【特別企画】

「Forza Motorsport」ファーストインプレッション

遂にベールを脱ぐ次世代の「Forza」。“レイトレへの意地”に感服

【Forza Motorsport】

10月10日 発売予定

価格  スタンダードエディション:9,680円

デラックスエディション:11,880円
プレミアムエディション:12,980円

 リアル系レースゲームである「グランツーリスモ」シリーズと双璧をなし、全世界のレーサーたちに愛されているTurn 10 Studiosの「Forza Motorsport」シリーズ。コンソール向けでは数少ない“ドライビングシミュレーター”として、マシンのモデリングや挙動、サーキットのコース再現、天候、グラフィックス表現をタイトル毎に高めてきた。

 そんな「Forza Motorsport」シリーズは、過去に2年に1本のペースで新作をだし、2012年からは偶数年に「Forza Horizon」シリーズ、奇数年に「Forza Motorsport」と交互にリリースしていた。だが2017年以降「Forza Motorsport」シリーズのリリースがストップ。遂には2021年に「Forza Motorsport 7」の販売が終了し、後継作が存在しないという異例の事態に発展した。

 全世界の「Forza」ファンが待ち望んだ末、遂に10月10日リリースされるのが「Forza Motorsport」。今作ではこれまでの遺産やナンバリングを捨て、まだレースゲーム界では辿り着いたタイトルが少ない「レース中のレイトレーシング」を実現した“次世代のレースゲーム”だ。

 そこで本稿では9月上旬に実施された「Forza Motorsport」プレビュー版のインプレッションをお届け。プレイ範囲はとても少ないが、そのグラフィックス表現に思わず口角が上がってしまう本作の魅力をお伝えする。

クルマの“艶感”が魅力。グラフィックス表現の1つの節目を迎えた「Forza Motorsport」

 「Forza Motorsport」は2022年6月に発表されて以降、これまでに一部収録車種やカバーカー、“有人のピットイン”などの要素が公開されている。だが、言い換えれば発売約1カ月前の時点でこれらの要素しか明かされておらず、本作はまだ謎に包まれている部分が多い。発売を今か今かと待っているレーサーの方も多いだろう。

 そんな筆者も「Forza Motorsport」の発売を心待ちにしているレーサーの1人だ。コロナ禍突入後にレースゲームへ入門したこともあって、前作「Forza Motorsport 7」は既に販売終了。「Forza Horizon 5」や「グランツーリスモ7」を中心にプレイしてきたが、ようやく「Forza Motorsport」と対面できた。

 今回はXbox Series X版をプレイしているが、本作はXbox Series S、PCにてプレイできる。さらにサブスクリプションサービス「Xbox Game Pass」対象タイトルのため、加入者は発売日から追加料金なしでプレイできる。なお、今回のプレビュー版は最終ビルドに近いものだが、製品版とは仕様が変更される可能性もあるため、ご了承いただきたい。

カバーカーとして登場する「2023 No.01 Cadillac Racing V-Series.R」がメニューに登場。床面への映り込みが凄い

 まずは初期設定として、本作のエクスペリエンスを左右する重要なことを決めなければならない。それがレイトレーシングの有無を決めるグラフィックス設定だ。本作のグラフィックス設定では「パフォーマンス」、「パフォーマンスRT」、「ビジュアル」の3種が用意されている。「パフォーマンス」はその名の通り、4K60FPSでの描画を優先する代わりに、光の反射をリアルに再現するレイトレーシングがオフとなる。

 一方のビジュアルは、4K30FPSとフレームレートが半分となるがレース中のレイトレーシングがオンになる。この2つの中間として「パフォーマンスRT」が用意されているが、こちらはフレームレート60FPS、レイトレーシングオンとなる代わりに解像度が可変になる。今回は断りのない限り「ビジュアル」でプレイしているが、やはりXbox Series Xの性能を持ってしても4K60FPS、レイトレーシングオンは厳しかったのだろう。

 だがフレームレートは低下するが、コンソール機で4K解像度・レイトレーシングオンを実装してきたのは、次世代のレースゲームを切り拓く第一歩といえる。本稿後半では各設定の画質比較も行なっているため、そちらも参考にされたい。もちろん「Forza Motorsport」はPC版も用意されているため、超高性能ゲーミングPCをお持ちの方は、ぜひ最上級の設定で本作をプレイしてみてほしい。

「ビジュアル」は4K解像度でレイトレーシングオンとなるが、フレームレートは30FPS
「パフォーマンスRT」はフレームレート60FPSでレイトレーシングオンだが、解像度が可変となる
「パフォーマンス」は4K60FPSで、レイトレーシングはオフ

 今回プレイするのは、チュートリアルを兼ねている「ビルダーズカップ イントロ」。最初の車はフォード「マスタング GT」、スバル「S209」、ホンダ「シビック Type R」の3台から選ぶことができる。長く連れ添うクルマになるので、じっくりと選ぼう。

 難易度も柔軟に設定できるため、初心者から玄人レーサーまで精一杯レースを楽しむことができる。また獲得できるクレジットボーナスは変動するが、難易度はいつでも変えられるため、初心者の方でも安心してプレイしてほしい。今回はAIドライバーがレベル4、ルールセットはスポーツルールと中間の難易度でプレイした。

【ビルダーズカップ イントロ】
プレイしたのはチュートリアルを兼ねている「ビルダーズカップ イントロ」
プレビュー版ではプレイできなかったが、この先も様々なレースが用意されているので乞うご期待
最初のクルマは3台から選ぶことができる
フォードの2018年式「マスタング GT」
スバルの2019年式「S209」。スバルを代表する「WRX STI」のコンプリートカーだ
今回、筆者の愛車となるホンダの2018年式「シビック Type R」
【難易度設定】
本作でも柔軟な難易度設定が登場。AIのドライバーレベルは1~8レベルまで
ルールは3つ。「クラブルール」はボディのダメージのみでペナルティも少ない。タイムシフト機能「リワインド」も使えるなど初心者向けのルールだ
「スポーツルール」は燃料が減りタイヤも消耗していく。コース外や衝突などでペナルティが発生する可能性もあるが、リワインドを使用できる
「エキスパートルール」は実際のレースに近い。ぶつかるとボディが損傷するほか、リワインドもオフになるため緊張感のあるレースが楽しめる
今回はそれぞれ中間の設定でプレイした

 最初のコースは、本作から登場するオリジナルサーキット「Grand Oak Raceway」。一周は約1分(シビック Type R)ほどで、コース中盤でカーブが連続するが比較的運転のしやすいコースだ。

 いざレースに挑むと、スタート直後からリアルなグラフィックスに驚く。フロントガラスから見える前方の車両たちに“艶”があるのだ。それは太陽に照らされている車両だけでなく、影にいる車両にも“艶”がある。「Forza Motorsport」では、先述のように“レース中のレイトレーシング”を実装しているが、これは「グランツーリスモ7」では実装されなかった機能で「Forza」が一歩抜きんでた形だ。

 現代のクルマの塗装は、隣接する車両が映りこむほど艶があり、太陽などの光源があたると眩く光る。「Forza Motorsport」では“現実と同等”まではいかないが、クルマたちの反射はとてもリアルで、思わずニヤニヤしながらプレイしていた。一方でその処理はとても重く、Xbox Series Xからは温かい風が放出されていた。

本作から登場するオリジナルサーキット「Grand Oak Raceway」
コース中盤でカーブが連続。だが起伏は少なく、走りやすいサーキットだ
愛車の「シビック Type R」とともにレースに挑む
クルマのモデリングは最高峰といえる
レース開始。日の光に当たっている車両のみならず、影にいる車両にも“艶”がある
レース序盤の様子だが、ダッシュボードの影がリアル。実際のレース画像と言われてもわからないかも……?

 だがあまりに綺麗だからと言って、周囲の状況に見とれていると運転が疎かになってしまう。選択しているゲームルールにもよるが「スポーツルール」では、コース外や衝突などでペナルティが加算される場合もあるため、その際はYボタンを押して「リワインド」しよう。時間を巻き戻して、衝突やコース外の直前から再度プレイし直すことができる。もちろんラップタイムは参考記録になるが、「Forza」シリーズならではの機能だ。

 また雨中でのレースは体験できなかったが、ドライブフィールもとてもリアル。ブレーキングやコーナーの立ち上がり、縁石に乗った際のコントローラーの振動、他車との衝突など、ドライビングシミュレーターとして実際のクルマの挙動に近いものとなっている。レース終了後に映される愛車を見ると、ボディが傷だらけになっていてダメージ表現にも力が入っている。少し心が痛むが、レースで勝つためには致し方ない。

 「ビルダーズカップ イントロ」最初のレースとなる「Grand Oak Raceway」は3位で終えた。次はイタリアに実在する「ムジェロ・サーキット」、南アフリカ共和国の「キャラミ・グランプリ・サーキット」の順で走り、総合トップを飾れば「ビルダーズカップ イントロ」の勝者だ。

レース中にミスしても、Yボタンでリワインドできる
最終ラップで3位までつけたが、なかなか先行車が速い
最終的に3位でゴール。ギリギリ表彰台に登った
レース終了後の愛車。ホイールのガリ傷や塗装の傷みまで再現している
3位フィニッシュだったが、腕を磨けば1位も狙えそうだ
イタリアの「ムジェロ・サーキット」。レース好きの方はその名を1度は聞いたことがあるはず
南アフリカ共和国の「キャラミ・グランプリ・サーキット」。1周が長いコースで、ビルダーズカップ イントロではナイトレースとなる

グラフィックス設定で画質はどう違う? ピットイン作業など細部をチェック

 ここからは「Forza Motorsport」の細部をチェックしていく。プレビュー版のためアクセスできる箇所は少ないが、発売前に少しでも多くの情報をお伝えしたい。

 まずはクルマのカスタマイズ。レース前の重要な要素で、愛車のパーツを交換してパフォーマンスを向上させたり、様々なチューニングを施してサーキットに最適化させることができる。本作では愛車のマシンレベルを上げるとパーツを獲得でき、「パフォーマンス」の項目でパーツ交換を行なうことができる。また、クルマに詳しくない初心者の方でも、Xボタンを押すことで「クイック アップグレード」ができ、最適なパーツを自動で選択してくれる。

 さらに玄人レーサーに向けて、タイヤの空気圧やギア比などを調整できる「チューニング」も登場。さらに「セットアップ マネージャー」から世界中のレーサーが作ったチューニング設定をダウンロードすることができるので、初心者でも安心してチューニングできる。

【パフォーマンスの項目】
燃料と空気
エンジン
車体/ハンドリング
タイヤ
車輪
駆動系
エアロ/外装
換装
【チューニングの項目】
タイヤ
ギア比
アライメント
スタビライザー
スプリング
減衰力
サスペンション ジオメトリ
エアロパーツ
ブレーキ
デフ
ステアリング ホイール

 さらに「Forza Motorsport」ではピットが“有人化”。ピットレーンに入るとクルマの操作ができなくなり、メニューが表示されタイヤ交換や燃料補給を実施できる。選択後にはスタッフたちがタイヤ交換や燃料補給をするムービーが流れ、さながら実際のレースのような雰囲気となっている。

 前作「Forza Motorsport 7」でもピット作業はあったが、ピットは無人でメニューを選択するだけだった。リアルを追求するドライビングシミュレーターとして、大きな進化と言えるだろう。

【ピットの流れ】
工具マークがピットレーンの目印
ムービーに入るとクルマの操作は自動的に行なわれる
ピットメニューではタイヤ交換ができる。今回の場合、推奨ではタイヤ交換は必要なしとなった
燃料補給も実施可能。おすすめやスキップもできる
カスタム設定で満タン給油も可能
チームスタッフが作業を開始
ピットにスタッフが居るのは、大きな進化と言える
ピットレーンでは制限速度があるので、オートで走ってくれるのはありがたい
ピットレーンを離れると……
再びレースに戻ることができる

 最後に各グラフィックス設定の比較を実施。本稿では、基本的に4K30FPS・レイトレーシングオンの「ビジュアル」でプレイしてきたが、「パフォーマンスRT」や「パフォーマンス」ではどのように描画されるのか確認したい。

 まずは「ビジュアル」。さすが4K解像度でのレイトレーシングオンだけあって、映像として一番美しいのは「ビジュアル」だ。だがフレームレートは30FPSなので、アシストで表示されている推奨ラインや流れていく風景に若干の残像を感じる。プレイできない訳ではないが、60FPSのヌルヌル感に慣れていると少し違和感を感じるだろう。

 次に「パフォーマンスRT」を見ていく。こちらはレイトレーシングオンの状態でフレームレートは60FPSとなるが、可変解像度で描画される。映像体験としては「ビジュアル」とほぼ同じものが楽しめるが、細部を見ていくとスピードメーターの表示など、一部描画が荒くなっていることに気付く。だが、レース中はドライブに集中しているので、あまり気付かないはずだ。

 そして「パフォーマンス」だが、こちらは4K60FPSでレース中のレイトレーシングを実行しない。コンソール機で4K60FPSで楽しめる贅沢な設定だが、筆者は今回「ビジュアル」でプレイし続けたので、「パフォーマンス」に変更すると少し違和感を覚えた。

 それは太陽の光や影の描写。人間の目は明るい一点を見ると、同じシーンの暗い箇所が見えにくくなるが、「パフォーマンス」ではそれが反映されず全体を照らすように表示され、特に明朝のシーンだと差が顕著に現われる。だが、視認性という観点だと「パフォーマンス」の方が前方の状況を把握しやすいので、この辺りは自身のプレイスタイルに合わせて、グラフィックス設定を選びたい。

【朝のシーン(Grand Oak Raceway)】
ビジュアル設定。太陽が視界に入っているので、前方のクルマが見えにくくなっている。光の状況をリアルに再現するレイトレーシングらしいシーンだ
パフォーマンスRT設定。映像体験としてはビジュアルと同じだが、スピードメーターの文字が荒くなっている
パフォーマンス設定。太陽を中心に全体が明るくなっている。前方の車が見えやすいので、視認性という観点ではこちらが上だ
【夜のシーン(キャラミ・グランプリ・サーキット)】
ビジュアル設定。前方にいるクルマにヘッドライトが映りこむ
パフォーマンスRT設定。細部を見るとクルマの解像度が落ちている部分がある
パフォーマンス設定。前方の車両にヘッドライトが当たるが、映り込みは少ない

驚愕のグラフィックスを実現した「Forza Motorsport」。10月10日の発売が待ちきれない!

 本来であれば「Forza Motorsport」の全てを紹介したいところだが、プレビュー版ではここまで。ゲームのボリュームについて語ることはできないが、ナンバリングに縛られない「Forza Motorsport」として、グラフィックス表現やクルマの挙動など“レースゲーム”を次のレベルへ引き上げたタイトルとなっている。

 そして何よりも“レース中のレイトレーシング”を実装するために、Xbox Series Xにおいて4K30FPSで描画するという決断を下したTurn 10 Studiosには感服した。ドライビングシミュレーターといえば60FPSという方も多いと思うが、ぜひ1度レイトレーシングがオンとなる4K30FPS「ビジュアル」や、可変解像度60FPS「パフォーマンスRT」を試してほしい。輝く自分の愛車の姿に思わずニヤけてしまうはずだ。

 6年ぶりの新作となる「Forza Motorsport」。あらゆるレーサーが待っていたタイトルだが、Xbox Game Pass加入者も発売日からプレイできるため、これまでレースゲームに手を出してこなかった方もぜひプレイしてみてほしい。