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「League of Legends」にスポーツマンシップを取り戻す!
最初はほぼ無意味だった「名誉システム」が刷新されたワケ
2018年3月25日 08:28
対戦型のチームゲームで試合に熱が入るあまり、自分がボロボロに負けたり、味方がうまく活躍できなかったりしてイライラしてしまうことはないだろうか?人によっては、もしかしたらつい味方にきつく当たってしまったり、逆に試合後に味方から個人チャットでボロボロに言われたりした経験もあるかもしれない。
プレイ人口が非常に多いPC用MOBA「League of Legends(以下、LoL)」でもそうしたことは起こる。Riot GamesのKimberly Voll氏によるセッションでは「HONORABLE INTENTIONS: PLAYER BEHAVIOR TODAY AT RIOT GAMES」として、プレーヤーの行動を改善するための「名誉システム」のコンセプトやその変遷について語られた。
プレーヤーのふるまいに対するRiotの回答、「名誉システム」
「LoL」では5v5ルールが基本でチームメンバーが自分以外に4人もいることや、競技性が極めて高いタイトルであること、そしてゲーム中にもチャットができるシステムによって、ある意味では他の対戦型タイトルよりも感情的にぶつかり合うプレーヤーを見かける確率が高い。
だが、言うまでもなくこうした味方同士の衝突は健全なゲームプレイを阻害し、ゲーム自体の結果自体にも悪い影響を及ぼすほか、ゲーム体験にも影を落とす。楽しむためにゲームをしているのに、どうして味方同士で足を引っ張り合わなければならないのか。それは試合で負けている時にグッと堪えて味方同士で励ましあうより、味方に八つ当たりして憂さを晴らすほうがはるかに簡単だからだ。自分のことを棚上げにして味方を責めるプレーヤーはやはり一定数存在している。
Riotはこうしたプレーヤー達の行動をゲームデザインによって是正することを試みた。その成果として生まれたのが「Honor System(名誉システム)」だ。「名誉システム」は試合の終了後、味方や相手の健闘を称えて「名誉」を贈ることができるというもので、名誉を多く獲得することで、「Badge(名誉を示す勲章のようなもの)」を獲得できるというシステムだ。
プレーヤー達の95%は「スポーツマンシップが重要だ」ということを頭では理解しているというデータもある。では、こうしたシステムの導入によってプレーヤーたちはスポーツマンシップに則ってチームでポジティブに支え合い、相手の健闘を称えるようになったのかというと、答えはNoだ。
2012年の実装直後には目新しさから「とりあえず押しとけ」くらいのノリで全員が名誉を贈り合ったが、実装から4年後の2016年にはAIモードなどのPvEコンテンツ、つまり初心者向けだったり、息抜きの意味合いが強いAIモードでしか名誉システムが機能していないという事態になったのだ。要するにプレーヤーにとって、勲章以外にほとんど実利のない名誉システムはさして重要なものには映らず、最初の名誉システムは有効に機能したとは言えないシステムだった。
Riotはこれを受けて、名誉システムの見直しにかかる。最も大きな問題は、名誉システムがゲーム内においてさして重要な要素ではなく、贈っても贈らなくても大して変わらないあくまで"オマケ"的なものであったこと。加えて贈れる名誉の項目が「Friendry」、「Helpful」、「Teamwork」と、直観的に何を称えるものなのかがよくわからなかったこと、そして報酬として得られる「Badge」にあまり価値がなかったうえに、極めて獲得が難しかったことだ。
これらの問題を解決すべく、チームを勝利に導く名誉だけではなく、「辛い状況でも取り乱さず耐える」という"受動的な"名誉も項目として追加され、全てのプレーヤーが称賛される機会を作った。また、名誉そのものにも新たな価値を付与し、「名誉があるというのは素晴らしいこと」だということが全てのプレーヤーの共通認識となるようなシステムを構築した。もちろん、新たな名誉システムでも1番の目的は「スポーツマンシップ」を称えるということにある。
変更後の名誉システムは試合の後にチームの味方に対して「Stayed Cool」、「Shotcaller」、「GG <3(GGハート)」から1つを選んで名誉を称えるものとなった。それぞれ「逆境にも負けず、冷静にプレイを続けた」、「チームをまとめ、勝利に導いた」、「このプレーヤーのお陰で楽しめた」というもので、以前のものよりは「何を称えるのか」ということがわかりやすくなったと言える。
また、プレーヤーのある意味現金な要求に応えるシステムも用意された。新たな名誉システムではスポーツマンシップに則ったプレイを繰り返し、名誉を獲得することで「名誉レベル」が上昇する。各レベルに設定されたチェックポイントを通過したり、レベルが上がることで、スキンやアイコン、エモートなどが貰える「Chest」や「Capsule」などが貰えるようになったのだ。
逆にチームメンバーを罵ったり、早々にゲームを諦めてAFK(Away From Keyboard=離席)したりして味方からReport(態度の悪いプレーヤーを通報するシステム)されると、名誉レベルが下降して報酬を手にすることができなくなった。
こうした新システムのフィードバックを見てみると、プレーヤー達は60%のゲームで味方に対して何らかの名誉を贈るようになった。内訳としてはやはり汎用性の高い「GG <3」が最も多い30%、「Shotcaller」が20%、「Stayed Cool」が10%となった。
さらに、名誉を受けたロールは多い順でADC>Support>Jungleとなっており、数%落ちてMidとTopが並ぶ結果となった。これはゲーム中でBotレーンが唯一ADCとSupportの2人で向かうレーンとなっており、互いの動きが見やすい分名誉のやりとりが発生しやすいことによるものだろう。また、レーナー同士の戦いに加勢したり、色々とやることの多いジャングラーはファインプレーが目立ちやすいというのもポイントだ。
また、試合毎に個別のプレーヤーの獲得した名誉を見ると、名誉を獲得できない試合が62.5%で、確率だけで言うと名誉を貰える試合の方が少ないという計算になる。つまり、名誉を貰えるのは「この試合であなたは活躍していましたよ」ということを明確に意味しており、名誉の価値も相対的に上昇したということになる。
ちなみに、チャンピオンのひとり「ソラカ」は最も「Stay Cool」と「GG <3」を獲得したチャンピオンで、「Shotcaller」を最も多く獲得したのは「カリスタ」だったのだという。いずれのチャンピオンも「回復」と「イニシエート(集団戦などを仕掛けること)」というところで活躍が目に見えやすいので、思わず名誉を贈りたくなるのはよくわかる気がする。
こうした数値から見ても、名誉システムはRiotが目指したスポーツマンシップの向上に寄与しているようで、実際プレーヤーの"ひどいふるまい"は減少傾向にあるようだ。Kimberly氏曰く「今後も継続してシステムのブラッシュアップに取り組んでいく」とのことなので、今後の展開にも期待したい。
……もちろん、言うまでもなくシステムはあくまで一助に過ぎず、最も大事なのはゲームを楽しみ、他のプレーヤーを尊重する各自の意識であるということは心に留めておきたい。負け試合ではイライラしがちな自分に対する戒めも込めて。