2018年9月14日 00:00
ついに「シャドウ オブ ザ トゥームレイダー」が発売された。本作は2013年にリブートとなった「トゥームレイダー」、続編の「ライズ オブ ザ トゥームレイダー」から続く、3部作の完結編となる。
今作でララは“生きている遺跡”ともいえる伝説の都「パイティティ」の人々と出会い、「世界の破滅」と直面する。それは「トゥームレイダー(遺跡探索者)」というテーマを突き詰めた物語となっている。アクション、戦闘、パズルもこれまでの要素をパワーアップ、そして洗練しており、シリーズの集大成の作品となっている。
ララはどのように成長し、そしてトリニティとどう決着をつけていくのか、それは実際にゲームをプレイして楽しんでもらうとして、レビューではゲームの楽しさと、ゲームシステムの紹介をしていこう。
直面する世界の終わり。南米に眠る秘密に挑む
「イシュチェルの心臓の鍵で浄罪が始まる」。ララはその言葉が刻まれた儀式用のナイフ「イシュチェルの心臓」を台座から外した。それが全ての始まりだった。“浄罪”それは破壊と創造の神「ククルカン」を誕生させるために引き起こされる天変地異。現世は大災害により破壊され、ナイフと対になる「銀の箱」を手にしたものが、この世界を作り替えるのだ……。
「シャドウ オブ ザ トゥームレイダー」は、中・南米が舞台となる。北米・メキシコの古代文明・アステカ文明、中米のマヤ文明、南米・ペルーのインカ文明……3つのバラバラな文明とされているこの文明が、実は各々に影響を与え、繋がっていたら……というロマンを本作は描いている。そしてメキシコで始まった物語は、南米へ地を移していく。
古代から歴史の闇で暗躍していた秘密結社・トリニティ。前作である「ライズ オブ ザ トゥームレイダー」で父の命を奪ったことが明らかになり、ララの宿敵として秘宝の争奪戦を繰り広げていく。トリニティは長い歴史を持つ結社であり、その全容はうかがい知れない。絶大な財力、軍事力を持ち、地方を開発するように装いながら、遺跡の秘密を知る研究者や作業員を虐殺するような邪悪な結社である。ララはその巨大な結社に一歩も引かず、宝の争奪戦を繰り広げていく。
メキシコの遺跡でイシュチェル⼼臓の鍵を手にし、トリニティに対し、優位に立ったかと思えたララだったが、そのことがきっかけに大災害を巻き起こしてしまう。メキシコの町を巨大津波が襲ったのだ。ララは不意を突かれ、トリニティの幹部・ドミンゲスにイシュチェルの⼼臓の鍵を奪われ、そのままメキシコの町を襲う濁流に呑み込まれてしまう。これはララがイシチェルの⼼臓の鍵を奪ったせいなのか? ナイフを前に、何故かララはそれを台座から外してしまった。それは本当にララの意思だったのだろうか? しかし、実際に浄罪は始まってしまった。このままでは伝承の通り世界は滅んでしまう。鍵を握る銀の箱を一刻も早く見つけなければ!
「シャドウ オブ ザ トゥームレイダー」は、3部作の集大成となる。メキシコはチュートリアル要素も強いが、移動できる場所を探し遺跡奥深くまで侵入するパート、トリニティとの戦いのパートがあり、歯ごたえがある。シリーズを通してプレイしている人にはウォーミングアップと言える内容だが、ちょっと難易度は高めだ。本作がシリーズ初めて、という人には難易度をイージーにすることをオススメしたい。イージーにすることでタイミングや次に行く場所がわかりやすくなる。一方、コアなファンは、ガイドも少なくなるハードに挑戦するのも楽しいだろう。
本作は「探索」、「戦闘」、「パズル」を基本構成としてしているアクションゲームだ。探索はフィールドを自由に歩けるというだけではなく、次に進む場所を探したり、瞬間的に進む方向を探して移動するアクションも含まれる。道なき道を見つけたり、難関を突破したとき、「俺ってスゴイかも」という感覚に酔える。
本作の戦闘はハードだ。大規模な戦闘が続いた前作に比べると回数そのものは減っているが、“密度”が上がり、ステルス戦闘を心がけなければ先に進むのが難しい場面がある。敵が孤立しているか確認し、物陰に隠れ1人ずつ倒していく。スキルが増えてくると選択肢が増える。武器の特性やアイテムを活用した戦闘も可能になる。数で勝る敵を闇に潜む豹のように倒していくララは非常にカッコイイ。
そしてパズルである。今作はチャレンジトゥームだけでなく、メインのストーリーでも様々なパズルが用意されている。物理エンジンを活用し、タイミングを計ったり、仕掛けに一工夫求められたり、前の仕掛けを活用させられたりと奥深い。いかに仕掛けを把握し、試行錯誤を繰り返して正解にたどり着くか。解き明かしたときの達成感は強い。今回はスキルが入手できるチャレンジトゥームと、衣装が入手できる墓室が用意されており、多彩なコンテンツが用意されている。
ゲームとしての完成度だけでなく、世界観も大きなセールスポイントである。本作はメキシコの町も丁寧の描写されているが、ペルーの町クワク・ヤク、そして伝説の町パイティティの描写はとても丁寧だ。クワク・ヤクは石油開発で1度好景気になったが、原油の値下がりで放棄され、その後は遺跡の発掘はあるが、住人達の生活は貧しい。現代のペルーの生活が垣間見える町だ。実際に外国に行き、その人達と言葉を交わしたかのような感覚を得ることができる。
そしてパイティティは現代から隔絶した、まるでタイムスリップしたかのような異文明の世界。独特の宗教観、生活様式を持っている。ララはこの街の女王から許可を受けた証である衣装を着ていれば彼らと交流することができる。「よそ者の服」を着ていると全く話をしなくなるのが面白い。
彼らは普段は何を食べ、何を着て、どう暮らしているか。産業はどんなものか、農業、漁業、市場。階級社会に風習……「シャドウ オブ ザ トゥームレイダー」はパイティティという架空の町を丁寧に、リアリティを持って描写している。そして彼らが今も使っている遺跡は、全く異なる意味を持つ。これまでのシリーズになかった感覚を味わえるのも大きな魅力だ。
多彩なスキルを使いこなし、偉大な冒険者を目指せ
「シャドウ オブ ザ トゥームレイダー」ではゲームを進めることで得られる経験値でレベルアップする。レベルアップでのスキルポイントを消費することで、様々なスキルが入手できる。今作のスキル表は壁画のような形をして、デザインも面白い。
スキルは探索で活用する「シーカー」、戦闘に活用する「ウォーリアー」、収集に役立つ「スカベンジャー」の3系統のスキルがある。筆者は収集物が多く手にはいるようにスカベンジャー系のスキルを多めに取っていった。ここはプレーヤーの好みで変わっていくだろう。
筆者が序盤で便利だなと感じたのはウォーリアーの「ハウラースピード」。足場につかまったときに滑らなくなる。飛びついたりしたとき、グラフィックス上はよろめくのだが、ボタン操作による立て直しが必要なくなる。特に今作は連続ジャンプする展開も多く、このスキルがあると楽になる。トラップや敵とつかみ合うときの有効時間も長くなるので便利だ。他にも水の中で長時間潜る場合が多いので、スカベンジャーの「カイマンブレス」も便利だった。
今作での新要素がコスチューム。墓室で古代の服を手に入れることができる。「イブニングスターのケープ」は、鳥の羽のマントのような衣装で、まとうと「ガッチャマン」のように見えるのが面白い。「ジャガーの女王のベスト」はその名の通りジャガーの女王を倒した皮で作ったベスト。前作でもクマの毛皮のコスチュームがあったが、こういった野性味溢れる服は楽しい。今作では上半身の服と、下半身の服を組み合わせ、様々な特性を持たせることができる。
弓、拳銃、アサルトライフル、ショットガン……これらの装備は今回は商店で強力な装備が購入できる。価格は結構高めで、筆者の場合は弾丸を多く持ち運べるポーチや矢筒などを優先しているため、あまり買えていない。また特殊な弾頭はスキルで増やしていく。前作は特殊弾頭に頼った戦い方ができたが、今作は敵の攻撃力がかなり高めでステルスを重視した緊張感のある戦いが多い印象だ。
戦闘時はハーブなども活用して戦っていく。ごり押しは難しく、どう戦っていくか、どのスキルを伸ばしていくかを意識しなくてはならないスキルを活用した戦略的な戦いは、「シャドウ オブ ザ トゥームレイダー」の大きな特徴と言えるだろう。
観察力と直感、決断力が道を切り開く、多彩なトゥーム
墓室やトゥームの攻略は本作の大きな楽しさだ。様々なチャレンジトゥームがゲーム序盤からあり、楽しませてくれる。筆者のお気に入りの1つが「轟きの洞窟」という、地下でしみ出した油が燃え続けているという地獄のようなトゥームだ。
ここには地に封じられた神が声を上げ続けているという伝説がある。また、獣たちがいるという伝承も伝えられている。地の底にいる獣は事実であり、足を滑らして地に落ちたララは獰猛な獣にかみ殺されてしまう。そういった緊張感の中、謎を解かなくてはならない。
謎は「風」を活用する。風を使った仕掛けは前前作の「トゥームレイダー」のチャレンジトゥームで活用されていたもので、今回はあえて1度戻らなくてはいけなかったり中々凝った仕掛けも面白かった。雰囲気、ギミックで強く印象に残るチャレンジトゥームである。
メインストーリーでの風車を使ったトゥームもとても大がかりで楽しいものだった。水力と風力の2つで動いており、メインの支柱は水力で、補助動力に風車を使っており、先に進むには風車を活用しなくてはならない。
特筆すべきはその大きさだ。巨大なビルのような、数十メートルの高さに感じる巨大な支柱を中心に横にも竹とんぼのように水平の柱が回転している。しかもこの柱には侵入者を阻むためか、トゲがついており、行く手を阻むのだ。時にはこの柱に追われて進まなくてはならなかったり、すり抜けなくてはならない。
柱をよけながら何度も支柱の回りを行ったり来たりし、仕掛けを動かしていく。瞬時に進む方向を判断し、飛びつき、しがみついて進んでいくうえ、柱の間をすり抜けるタイミングがシビアだ。これまでのトゥームより大きく、大がかりで攻略しがいのあるトゥームだった。
神秘の町パイティティ。“生きている遺跡”を前に、ララは何を想う?
「シャドウ オブ ザ トゥームレイダー」はこれまでの要素をブラッシュアップし、洗練されており、シリーズの決定版と言える作品となっている。中でもやはり素晴らしいのは、パイティティの描写だ。パイティティはまるで博物館のようにプレーヤーの前に異文化を見せてくれる。
パイティティには独自の戒律、宗教観、死生観、文化がある。特にしびれたのは「追放者」という、戒律を破ったりして死刑を宣告された後、生きている人々。彼らは町で生活をしていながらも、他の人には「見えないもの」とされる。しかしそれでも彼らもまた生きている。こういった“法”が過去にあったのだろうと、そういう説得力を持って描写されているのが楽しい。文化や風俗は、ララが住人と話したり、サブミッションに挑戦することで触れることができる。また、町に置いてある書物からもその背景がわかる。
「トゥームレイダー」では隔絶された地で歴史の断片を見ることができたが、すでになくなってしまった歴史だった。彼らは不死の守護者となり、漂着者達が新しい文化を築いていた。「ライズ オブ ザ トゥームレイダー」は、不死の預言者を守る一族はいたが、人々はわずかで、すぐにトリニティとの戦いになってしまいあまり彼らを掘り下げられなかった。しかし、パイティティは違うのだ。
そこには俗世から隔絶しながらも社会があり、歴史がある。日々の生活があり、コミュニティの諍いがあり、大人と子供がいて、生活がある。遺跡もまた「戦士の試練」や、「生け贄の場所」などに使われている“現役”である。この感触はこれまでと大きく違う。「トゥームレイダー」シリーズをプレイしている人ほどその感触は新鮮だろう。
インタビューで開発者も語っていたが、「シャドウ オブ ザ トゥームレイダー」は、ララと遺跡に新しい関係性をもたらす作品である。埋もれた歴史に光を与えるという言葉は耳障りが良いが、止まった時を破り、暴き立て、破壊するとも言える行動をララはこれまでし続けてきた。しかし、生きている遺跡とも言えるパイティティでララは何を学び、迫り来る世界の破滅にどう立ち向かうか、やはりここに注目したい。開発者達がどんな“答え”にたどり着いたのか、興味を持ってプレイして欲しい。
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