(2015/11/11 00:00)
「トゥームレイダー」シリーズ最新作「Rise of the Tomb Raider」がついに登場する。本作で活躍するララは、前作にあたる「トゥームレイダー」で、冒険家としての本能を覚醒させたたくましい女性である。冒険家となった彼女は最初の挑戦として、父が追い求めていた「不死の預言者」の伝説に挑む。
「Rise of the Tomb Raider」は前作のゲームエンジンを使いながら、よりダイナミックで凝った冒険、そしてエキサイティングな戦闘を体験できる。謎めいた遺跡(トゥーム)もパワーアップし、様々な仕掛けを解き明かし、秘宝を見つける楽しさを味わえる。
本作では緊迫したストーリーを展開しながらも、本編とは直接関係ない遺跡を探索する“寄り道”要素もふんだんに用意されている。大きな謎を追いながらも、遺跡の発見に歓喜し、そちらの謎解きに夢中になってしまうララに思わず感情移入してしまう楽しさは、本作の味である。プレーヤーはララを本筋に戻してもいいし、思う存分古代の謎に浸らせてもいい。謎の古代文明は、どんな秘密を持っていたのか? 古代の謎とロマンをたっぷり味わえる作品である。
父の“正しさ”を証明してみせる! 伝説の「不死の預言者」へと挑む
「Rise of the Tomb Raider」では、前作「トゥームレイダー」で冒険家としてその才能を覚醒させたララは、最初の遺跡探検として父の死の謎に挑むこととなる。ララの父は伝説で語られた「不死の預言者」を探し求めたが果たせず、名声を失い自殺してしまったのだ。
ララもまた邪馬台国での冒険と発見が世間に受け入れられなかった。しかし冒険で得た経験と知識は、父の主張と発見が真実だと告げていた。「父の名声を回復し、不死の謎を解き明かしてみせる!」ララは、真実を求めシリアの奥地への冒険を決意する。しかし、不死の預言者を追う“組織”がいたのだ。歴史の陰で暗躍していた組織は、ララを追い秘密を手に入れるため、その手を伸ばしてくる……。
本作でララは、シリアの奥地、そしてシベリアへと冒険を進めていく。ゲームとしてはまずシベリアでの序盤の冒険からはじまり、そこから回想シーンとしてシリアの冒険が描かれ、そして再びシベリアに舞台を移していく形となる。ゲームの冒頭、プレーヤーはララとして彼女を支える友人・ジョナと共に雪に閉ざされたシベリアの山岳地帯を進んでいく。
プレーヤーは最初のシベリアからゲームに一気に引きこまれるだろう。ララが進んでいくのは凍てついた大地だ。下には真っ暗な奈落が広がっている垂直の壁を、ピッケルを突き刺し登っていくと、その先で巨大な雪崩がララに迫る。ものすごい量の雪が襲いかかり目の前の地形が崩れていく中、必死に走るララ。ステージそのものが大きく形を変える演出と、その中を駆け抜けていくアクション性はプレーヤーを夢中にさせてくれる。冒頭でララの冒険の過酷さを刻み込むうまい演出である。
そこからゲームでは回想シーンでシリアとなる。景色は一転して岩だらけの山の中に、謎の古代遺跡が眠っている。崩れかけた壁に穴をうがち奥へ進んだり、今でも作動する侵入者用の罠、水を利用した仕掛けなどを超えていくと、伝説の“不死の預言者”への手がかりが徐々に現われる。
ここでは“遺跡探索”をたっぷり味わうことができる。「トゥームレイダー」より受け継がれたシステム“インスティンクト”を使うことで、冒険に役立つオブジェクトがハイライトで表示される。プレーヤーはそのヒントを活用して謎を解き明かしていく。一見通ることができなそうな地形でもインスティンクトでつかまって進むことができる場所がわかる。ララの優れた身体能力を活用してどんどん遺跡の奥深くに進んでいくのは楽しい。
シリアでの目玉は水を利用した仕掛けだ。宙に吊されている足場にララが飛び乗るとその重みで水門が開かれるものの、ララ自身も水に押し流されてしまう。水が流れたときだけ水位が上がるが、その増えた水はどんな効果をもたらすのか……。インスティンクトのヒントとプレーヤーのひらめきが秘宝への道を開く。「トゥームレイダー(遺跡泥棒)」ならではの楽しさを実感できる瞬間だ。
しかし……不死の預言者の秘密はここにはなかった。手がかりはシベリアにある。真実への道を見つけたララの前に、謎の組織「トリニティ」が襲いかかってくる。不死の預言者の謎を追うリーダーであり、宿敵となるコンスタンティンとの出会い。ララは真実を求めシベリアへ向かう。こうして、「Rise of the Tomb Raider」の本当の冒険が始まるのである。
敵がひしめく極寒の地。すべてを利用して戦え!
シリアの冒険から舞台は再びシベリアとなる。ここからが本作の“本編”である。シベリアからプレーヤーは自由にキャンプを移動でき、周囲を細かく探索できる。戦闘や冒険で得た経験値でのレベルアップで様々なスキルを習得し、入手した素材で武器や装備をパワーアップしていくのだ。
スキルは「サバイバー」、「ハンター」、「ファイター」の3つのカテゴリーがあり、パワーアップさせていくことで得られる経験値が増えたり、接近戦で有利になったりする。筆者の場合は接近戦を中心にパワーアップさせていったが、このため逆に接近戦に頼りすぎてしまったという反省もある。収集物や経験値にボーナスをもたらすスキルを重視すればかなり冒険が楽になりそうである。
今作は戦闘もかなり凝っている。弓は特に多彩な使い方ができ、冒険を進めていくと着弾点にガスをまき散らす矢や、爆裂する矢などが撃てるようになる。またロープを結びつけてロープを渡したり、ロープを高所に打ち込みターザンのように移動できたりする。さらに後半からは、柔らかい木の壁に矢を打ち込み足場にできたりもできる。攻撃時に音を出さないので、ステルスキルにも有効で、使いこなすと楽しいアイテムである。
冒険が進むとララは、ハンドガン、アサルトライフル、ショットガンも使いこなす。敵に見つかり正面から戦う時にはこれらの武器を状況に合わせて使いこなすのがいい。敵の中にはアーマーをまとった敵もいて、彼らには接近してのショットガンが有効だ。これらの武器は素材を集めたり、脱走兵の隠れ家で装備品を購入してパワーアップできる。
さらにその場に落ちている瓶や缶を利用し、即席で火炎瓶や爆弾を作れる。この“その場で使える武器”は様々な知識に長けたララらしくて活用して戦えるとかなり楽しいのだが、必ずアイテムを入手してから作成するというステップを踏むため、敵と戦っているとき焦ってしまって使いにくかった。あらかじめ作ってストックできるシステムならば、活用しやすかったと思う。
「Rise of the Tomb Raider」では様々な装備を作ることでアイテムの持ち運べる量が増えるので、「素材集め」も前作以上に重要になる。特に「動物の皮」は矢筒やホルスターに使えるので、鹿を積極的に狩るのが新鮮だった。本作では狼が群れを成して襲いかかってきたり、熊やヒョウといった強敵も出る。素早い野生動物には、当たり判定が大きいポイズンアローが有効だ。
これぞ「トゥームレイダー」! 遺跡探索要素もたっぷり
コンスタンティン達「トリニティ」は、その組織力を活かしシベリアの地に戦力を展開し「不死の預言者」と、それをもたらした「不死の魂」を力を持って探索し始める。シベリアの奥地には代々不死の魂を守る人々がいるのだが、彼らはトリニティに追い詰められていく。
トリニティは容赦なく村人を撃ち、捕らえて、秘密を吐かせようと拷問を加える。ララは住人達と力を合わせ、トリニティと戦っていく。住人達は様々な場所に潜伏しており、トリニティに捕らわれた人々を救出したり、トリニティの施設を破壊するといったサブミッションを受けることもできる。
トリニティと秘宝の争奪戦を繰り広げる中、ララの前に姿を現わすのが「オプショナルトゥーム」だ。このシベリアの地は様々な遺跡が眠っている。それらは不死の預言者に関連するものから、それ以外のものまで様々だ。中には旧ソ連の廃棄された鉱山まである。それらはララの冒険中「近くにオプショナルトゥームあり」というメッセージでプレーヤーを誘う。これらのトゥームは挑戦しなくてもメインストーリーには影響しないのだが、「トゥームレイダー」であるララとしては見逃せないだろう。
旧ソ連の工場の扉を開けると、そこから地下に続く行動に続き、巨大な空洞が現われる。熊の巣穴の奥の壁を崩すと断崖絶壁に立つ謎の寺院に繋がるなど、「オプショナルトゥーム」へ続く演出はドラマチックだ。「すごい……」というララの感嘆もプレーヤーの心を後押しする。トゥームの奥にはゴールとなる“写本”があり、プレーヤーは周囲を観察し、仕掛けを動かして写本へ通じる道を探していくことになる。
この“トゥームへの挑戦”は本作ならではの醍醐味だ。もちろん本編にもいくつもの凝った仕掛けのトゥームがあるが、オプショナルトゥームによりその楽しさがさらに増している。まずインスティンクトで動く場所を探し、その場所を細かく観察し、実際に仕掛けを動かしてみる。それらのデータを組み合わせ、「この仕掛けをこう動かせばここに繋がる」などさらに研究を続け、そして予想通りにうまくいったときの喜びは、「トゥームレイダー」シリーズならではだ。
今作のトゥームは多く、プレーヤーはメインストーリーを進めるか、トゥーム探しに注力するかで悩んでしまうだろう。もちろんメインストーリーをクリア後にトゥームに挑戦することもできるが、トゥームに挑戦し、クリアするとかなりの武器や装備の材料、経験値が手に入り、後の冒険が有利になるのだ。
しかし、メインストーリーも面白い。「Rise of the Tomb Raider」は様々な謎が提示され、プレーヤーをぐいぐい引っ張っていく。トゥームも魅力的だが、ストーリーも続きがとても気になるのである。前作「トゥームレイダー」は、ララが極限の状態に置かれてしまっていたため、“生き残る(サバイバル)”というテーマが強く、遺跡探検や、卑弥呼の謎といったところが冒険の目的としてぼやけてしまった部分があった。その点、ストーリーが「不死の預言者」へ収束する今作は、ストーリーテリングにおいても進化していると感じた。
「Rise of the Tomb Raider」は前作からパワーアップし、たっぷり冒険を楽しめる作品である。やはりグラフィックスが美しいXbox Oneでのプレイをオススメしたい。前作をPS3やPC版でプレイした人には、本作が他のハードで出るのか気になるところだろう。「Rise of the Tomb Raider」はXbox One/Xbox 360の完全独占ではなく、あくまで“時限独占”であり、2016年にPS4とPCで発売されることが明らかになっている。もちろん本作のためにハードを買うというのも充分ありな良作ではあるが、今後の情報も注目したい。