【特別企画】
残暑はアニメ三昧で乗り切る! 夏休みに観たい“夏っぽいアニメ”3選
2023年8月14日 00:00
夏アニメの定番「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」
「ANOHANA PROJECT」によるオリジナルアニメーション「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」は2011年4月~6月まで、フジテレビ・ノイタミナ枠他で放送。2013年8月31日には劇場版「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」が公開された。コミック版、小説版、実写版、舞台版と幅広くメディアミックスも展開されている。
めんまと「超平和バスターズ」によるストーリー&キャラクター紹介
じんたん(宿海仁太)、めんま(本間芽衣子)、あなる(安城鳴子)、ゆきあつ(松雪集)、つるこ(鶴見知利子)、ぽっぽ(久川鉄道)の6人は「超平和バスターズ」として山中の秘密基地に集って遊ぶ仲だった。
しかし、ある日ふとした出来事がきっかけでめんまが不慮の死を遂げてしまう。遺された5人がめんまへの想いを抱え、すれ違いながら生活していた10年後、じんたんの元へ幽霊のめんまが「別れたあの日の姿」で表れる。
じんたん以外に姿の見えないめんまに戸惑いながら、「超平和バスターズ」はめんまの今生への未練である願いを叶えるために奔走する。
今回は、「超平和バスターズ」6人から比較的取りあげられることが少ない、ゆきあつ(松雪集)、つるこ(鶴見知利子)に注目していく。
本作は、主人公であるじんたんと、じんたんの元へ現れためんまを中心に物語が展開する。引きこもりのじんたんの元へ度々来訪する、ニートの素浪人ぽっぽに比べ、進学校へ通うゆきあつの登場機会は比較的少ない。見たことのある人にとってゆきあつのイメージは、ウイッグを被ってめんまが着ていたのと同じデザインのワンピースを着て秘密基地周辺へ登場するインパクトのあるシーンだろう。
劇中では「女装」と呼ばれるが、ゆきあつ自身の性自認はおそらく男性で、失われためんまになりきりたい「癖」である点は注目したい。
強烈なインパクトを残したゆきあつに対して、同じ進学校に通いてはいるものの特徴的なエピソードが無いのがつるこだ。思っていること、喜怒哀楽が解りやすい他のメンバーと違い、中盤過ぎまで何を考えているのか、真意を計りかねる言動が多い。
他人に対しての冷たい物言いと、自室などで独り言を洩らす時のギャップの演じ分けが自然で、早見沙織さんの確かな技術が素晴らしい。
夏に観たい理由と本作の魅力
夏アニメの定番と言って良い頻度で取り上げられる「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」では、EDテーマの歌詞に「10年後の8月」とある通り、物語が現在と10年前の夏に展開するので、年月を超えた夏を感じられる。また、舞台が秩父ということもあり、特に秘密基地を中心とした山中の場面から伝わってくる清涼感で、酷暑を忘れることができるのも夏にオススメしたいポイントだ。
本作の最大の魅力は、やはり子供時代への忘れがたい郷愁を思い起こしてくれる世界観だと思う。半世紀近く前の地方都市に育った筆者には、秘密基地に類する場所はまだ点在していたが、都市化が進んだ近年に子供達だけが集う秘密基地を造るのは中々ハードルが高い。
しかし、誰かの家や公園で集い、自分達だけの世界を造り出して過ごした経験は多くの人が持つ体験だろうし、「超平和バスターズ」に、純真無垢だった幼い頃を想い出し共感できるのがいいのだ。加えて、「軽はずみな言動が取り返しのつかない出来事に繋がっていく」という体験も普遍的なテーマとなっている。
そして多くの人は、忘れてしまうことで、心の棘を無いものとして生きていく。日々の忙しさにかまけ、秘密基地に再び集って、修復しようと思うことはない。「超平和バスターズ」が再び集い、めんまの死と自分自身に向き合うことになったのは、めんまが幽霊として現れたからで、そうでなければ彼らは恐らく変わらない日々を送っていったであろう、と思わせるリアルな人物描写は見逃せない。
「めんまが幽霊になって現れる」というフィクションならではの要素と向き合う、めんまも含めたリアルな6人の人情劇が、世界観と相まって「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」という作品を特別なものにしている。
「超平和バスターズ」の声優6人による演技は素晴らしく、特に終盤のやり取りはアニメ史に残る名シーンだが、アニメの絵柄に合わせた声と微妙な抑揚が無ければ、「臭く」なってしまう難しさもある、単純だが難しい台詞が並ぶが、自然なのだ。アニメ作品には「声優の表現力がなければ成立しない種類の感動がある」ということを改めて思い知った。
声優の表現力がもたらす感動は、本作のEDにも現れている。歌の上手さとは、音程を合わせたり技巧を駆使することだけでなく、想いを旋律に籠めて表現することだと解る。