インタビュー

「逆転裁判456 王泥喜セレクション」プロデューサーインタビュー

ただ画面を綺麗にするだけではなく、空気感や雰囲気を再現することにこだわったHD版

【逆転裁判456 王泥喜セレクション】

2024年1月25日 発売予定

価格:
パッケージ版 6,589円
ダウンロード版 5,990円

 2024年1月25日に発売予定のプレイステーション 4/Xbox One/Nintendo Switch/PC用「逆転裁判456 王泥喜セレクション」(以下、「逆転裁判456」)。本作は法廷を舞台にした推理ADV「逆転裁判」シリーズのうちの「逆転裁判4」、「逆転裁判5」、「逆転裁判6」の3タイトルを1本にまとめたタイトルとなっている。

 主人公を成歩堂 龍一(なるほどう りゅういち)から王泥喜 法介(おどろき ほうすけ)へと変え、新たな物語を紡ぐことになる「逆転裁判4」を始め、成歩堂くんの復活となる「逆転裁判5」、成歩堂くんと王泥喜くんのW主人公となる「逆転裁判6」が収録されている。

 本稿では、本作のプロデューサーである橋本賢一氏へのメールインタビューをお届けする。

橋本賢一氏。橋本氏は、2008年カプコン入社。「逆転裁判5」、「逆転裁判6」、「逆転検事」、「逆転検事2」、「大逆転裁判」のパブリシティを担当。開発へ異動後は「ロックマンX DiVE」、「逆転裁判456 王泥喜セレクション」のプロデューサーを担当している

移植難度が高かったが故に、なかなか出せずにいた「逆転裁判456」

――ついに「逆転裁判456」がHDグラフィックで遊べることになり、感慨深いです。まずは「逆転裁判456」を発売することになった経緯をお伺いできればと思います。

橋本氏:ファンの皆さんの要望がずっとあった中で、移植難度が高いため開発がスタートできなかったという事情もあり、長らくお待たせしてしまいました。2021年5月に社内で正式に開発がスタートし、ようやくここまで来ました。

――成歩堂くんに変わって主人公となった王泥喜くんは、どのようにして生まれたのでしょうか?

橋本氏:「逆転裁判3」で成歩堂は、ある種弁護士としては完成してしまいました。そのため、若くて熱血一直線な主人公として、王泥喜法介が生まれました。

――「逆転裁判456」3本を遊ぶことで見えてくる、王泥喜くんの人間像について教えていただければと思います。

橋本氏:王泥喜くんは、熱血的な正義感あふれる若いが芯のある、やんちゃな男ですね。

――「逆転裁判456」の新機能で特に気になるのは、「大逆転裁判1&2」でも搭載されていたストーリーモードです。この「ストーリーモード」について、改めて詳しく教えていただけますか?

橋本氏:アドベンチャーゲームでよく実装されるようになった「オートプレイ」について検討中に、プレーヤーが正解がわからずにゲーム進行に詰まった時の手助けになれば、との考えからさらに追加した機能となります。過去クリア済みの方には、映画やアニメを見る形で楽しんでもらうのもアリだと考えました。

ストーリーモードでは、謎解きなども自動で進めてくれる

「逆転裁判4」のみどころは?

――では、「逆転裁判4」の見どころをお願いいたします。

橋本氏:弁護士を辞めた成歩堂龍一が変わり果てた姿で殺人犯として逮捕されている1話から物語は始まります。若き弁護士・王泥喜 法介がこの謎にどう挑むのか、そしてどう成長していくのか。ご期待ください。

――王泥喜くん以外にも、「逆転裁判4」からの新キャラクターが色々登場しました。新ヒロインのみぬきや牙琉兄弟など、新キャラクターの中でお好きなキャラクターとその理由をお伺いできればと思います。

橋本氏:ロックでコシャクなオトコ、牙琉 響也ですね。お話し全体にかかわってくる人物なので多くは語れませんが、本当に大事な真実のために行動する姿とロックバンドのリーダーでじゃらじゃらしているのが良いですね。法廷での立ち姿やエアギターもいいですよね(笑)。

 あと、みぬきも好きですよ。壮絶な過去を持っているのに、いつも笑顔で。ぼうしクンがうまくなっているのも「成長してる」って思わせてくれますし。「逆転裁判4」が初登場ですが、その後の「逆転裁判5」と「逆転裁判6」を通じて彼女のことが好きになった方も多いのではないでしょうか。

――「逆転裁判4」の尋問での新システム「みぬく」が面白かったです。改めて「みぬく」システムのポイントを教えていただければと思います。

橋本氏:ムジュンしていない証言に立ち向かうため、証人が嘘をつくときに出すクセを「みぬく」というのが面白さのキモです。時には思いもよらないところにクセが出ていたりすることや、各キャラクターによってクセが強かったりするのを探すのが面白いですよね。

――「逆転裁判4」のエピソードも要所要所で様々な工夫がされていましたが、お気に入りのエピソードと、その理由を教えてください。

橋本氏:第2話の「逆転連鎖の街角」ですね。牙琉検事の初登場で、3つの事件が重なり合うストーリーが良いテンポでつながっていって。「パンツ盗難事件」って(笑)、という感じでしたけど、牙琉検事も初登場から真実を追求していて、すごく印象に残ったのを覚えています。

――「逆転裁判4」のBGMは名曲も多かったですが、オススメ楽曲について教えていただけますか?

橋本氏:やはり「LOVE LOVE GUILTY」じゃないでしょうか。イントロからかっこよくて、さらにラップ部分が秀逸。ギターソロもカッコいいですし。楠田さんの声も魅力的です。

 ちなみに、今イーカプコンで予約受付中の「オドロキの切り札セット」というグッズセットの中に入っているドラマCDに「ガリューウェーブ復活ライブ」というストーリーがあるのですが、「LOVE LOVE GUILTY」が新たなバージョンでセッションされていますので、興味のある方は是非!

牙琉検事はロックバンド「ガリューウェーブ」のボーカリスト兼ギタリスト。法廷でもエアギターを披露

「逆転裁判5」では空気感なども大事に移植

――「逆転裁判5」の見どころをお願いいたします。

橋本氏:法廷が爆破されるというセンセーショナルな出来事から始まる物語がどこに終着するのか、3Dになった多彩なキャラクターの動き等、楽しんでいただけたらと思います。

――事務所の新メンバーに希月 心音が加わりましたね。ココロスコープ――心理学を「逆転裁判」の世界観に取り込もうと思った経緯などをお伺いしたいです。

橋本氏:元々シナリオ的に心理学を盛り込みたいというのがありました。というのも、人間の感情と発言というのはムジュンするものなので、これが「逆転裁判」に合うかなと。それをさらに逆転裁判の世界に落とし込むとどうなるのか――と突き詰めたのが、ココロスコープとなります。

――これまで「逆転裁判」シリーズはカプコンの社員さんが大半のキャラクターの声をあてていましたが、「逆転裁判5」からプロの声優さんへとスイッチしましたね。その経緯をお伺いできればと思います。

橋本氏:「逆転裁判5」の頃からROMの容量も増え、ゲーム内で動画(アニメ)を表示することができるようになりました。また、音声データも生音に近い、きれいな音で再生されるようになりました。「異議あり!」や「待った!」などの一声であれば(そして、古いちょっとノイジーな音質であれば)、開発スタッフの声でも違和感が少なかったのですが、アニメーションで長いセリフをしかもクリアな再生したとき、こちらは当然ながら、断然プロの声優さんの方が上手に違和感なく聞こえます。そのため、プロの声優さんにボイスをあてていただくことになりました。

――「逆転裁判5」のお気に入りのキャラクターと、その理由を教えてください。

橋本氏:新人弁護士の希月 心音ですね。5の中で描かれていますが、彼女のバックボーンと明るく元気でいろんな表情を見せてくれるリアクションが気に入っています。

――本作から(ナンバリングとしては)初めてグラフィックが3Dになっていますが、2Dっぽい良さも残っているグラフィックが、当時印象的でした。今回のHD化でグラフィックや演出面でこだわった部分があれば教えてほしいです。

橋本氏:元々の「逆転裁判5」の良さを、そのまま移植することにこだわりました。ただ単にきれいにするだけではなく、空気感や雰囲気といったものも再現しようと、開発チームで丁寧に対応しました。

「逆転裁判5」から導入されたアニメムービー

「逆転裁判6」は、壮大なストーリー

――「逆転裁判6」の見どころをお願いします。

橋本氏:2つの国を舞台とする壮大なお話です。王泥喜 法介の成長譚としても面白いですし、そこで立ちはだかる壁として、成歩堂と対決することになりますが……なぜそうなるのか、そしてどうなるのかは、実際にゲームを遊んで確かめてみてください。

――「逆転裁判6」では日本を飛び出し、新たな舞台としてクライン王国も登場しましたが、クライン王国のコンセプトをお伺いしたいです。

橋本氏:神秘と霊媒の国で、とにかく弁護士を恨んでいる、今までよりもアウェイ感が強い国です。

――本作では久しぶりに綾里 真宵が登場しましたが、真宵ちゃんを改めて登場させるにあたってシナリオ面で意識したことはありますか?

橋本氏:マヨイちゃんを登場させるという事は霊媒は必須だろうな、という事は思っていました。

――「逆転裁判6」はこれまでの集大成というような盛り上がりが印象的な作品でした。どのエピソードもファンの評価が高い作品でしたが、お気に入りのエピソードがありましたら教えてください。

橋本氏:「逆転マジックショー」好きですね。みぬきちゃんが被告人になってしまうのですが、その法廷でマジックを披露するんですが、3Dキャラが動くんですよね。ヤマシノPやミミなど話まりのキャラクターもいい味が出ていて、お気に入りです。

――歴代シリーズに登場したシステムと、「逆転裁判6」から登場した新システムの融合も素晴らしい作品でした。システム面では、どのような点を工夫されたのでしょうか?

橋本氏:霊媒ビジョンでは、被害者が見た・感じたものがそのまま表示されますが、それだけだと、謎が作りにくいという話も生まれ、レイファが勘違いしている内容や、霊力を高めることで詳細な感覚がわかるようにしています。

 他にも指紋検出は旧作では、全面に指紋検出粉を付けて吹くというものでした。しかし、それは「蘇る逆転」と「逆転裁判4」でもうたくさん堪能したので、ちょっと違う目線で遊べないかと思い、直接指紋検出粉をつけられるようにしました。それにより、指紋以外のものも検出できるアイディアがでてきたりして(実際に遊んでみてください!)、幅が広くなったなと思います。

――王泥喜くんの成長物語とも言えるシナリオが展開される「逆転裁判6」ですが、本作を遊ぶことで見えてくる王泥喜くんの魅力について、改めて語っていただきたいです。

橋本氏:「逆転裁判4」、「逆転裁判5」では謎にまみれていた王泥喜くんのルーツが「逆転裁判6」では語られます。そこでさらに、彼の魅力を見出していただけたらと思います。

「逆転裁判6」の新システムのひとつ「霊媒ビジョン」

――「逆転裁判456」を楽しみにしているファンと、本作をまだプレイしたことがないという方たちそれぞれにメッセージをお願いいたします。

橋本氏:楽しみに待っていただいているファンの皆さんには、まずは本当にお待たせしました、ですね。ようやく皆さんにプレイしていただけます。当時の雰囲気を再現しつつ、フルHDに丁寧にリマスターさせていただきましたので、是非プレイしてそれを感じていただければと思います。

 初めての方は、ストーリーとキャラクターとテンポ感を楽しんでください。「逆転裁判4」は2007年に発売されたゲームですが、今プレイしたときにストーリーやキャラが「古臭い」と思うことはありませんし、そこが「逆転裁判」の魅力でもあります。本作からでもちゃんと楽しめますので、安心してください。ただ、「逆転裁判123 成歩堂セレクション」のキャラクターも登場しますので、できれば「逆転裁判123」もプレイしていただけると、より楽しめると思います。

――ありがとうございました。

王泥喜くんだけではなく、おなじみの成歩堂くんも大活躍する