
3部作を通じての成長、求め続けた「ララと遺跡」というテーマ性
最初の質問は「このゲームをプレイするユーザーに、何を見て欲しいか」という質問をぶつけてみた。シャブティーニ氏は”探索”と答えた。フィールドを細かく見ることでキャラクターや物語のバックグラウンド、伝説の町「パイティティ」がどうしてそこにあるか、どんな歴史を歩んできたか、プレーヤーがララとして歩き回り様々なものを見つけていくことで一層明らかになるという。
ビッソン氏はプレーヤーに“バランスの良さ”を見て欲しいという。これまでは戦闘要素が強かったが、今回は“探索”、“パズル”も比重を上げ、よりバランス良く3つの要素が楽しめる。また、キャラクターの組み立て、スキルや服などをカスタマイズし、より自分のプレイスタイルに合ったララを模索できるようになったところもセールスポイントとのことだ。
「シャドウ オブ ザ トゥームレイダー」は、コスチューム(装備品)の要素がある。これらはシークレットトゥームで獲得でき、“修理”することでその能力を発揮できる。敵から見つかりにくくなったり、攻撃ダメージがあがったりと、衣装には特性が用意されており、これらを組み合わせることでゲーム内でより有利に進められる。
筆者は以前本作をプレイしたときコスチュームを得て、素材を消費することでアンロックさせ、使うことができた。筆者は遺跡の奥で「衣装の製法」を発見し、素材を使うことで古代の秘術が使われた衣装を“複製”しているものだと思っていたが、ビッソン氏は「ララは素材を使って、衣装を修復しているんです」と語った。
遺跡の奥には、古代の女王や戦士の服が隠されているのだが、時の流れで破損している。ララは素材を使って“直して”いるのだ。「そうなんです、ララは実際に太古の戦士や女王が着ていた衣装をまとうことでその能力を使うのです」とビッソン氏は答えた。
今回、フォトグラフィックスモードを導入しているところからも、グラフィックスへの注力もかなりのものだ。シャブティーニ氏はグラフィックスエンジンは力を入れて調整し、アップグレードを行なったと語った。特にライティングテクノロジーは強化し、地下や、水の中、そして光の中に出ていくときの視覚効果などの美しさを見て欲しいという。南米ならではの植物の描写も注目ポイントとのことだ。
「シャドウ オブ ザ トゥームレイダー」では、町の住人の丁寧な描写に好感を持った。筆者が見た町は「クワク・ヤク」という南米で最初に訪れる町だったが、リアルな生活感を感じた。開発チームは南米で綿密な取材を行ない、現地の雰囲気を取り入れたという。マチュピチュ、コズメル、メキシコ……気をつけたのは「リアルさ」だという。現地ならではの太陽光とそれが生み出す風景、植物や動物の感じ、地元の人達の生活、こういった要素は現地に行かなければわからない。開発チームは手分けをしていくつかの町を取材したとのことだ。
シャブティーニ氏は「必ずしもリアルだけにはこだわらない」と言葉を継いだ。その土地の正しさ、文化がどういったものを生み出すか、そういった表現部分は取材したものをそのまま出してもプレーヤーに伝わらない場合もある。その場所の文化は、生活はどう表現すれば良いかも考えて組み上げていく。「シャドウ オブ ザ トゥームレイダー」はラテンアメリカのメディアに特に感心されたという。現地の人達が感心する“リアルな雰囲気”をきちんと組み上げられたとのことだ。
取材だけでなく、それをどう表現するかでわかりやすい現地の雰囲気になる。しかも「シャドウ オブ ザ トゥームレイダー」はその上で独特の“ファンタジー(フィクション)”を語る。それこそが本作の面白さだとビッソン氏は強調した。マヤ、インカ、アステカ、南米で発展したこれらの文明は本来は別なものだ。
しかし「シャドウ オブ ザ トゥームレイダー」では、「この3つの文明が、実は交流があったとしたら?」という大胆な仮説を提示する。この大胆な世界設定をプレーヤーがララと共に発見し、エキサイトする感覚を共有して欲しいのだという。
400年間、滅んだとされたマヤ、インカ、アステカの文明が伝えられ、生き残り、そして融合し隔離された世界で発展していたらどうなるか? 「シャドウ オブ ザ トゥームレイダー」はその“ファンタジー”を取材し、考証した上で、リアリティを持たせて提示しているのだ。現地のキャラクターである「アビ」という女性キャラクターが、「ここがマヤの村かって?私たちはインカの子孫だよ」と否定するシーンがあるが、それも「隠された真実」を印象づける演出だ。
「リアルさ、はとても重要です。しかしそのリアルは、大きなフィクションを語るための説得力として必要なのです。そのために様々なリサーチをしています。言語学者と話して彼らがどんな言葉を使っているか検証し、歴史学者と話して彼らの漁業や農業を考え、そこからフィクションを導き出しています」とビッソン氏はコメントした。
今作において、大きなテーマとなるのが「ララと遺跡の関係」だとビッソン氏は言葉を続けた。そのテーマ性が色濃く出るのがパイティティである。パイティティは“生きている遺跡”だ。これまでララが探索してきた過去の遺跡ではなく、そこには過去から現代まで続く生きている人々がいる。そんな人々との出会いは、冒険家としてのララを大きく成長させるという。「ララは過去から未来に思いを馳せていますが、パイティティの人々は“今”を生きています。今というそのときがどれだけ大事か、ララは彼らから学ぶことになります」とビッソン氏は語った。
これまでは「トゥームレイダー(墓暴き)」という意味そのままに、ララが遺跡に入るとその遺跡は無残に破壊されてしまうというところを描かれていた。しかし、「シャドウ オブ ザ トゥームレイダー」ではララと遺跡の関係に一段踏み込んでいるとビッソン氏は言う。「ララは、遺跡を守る人間にならなければならない。何事にも、行動の先には結果がある。ララは今回それを学び、成長します。それはララ自身の“自分の意味”、を見つける事に繋がります」。
「シャドウ オブ ザ トゥームレイダー」は、2013年の「トゥームレイダー」、続編の「ライズ オブ ザ トゥームレイダー」を通じ、「シャドウ オブ ザ トゥームレイダー」で3部作の完結となる。ビッソン氏は1作目のララは言わば子供、2作目でティーンエイジャーとなり、3作目で大人といえると指摘する。1作目は自分の才能や、世界の驚異を発見し、2作目では無鉄砲な若者のように遺跡を壊す、3作目の大人となったララは遺跡を守ることを考えていく。“遺跡の守護者”としての自分を理解していく物語になるという。
そして、「シャドウ オブ ザ トゥームレイダー」というタイトルだが、本作はダークな物語ではない。光と闇のコントラスト、そして物語の鍵を握る2つの神イシチェルと、チャクチェルといった“2面性”があり、人間も良い面と悪い面がある、そういったことをララの物語を通して描く、それがタイトルの意味となっているとビッソン氏は語った。
テーマに加え、ゲーム性についてもオススメポイントをシャブティーニ氏に聞いてみた。シャブティーニ氏はオススメポイントは2つあると答えた。1つ目は、突き刺したピッケルからロープを伸ばしてぶら下がる「ラペルダウン」。これは探索の幅を広げる要素となるという。垂直の壁からロープで下りることができるというアクションは、フィールドを設計するレベルデザイナーにとっても新しい課題になった。ラペルダウンを活用できる地形の作り込みに注目して欲しいという。
もう1つが、AI。敵をどう欺くか、プレーヤーがアプローチを楽しめる設計になっている。敵に見つかっても隠れて見失わせたり、死体に反応させるそういったAIを活用し、どう戦いを有利にするか、「シャドウ オブ ザ トゥームレイダー」では敵との駆け引きも楽しんで欲しいとのことだ。
ビッソン氏は、シャブティーニ氏の言葉に加え「スキルの組み立て」も挙げた。スキルを選択的に取ることでプレーヤーごとのララの戦い方は異なっていく。プレイスタイルの先鋭化も本作のポイントだという。しかし、イベント的にどうしても正面から戦わなければいけないところもあり、ステルスのみ、コンバットのみ、というのは本作のスタイルとは異なる。取って無駄になるスキルはない、とビッソン氏は断言した。
最後にユーザーへのメッセージとして、ビッソン氏は「今回はトリロジー最終章として、エンディングが満足いただいているものになっていればと思います。今作でララをもっと好きになってくれれば、ディレクターとして本当に幸せです」。
シャブティーニ氏は「ストーリーはとても感情を沸き立てますし、キャラクターも凝っています。それは町の住人も同様で、色々町の人から話を聞いたり、色々ものを見つける事でストーリーや、舞台の裏側を見ることができます。深く探索し、隅の隅まで楽しんでください」と語った。
「シャドウ オブ ザ トゥームレイダー」への期待が高まるインタビューだった。特に「遺跡とララ」というテーマに踏み込み、開発スタッフの「トゥームレイダー」への想いをきちんとまとめ上げることができたという、3部作ならではのテーマの掘り下げ方はとても興味深い。きちんとエンディングまでプレイしたいと強く思った。発売が楽しみである。
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