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「IEM Oakland 2017 PUBG Invitational」初代王者はAAAに決定!
「PUBG」は果たしてeスポーツに向いているのか!? 20チーム8本勝負に密着
2017年11月20日 19:56
eスポーツの国際大会Intel Extreme Masters(IEM) Oaklandに参加した理由のひとつが、「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS(PUBG)」の国際大会「IEM Oakland 2017 PUBG Invitational」を観戦するためだ。
現在、「PUBG」は、そのバブル的な人気を背景に、世界各地でエキシビションマッチが開催されている。ソロ(1人)だったり、デュオ(2人1組)だったり、クアッド(4人1組)だったり、その規模、ルールもまちまちで、まさに開発元のBluehole自身も手探り状態といった感じだが、ゲームの完成を待たずに、エキシビションマッチが先行するゲームというのはあまり前例がなく、ゲームの成長と共に、大会も進化していくという珍しい歴史を歩みつつある。
今大会は、ほぼルールとして固まりつつある“80名”の枠で、クアッド単位のチームを20チーム招待し、その20チームによるバトルロイヤルを丸2日間かけて8回実施するというもの。1戦1時間とカウントして約8時間、耐久バトル的な雰囲気すら漂う熾烈なルールだが、IEMの公式大会として行なわれるため、賞金総額は20万ドルと高額で、チームも欧米地域を中心に、一流チームばかりが招待されている。
会場は、「CS:GO」と同じOracle Arenaで、アリーナ中央で半分に分け、背合わせでステージをそれぞれに設けている。目を惹いたのは「PUBG」のステージ構成だ。トロフィーやキャスター達がいるメインステージの後方すべてが、選手達のプレイエリアおよびサーバーエリアになっている。4人1組が横並びでプレイできるコンパートメントが20個用意されており、スタンドから見た風景はなかなか壮観だ。
メインステージ真上に巨大なモニターが設置され、スタンドの観客は、それを通じて観戦するというスタイルになっている。20チームの動きを、個々のプレーヤー視点から、あるいはバードビューの視点から、はたまた全体マップから眺めていく。
各チームの動きは実に様々で、まるでソロでプレイしているかのように個別に活動したり、最初からチームで動いたりしている。ある程度装備が整った段階で合流するところはどのチームも同一だが、クアッド単位ばかりかというとそうでもなくデュオだったり、3人と1人だったり、いわゆるメタ自体が存在せず、タクティクス自体もまだ過渡期なんだなということを感じさせてくれた。
マップのエリアが徐々に狭まるにつれて戦闘が増え、チームとしての動きが重要になっていく。できるだけクアッド単位の動きが増えていくが、このままでは全滅するという場合は容赦なく見捨てる勇気も必要で、生き残りをかけた終盤の攻防はかなり熱い。すでに1人しか生き残っていない場合でも、漁夫の利を拾うこともあり、“ドン勝”するためには実力だけでなく、強運も必要となる。このため、運の要素をできるだけ均一化し、真の実力を図るためには8回という回数が必要となるようだ。
本大会ではCloud9やFaZe、NiPといった12のプロチームが招待され、残り8枠を欧米からそれぞれ4枠ずつ選出するという形で出場チームが決められていたが、優勝したのは予選を勝ち抜いたAAA Gaming(フランス)。今回のルールでは、キルポイントよりも順位ポイントのウェイトが重く、毎回順位が入れ替わる混戦となったが、なかでも比較的安定していたAAAの優勝となった。
eスポーツファンの1人として見ていて感じたのは、今回のもうひとつの競技種目である「CS:GO」と比較すると、試合展開が非常に冗長で、盛り上がりに欠けるということだ。とにかく序盤の立ち上がりが重い。廃屋を捜索し、装備を整えるフェイズでは、野良のゲームだと拳による殴り合いやピストルの撃ち合いなどが始まるものだが、プロ同士ではそういう無駄なことはせず、最初からそれぞれ離れた場所に降下し、序盤は黙々と装備の回収シーンが続いていく。
序盤は戦わないというスタンスは全チームが徹底しており、短くても10分、長い場合は20分程度、生き残りが「80」という凄まじい状態が続く。「CS:GO」で言えばピストルラウンドを落としたチームのエコラウンドを終えて、双方がフル装備でがっぷりよつでぶつかり合うもっともホットな時間帯だが、「PUBG」ではまだ1発の弾も撃たれないのだ。
各チームの選手達は、エリア収束が始まる前に、良い装備品を集めようと必死なのだろうが、観客はクルマやバイクが横転したり、稀に発生する遭遇戦に沸くぐらいしか一喜一憂する要素がなく、甚だ退屈だ。ときおり、最初のエリア収束位置が、極端に端の場合があり、その場合は乗り物を駆使した大移動が発生するため盛り上がるが、基本的に序盤から中盤はかなり退屈した展開が続く。
2段階ほどエリア収束が終わる中盤あたりから徐々に盛り上がりをみせていく。特にエリア収束の境界エリアでの攻防と、エアドロップの奪い合いは見所だ。また、装備をひととおり調えると、最終地点を予測してどのチームも大胆に動いていく。最終地点に先に入り有利なポジションを押さえるためだ。このため乗り物の取り合い、つぶし合いが各所で発生し、運が悪いと爆発炎上してメンバー全員が死亡するというケースもある。
終盤は、すべての敵が視界に入り、限られた遮蔽物を最大限利用して“ドン勝”を狙う。ロングレンジの射撃戦のみならず、極めて近距離の射撃戦や、場合によっては直接攻撃するようなケースもあり、バトルロイヤルの醍醐味が存分に味わえる。最高に観戦が楽しい時間帯だ。この時間をいかに長くし、逆に序盤の冗長さを解消できるかが、「PUBG」がeスポーツタイトルとして大成するか、一過性のブームで終わるかの分かれ目になると思う。
個人的には、往年の名作RTS「Warcraft III」のマルチプレイと同様の問題を感じた。「WCIII」はストーリーを重視したRTSで、充実したシングルプレイキャンペーンが売りだったが、姉妹作の「Starcraft」と同様、リッチなマルチプレイコンテンツも搭載していた。ただ、「WCIII」のマルチプレイは、シングルプレイのレベリング要素をそのまま引き継いでおり、「Age of Empires」や「Starcraft」の後継タイトルとしてeスポーツに採用するには序盤の展開が冗長すぎた。その結果として「DotA」や「League of Legends」が生まれ、eスポーツにおけるRTSからMOBAへの流れを決定づけた。
「WCIII」は今なおBlizzardの中核的タイトルであり、「WCIII」がなければ「DotA」や「LoL」も生まれていないと断言できるほど、MOBAの元祖的存在かつ最大の功労者だが、eスポーツタイトルとして大成することはできなかった。Blizzard自身もeスポーツ化を諦めた唯一のメジャータイトルだ。「PUBG」も、今のルールのまま無理矢理eスポーツ化すれば同じ道を辿る可能性があると思う。
冒頭でも紹介したように「PUBG」はゲームが未完成であるにもかかわらず、大会が先行してしまっているという希有なタイトルであり、「バトルロイヤルのゲームなので、eスポーツ化はしません」という選択肢はすでに残っていない。すでに駆け出してしまっているため、ゲーム本体の開発と呼応して、どうeスポーツ化するかをかなりのリソースを割いて取り組む必要があり、個人的な意見では、そのゴールはかなり遠いと感じた。いずれにしてもこの1年で、eスポーツタイトルとしての「PUBG」がうまくいくかどうかは見えてくる。その開発の進捗に注目していきたいところだ。