【特別企画】

【#ウォーハンマー】「Space Marine 2」ファンに贈る、超楽しいミニチュアの世界

まさに“ホビーの総合格闘技”。触れるほどに広がる「40K」沼を案内

【Warhammer 40,000: Space Marine 2】

9月10日 発売

価格:9,800円

 プレイステーション 5/Xbox Series X|S/PC(Steam)用アクションゲーム「Warhammer 40,000: Space Marine 2」の発売から1カ月あまりが経過したが、みなさんはすでにオペレーションを遊び終えたり、PvPモードで永遠の戦争に明け暮れている頃だろうか。それともまだ遊んだことがない? それはなんとももったいない。

 「Space Marine 2」は9月10日に発売し、11日にはオンラインでのプレイヤー数が全世界で200万人を超えたことが発表された。その魅力は、まず敵の大群それぞれにしっかりと当たり判定があり、それらを銃弾と剣戟の嵐によって薙ぎ払えるアクション性の高さにあると思う。超人兵士たるスペースマリーンが超感覚で飛びかかる敵をつかみ引きちぎり、実弾に限らず熱線や火炎放射、接近戦武器ならチェーンソーやエネルギーを纏う剣、素早いナイフに鈍重なハンマーといった、武器選択も豊富で遊びの幅広さを感じる。

爆発するプラズマ弾を放つ「プラズマインシネレイター」。楽しいので愛用している
「ウォリアー」の攻撃をはじく瞬間。このアクションにハマった人は多いだろう
飛びかかる「ホーマゴーント」にカウンターを決める瞬間は爽快そのもの
武器ごとに異なるアクションが設定されているのも面白い

 一方で、本作にミニチュアの原作があることをご存知だろうか? 「Space Marine 2」の人気ぶりには原作である「ウォーハンマー」のファンの力があったことは確かだろうが、本作を何も知らずに遊び、ミニチュアがあることを知った人も多いと思う。海外では、主人公である「スペースマリーン」のミニチュアが店の棚からごっそり消えたというほどの人気ぶりだそうだ。

 筆者は、「Space Marine 2」の発売前から、ミニチュアゲームの「ウォーハンマー」をずっと遊んでいるクチだ。ミニチュアゲーム版では駿河屋から「副官タイタス」の顔が手に入るボードゲームが販売されている他、「ガドリエル」や「チャイロン」、「アーキラン」(アケラン)を再現する頭部パーツが所々にあり、重要な脇役「アストラ・ミリタルム」はほとんどそのまま立体化されている。

 そこで今回は「Space Marine 2」の基礎である「ウォーハンマー40,000」の世界に始まり、「Space Marine 2」を彩るキャラクターや兵器を実際に手に取る方法や、筆者が作った作例と共にミニチュアを組み立て、塗る楽しみを紹介したい。

「ウォーハンマー40,000」はミニチュアを動かすウォーゲーム

 「Space Marine 2」のタイトルにもある「ウォーハンマー40,000」(ウォーハンマー40K)は、TRPG「ローグトレーダー」からスタートし、現在はルールの改版と共に多数のミニチュアで構成された軍隊を率いて遊ぶウォーゲームとなっている。インチメジャーとダイスを使用し、交互にプレイして目標を確保するのが主な目的だ。

 基本的に5ターンを繰り返して戦う「陣取り&点取りゲーム」ということは共通していて、最終的にミニチュアがボコボコに倒れていても点さえ取れていれば勝利という、「勝負には負けていても、試合には勝てればOK」なルールとなっている。

2023年の写真だが、「ウォーハンマー40K」で実際にゲームを始める前の風景

 「ウォーハンマー40K」の魅力はやはり「30年間蓄積されたスペースオペラ的世界観とファンタジーの融合」にある。勇ましく豪傑を思わせる表情の戦士が集い、撃ち合い、時に殴り合う。人類の防衛軍や超人兵士、エイリアン、異星人、魔神が取っ組み合う。そんな風景が双方のプレイヤーによって演出されるのがたまらなく楽しい。そこには自分が丹精込めて組み立て、ペイントし、編成した軍勢が並び、勝っても負けても気持ちいい。なぜなら、完成したミニチュアが並ぶだけでもうれしいからだ。

 ちなみに「Space Marine 2」はSFのイメージが強いが、「ウォーハンマー」のもとを辿っていくとファンタジー世界で戦う「ウォーハンマー ファンタジーバトル」に行き着く。2024年現在でも「ウォーハンマー:エイジ・オヴ・シグマー」(ウォーハンマーAoS)というファンタジー世界の別シリーズが販売されている。SFも、ファンタジーも楽しめるのが「ウォーハンマー」全体の面白いポイントだ。

ファンタジー世界のAoSで使用するミニチュア。「アイアンジョウ」という勢力で、筋肉モリモリのゴリマッチョなオーク(オールク)がひしめき合う

 「40K」と「AoS」は、2024年現在それぞれ別の世界を描いた別のゲームではあるが、そこに登場する魔神たちは共通しており、両作で使用できるミニチュアもある。基本的なルールもある程度共通している。そんな親和性もあって、筆者は「40K」も「AoS」も両方遊んでいる。

「Space Marine 2」には出演しないが、前作「Space Marine」に登場する「オルク」の軍隊。一堂に会すると迫力がある

 筆者は2023年2月に本格的に「ウォーハンマー40K」を始め、そこから1年半で「AoS」も含めて10陣営をこまごまと集めている。ルール内で規定され、ゲームを遊ぶための編成を制限する「ポイントコスト」でいうと、「40K」で合計4,500ポイント程度、「AoS」で12,000ポイント程度だ。当初はゲームをガンガン遊びたいと思っていたが、それ以上にペイントが楽しくなり、細かいモデルでもしっかり丁寧に塗り込むことを目指し始め、ゲームを遊ぶ頻度を落としながらペイントと編成に凝りだしている。

 「ウォーハンマー」のミニチュアはほとんどがプラモデルで、おおよそ未塗装のグレーかつ組み立て式だ。さらにいえばポーズもほとんど変えられない。なのに思わず集める訳は、カッコよさに極振りしたミニチュアが並んでいるのがうれしい! その1点に尽きる。コレクションし、自分なりにペイントにこだわっていくと、ミニチュアたちにグッと愛着が湧いてくる。

 「ウォーハンマー」シリーズを製造するゲームズワークショップは年に1度「アーミーズ・オン・パレード」というミニチュア作品を大々的に集める展示会を催しており、地域の直営店「ウォーハンマーストア」でも実施している。人数に限りはあるが、これに展示して自慢のコレクションを見てもらうことも可能だ。また、他のファンの展示を見るのも楽しい。

9月にウォーハンマーストア&カフェ 東京で行われたアーミーズ・オン・パレードにて、筆者のコレクションを展示した
展示したのは、「AoS」のネズミ人間「スケイヴン」たちだ
並べたのは総勢127体。ひとつずつ組み立て、塗装を施した

「Space Marine2」はどんな世界が舞台だった?

 では「Space Marine 2」のベースである「ウォーハンマー40K」がどんな世界が舞台で、どんな戦いを描いていたのかを大まかに説明する。

 時は西暦4万年紀、人類は宇宙の様々な惑星へ版図を広げていたが、兵隊「スペースマリーン」同士の壮絶な争いと、それまで人類の希望の象徴であった「皇帝」の衰弱によって革新的な技術の数々が途絶え、信仰や祈祷によってなんとか維持される、緩やかな衰退の時代を送っていた。

皇帝がいかにして倒れたかは英語の小説群「ブラックライブラリー」のうち「Siege of Terra」シリーズで語られている

 そこへさらに遠い宇宙から人間ではない異種族(ゼノ)が侵攻を始め、さらに外宇宙から人類や異種族も関係なく汚染、貪食するエイリアン「ティラニッド」が到来し、果てなき闘争を繰り広げている……というのが「ウォーハンマー40,000」の世界観となる。

ゼノのひとつである「タウ・エンパイア」の戦士。「大善大同」という全体主義的な思想を掲げ版図を広げ、相容れないものに対しては毅然と火力を投射する

 「ティラニッド」は、上述の通り外宇宙からの侵略者だ。全てを破壊し食らいつくすほか、遺伝子を汚染する力によって惑星の様々な生物を自分たちと同じ「ティラニッド」に近づけ、外から内から侵略し、「ウォーハンマー」世界のあらゆる生物を破壊しようとしている。

「ティラニッド」との戦いは「ブラックライブラリー」で細やかに描かれている。最新のものは「Leviathan」

 「Space Marine 2」は、兵団の1つ「ウルトラマリーン」に所属する「タイタス」を主人公に、「ティラニッド」などとの戦いが描かれている。「ウォーハンマー40K」において、「ティラニッド」は「ティラン戦役」と呼ばれる人類との大きな戦いを4度起こしており、このうち「ウルトラマリーン」が戦ったもので最も新しいのは「第4次ティラン戦役」だ。はっきりとは示されていないが、「Space Marine 2」はこの「第4次ティラン戦役」の一部が舞台だと推測できる。

「第1次ティラン戦役」の様子。惑星「ティラン」をむさぼり食う様子から「ティラニッド」と名付けられ、当時から「ウルトラマリーン」の戦団長だった「マルネウス・カルガー」も戦っている
「第4次ティラン戦役」とされる戦いの様子。すでに半ば食い荒らされている惑星を舞台に、「ウルトラマリーン」の古参兵たちが戦っている

 「第4次ティラン戦役」は「ウォーハンマー40K」の最新ルールである10版のメインの舞台でもあり、販売されているミニチュアを購入すれば、卓上に「Space Marine 2」の戦いを再現することができそうだ。

 少し話が逸れるが、「ウォーハンマー40K」を知っていると、「Space Marine 2」の世界をより深く理解できる。たとえばスペースマリーンは、古参兵(ベテラン、ファーストボーンなど)と「プライマリス」に大きく分けられる、といった設定がある。

 プライマリスは古参兵より身長が大きく、能力も高い。スペースマリーンは改造手術によって様々な臓器を移植され完成するが、プライマリスは古参兵より多くの臓器を移植する。すでに完成した古参兵がプライマリスとなった姿を「ルビコンプライマリス」というが、「Space Marine 2」主人公のタイタスの他に「マルネウス・カルガー」がそれに当たる。ちなみにこの「ルビコンプライマリス」となる手術は激痛を伴い、成功率は50%程度とされている。

「ファーストボーン」として現代も戦い続けている、プラモデルとしても古参兵な「タクティカル・スカッド」
「プライマリス」である「プライマリス・レフテナント」。全体的にがっしりとした風体のパワーアーマーを装着している

 「機械が祈祷によって維持されている」と先に書いたが、「タイタス」が焼香をして機械を起動したり、赤いローブの「アデプトゥス・メカニカス」の「テックプリースト」たちが鎖の付いた香炉を揺らしているのは全て「機械への祈祷」だ。4万年紀では機械に精霊が宿るとされており、実際に祈ることで機械の機嫌が良くなるし、スムーズに動くのだ。

 また「タイタス」が所属する「ウルトラマリーン」は、「スペースマリーン」のうち4万年紀現在9つある戦団(チャプター)の1つだ。「スペースマリーン」はかつて20の兵団(レギオン)として壮大な戦力を誇っていたが、レギオン同士の裏切り、母星の崩壊によって9つのみが人類側に残り、残りは人類を裏切ったり存在を抹消された。

人類側に残ったレギオンをチャプターとして創設しなおした「第1期創設」を描いた本「First Founding」の表紙

 この争いの結果、1万人近くいた1つの兵団が1,000人程度に分割されたのが戦団だ。「サウザンドサン」はこの人類を裏切った兵団の1つで、変化の神「ティーンチ」を信奉した結果、実体を失い灰のような状態で空っぽのパワーアーマーに精神が詰め込まれている。

ミニチュアとなった「サウザンドサン」の「ルブリックマリーン」。古代エジプト的な装飾が目立つ

 さらにいうと、裏切った「スペースマリーン」たちが「Space Marine 2」の少し前に「アストラ・ミリタルム」(スペースマリーンとは別の帝国軍)の軍人を多数輩出する惑星「ケイディア」を破壊している。だが勇猛なケイディア人たちは、母星を離れ、破壊されてなお戦い続けている。「Space Marine 2」に登場しているのはそのうちの「第8連隊」で、「ケイディアは屈せず」の言葉を胸に、失われた母星の栄光を汚さぬように戦う。

 ちなみに「ウォーハンマー」には、その歴史的な戦いを再現するような、シナリオ重視の「ナラティブ」というプレイスタイルがある。これを応用して「スペースマリーン」と「ティラニッド」を戦わせると、「ティラン戦役」の模様を再現でき、もちろん「Space Marine 2」の再現も可能だ。「ウォーハンマー」世界にハマればハマるほど、こうしたプレイにもどんどん深みが出てくる。