ニュース
待望の“青軸”ついに登場! 「G512 CARBON(GX BLUE)」インプレッション
これぞゲーミングキーボード。触覚と聴覚によるフィードバックが心地よい“打てば響く”1台
2018年6月12日 16:01
米Logitech(ロジクール)は米国時間の6月12日、ゲーミングキーボード「G512 CARBON」の新バリエーションとなる「G512 CARBON(GX BLUE)」を正式発表した。日本では7月5日発売予定で、価格は既存モデルと同じ15,880円(税別)。本稿では、E3での発表に先立ち、「G512 CARBON(GX BLUE)」を触る機会に恵まれたのでインプレッションをお届けしたい。
「G512 CARBON(GX BLUE)」は、ロジクールが日本で5月24日に発売を開始したゲーミングキーボード「G512」シリーズにおいて、タクタイル、リニアに続く3つ目のバリエーションだ。
ほぼすべてのゲーミングキーボードが採用しているメカニカルスイッチにおいてその代名詞的な存在と言えるのがCHERRY MXスイッチだ。ロジクールは、このCHERRY MXスイッチをロジクールGシリーズに採用してゲーマーの支持を集めながら、同時平行して独自のメカニカルスイッチ「ROMER-G」を自社開発。プロゲーマーたちをROMER-Gに誘導しながら発展を遂げてきた歴史を持つ。
ロジクールGユーザーならご存じの通り、ROMER-Gは、入力の速さ、高耐久性、そして静穏性をウリとしたeスポーツに最適化されたメカニカルスイッチで、2014年に発売されたハイエンドゲーミングキーボード「G910」での採用を皮切りに、気づけば「G910R」から「G105」までの現行9モデル中6モデルが「ROMER-G」を採用している。残る3モデルの内訳は、2モデルがメンブレンスイッチ(G105、G213)であり、1モデルがCHERRY MX 青軸スイッチ(G610)となる。
ここで勘の良い人は気づいたかもしれないが、まさにロジクールGキーボードを体現する存在といっていい「ROMER-G」だが、唯一の泣き所が“青軸という選択肢がない”ところだ。
現行のタクタイルはいわゆる茶軸、リニアは赤軸に相当する。「ROMER-G」は、設計当初から青軸を実現すること構造上は“不可能”とされ、2016年にリリースされた「G610 Orion」シリーズにおいてBrown、Red、BlueというそのものズバリのCHERRY MX製キースイッチを採用したモデルを発売し、その後も「G610 Orion Blue」のみの生産を継続し、「青軸ファンはG610をどうぞ」というやや苦しいビジネスを展開してきた。
しかし、昔からゲーマーが好きなメカニカルスイッチは今も昔もずっと青軸だ。アクチュエーションポイントを超えた時のカチッカチッとした機械音と確かな感触で、自身の入力が完結したことを聴覚と触覚の両方で明確に感じることができ、「この打ち心地が堪らない」と、昔から熱心なファンが多い。ロジクールはオムロンなどと共同でROMER-Gを開発することによって、「ゲーミングキーボードと言えば青軸」から「ゲーミングキーボードといえば“ROMER-G”」に塗り替えようとしてきたが、結論から言えば、ゲーマーの青軸愛に根負けする形になってしまったようだ。
今年のロジクールの戦略は「ゲーマーに選択肢を提供する」としており、この戦略に則ってROMER-Gキーを採用する「G512」に、第3の選択肢として青軸を導入することを決定したようだ。
といっても、「G512」の青軸モデル、CHERRY MXの青軸ではない。「G512 CARBON(GX BLUE)」という聞き慣れないモデル名からも想像できるように、中国Kaihuaの独自ブランド「Kailh」が開発したキースイッチで、CHERRY MXキースイッチの特許切れ後に雨後の筍のように登場したいわゆる“CHERRY MX互換”と言われるものだ。
GX BLUEは、CHERRY MX互換と言われるだけあって、性能的には既存のROMER-G タクタイル/リニアより、CHERRY MX青軸に非常に近い。ROMER-Gと比較して、アクチュエーションポイントや、ストロークも深くなり、押下圧も重くなっている。耐久性だけは、ROMER-Gキーと同様に7,000万回を保証している。
さて、気になる打鍵感は、「G610 BLUE」と同じ“青軸”そのものだ。ひとつひとつの打鍵に、音と感触による明確なフィードバックを返してくれる。PCゲーマーにとって、入力が成立したかどうかを視覚以外で確認できるのは非常に嬉しい要素で、カチリ、カチリという青軸独特の感触も心地よく、全面フローティングキーと、ソリッドなメタルフレームによるクールなデザインも合わさり、「G512」の中でもヒット作となりそうだ。
ちなみに、筆者自身はゲーミングキーボードのインプレッション内で何度か触れてきたように、本業が記者なので、昔から打鍵が軽く静かなメンブレン派だ。ロジクールGで言えばメンブレンスイッチを採用したゲーミングキーボードである「G213」が好みで、現行のフラッグシップである「G512」で言えば、5月24日にリリースされたリニアがもっとも好みに合う。
日々数え切れないほどのキーを叩く記者の視点から言うと「G512 CARBON(GX BLUE)」はやかましすぎる。Twitch等でPCゲームの配信を行なうストリーマーたちも、青軸の打鍵音が視聴者から「うるさい」と言われて、リニア(赤軸)やタクタイル(茶軸)に変えたという話も耳にする。職場や学校で他の仲間が居たり、ゲーム配信者は、青軸の“うるささ”は留意すべきポイントだと思う。
その一方で、ゲーマーの視点から言えば、この打鍵感は、PCゲームという娯楽を楽しむ上で、極上の操作感をもたらしてくれる存在だ。今回、自宅のゲーミングPCに導入してみたが、マウスとキーボードを使ったPCゲームのプレイがまた一段と楽しくなった。青軸がゲーマーに好まれるのはよく理解できるし、実際、楽しいアイテムだ。
若いロジクールGユーザーは、ひょっとすると、ROMER-Gキーしか知らないという人もいるかもしれない。ROMER-Gキーしか知らないということは、青軸の楽しさを知らないわけだ。この機会に、タクタイル、リニア、そしてGX BLUEを触り比べて、青軸の特異さ、その魔術的な打鍵感をぜひ体験してみて欲しい。
ところで「G512 CARBON(GX BLUE)」には、既存モデルと比較して、もうひとつ大きな違いがある。搭載しているLEDライトだ。ゲーミングキーボードのLEDライトと言えば、各社凝りに凝った仕様で、“RGBイルミネーション≒ゲーミングデバイス”を体現する存在として力を入れてきた部分だ。
それに対してROMER-GのLEDライトは、キースイッチの構造上、派手に光らせることができず、他社のゲーミングキーボードと比較してももっとも大人しい光り方に留まっていた。GX BLUEのLEDライトは、ROMER-Gよりも強く、そして発光部がキーのやや奥側にズレている。これにともない透過表示するキーの刻印もそのまま上にずらした形でプリントされ、既存の「G512」にあったキー側面の透過プリントは非透過の白地プリントに変更されている。つまり、光らなくなっている。
実際に既存の「G512」モデルと比較するとその光量の違いは一目瞭然だ。既存の「G512」モデルは、キートップの中央のみをぼんやり光らせていたのに対し、「GX BLUE」ではキートップの光は強く鮮やかになり、かつキーとキーの間からも光るようになっている。派手好みには好まれそうだ。
「G512 CARBON(GX BLUE)」は、繰り返しになるが「G512」シリーズの3種類目のバリエーションであり、新しいからどこか既存モデルより優れているというわけではない。ROMER-Gキーがずっとこだわってきたタクタイル(茶軸)、5月24日に新登場したリニア、そして今回登場したGX BLUE(青軸)は、それぞれキー特性が異なり、個別の打鍵感をもたらしてくれる。「G512」のデザインが気に入ったという方も、店頭で触り比べてみてもっとも好みなモデルを選ぶことをオススメしたい。