【特別企画】
「逆転裁判3」20周年! ナルホドくんの痛い過去や御剣vs狩魔冥の夢対決も。「123」シリーズを締めくくるに相応しい作品
2024年1月23日 00:00
- 【逆転裁判3】
- 2004年1月23日 発売
カプコンが2004年1月23日に、ゲームボーイアドバンス用ソフトとして発売した法廷バトルアドベンチャー「逆転裁判3」が、本日で発売から20周年を迎えた。
「逆転裁判3」は、主人公・成歩堂龍一(ナルホドくん)がまだ大学生だった頃に起こった事件が中心となって描かれており、ナルホドくんの師匠である綾里千尋が新人だった頃の時代も描かれる。また、ナルホドくんの良き助手である綾里真宵(マヨイちゃん)が持つ不思議な力・「霊媒」についても深く取り上げられており、「逆転裁判1」や「逆転裁判2」で登場したキャラクターも多数登場する。
ゲームシステムとしては「逆転裁判2」から大きな変更はなかったものの、物語はナルホドくん、マヨイちゃんを中心に、やがてひとつの大きな決着を迎えていく。本稿では、そんな本作の20周年を記念してキャラクターとストーリーを振り返っていく。
なお、一部ネタバレも含んでいるため、未プレイの方は注意してほしい。
「逆転裁判3」で中心となるナルホドくん以外のもうひとりの人物……それは「逆転裁判」シリーズの中でも屈指の悪女・美柳ちなみ
「逆転裁判」シリーズと言えば、とにかく登場人物が濃いことが特徴だ。言い変えればキャラクターが“個性的”なのだが、“濃い”という言葉のほうがしっくりくるのではないだろうか。
「逆転裁判3」からの新キャラクターももちろん濃いのだが、本作でまず真っ先に挙げたいのは大学生時代のナルホドくん。彼は薬学部の学生・呑田菊三の殺害事件に巻き込まれて犯人として裁判にかけられる。そこまではまあ良い。しかし、ここで登場するナルホドくんの着ている服がすごい。
「RYU」の文字とハートが描かれた、ピンク色のセーター。すごいファッションセンスである。この時点でこれまでのナルホドくんを見てきたファンからしてみると「???」状態であるのだが、驚きはそれだけではなかった。
このナルホドくん……なんということだろう、色ボケしていやがる……!
ナルホドくんの「ウンメイのヒト」の名前は美柳ちなみ。優雅に日傘を差し、周囲には蝶が舞い、「おヨロめきになって」など、言葉になんでも「お」を付ける独特な敬語を使う。
裁判長ですら、ちなみの持つその不思議な魅力に惑わされてしまうのだが、彼女の正体は綾里千尋の伯母にあたる綾里キミ子の実の娘で、「逆転裁判」シリーズの中で登場するキャラクターの中でも屈指の悪女となっている。
ちなみが最初に登場するのは「逆転裁判3」の第1話で、表向きは恋人であるナルホドくんを助けるために証言台に立つ健気な少女。だが、実は呑田菊三殺害の真犯人であることを当時まだ新米弁護士だった千尋に暴かれた。
だが、ちなみの犯行は呑田菊三の殺害だけではない。
最初の犯行は、婦人警官の義姉・美柳勇希と、家庭教師の尾並田美散と3人で共謀した狂言誘拐。第2の犯行は、「逆転裁判3」第4話の中心となる美柳勇希殺害事件。その狂言誘拐を自白しようとした勇希を殺害し、尾並田にその罪を着せた。ちなみを心から愛していた尾並田は、ちなみが自分を裏切っていたという事実とちなみを信じたいという葛藤から、自身の裁判中に服毒自殺を図り、死亡した。
第3の犯行は、尾並田の自殺から半年後。ちなみに関連する事件を諦めずに追っていた千尋の恋人であった弁護士・神乃木荘龍を毒殺する。その時に毒を入れていた小瓶のネックレスを偶然その場にいた初対面のナルホドくんに渡し、ナルホドくんと付き合うことでネックレスを回収する機会をうかがっていた。
第4の犯行が、「逆転裁判3」第1話で語られていた呑田菊三殺害事件だが、本当はちなみが最初に殺そうとしていたのは、呑田ではなくネックレスをいつまでも返さないナルホドくんだった。
このように多くの人間を凶悪犯罪に巻き込んだちなみに下されたのは、死刑判決。刑は執行され、ちなみは還らぬ人となったのだが、ここで登場するのが綾里家の霊媒術である。
どうしても霊力が非常に高い春美を綾里家の後継者にしたかった綾里キミ子は、獄中からもマヨイちゃんの殺害を企んでいた。そのため、ちなみの死刑が執行された後、春美にちなみの霊を霊媒で降臨させてマヨイちゃんを殺害、そしてちなみの罪はちなみの双子の妹で心優しく育った尼僧・葉桜院あやめに着せようとした。
なお、ちなみが何故マヨイちゃんを殺そうとしたかと言うと、それは自身の犯行を暴いた憎き敵である千尋の妹であるからだ。
これらの目論見はうまくいかず、結果的に殺されたのはマヨイちゃんではなく絵本作家の天流斎エリス。ここから先の話は非常に複雑で、キミ子とちなみの思惑、綾里家の霊媒能力が絡み合った事件なので割愛するが、最終的にちなみ(の霊)は同じく霊媒によって呼び出された千尋によって引導を渡されることとなる。
このように、「逆転裁判3」は美柳ちなみによって始まり、美柳ちなみによって終わる物語だった。もしちなみについてあまり思い出せないようであれば、この機会にぜひ「逆転裁判3」をプレイし直してほしいところだが、彼女は生い立ちがあまり幸せなほうではなかった。綾里家に産まれながら霊力はまったく持たず、それゆえに綾里家に振り回された一生だったとも言えるだろう。
そして、ちなみのライバルだったのは、紛れもなく千尋である。なお、千尋はちなみの従姉妹にあたる。親族でこのような争いをしなければならなくなったのは、綾里の血が持つ宿命だったのかもしれない。もしくはキミ子の執念なのかもしれないが。
千尋は「逆転裁判1」の第2話にて殺害されてしまっており、以降はマヨイちゃんや春美の霊媒で降臨することがある程度の登場だったため、「ナルホドくんの頼れる師匠」という以外の面があまり描かれてこなかったが、「逆転裁判3」では色ボケしているナルホドくんにイラっとしているところを見せたり、初の法廷にビビり倒していたりと、年相応の女性らしい場面が数多く見られる。
ちなみにナルホドくんにまで受け継がれている「ピンチの時ほどふてぶてしく笑う」という教えは、事務所の先輩であり恋人でもあった神乃木からの教えだったようだ。
「逆転裁判3」で登場する個性的なキャラクターたち
「逆転裁判3」ではまだまだ他にも濃いキャラクターたちが登場する。ここでは筆者激推しのキャラクターを何名か紹介しよう。
まず1人目は、星威岳哀牙(ほしいだけあいが)。
哀牙は「逆転裁判3」第2話に登場する私立探偵。世間を騒がせている怪盗「怪人☆仮面マスク」のライバル。「倉院の里 秘宝展」に展示される予定だった「倉院の壺」(市場価値ゼロ)が怪人☆仮面マスクに盗まれ、その事件を追っていたナルホドくんたちと出会うこととなる。
哀牙の正体は怪人☆仮面マスクを脅迫し、更に毒島黒兵衛殺害犯という、名探偵でもなんでもない大犯罪者なのだが、「ズヴァリ!」や「やあれ!」といった芝居がかった口調もさることながら、とにかく名前が良い。
「ほしいだけ あいが」。「逆転裁判3」のネーミングセンスはいずれも素晴らしいが、中でも哀牙のネーミングセンスについては群を抜いているのではないだろうか。
なお、哀牙は大犯罪者だっただけあり、頭は非常に良いキャラクターだった。裁判でもナルホドくんの追求を逃れかけており、「最早これまで!」と言ったギリギリの場面で、霊媒されていた千尋の機転によって最後の最後で逆転されてしまったのだ。
また、サイコ・ロックでもナルホドくんを欺いており、本当に最後の最後で油断さえしなければ見事逃げ切ることに成功したかもしれない犯人である。
次に紹介したいのは、この人なしに「逆転裁判3」は語れない、ゴドー検事である。検事局の新人検事らしいが、新人にしてはこれまでにナルホドくんが戦ってきた名検事たちに劣らぬ戦いぶりを見せる。
大好物のコーヒーを、法廷でも嗜む。法廷でのコーヒーは17杯までと決まっているそうだが、そんなに飲んだらトイレとお友達になるのではないかとツッコミたくなるところだ。時折、ナルホドくんにコーヒーを御馳走してくれることもある。
顔につけている大きなバイザーといい、謎に包まれている存在だが、その正体は「逆転裁判3」第5話で判明。彼は千尋の恋人であり、美柳ちなみに毒殺されたはずの神乃木である。
ちなみに毒を盛られた神乃木は実は死んでおらず、昏睡状態だった。5年もの間意識がなかった神乃木は、目覚めて千尋が殺されていたことを知り、千尋を守れなかったナルホドくんに対して恨みを募らせていたのだ。そして千尋の妹であるマヨイちゃんだけは絶対に守ろうと、密かに誓う。
その神乃木とマヨイちゃん、ちなみを巡る物語が「逆転裁判3」第5話である。
CVは「大神」や「ベヨネッタ」で有名なゲームデザイナー・神谷英樹氏。ハードボイルドなゴドー検事に相応しい低音ボイスが、最高である。
新人時代の御剣や、御剣VS狩魔冥など夢の対決も!
本作では千尋の新人時代が描かれるが、千尋の初法廷で敵の検事として登場するのが、20歳にして検事になった新人・御剣怜侍である。
御剣怜侍は、「逆転裁判1」からナルホドくんのライバルとして登場している検事。この頃の御剣は、当然ながら師匠である狩魔豪の影響を強く受けている。ふてぶてしさすら感じる新人検事・御剣だが、その初法廷の結果は前述の通り被告人・尾並田美散の自殺という、なんとも言い難い結果で終わってしまった。
そんな御剣が、「逆転裁判3」第5話ではマヨイちゃんを助けようとして川に落下して入院したナルホドくんに代わり、被告人・葉桜院あやめの弁護をするべく弁護席に立つ。
そして御剣と対峙するのは、師匠・狩魔豪の娘であり御剣の兄弟弟子であり「逆転裁判2」でナルホドくんの前に立ちはだかった検事・狩魔冥である。
このような「ナルホドくんVS検事」以外の姿をたくさん見ることができたのも、「逆転裁判3」の特徴であった。
特に冥が「あなたを打ち負かすチャンスを待っていたのかもしれない」という言葉を口にしたように、冥と御剣の対決はファンにとっては夢の対決とも言えるだろう。何せどちらも検事なので、本来ならば戦えるはずもないのだ。
実際、第5話で御剣を弁護士として捜査できただけでも当時は滾ったが、裁判で対峙するのが冥だとわかった時は「うおおおおおお!」と思わず拳を振り上げた。
恐らく御剣にとって因縁のないゴドー検事が相手だったら、ここまで盛り上がらなかっただろう。
ゴドー検事が不在な理由、ナルホドくんが不在な理由、御剣が戻ってきてナルホドくんから弁護士バッジを託されたこと、御剣の対決の相手として冥が登場すること、全てがしっくりと噛み合っており、第5話の完成度の高さと言えば素晴らしいものだった。
以上、駆け足だったが「逆転裁判3」を振り返った。「逆転裁判123 成歩堂セレクション」がプレイステーション4 /Xbox One/Nintendo Switch/PCでと様々なハードで発売されていることもあり、最近遊んだというファンも多いと思うが、20年経ってもまったく色あせることない、至高の名作の一本である。
ぜひこの機会に再び触れてみてほしい。
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