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【特別企画】「ファークライ5」、暴⼒、薬物、そして虐殺……地獄と化した町、ホープカウンティ現場レポート
のどかな田舎町が一転、「エデンズ・ゲート」の支配下に
2018年4月5日 17:00
「ファークライ5」において、アメリカモンタナ州に位置する小さな町「ホープカウンティ」は、突如現れたカルト集団「エデンズ・ゲート」に支配された。
ホープカウンティは自然に恵まれた牧歌的な田舎町"だった"。広大な土地にはのどかな草原が広がり、澄んだ川が流れ、街の北部には切り立った荘厳な山脈が連なる。そんな豊かな自然の中、人々は日々の暮らしを送っていた。
そこに現われたのが「世界が崩壊する」という"啓示"を受けたファーザーことジョセフ・シードを筆頭とする宗教団体エデンズ・ゲート。彼らはあっという間に勢力を拡大し、暴力と恐怖で街を支配していった。
「カルト」とは狂信的で盲目的、かつ閉鎖的なコミュニティからなる宗教団体を指す。そうした意味で手段を選ばず、重武装をして住民に危害を加えるエデンズ・ゲートはまさしくカルト的だと言えるだろう。
では、そんなカルトに支配されたホープカウンティの町では今何が起きているのか?本作においてプレーヤーの分身たる主人公は新人保安官となってカルトに挑むことになるが、本稿の前半ではそこから一歩引いて、ホープカウンティで繰り広げられている惨劇、その実態のありのままをお伝えしよう。続く後半では実際のプレイでわかった「ファークライ5」の手触りをご紹介していきたい。
我が物顔でホープカウンティに居座るエデンズ・ゲート信者たち
エデンズ・ゲートなるカルト教団はキリスト教的な終末論に突き動かされており、世界の崩壊を信じている。それに備えるための拠点として、周囲を山に囲まれ、孤立的な立地であったホープカウンティに目を付けた。
教団の筆頭となるのは"ファーザー"ジョセフ・シード。彼が"啓示"なるものを受けたところからこの教団はスタートしており、来たるべき終末に備え、救済を説く。また、麻薬の製造を引き受け、信者を洗脳する"セイレーン"フェイス・シード、資源の確保や管理を担い、洗礼を施す"審問官"ジョン・シード、そして元陸軍の狙撃手であり、教団の兵力の強化にあたる"兵士"ジェイコブ・シードらがジョセフ・シードを補佐している。
そんな彼らの支配下にあるホープ・カウンティに一歩足を踏み入れると、教団の信者たちは町を我が物顔でうろついている。町を走る道路には常にエデンズゲートのエンブレムをあしらった車輌や輸送車が行き交っており、彼らに発見されずに移動するほうが難しいほどだ。もし見つかれば信者がワラワラと集まってきて一斉に襲撃を受け、蜂の巣にされることになる。
また、ホープカウンティには畑や工場、観光案内所や放送施設など、人々が豊かな生活を送るのに必要な施設が点在している。しかし、教団の手は町のほぼ全域に及んでおり、施設は武装した信者たちに占拠されている。教会では後述する"祝福"が栽培されていたり、醸造所は麻薬の精製工場にされるなど、そのほかの施設もそのほとんどがカルトの活動のために転用されている。
住民たちは教団の迫害を受け、抵抗するか、隠れて暮らすか、さもなくば洗脳されるか殺されるかという極限の選択を強いられているのだ。
元々自生していたものなのか、教団が持ち込んだものなのかは定かではないが、町には麻薬の原料となる植物が栽培されている。この植物は地面に植生している段階で白い"もや"のようなものを発しており、近寄るだけで視界がグラグラと揺れる。彼らはこれを精製して洗脳用の麻薬として用いることで信者たちの正気を失わせており、この麻薬を"祝福"という皮肉に満ちた名で呼んでいる。
この薬の影響下にあると、頭部から植物と同じようなもやを発するようになり、大量に投与すると完全に自身による判断能力を失って彼らの傀儡のように言うことを聞く「天使」と呼ばれる存在となる。彼らは指示がないとまさしくゾンビのようにあたりをうろついており、こちらを視認すると攻撃本能にしたがって襲い掛かってくる。なんとも痛ましい存在に成り下がってしまっている。
また、エデンズ・ゲートの"洗礼"は川で行なわれるのが常のようだ。洗礼には「洗」の文字が表す通り、これまでの罪を洗い流すという意味合いが込められている。川沿いでは信者が住人を強制的に"洗礼"しているシーンなどにも出くわす。顔が血だらけであるところを見るに、凄惨な暴行を加えられた挙句の暴挙のようだ。なお、ここでは同時に川に麻薬を流し込んでおり、一種のテロリズム的な行為にも手を染めていることがわかる。
彼らにとっては人間としてのモラルより教義やファーザーへの忠誠心が優先される。教義によれば教えに背くものは等しく"Sinner(罪人)"であり、"洗礼"を拒否したものや教団に歯向かう者は凄惨な拷問の末に殺害され、その死体は無残にも晒されることになる。
こうした光景はそこかしこで繰り広げられており、恐怖政治を敷くための布石としてはこれ以上ないほどに効果的な示威的行為だ。教団に従わないものがどうなるか、一目でわかるような非道な行ないである。
教団はそのシンボルとして特徴的な十字架を用いている。占拠している施設内はもちろん、町のいたるところにはそのシンボルが掲げられており、元の町の景観とは大きく変わってしまっている。
なかでも目立つのはホープ・カウンティの中央に聳えるジョセフ・シードの像。町の中央に自由の女神像よろしく建てられており、町が既に教団の支配下にあることを強く感じさせる。また、幹部のジョン・シードはプロパガンダも多用しており、ことに「YES」という言葉には強い執着を持っている。TVやラジオで教義を垂れ流すだけでは飽き足らず、山にはこれまた「HOLLYWOOD」よろしく「YES」の看板を設置するという徹底ぶりだ。
町の看板や民家などの一部には教団によって「Sinner」の文字が書かれており、一方的な罪人扱いを受けていることもわかる。そうなった中の住民がどのような扱いを受けているかは……想像に難くない。
教団は「終末に備える」という大義名分のもと、武装を進めている。アサルトライフルやサブマシンガンは当たり前のように配備され、中には火炎放射器やロケットランチャーなどの重火器を装備した信者たちもいるほどだ。航空戦力も所持しており、配備されたヘリコプターや飛行機は、偵察や攻撃などにも用いられている。
いち団体としては余りに過剰な武装、そしてそれらを自らの"教義"に基づいて躊躇いなく人に向けられるところに、エデンズ・ゲートの狂信的な側面がありありと現われている。
狂気に支配されたジョセフ・シードと、それに仕える3人の"使徒"たる兄妹。そして忠誠と信仰の為に人道を平気で外れる狂信的な信者たち。ホープカウンティはまさに狂気に支配され、この世の地獄と化している。
ただ、希望がないわけではない。住民たちもただ手をこまねいているわけではなく、教団に立ち向かう意志のあるものたちが各地で集い、レジスタンスとして活動をしている。
彼らと力を合わせてホープ・カウンティを救う"英雄"は、現われるのだろうか?