【特別企画】

アメフトマンガの金字塔「アイシールド21」が連載開始から今日で21周年

「Dr.STONE」の稲垣理一郎と「ワンパンマン」の村田雄介タッグによる傑作スポーツマンガ

【アイシールド21】

2002年7月23日 連載開始

 集英社のマンガ雑誌「週刊少年ジャンプ」にて連載作品であるマンガ「アイシールド21」が、本日で連載開始から21周年を迎えた。

 「アイシールド21」は2002年7月から2009年6月にかけて「週刊少年ジャンプ」で連載された人気のスポーツマンガ。原作を「Dr.STONE」で知られる稲垣理一郎氏、作画を「ワンパンマン」で知られる村田雄介氏が担当。アメリカンフットボールを題材にし、ジャンプ本誌で7年間連載された、全333話、37巻まで刊行のヒット作だ。

 物語の主人公は泥門高校に入学した少年、小早川瀬那(コバヤカワセナ)。彼は気弱な性格が災いして幼少期からパシリとして過ごしてきたが、自分を変えたいという思いから泥門高校アメフト部「泥門デビルバッツ」に主務として入部することになる。しかし、泥門高校でも不良に目をつけられてしまったセナは帰り道で不良たちに絡まれてしまう。だが、セナは長年のパシリ生活で鍛えられた俊足を活かして不良質から逃げ切ることに成功する。その一部始終を目撃したのがアメフト部主将の蛭魔妖一(ヒルマヨウイチ)。彼は主務だったセナを無理やり選手として入部させたうえ、他の運動部の引き抜きに合わないよう「アイシールド21」の名前で正体を隠して選手登録を行なった。こうしてセナは謎の選手「アイシールド21」として全国大会決勝(クリスマスボウル)出場を仲間達と共に目指していくことになる。

 本作はアメリカンフットボールという、日本ではマイナーだったスポーツを題材にしたにも関わらず、わかりやすい説明と魅力溢れるキャラクターたちによる熱い試合描写で読者を魅了した。その人気は凄まじく、連載開始から終了までの間で日本における高校生のアメフト競技人口が倍に増えるほどだった。この作品の影響で、多くの日本人にとってアメリカンフットボールが身近なものとなったのは間違いないだろう。今回はそんな本作の魅力をお届けしていく。

アメフトの知識が深まるストーリー展開

 「アイシールド21」は、アメフトの複雑な世界を理解できるように、マンガにさまざまな工夫が凝らされている。

 物語の序盤では、アメフト部には主人公を含めてたった3人の部員しかいない。人数が足りないため、試合は他の運動部から助っ人を呼ぶことで試合を行なうのだが、素人の集まりのため限られた戦術で戦うことになる。序盤の試合では主人公のポジション「ランニングバック」を中心とした戦術で試合が進んでいく。この展開から読者は主人公のポジションとその役割、さらにアメフトの戦術について学べるようになっている。物語が進むにつれ、新たなチームメンバーを探していくが、その過程でも各ポジションについて自然と紹介されていく。また、主人公自身もアメフト初心者ということもあり、読者は主人公と一緒にアメフトについて学んでいけるようになっている。

 筆者が本作で特におもしろいと感じたのはアメフトにおけるテクニックやフォーメーションについて描かれた部分だ。アメフトには多くのテクニックやフォーメーションが存在するため、それらを覚えるのは容易ではない。しかし、本作ではキャラクターや高校の特技や必殺技としてそれらが紹介されている。例えば西部ワイルドガンマンズが使用するフォーメーション「ショットガン」がその一つだ。「ショットガン」はアメフトにおけるフォーメーションの一種でショットガン(散弾銃)の弾丸のようにレシーバーを一斉に散らばって展開させる戦術だ。本作では西部ワイルドガンマンズという西部劇の要素を取り入れたカウボーイ風の高校選手たちがこのフォーメーションを使用している。こうしたイメージが合わさることで、読者が自然に覚えられるように工夫されている

 こういった工夫のおかげで、「アイシールド21」を読み終わるころには読者に自然とアメフト知識がついている。自然とアメフトを楽しめるこの要素は本作の大きな魅力の一つだと筆者は想う。

1つのことに秀でたメンバーを集めた「泥門デビルバッツ」

 「バーカ逆だ、なんかひとつできる奴が欲しいんだよ」。これはコミックス第3巻で泥門デビルバッツに所属する2年生の蛭魔妖一、通称「ヒル魔」が主人公の「アメフトもやっぱり取り柄ひとつじゃダメですか?」という問に対して返答した言葉。この言葉の通り、「泥門デビルバッツ」のメンバーは皆、何かしらの特技を持つ人物が集まったチームとなっている。とはいえ、彼らが何かのスペシャリストというわけではない。むしろ、それ以外は何もできない者たちの集まりなのだ。それぞれが持つ1つの長所だけを武器に強豪たちと戦う姿に、読者はスポーツマンガ特有の熱さを感じるだろう。ここではそんな「泥門デビルバッツ」の個性あふれるメンバーたちを紹介する。

小早川瀬那(コバヤカワセナ)武器:走り
 泥門デビルバッツに所属する1年生。本作の主人公で通称「セナ」。気弱で痛みを恐れる性格が災いして幼少期からいじめられており、パシリとしてこき使われてきた人生を送ってきた。泥門高校に入学してまもなく、絡まれた不良から逃走しているところをヒル魔に目撃され、その脚力から選手として強制的に入部させられる。選手時は緑色のアイシールドで素顔を隠し、「アイシールド21」の名前で試合に出場する。小柄で性格も臆病なアメフトとは到底無縁そうな少年。自分が唯一得意とする足の速さだけを武器に強豪たちに挑んでいく。

蛭魔妖一(ヒルマヨウイチ)武器:頭脳
 泥門デビルバッツに所属する2年生。通称「ヒル魔」。泥門デビルバッツの主将であり司令塔。逆立った金髪、尖った耳、裂けたような大きな口と牙をもつ悪魔のような見た目の人物。頭が非常に切れて、高い洞察力と状況判断能力に加え性格の悪さで対戦相手を翻弄する。見た目通り口も悪く、人を平気で脅迫するなど極悪非道の外道ではあるが、アメフトに掛ける想いは強く、チームにわずかでも勝つ可能性があれば最後まで諦めずに策を講じ続ける。チームメイトに恵まれず、栗田良寛と二人だけで弱小アメフト部を続けていたが、セナの入部をきっかけにアメフト部の活動が大きく動き出す。

栗田良寛(クリタリョウカン)武器:巨体から繰り出されるパワー
 泥門デビルバッツに所属する2年生。後輩からは「栗田先輩」と呼ばれ慕われている。大きな体と栗のような頭が特徴の温厚な先輩。しかしフィールドに出るとその巨体と怪力(ベンチプレス160kg)で仲間を守る壁として活躍する。中学生の頃からアメフトをやっており、クリスマスボウルを夢見て努力してきた。

雷門太郎(ライモンタロウ)武器:キャッチ
 泥門デビルバッツに所属する1年生。元野球部の小柄な猿顔の少年。通称「モン太」。ずば抜けて高い捕球力があるのに投球がありえないレベルでノーコンのため、野球部の入部試験で事実上の不合格扱いになってしまう。最初はアメフト部には入部しないとしていたが、セナの勧誘とヒル魔の話術によって入部を決意。ボールをキャッチすることだけは誰にも負けない自身がある。

十文字一輝(ジュウモンジカズキ)、黒木浩二(クロキコウジ)、戸叶庄三(トガノウショウゾウ)武器:喧嘩
 泥門デビルバッツに所属する1年生。セナをパシリにしていた不良3人組。セナをいじめていたが、不運にもヒル魔にあられもない姿の写真を撮られ脅迫される。脅迫写真のネガを奪おうと度々アメフト部の部室に忍び込むも、なにかとみつかり試合に参加させられることになる。やる気がなかった3人だったが、対戦相手のメンバーに侮辱された悔しさから、相手を見返すためにアメフトの特訓に励みはじめる。

雪光学(ユキミツナマブ)武器:勤勉さ
 泥門デビルバッツに所属する2年生。アイシールドの活躍に憧れ、一念発起し2年生からアメフト部に入部する。勉強一筋でスポーツとは無縁の生活を送っていたため、運動能力が低い。メンバー不足から他の部に助っ人を頼んでいる泥門デビルバッツだったが、それでも能力不足として長く補欠として扱われてしまう。自分の実力不足から試合にでることもできないことに思い悩む、作中でもっとも挫折と葛藤を繰り広げた人物の一人。

小結大吉(コムスビダイキチ)武器:小さな身体を活かした下からのパワー
 泥門デビルバッツに所属する1年生。栗田の力強さに憧れてアメフト部に入部した。「パワフル語」と呼ばれる、「パワフルな男」には万国共通で通じるが、それ以外の人には片言にしか聞こえない特徴的な喋り&書き方をする。幼い頃から自分の小柄な体格にコンプレックスを抱えている。

武蔵厳(タケクラゲン)武器:キック力
 泥門デビルバッツに所属する2年生。通称「ムサシ」。1年生の時にキッカーとしてチームを支えていたが、武蔵工務店の長である父親が大怪我をしてしまう。父親の穴を埋めるため、チームを抜けて家業を継ぐことを決意する。長らくチームを離れていたが、キッカー不足により苦戦するチームの試合をみていた父親と武蔵工務店の職人たちによる説得からチームへと復帰する。

瀧夏彦(タキナツヒコ)武器:柔軟な肉体
 泥門デビルバッツに所属する1年生。自分を天才だと信じるお調子者の目立ちたがり屋。チームでは珍しいオールラウンダーな選手。アメフト界の人気者になろうと高校受験をしたが、あまりのバカさから全て不合格となる。受験失敗からアメリカでアメフトのプロテストを受験しようと単身渡米する。なんでもそつなくこなす器用さからアメリカで出会ったセナにスカウトされ、泥門高校へと編入する。

石丸哲生(イシマルテツオ)
 泥門高校陸上部に所属する2年生。陸上部の部長だが、アメフト部の助っ人選手として試合に参加している。助っ人の中で唯一自分の意思でアメフト部に協力している心の広い男。いちおう陸上部のエースなので足は速い。助っ人枠なのに物語終盤でも普通にレギュラーメンバーの一員として出場しているすごい奴。

スポーツを通じて描かれるキャラクターたちの人間ドラマ

 「アイシールド21」の魅力のひとつがキャラクターたちによって描かれる人間ドラマだ。作中では選手たちの挫折や葛藤から立ち上がるエピソードが多く存在している。また、それを示唆するように第3巻の中では、「ダレル・ロイヤルの手紙」が紹介されている。この手紙はテキサス大フットボールコーチであったダレル・ロイヤルが夏休み帰省中の選手に、闘争心とフットボールへの情熱を訴えるものとして送ったものだ。以下に手紙の一部を抜粋する。

 「競技場でプレーする諸君の誰もが、必ず一度や二度屈辱を味わされるだろう。打ちのめされたことがない選手なんて、かつていたことがない。
ただ一流選手はあらゆる努力をはらって速やかに立ち上がろうと努める、
並みのフットボール選手は立ち上がるが少しばかり遅い、
そして敗者はいつまでもグランドに横たわったままである。」

アイシールド21第3巻

 そんな「アイシールド21」から筆者が特に心打たれた選手の挫折や葛藤から立ち上がる様子を描くエピソードを紹介したい。

雷門太郎:第3巻23話「夢やぶれて夢」、24話「背番号80 キャッチの達人」

 モンタは子供の頃、観戦しにいったプロ野球の試合で本庄勝という集英ベアーズ所属の選手から使用済みのグラブをもらう。それ以来「俺も絶対本庄みたいなヒーローになるんだ!」という想いを胸にモン太はキャッチに命賭けて練習し続けてきた。入学した泥門高校では今度こそ1軍に入るぞと意気込んで野球部の入部試験へと挑戦するのだが、結果は3軍という事実上の不合格扱いを宣告されてしまう。どれだけキャッチが上手くとも、それ以外ができなければ野球では使えない。「自分はプロ野球選手になれねえ」そんな現実を突きつけられてしまう。

 残酷な現実に打ちひしがれるモン太をセナはキャッチの選手を探しているとモン太をアメフトに勧誘する。しかし、野球がダメならアメフト、そんな簡単に切り替えられるほど単純な問題ではなかった。その日、家に帰ってからじっくり思い返したモン太は大事にしていた本庄勝のグラブに土下座をした。「すいません! 俺野球選手にはなれませんでした。でも今は初めて俺のことチームに欲しいって言ってくれる奴等がいるんス。俺……そっちで頑張りてえ!」。その翌日、アメフト部の部室には本庄勝と同じ背番号80を背負ったモン太がいた。

 泥門デビルバッツの名レシーバー、モン太がアメフト部への入部を決意するまでの物語が23、24話で描かれている。自分が追い求めた夢を諦めなきゃいけない悲しさ、今まで重ねてきた努力を認めてもらえない苦しさ、入りたかった野球部に必要とされない辛さなど、そしてそこから立ち上がり、新しい夢へと突き進む姿には多くの人が心を打たれたのではないだろうか。夢を一度でも諦めたことがある人なら必ずモン太に感情移入してしまう名エピソードだ。

「アイシールド21」第3巻

雪光学:第11巻90話「遅すぎたアスリート」

 夏合宿を乗り切った泥門デビルバッツは次の秋大会に向けて試合のメンバーを発表した。ずっと控え選手だった雪光も夏の地獄のような合宿を乗り切ったことで「最後の秋大会 僕もフィールドにたちたい みんなと一緒に戦いたい!」と強く想うようになっていた。だが、非情にもヒル魔は雪光ではなく「バスケ部助っ人 佐竹と山岡を交代で使ってく」と告げる。

 雪光の落選理由を聞かれた際、ヒル魔は「17年間机にしがみついてた男が たかが4か月の猛特訓でバスケ部に勝てると思うか?」と説明。今まで一切の運動をしてこなかった雪光が現役の運動部員と比較されれば当然の結果ではある。だが、自分の限界まで努力した雪光がグランドで泣き崩れ、「どうしてせめてあと一年早く始めなかったんだ」と後悔する姿には心を締め付けられてしまう。それでも諦めず「まだ……終わっちゃいない泥門の秋大会が終わる日まであと何日あるかわんないそれまでにもっと上手くなれば……」とすぐに立ち上がり泣きながら練習に励む姿に心打たれない読者はいないだろう。このシーンだけは何回読んでも目頭が熱くなってしまう。

 モン太も雪光も打ちのめされて、辛いはずなのに速やかに立ち上がり、また挑戦へと向かっている。ダレル・ロイヤルの手紙にあるよう、二人とも一流の選手の素質があることがしっかりと感じられる名エピソードだ。

「アイシールド21」第11巻

今なお人気の傑作マンガ

 本作は2009年6月に最終回を迎えているにも関わらず、未だに多くのファンと根強い人気を誇っている。その証拠に2021年の第55回NFLスーパーボウル開催日にはアメリカンフットボール繋がりからか、突如Twitterで「アイシールド21」がトレンド1位に上昇してニュースとなった。また、その翌年2022年4月にはテレビでお笑い芸人が「アイシールド21」について言及したことで再びトレンド1位に上昇するなど、ふとしたきっかけで度々話題となっている。最近では6月5に作者の村田雄介氏が21周年を記念する特別読み切り「BRAIN×BRAVE」と、その告知アニメについての投稿をTwitterで行なったことで、ファンの間で盛り上がりをみせている。

 「アイシールド21」はアメフトをまったく知らない人でも楽しむことができる素晴らしいマンガだ。迫力ある試合の描写はもちろん、物語で描かれる選手たちの挫折や葛藤にはきっと多くの方が感情移入し、胸が打たれるだろう。だが、そこから立ち上がり、挑戦する姿は筆者を含む多くの読者に勇気を与えた。「アイシールド21」は、そういった熱量を持つ、心動かされるマンガになっている。

 現在「アイシールド21」は集英社が運営する「少年ジャンプ+」のアプリと公式サイトで1話より3話までが無料配信されている。まだ読まれていない方は、この機会に是非とも読んでみてはいかがだろうか。