【特別企画】

「三国志大戦」が稼働20周年! 「三国志」の戦いをアーケードの対戦型カードゲームへと昇華。歴史に疎いゲームファンをも夢中に

【三国志大戦】
2005年3月15日 稼働開始
※画像は弊誌の過去記事より引用

 2005年にセガよりリリースされ、現在もシリーズが続く人気シリーズ「三国志大戦」が2025年3月15日に稼働20周年を迎える。

 ゲームの題材としても古くから扱われている、中国は後漢末期の興亡史「三国志」を、アーケードの対戦型カードゲームに昇華。専用筐体の上でカードを動かして戦わせる戦略性の高い対戦アクションとともに、著名なイラストレーターや漫画家が手がけた美しい三国志武将のカードを集める付加価値も楽しめた作品だ。

 三国志についての知識が乏しかった筆者も夢中にさせ、三国武将が好きになるきっかけを作った本作を、当時手に入れた武将カードとともに振り返ろう。なお本稿では筆者が深く関わった2005年の最初期バージョン(カードNo.148まで)を基準としている。

「三国志大戦」のゲーム筐体。中央に見えるのはゲームプレイの中継用サテライトだ。 ※画像は弊誌の過去記事より引用
魅惑の武将カード(自前)。ゲームをプレイすると終了時に1枚手に入り、それを次回のゲームに投入できるのが楽しかった。そういえばSR曹操やSR劉備は出なかったな……

カードを三国武将が率いる部隊に見立て、筐体の盤面でカードを動かして戦う独自のプレイスタイルを確立

 2005年の「三国志大戦」の稼働前にセガはトレーディングカードをアーケードゲームに取り入れた作品をリリースし、ヒットを飛ばしている。本作以前に頭角を現わしたのは、2002年リリースのサッカーゲーム「WORLD CLUB Champion Football(WCCF)」で、筐体に備えられた盤面(フラットリーダー)にカードを置くことで、カードに書き込まれたデータを読み込み、その内容やカードの位置をゲームに反映する技術を採用していた。またゲームの進行内容などを手持ちのICカードに保存する技術は1999年の「DERBY OWNERS CLUB」から導入されたものだ。

「WCCF」の筐体。ボタン配置などは異なるが、ベースとなる筐体は「三国志大戦」に近い形だ

 これらのセガのアーケードゲームの最新技術を導入した最新作のテーマが三国志ということを筆者が知ったのは、稼働直前の2005年の冬のことだった。当時所属していたプロダクションに、「三国志大戦」とタイアップしていた講談社から関連書籍執筆の依頼があり、筆者がそれを担当することになったことから本作との関わりが始まったのだ。上のカード写真の下側にチラッと写っている「アゴなしゲンとオレ物語」の平本アキラ氏が描いたEX諸葛亮のカードが付録に付いた、稼働と同時期に発売された攻略本を覚えている人はいますか?

 三国志のゲームというと、コーエーテクモゲームスの歴史シミュレーション「三國志」シリーズや、当時はシリーズが始まって間もない「真・三國無双」などが知られていたが、セガのアーケードゲームと三国志が結びつかず、三国志についての知識がほとんどなかった筆者は今一つピンと来ていなかった。その後取材やプライベートでゲームを実際にプレイして、三国志における大軍同士の戦いを対戦ゲームに落とし込んだゲームデザインには大いに感銘を受け、その後ゲームプレイにはそれなりの知識が必要と考え、吉川英治氏の小説や、横山光輝氏のコミックなどを読み込んで、三国志について勉強した。

しっかりしたチュートリアルもあるので、三国志を知らなくてもプレイは可能だが、知っていればゲームに盛り込まれた数々のネタにも気づけるので、楽しさは倍増する。 ※画像は弊誌の過去記事より引用

 筐体にあるのはモニターとフラットリーダーの盤面、いくつかのボタンとトラックボールだ。ゲーム画面には戦場を挟んで自分と敵の城壁が存在している。プレイヤーは三国武将が描かれた「武将カード」を盤面に置くと、ゲーム画面にその武将が率いる部隊が現われ、それが自軍の手駒となる。武将が率いる部隊を動かして戦わせ、相手の城に対して「攻城」を行ない「城ゲージ」を0にするか、制限時間内に多く相手の城ゲージを削ったほうが勝利するという、比較的わかりやすいルールが設定されている。

武将カードにはコストがあって、合計8コスト以内に収めた組み合わせで配置しなければならない。コストは最低1なので、最大8枚のカードを置ける。 ※画像は弊誌の過去記事より引用
画面の奥側が敵城、手前が自城となる。盤面の上カード配置は右上のミニマップにも表示。 ※画像は弊誌の過去記事より引用

 盤面のカードを動かすと、戦場にいる対象の武将が率いる部隊が移動する仕組みで、リアルタイム操作ではあるものの、その感覚はRTS(リアルタイムストラテジー)に近いものだ。マウスなどで行なうゲームとは趣が異なり、盤面の上にあるカードを目まぐるしく動かす操作は、アーケードゲームらしいダイナミックさを味わうことができた。

これは稼働前のプライベートショーに出展されたときの写真。実際には両手で激しく動かすことが多かった。また武将によってはカードの向きも重要となる。 ※画像は弊誌の過去記事より引用

 戦闘は互いの部隊が攻撃範囲内に入るとオートで行なわれ、戦果は武将の武力に依存している。通常は武力が高いほうが有利となるが、メインとなる3兵種(騎兵・槍兵・弓兵)には三すくみの相性があり、それにより武力差が縮まることもある。騎兵は移動速度が速く、槍兵は前方に槍のオーラを突き出し、弓兵は遠距離から弓を掃射するといった特徴があり、カードの動かし方も兵種によって大きく変わる。

 また部隊の接触時にランダムで発生する「一騎打ち」や、接触するまで居場所がわからない「伏兵」など三国志ではおなじみの兵法がルールに組み込まれていたのも魅力だ。

戦闘は武将の兵種が大きく影響する。しかし部隊が接触して交戦状態になると相性はなくなり、純粋に武力差による兵力の削り合いになる
兵力が0になるとその部隊は撤退し、一定時間自城で復活を待たなければならない。相手は攻めるチャンスとなる
部隊が敵城に接触すると「攻城」を開始。攻城が成功すると相手の城ゲージにダメージを与える
一騎打ちは互いがボタンを押すタイミングで勝負が決まる。武力が高いほうが有利だが、タイミング次第で武力が低くても勝てる可能性がある。 ※各画像は弊誌の過去記事より引用

 こうした戦いを大きく左右するのが、武将が一つずつ持っている「計略」の存在だ。これは時間経過で溜まっていく「士気ゲージ」を消費して繰り出す武将の必殺技のようなもので、使い方次第で戦局をひっくり返すほどの要素である。その内容は様々で攻撃や防御、自軍へのバフ、敵軍へのデバフなどの効果があり、その内容が三国志における武将のエピソードにあやかったものなのも面白いところだった。計略を使いこなすためにデッキを組むのも重要な戦略で、「神速デッキ」、「桃園デッキ」、「麻痺矢デッキ」など強力なデッキがプレイヤーやコミュニティによって定義される。ただし全員が該当するカードを持っているわけではないので、プレイヤーごとに異なるデッキのアレンジを施し、それを実戦で試すのも楽しかった。

画面下に見えるのが士気ゲージ。強力な計略ほど高い士気が必要だ。 ※画像は弊誌の過去記事より引用
計略の「火計」は規定の範囲内の敵部隊に大きなダメージを与える。武将の知力差があるほど効果が高いのは計略の基本だ。赤壁の戦いなど、歴史に沿って火計を使えるのは呉の武将だけだった。 ※画像は弊誌の過去記事より引用
筆者が最初に手に入れたSRカードの呂蒙を軸とした麻痺矢デッキ。計略「麻痺矢の大号令」で敵軍の動きを遅くし、一方的にダメージを与えるのだ

「三国志大戦」はカードも大きな魅力。プレイ後に筐体から出てくるパックの開封に一喜一憂した

 ゲームの主役となる武将カードも本作の大きな魅力だ。稼働時の本作には「魏」、「蜀」、「呉」の3勢力に加え、呂布や黄巾族などを含めた「他」勢力があり、それぞれの勢力で活躍した武将のイラストとデータが描かれている。武将にはパラメータとして「武力」と「知力」があり、前者は戦闘時の攻撃に影響し、知力は計略の効果や時間、伏兵時の戦果などに影響する。また「防柵」や「魅力」などの「特技」を持つ武将も存在していて、使用コストとのバランス設定は絶妙だった。

初回プレイ時は併設された販売機で「スターターパック」を購入することで、データ保存用の君主カード(ICカード)と、ゲームプレイに必要なデッキの基礎となる武将カードを得られる。 ※画像は弊誌の過去記事より引用

 カードには4段階のレアリティがあり、SR(スーパーレア)とR(レア)は強力な武将が多く、デッキの中心として重用される。原則として1回のゲームプレイで1枚手に入るので、プレイヤーはその封を開けるたびに一喜一憂した。

カードの絵柄は三国志での武将のエピソードを反映させたものも多い。レアリティが低いからといって使えないわけではなく、全てはデッキ次第だ。
盤面でカードを激しく動かすので、カードを傷つけないためにスリーブに入れるのは一般的なトレカ以上に重要だった

 カードイラストを手がけるのは実力派イラストレーターや漫画家で、その絵柄が好きで武将を好きになったという人もいるのではなかろうか。筆者が攻略本を担当した講談社とはコラボレーションにより、真島ヒロ氏(「RAVE」他)、川原正敏氏(「修羅の門」他)、漆原友紀氏(「蟲師」他)、幸村誠氏(「ヴィンランド・サガ」他)、西山優里子氏(「Harlem Beat」他)、八神ひろき氏(「DEAR BOYS」他)、CLAMP氏(「魔法騎士レイアース」他)、岩明均氏(「寄生獣」他)など、同社のコミックで連載をしていた人気漫画家陣がイラストを提供している。

 またこれは余談だが、平沢たかゆき氏による本作の生誕秘話をコミック化した「三国志大戦を創った男たち」が、同社の「コミックボンボン増刊号」に掲載されたこともあった。

真島ヒロ氏の曹操と、川原正敏氏の劉備。講談社とのコラボにより実現した漫画化諸氏の武将カードは、アーケードゲームファン以外のプレイヤーも引き込んだ。 ※各画像は弊誌の過去記事より引用

 ゲームはその後のアップデートにより、新勢力・新兵種の追加や「軍師カード」の登場でカードの種類が大幅に増え、新たな戦略が構築されていった。2007年にはニンテンドーDSをプラットフォームとした「三国志大戦DS」が発売、2012年にはリアルトレカゲーム「三国志大戦トレーディングカードゲーム」も展開され、シリーズがが幅広いユーザーに浸透している。また本作で構築されたゲームシステムは「戦国大戦」(2010年)や「英傑大戦」(2022年)にも受け継がれた。

「三国志大戦DS」。DS本体を縦に持ってプレイする仕組みで、タッチスクリーンを盤面に見立ててプレイする。2008年には続編の「三国志大戦・天」も発売。 ※画像は弊誌の過去記事より引用

 そして現在は2016年よりオンデマンドカード印刷を導入した2代目の「三国志大戦」が稼働中。またセガの公式ライセンス許諾を受けたブロックチェーンカードゲーム「魁 三国志大戦 -Battle of Three Kingdoms-」もこの3月よりサービス開始が決定している。

2016年に装いも新たに生まれ変わった「三国志大戦」は現在も稼働中。基本ルールは同じだが、より奥深い要素が追加されている。 ※各画像は弊誌の過去記事より引用
double jump.tokyoの「魁 三国志大戦 -Battle of Three Kingdoms-」。「三国志大戦」の世界観を用いたスマホ、PC向けのカードバトルゲームで、セガ時代に同作に携わった西山泰弘氏(スゴロックス)が本作でもプロデューサーをつとめている

 20年前のアーケードに三国志ゲームの新しい風を巻き起こし、現在までに大きな進化を遂げて生き続ける「三国志大戦」。本作をきっかけに身に付いた三国志の知識は現在も筆者の中に確実に生きていて、三国武将の話を聞くと、本作の武将カードの絵柄を思い出すなんてこともある。筆者の三国志に対する意識を大きく変えた本作のこれからの10年、20年にも期待したい。