【特別企画】

1枚のアートワークから考察する「ELDEN RING(エルデンリング)」DLC「Shadow of the Erdtree」

ミケラ? 聖樹? それとも……? 期待を込めて読み解いてみた

【「ELDEN RING」Shadow of the Erdtree】

2月28日 発表

 2月28日に発表された「ELDEN RING(エルデンリング)」追加コンテンツ「Shadow of the Erdtree」開発中の報。今回発表されたのは一枚のアートと、DLCのタイトルである「Shadow of the Erdtree(直訳:黄金樹の影)」だった。

 まだまだ開発中ということで謎の多い本DLCだが、それでもこの1枚のアートワークから想像できることがいくつかある。そこで本稿では、今後明かされるであろうDLCの内容に期待を込めて、このアートワークからDLCのストーリーを推察していきたい。なお前提として、フロムソフトウェア作品の傾向として、ストーリーの全貌はプレーヤーに委ねられることが多い。本稿においても、あくまで筆者個人による推察及び考察であることをくれぐれもご了承願いたい。

公開されたアートワーク

アートの奥に見える大樹は?

 まずはアートの左奥に見える黄金樹らしき大樹について推察を進めていこう。この黄金樹だが、一見燃え尽きた後のようにも見え、未来を示しているかのようにも見える。しかし黄金樹が実る前の過去とも考えられる。

アートワークの大樹部分を拡大したもの
こちらは本編での「黄金樹」

 だが筆者としては、これは黄金樹ではなく「ミケラの聖樹」ではないかと想像する。というのも、画面右手前に描かれている人物が“ミケラのように見える”からである。ミケラの姿がはっきりと見えるのは、本編のオープニング。デミゴッドの1人「血の君主モーグ」に連れ去られる姿が確認でき、その金髪の編まれ方などが一致していることが大きな理由だ。

 「ミケラの聖樹」は、プレーヤーが訪れる場所の地名にもなっており、最奥地では「ミケラの刃、マレニア」と出会うこととなる。一方でミケラ自身は、本編の物語上ではモーグに囚われたまま。地下世界で、血に満たされた繭の中で眠りについており、プレーヤーが直接見られるのは、繭から覗く痩せ細った腕だけとなっている。

 つまりは謎の多い人物であるのだが、このDLCでは、“ミケラの聖樹(となる前の樹)がミケラを取り込むか、或いはミケラが聖樹を作るまでを描くのではないか?”というのが筆者の予想だ。

アートワーク、人物部分の拡大
本編オープニングにて、モーグに連れ去られているミケラ(右側手前)。服装や、髪の編まれ方が一致している

 なお、この聖樹については、拡大してみると、巨大な樹の中央辺りに“三本指”が絡みついた上で、さらに根元付近に“二本指”が絡まっている……ように見えなくもない。少し強引かもしれないが、「もしそうだったら」という前提のもと、ここで改めて本作における三本指と二本指について振り返っておく。

 二本指とは、言うまでもなく円卓にいた二本指のことである。指読みのエンヤを通じて、二本指の言葉を聞くことができるが、二本指の目的は、黄金律(エルデンリング)を修復し、世界に再び祝福の導きをもたらすことだ。そのため、褪せ人(プレーヤー)にエルデの王となれ、と望むのが二本指である。

円卓での二本指(右奥)

 つまりは、エルデの王を目指す限り味方であるのが二本指だ。その正体については指読みのエンヤが自身のことについて「大いなる意志の使い、指様を言葉を伝える婆」と言っている通り、“世界を導く大いなる意志”を伝えるための存在だと考えられる。なお、ゲームを進めているうちに神授塔で死んでいる二本指にも出会うことができるが、このことからも二本指は一体ではなく、複数体いることがわかる。

 では三本指とはなんだろうか。三本指は、王都の地下にいて、本編でも実際に会うことができる。言うまでもないが、二本指と三本指を合わせると五本指になり、元は一対の存在だったであろうことが伺える。

 三本指については、祈祷「狂い火」の説明にある通り、「狂える三本指」のままだと思って良いだろう。三本指と契約するとメリナが失望して離れていくこと、エンディングに三本指から受け取った狂い火で黄金樹を焼く「狂い火エンド」があることからも、“二本指と三本指は明確な対立関係にある”と言える。そんな三本指の目的は、三本指の言葉からわかる。

 すべては、大きなひとつから、分かたれた
 分かたれ、生まれ、心を持った
 けれどそれは、大いなる意志の過ちだった
 苦難、絶望、そして呪い。あらゆる罪と苦しみ
 それらはみな、過ちにより生じた
 だから、戻さなくてはならない
 混沌の黄色い火で、何もかもを焼き溶かし
 すべてを、大きなひとつに……

 この言葉の通り、三本指は「大いなる意志」を「過ち」と言っており、“全てをひとつに戻す”ことが目的である。だが、現在狭間の地は二本指が優勢となっており、三本指は地下深くに封印されている(のだと想像される)。

 以上が、二本指と三本指の関係性である。果たして、五本指が二本指と三本指に分かたれた物語もDLCで語られるのだろうか? 非常に気になるところである。

果たしてミケラの物語なのか?

 次に、改めて本アートで唯一描かれている人物について想像しよう。冒頭にも「ミケラのように見える」と書いた通り、筆者もその可能性を一番に想像している。奥の大樹が「ミケラの聖樹」ではないか? という部分についても一緒だ。

 では、この人物がミケラであると想定して、ミケラについてもう少し考察を深めていこう。

 まずミケラだが、筆者は“聖女トリーナと同一人物ではないか”と考えている。トリーナといえば、「トリーナの矢」や「トリーナのスイレン」という名前のアイテムを思い浮かべるプレーヤーも多いと思う。ここで注目してほしいのは「トリーナのスイレン」だ。そのテキストは、

 たおやかに萎びかけた薄紫のスイレン
 (中略)
 聖女トリーナの信仰花であり
 精神の昂りを抑える効果がある

 とある。そして次に注目するのが、「ミケラのスイレン」のテキストである。

 たおやかに萎びかけた無垢金のスイレン
 (中略)
 聖樹の信仰花であり、神人ミケラが
 その幼少期に愛でたとされる幻の花である

 このようにテキストに類似性があり、トリーナとミケラの関連性を想像できる(なお、無垢金とはミケラの二つ名のようなものである)。

 しかしここで押さえておきたいのは、「ミケラは妹のマレニアに”兄様”と呼ばれていた」点だ。

 これについては、まず筆者の想像から述べると“ミケラは2性(男でもあり女でもある)だったのではないか”ということだ。

 何故ミケラが2つの性を持っていたかについては、作中の重要人物である女王マリカとその夫、英雄ラダゴンの関係性について語る必要がある。ミケラはマリカとラダゴンの子であるが、物語の終盤でマリカの肉体は、夫であるラダゴンのものへと姿を変える。つまり“マリカとラダゴンも2つの性を持っていたと考えられ、それがミケラへと受け継がれたのではないか”、というのが筆者の考えだ(ちなみにマリカとラダゴンについては不明な点が非常に多く、元々マリカとラダゴンがひとつの存在だったのか、ふたつの存在がひとつになったのかなどはわからない)。

本編オープニングでの「永遠の女王マリカ」

 そして、この2つの性についてはトリーナについても武器「トリーナの剣」のテキストで触れられている。

 トリーナは、謎めいている
 儚い少女であるといい、少年であるといい
 忽然と現れ、忽然と消えていくという

 このように、“トリーナも2つの性を持っていたと考えられる”のだ。だが、トリーナ=ミケラとする理由はまだ他にもある。例えば「ファリスの製法書」では、

 聖女トリーナに心奪われた男の製法書
 彼は眠りの中に、トリーナを探し続けた

 と、トリーナの魅力について心奪われた男の話が書かれている。

 そして「ファリスの製法書【3】」を入手すると、アイテム「誘惑の枝」が製作可能となるのだが、誘惑の枝はミケラに関係がある。そのテキストは、

 無垢金の祈祷が施された枝木
 製作可能なアイテムのひとつ
 FPを消費して、刺した敵を魅了する
 魅了された敵は一時的に味方となる
 神人ミケラは、あらゆる者から愛された
 愛するを強いることができた

 とある。同じ「ファリスの製法書」内で描かれている物語であること、そしてミケラが”あらゆる者から愛された”、”愛することを強いることができた”といった文面からも、トリーナに心を奪われた男の話と通じるものがある。

 更に、ミケラは繭の中で眠り続けており、ミケラの眠る繭の前にある祝福も「神人眠りの繭」である。一方、トリーナに関連するアイテムは基本的に睡眠に関するもの、というのもある。「トリーナの剣」、「トリーナの矢」、「トリーナの灯火」、いずれも睡眠に関する効果があり、ミケラ=トリーナ説を推す理由のひとつである。

「トリーナの矢」のフレーバーテキスト

 そして、このようにミケラが2つの性を持っているのだとすれば、“アートに描かれている少女とも少年ともどちらともに見える不思議な魅力を持つ人物がミケラではないか、と想定される”のだ。

 ……とここまで語ってきておいて、筆者にはもうひとつ考えている説がある。というのは、“描かれている人物は、マリカではないか”というものだ。

 これまでの解説でいくとマリカはほぼ確実に2性を持っており、少年とも少女ともどちらにも受け取れるアートの人物がマリカだったとしてもなんら不思議はない。長い金髪、という特徴も一致している。マリカは元々は狭間の地の外(異界)に住む「稀人」と呼ばれる種族で、エルデンリングに見いだされ、この地の神となったという。マリカが狭間の地にたどり着き、その過程を描く物語ではないか……というのがもうひとつの筆者の考えである。

 ただはっきり言って、現状では「わかりません!」としか言いようがないので、そこは温かい目で見守ってほしい。

人物が乗っている馬はトレントだと想定

 ミケラなのかマリカなのか、はたまた全然違う人物なのかは不明だが、謎の人物が乗っている馬は、プレーヤーが散々お世話になってきた霊馬トレントだと思われる。つまり、トレントの元々の持ち主がアートワークに描かれた謎の人物である、という想像もできる。

 これはトレントを呼び出すアイテム「霊馬の指笛」のテキスト「柔らかな金の指輪。指笛として使用する」という点からも推定できる。つまりここで言われている“金”は、ミケラかマリカに関係しているのではないか、ということだ。「無垢金」がミケラの二つ名であることを考えると、やはり謎の人物はミケラではないかということが考えられるが、ここで問題となってくるのは、霊馬トレントをプレーヤーに託したメリナの存在である。

メリナ(左)

 メリナも非常に謎の多い人物なのだが、メリナとミケラを繋ぐ一番の要素は、メリナの装備品(「旅」シリーズ)が「ミケラの聖樹」で入手できるという点だろう。これにより、謎の人物がミケラであるとするならば、メリナがトレントを呼ぶ指輪を持っていつつメリナの装備がミケラの聖樹で拾えることにも、何かつながりがあるような気がする。

 一方で、メリナの語る言葉の多くは“女王マリカの言霊”だ。そのため、メリナとマリカの繋がりも否定できるものではなく、結局現状では「わかりません!」が結論なのだが、トレントについて何かしら語られるであろうことは期待できる。

 そしてトレントといえば、魔女ラニとの関連性もも気になってくるところだ。ラニはトレントのことを知っており、プレーヤーがトレントを手に入れたことによって「霊呼びの鈴」を渡してくるためだ(その時はレナと名乗っていたが)。

魔女ラニ

 以上、一枚のアートから想像できることを色々と並べてみた。多くは筆者というひとりの人間の妄想であるため、不確かな部分も多いが、思わず想像が膨らんでしまうところに「ELDEN RING」の魅力がある。

 DLCについて今から想像を膨らませつつ、改めて「ELDEN RING」という作品について思い出しながら、「これがこうなら自分はこう思う」といったような考察を重ねていってもらえれば幸いだ。