【特別企画】

トレーラーから考察する「ELDEN RING」DLC「Shadow of the Erdtree」

メスメルとは? ミケラの足跡とは? 特典ジェスチャーにもヒントあり

【SHADOW OF THE ERDTREE】

6月21日 発売予定

価格:4,400円~

2023年に公開されたアートワーク

 2023年2月28日に発表された「ELDEN RING」追加コンテンツ「Shadow of the Erdtree」(直訳:黄金樹の影)。2024年2月22日に、ついにそのDLCの発売日が決定した。発売日は6月21日。

 本稿では、公開されたスクリーンショットやDLC公式サイトから、DLCの内容へと迫っていこうと思う。なお、フロム・ソフトウェアの作品は基本的に公式的な解は存在せず、本稿も筆者個人による推察(という名の妄想)であることをくれぐれもご了承願いたい。

 なお、1年前のDLC発表時には、筆者がアートワーク1枚から内容を考察している。こちらで記したことは一部省かせていただくので、ご了承願いたい。

【ELDEN RING SHADOW OF THE ERDTREE ゲームプレイトレーラー【2024.02】】

「串刺し公、メスメル」とは?

 1年前の記事で筆者は、公開されたアートの人物がミケラではないかと推察していたが、やはり彼の人物はミケラで間違いなかったようだ。

 本作がミケラの足跡をたどる物語となり、また時間軸は本編と同じであること、影の地の過去、そして女王マリカの過去が描かれるということも、既に発表されている。

「ELDEN RING」本編でモーグに連れ去られるミケラ

 では、まず「Shadow of the Erdtree」公式サイトに掲載されている文章から見てみよう。

□「Shadow of the Erdtree」公式サイト

 影の地

 黄金樹の影に隠された地
 神たるマリカが、降り立った場所

 そして、謳われぬ戦い、粛清の地
 メスメルの火に焼かれた場所

 だから、ミケラは影の地に向かった
 その黄金の身体も、力も、宿命も
 全てを棄てた

 ミケラは待つ
 約束の王を

「Shadow of the Erdtree」公式サイト

 初めて出てくる情報ばかりで一見ちんぷんかんぷん状態であるが、この文章で一番目を引くのは「メスメル」ではないだろうか。というわけで、まずはメスメルに迫っていこう。

 メスメルの正式名称は、「串刺し公、メスメル」。本作の舞台となる「影の地」に君臨するデミゴッドで、この文章からも火を操ることが見て取れる。

串刺し公、メスメル

 ではここで、念のためデミゴッドについて復習しておきたい。デミゴッドとは、マリカ或いはラダゴンの血を引くもののことを指す。

●マリカとゴッドフレイの間に産まれた子:ゴッドウィン、モーゴット、モーグ
●ラダゴンとレナラの間に産まれた子:ラニ、ライカード、ラダーン
●マリカとラダゴンの間に産まれた子:ミケラ、マレニア
●ゴッドフレイの子孫:ゴドリック

 メスメルはこの中のどこかに入ることとなると思われるが、本作のディレクターを務める宮崎英高氏へのインタビューによれば、「メスメルはゴドリックやマレニア、ラダーン、ライカードなどと同格の存在であり、“マリカの子”とも呼ばれている」と語っている。

 ここで「マリカの子である」と断言せず、「呼ばれている」という表現をするのが、なんともフロム・ソフトウェアらしい。つまり現状ではメスメルはデミゴッドのひとりであるということしかわからないのだが、メスメルの背景を少し考察してみよう。

 まず彼の赤い髪。そして火を操る能力は、巨人族の特徴である。

串刺し公、メスメルのアップ

 巨人族とは、黄金律であるマリカやゴッドフレイらと対立関係にあり、過去に巨人戦争と呼ばれる戦いがあった時に、巨人側は黄金律側に敗北している。また、巨人の一族は火の使い手である。

 ここで思い出してほしいのが、二本指と三本指だ。1年前の記事で記した通り、“二本指と三本指は明確な対立関係にある”。三本指と契約するとメリナが離れていくこと、エンディングに三本指から受け取った狂い火で黄金樹を焼く「狂い火エンド」があることからもほぼ確定的。現在「狭間の地」は二本指が優勢となっており、三本指は地下深くに封印されている。

 ……ということは、二本指は黄金律側、三本指は巨人族側と考えられるのではないだろうか。そこから導き出されるのは、“メスメルは三本指側のデミゴッドではないか”ということだ。

 そしてメスメルの姿からもうひとつ気になる点を挙げよう。それは彼が背負っている蛇である。

 蛇といえば、ゲルミアの火山館の主である「ライカード」が思い出される。ライカードはゲルミア火山に居た「冒涜の蛇」に自身を食わせ、その蛇と一体化した異形の存在。

 ライカードは、火山館の表の主であるタニスが「黄金樹に弓を引く」と語っていることから、黄金律とは対立する存在だ。それが三本指とつながるのかは定かではないが、ライカードは戦闘前に

 蛇の王の家族となり
 共に神をも喰らおうぞ!

 と語っており、「すべてを、大きなひとつに」と望む三本指と似た目的を持っていることがわかることから、三本指とは何かしらの関係があるのではないだろうか。

ライカードの大ルーン

 メスメルが三本指側のデミゴッドではないかということ、そしてライカードのことをつなぎあわせると、“メスメルはライカードが蛇に自身を食わせる前の姿ではないか”という予想ができる。だが、ライカードはラダゴンとレナラの間に産まれた子である。すると、前述の宮崎氏の「メスメルは”マリカの子”であるらしい」という一文も、「マリカの子だとは言っていない」とも受け取れてくる。

 もちろん、これは妄想の類であって、考察と呼べるような精緻なものではない。あくまで筆者の個人的な考えのひとつであることは、明確にしておきたい。

「影の地」と「ミケラ」について

 さて、次はこのDLCの中心人物となるミケラについて振り返っていこう。

 まずミケラについては、マリカとラダゴンの子供であり、マレニアとの双子であるということは、ほぼ自明となっている。また、ミケラが“2性(男でもあり女でもある)だったのではないか”、マリカとラダゴンも同一人物だったのではないか、という点については、1年前の記事を参照してほしい。

 本稿では、ミケラの目的についても語っていこう。本編中に登場する「ミケラの聖樹」は、ミケラにもっとも縁が深い地。ミケラ自身が核となって育成してきた黄金樹の代わりである。

 では、ミケラは何故黄金樹の代わりになろうとしたのだろうか。それは「ラダゴンの光輪」というアイテムに記されている。

 黄金律原理主義の祈祷のひとつ
 父ラダゴンの、幼きミケラへの返礼

 しかし、幼きミケラは原理主義を捨てた
 それが、マレニアの宿痾に無力だったから
 無垢なる黄金、そのはじまりである

 ここでいう原理主義とは、黄金律のことだ。そしてマレニアの宿痾とは、朱い腐敗のことである。

 つまりミケラはマレニアの生まれ持った腐敗の宿命をどうにかすべく、自らに聖樹に宿す事で新たな神となり、黄金律とは違う新たな律を生み出そうとしていたのだ。

ラダゴンの光輪

 そんなミケラがモーグに誘拐された理由については、アイテム「純潔騎士褒章」のフレーバーテキストから解る。ここでいう「神」がミケラである。

 血の君主の築かんとする新しい王朝
 モーグウィンの栄誉ある騎士の証
 モーグはまだ、神と共に閨にいる
 待つがよい。王朝の開闢を

純潔騎士褒章

 ならば、モーグはミケラに何をしていたのか。それは「血の君主の歓喜」のテキストを見てみよう。

 血の君主に、血を捧げよ
 御方の閨を、繭を血で満たせ
 幼き伴侶が目覚める時、我ら王朝開闢せん

 このテキストの通り、モーグはミケラに血を捧げていた。

血の君主の歓喜

 次に謎になるのは、「何故血を捧げていたか」だが、モーグはミケラに洗脳されていたと考えるのが無難だろう。

誘惑の枝のテキストを見れば、ミケラに洗脳の力があったことがわかる

 ミケラは新たな黄金樹を築こうとしているが、そのためには血が足りていなかったことは「聖樹紋のサーコート」に記されている。

 サーコートには、聖樹の紋章が描かれている
 ミケラの血を受けた、聖なる芽生えの若木
 だがそれは、遂に黄金樹とはならなかった

聖樹紋のサーコート

 この一文からも、黄金樹と成るには更なる血が必要だったことがわかる。DLCエリア「影の地」に入る条件にモーグを倒している必要があるということ、また公式サイトの記述に

 ミケラは影の地に向かった
 その黄金の身体も、力も、宿命も
 全てを棄てた

 とあることから、ミケラは聖樹を育てるためにモーグを利用して誘拐させ、肉体だけはモーグウィン王朝に残し、魂は影の地へと旅立ったということも考えられるが、これについては想像の域を出ない。モーグがミケラを利用しようと誘拐した結果、ミケラに魅了されてしまった可能性もある。

 ただ、いずれにしてもミケラは自らの意思で肉体を捨てたのだと断言して良さそうだ。

 なお、神人が肉体を捨てた前例として、ラニがいる。それは、本編中のラニとの会話の中で明らかになる。

 私はかつて神人であった
 デミゴッドの中でミケラとマレニア、そして私だけが
 それぞれの二本指に見出され、女王マリカを継ぐ、次代の神の候補になったのだ
 ……そして私は二本指を拒んだ
 死のルーンを盗んで、神人たる自らの身体を殺し、棄ててでも

 この会話を見てみると、前述のDLCサイトのテキストと似ていることがわかる。ラニは死のルーンを盗んだが、ミケラは別の方法で(モーグを利用することで)影の地に至ったのだろう。

 次に疑問になるのが、影の地に至るのに何故ラダーンの撃破も必要になるのか? という点だが、これについては「星砕きの伝承」というアイテムのフレーバーテキストがヒントになりそうだ。

 デミゴットで最も強いとされた英雄は
 降る星に一人で挑み、これを砕き
 以来、星の運命は封印されたという

星砕きの伝承

 星の運命を封印していたというのは、星の動きを止めていたのではないだろうか。実際、ラダーンを倒すと星が動き始める演出が入る。

 ラダーンを倒し、星が動き始めることによって褪せ人が影の地に至ることができるようになったのではないか、と推測できるが、ラダーンと影の地との関係性については現状示唆するものが何もないため、これ以上言及するのが難しい。

「ミケラのリング」のジェスチャーが「産まれなき者の大ルーン」に似ている?

 次にDLC特典である「ミケラのリング」のジェスチャーについて少し考えていきたい。

ゲーム内で使用できるようになるジェスチャー「ミケラのリング」

 このジェスチャーは、ミケラの大ルーンの真似なのだと思われるが、マレニアのルーンに似ている。それはミケラとマレニアが双子であることを考えれば不思議ではないだろう。

マレニアの大ルーン

 しかし、このミケラのリングのジェスチャーに似ている大ルーンがもうひとつある。それが魔術学院レアルカリアのボス「満月の女王レナラ」撃破で入手できる「産まれなき者の大ルーン」である。

産まれなき者の大ルーン

 この「産まれなき者」とはレナラが抱く琥珀のタマゴの大ルーンである。そして、琥珀のタマゴはラダゴンがレナラに贈ったものとされている。あくまで推測だが、つまりラダゴンがマリカとの間に成した子(卵)をレナラに贈ったものであるとも考えられるわけだ。

 今回のミケラの大ルーンモーションが公開されたことによって、ミケラの大ルーンは、ほぼマレニアのルーン及び産まれなき者の大ルーンに似ているであろうことは確実となった。何故マレニアの大ルーンと産まれなき者の大ルーンが似ていたのかはこの2年間謎に包まれていたが、恐らくDLCで判明すると思われる。今後の情報に期待したい。

 以上、今回のDLCから現状想像できることを色々と並べてみた。多くは筆者というひとりの人間の妄想であるため、不確かな部分も多いが、謎だらけの物語に少しでも迫る手伝いができれば何よりだ。

 もちろん、筆者の考えが正解なのではなく、間違っている部分もあれば、違った推察もあるだろう。「ELDEN RING」の奥深き物語をどんどん掘り下げていくきっかけになれれば幸いだ。