【特別企画】

【#ウォーハンマー】「Space Marine 2」ファンに贈る、超楽しいミニチュアの世界

造形美極まるミニチュアを実際に組み、ペイントする

 では、実際にミニチュアを組み立ててみよう。ミニチュアはほとんどがプラモデルなので、パーツの切り出しや整形にはプラモデル用ニッパー、デザインナイフ、プラモデル用接着剤があればいい。

筆者が使用している工具。コトブキヤ「コトブキニッパー」とタミヤ「モデリングナイフPRO」、タミヤセメント、タミヤセメント(流し込み速乾)でほぼ全ての作業を終えている

 今回は上記の「サーカナ」を作ってみたかった点、アストラ・ミリタルムの収集を始めようと思った点から、アストラ・ミリタルムの「コンバットパトロール」を購入した。コンバットパトロールはいわゆるスターターセットに当たるもので、これさえあればゲーム時にコアとなる兵士がほとんど揃う。さらに収録ユニットを単体で購入しようとした時の合計から3割引程度の価格で入手できるので、アストラ・ミリタルムなどの大群を並べてみたい勢力を集めるにはぴったりだ。

ケイディア・コマンド・スカッドのランナー
14番のパーツが女性の頭部。これをリーダーに使用した
ケイディア・ショックトループのパーツ構成。リーダーはこの7パーツで完成する
ケイディア・コマンド・スカッドのリーダーを組み立てたもの。これをサーカナだと思ってゲームで使う
ケイディア・コマンド・スカッド全体。旗には大まかな造形があるため、それに沿ってペイントすることでゲーム中にも登場した隊旗を再現できる
フレイマー装備のケイディア・ショックトループ

 「コンバットパトロール」のセットはアストラ・ミリタルムの他にも、銃「プラズマ・インシネレイター」やブルーワーク装備が手に入る「ダークエンジェル」のセット、ゲームには出てこないがスペースマリーンの古参兵であり、古来の鎧である「ターミネイター・アーマー」が収録されている「スペースマリーン」のセット、「サウザンドサン」の「ツァーンゴウル」や「ルブリックマリーン」が手に入るセットもある。ゲームでハマった勢力はもちろん、実際に販売店に赴いて気に入った勢力を手に入れるのもアリだ。

 また今回「ティラニッド」とスペースマリーンの両方が好きになった場合は、「リクター」や「ターマガント」の他にも大量のミニチュアと情景モデルが同梱された、先述のアルティメット・スターターセットをおすすめしたい。両勢力のユニットを最大効率で集められる上、ある程度のルールや世界観を紹介するブックレット、ゲームを遊ぶのに必要なものがほとんど入っている。

もちろん日本語版が販売されている。初心者が2人でゲームを始めるのにぴったりなセットだ
試しに組み立ててみたケイディア・ショックトループ20体。多い

 組み立てたそのままでも十分カッコよく見応えがあるが、ペイントすると先述の通りもっとカッコよく、愛着が沸き、達成感が得られる。せっかく買ってみたのであれば、1体だけでもいいので、ぜひペイントしてみてほしい。

 ペイントについては、今回はケイディア・コマンド・スカッドの1人に絞って紹介する。というのもケイディア・コマンド・スカッドで5人(+1人ずつ異なる武装)、ケイディア・ショックトループで20人(1ユニット10人×2)をきっちり塗るとなるとかなり時間がかかるからだ。ゲームの日が近いのにユニットに色が付いていない! という場合なら粗く色を置いてどうにかすることもあるが、今回は気に入ったカラーリングが見つかるまで試行錯誤したり、じっくりとハイライトまできれいに色を付けていきたい。

 「ウォーハンマー」のミニチュアペイントには「シタデルカラー」を使う。「ウォーハンマー」を製造するゲームズワークショップ公式の塗料で、水で薄められ、洗える、においのない水性エマルジョン系塗料だ。

 シタデルカラーには色を乗せやすい「ベース」カラー、ベースカラーより色が付きにくいが、鮮やかさを加える「レイヤー」カラー、色味を落とす透明感のあるシャバシャバな「シェード」カラー、白系の下地を染めるように彩色する「コントラスト」カラー、そしてミニチュアの台座を彩る土や泥、雪などのペーストに加え、汚液や血、エクトプラズムなどさまざまな液体を作る「テクニカル」カラーがある。今回は主にベースカラー、レイヤーカラー、シェードカラーを使う。

 シタデルカラーを扱うのは主に筆だ。量販店でならタミヤや文盛堂など様々なメーカーの筆を1本100~500円程度で購入できるが、筆者はフリージアエンタープライズが製造する「ペイントテイマー」や、ボークスで販売されている「ファレホ ホビーブラシ」を主に使っており、幅広い面を塗る際はアクリル絵の具用の大きな筆を用意している。ゲームズワークショップもシタデルカラーのラインナップでサイズの異なる筆を多数販売している。形状やサイズも幅広くあるので、気に入ったものを使おう。

 また塗料皿や紙パレットを用意しておくとカラーの管理がしやすいし、水を入れて洗うためのカップもあるといい。筆者はアクリルの塗料皿と、シタデルカラーのラインナップで販売されているポットを使用している。

筆者が今回使った筆。上からペイントテイマーのグラディウスブラシ、ファレホのプロモデラーブラシとディティールブラシ

 今回使用したカラーは16色+テクニカル1色の合計17色。ただし最低限色を塗るだけなら9色+テクニカル1色の合計10色で十分だ。ちなみに、ウォーハンマーストアでシタデルカラー10色をまとめ買いするともっとも高価な1色が無料となるキャンペーンを通年開催しているので、少しお得に購入できる。

アストラ・ミリタルムのペイントに使用したカラー

・ベースカラー:ラカルス・フレッシュ
・シェードカラー:ライクランド・フレッシュシェード
・ベースカラー:ザンドリ・ダスト
・シェードカラー:アグラックス・アースシェード
・ベースカラー:キャステラン・グリーン
・ベースカラー:コルヴス・ブラック
・ベースカラー:レッドベルチャー
・ベースカラー:リトリビューター・アーマー
・ベースカラー:ルーンロード・ブラス
・レイヤーカラー:テンプルガード・ブルー
・テクニカル:スターランド・マッド
さらに色鮮やかにするなら下記のカラーを使う
・ベースカラー:モルガスト・ボーン
・レイヤーカラー:ストラーケン・グリーン
・ベースカラー:ザ・ファング
・レイヤーカラー:バハロス・ブルー
・レイヤーカラー:ホワイトスカー
・シェードカラー:ドラケンホフ・ナイトシェード

 ここで示したカラーは一例だ。ゲームズワークショップがAndroid/iOS用に配信している「Citadel Colour」アプリを使えば様々な色を作る方法を確認できるので、ウォーハンマーを始めたときはぜひ使ってみてほしい。

 ペイントは下地となるスプレーを吹いてから始める。こうすると筆で色を塗ったときに定着しやすく、完成後になにかの拍子で角張ったものにこすりつけるなどのアクシデントがあっても塗料が落ちづらい。また筆には根元まで塗料を付けず、筆の半ばまでに留めておくと毛先がばらついたり、痛むのを抑えられる。

シタデルカラーが販売する「ケイオスブラック」のスプレーを吹いたもの
物理的に内側の部分(下のレイヤー)から順に塗っていく方が最終的に楽だ。肌色をラカルス・フレッシュとライクランド・フレッシュシェードで塗るとケイディア人のような浅い褐色になる
目を描いておくともっとカッコよくなるが、もっと上手になってからだ! と思うなら気にしなくていい。ホワイトスカーで白目を描いたのち、コルヴス・ブラックで黒目を入れる
ザンドリ・ダストで戦闘服を塗り、アグラックス・アースシェードを塗る。泥汚れや影色を簡単に付けられる
コルヴス・ブラックで髪を塗り、キャステラン・グリーンでアーマーを塗る
リトリビューター・アーマーで剣の装飾を塗ってから、レッドベルチャーで刀身を塗る。ついでにピストルの外装も塗っておく
プラズマピストルを選択して組み立てた場合、テンプルガード・ブルーでコイルの部分を塗るとカッコよくなる

 シタデルカラーは水で薄めて濃度を調整できる。初めのうちは水の過不足に悩むかもしれないが、まずは筆の半分くらいで取ったカラーをパレットに置き、その筆の筆先だけちょびっと水につけて薄めるくらいを心掛けるといい。洗った筆はしっかりと水分を拭き取れば次のカラーを使ったときに水分量が多すぎて塗れない、ということもなくなる。

ここからは色を鮮やかにする工程。モルガスト・ボーンで戦闘服の光が当たる部分を塗る
ストラーケン・グリーンでアーマーのふちを塗る
バハロス・ブルー→テンプルガード・ブルー→ザ・ファングの順に刀身の装飾から外側に塗っていく。「Space Marine 2」でエネルギーを帯びた刀身を見たと思うが、それをイメージしたものだ
フレイマーの放熱板を塗る場合、筆者はルーンロード・ブラスを使っている。他の塗り方は上記と同じ
焼けたメタルの表現には2色のシェードカラーを使っている。ドラケンホフ・ナイトシェードとライクランド・フレッシュシェードを乾かない内に塗り、中間地点で混ぜ合わせる
完成したケイディア・コマンド・スカッドのリーダー。これをサーカナとして使おうと思う

 すらすらと完成しているように見えるが、筆者は本当にペイントが苦手だった。筆選びも色選びも、そもそも筆を動かすことすら苦手すぎたのだ。それが好きになったのは、スペースマリーン戦団の1つ「ダークエンジェル」に出会ったからだった。「Space Marine 2」でも再現できるキャリバン・グリーンの装甲に鮮やかなレッドの目と戦団章、それだけでなく古参兵は骨色に、高機動兵は黒に塗られる! こんなに色鮮やかに塗っていいのか、私もこんなにかっこよく塗れるのか、チャレンジしてみたいと思った。

 みなさんも「Space Marine 2」のオペレーションモードや永遠の戦争で、パワーアーマーの色を変えたことがあると思う。オリジナルカラーはもちろんのこと、「ダークエンジェル」、「サラマンダー」、「レイヴンガード」、「アイアンハンド」、「ブラッドエンジェル」のように、数々ある戦団固有のカラーリングが存在し、それぞれに濃厚な設定がある。

 WEBで調べてみるのもいいし、実際にミニチュア向けの設定資料「コデックス」を買ってもいい。英語の中でも形式張った「硬い」英語で書かれているが、「ブラックライブラリー」という小説で補完される設定も捨てがたい。第4次ティラン戦役の模様は「Leviathan」で描かれている。

 以下に掲載するのは筆者がペイントしてきたミニチュアたちだ。中には「Space Marine 2」には登場しない古参兵の「ターミネイター・アーマー」や、前作「Space Marine」で敵対した「オルク」のミニチュアが含まれている。

2023年7月にペイントした「ターミネイター・スカッド」。ダークエンジェルの骨色をベースにしている
ブルワークとしても活躍する「ブレイドガード・ベテラン」。3体セットで、それぞれ剣を持った状態、ピストルを持った状態の両方が作れる
3種類目のヘヴィ武器として使えた「パイアブラスター」は「インフェルヌス・スカッド」で手に入る。中央はターミネイター・アーマーを装備した超能力者
ダークエンジェルの精鋭「デスウィング・ナイト」
オルクのヒーロー、「ウフザック・ブラックホーク」。コントラストカラーでほとんど塗っている
炎模様は手書き
オルクのコンバットパトロール(2023年販売終了、別セットに更新済み)をベースに2カ月ほどかけてペイントしたもの
現状最新のペイント作品。アストラ・ミリタルムの中でも独特な戦闘スタイルの「デスコーア・オヴ・クリーグ」のリーダー

 ペイントに絞って言うと、やればやるほど、めきめきと力を付けていく過程がうれしい。1年ペイントし続け写真を撮っておき、改めて古い自分の作品と比べてみる。そうすると、どれだけ自分が気合いを入れてペイントし、頑張ってきたかが分かる。ウォーハンマーストアが近い場合は「アーミーズ・オン・パレード」という、自分の作品を実際に並べてディスプレイするイベントに参加すれば、さらに自分のやってきたことが分かる。自分と向き合ってこつこつと遊ぶ趣味が好きな人にもおすすめしたい。

 「ウォーハンマー」を取り巻く趣味は、自分の成長とともにどんどん楽しくなることばかりだ。プラモデルを組み立て、ペイントし、ゲームを遊び、資料を日本語だけでなく英語でも読み、英語の映像も見る。筆者はこの1年半サイクルを続けてきて、英語の読み書きも上達したし、聞き取りが正確になった。筆の細かい操作も得意になってきたので、資料としてアクリル彩色の技法書を読んでさらに表現力を高めようと頑張れている。日常がちょっと明るくなったようだった。みなさんも「ウォーハンマー」を遊んで、もう少しだけ日常を明るくしてみてはいかがだろうか。