【特別企画】

「ファイナルファンタジーV」30周年! にとうりゅう、みだれうち、魔法剣、ちょうごう、最強の組み合わせを考えるジョブシステムシステムが魅力

【ファイナルファンタジーV】

1992年12月6日 発売

画像はピクセルリマスター版

 スクウェア・エニックスの「ファイナルファンタジーV」(以下、「FFV」)が、本日12月6日で発売30周年を迎えた。本作はスーパーファミコン用のRPGとして1992年12月6日に発売された。後に様々なハードへと移植され、2021年11月にはピクセルリマスター版が発売されている。

 本稿では、そんな「FFV」の特徴のいくつかを思い出と共に振り返りたい。

【【FFピクセルリマスター】『ファイナルファンタジーV』プロモーショントレーラー】

「FFV」といえばジョブシステム!

 「FF」というと、当時は「システムの奇数、ストーリーの偶数」とも呼ばれており、ナンバリングが奇数の作品はシステムが面白く、偶数の作品はストーリーが面白いと言われていた。「FFV」では「FFIII」のジョブシステムの正統進化を遂げた作品で、特に魅力だったのは、22種類ものジョブから好きなジョブを選べる点だ。

 そのジョブも、ナイトやモンク、シーフ、白魔道士、黒魔道士といったベーシックなものから、ものまね師、薬師、風水士、踊り子といったようなちょっと変わったものまで幅広くあった。ジョブのレベルが上がるとジョブごとのアビリティを覚えるといったシステムもあり、覚えたアビリティは他のジョブで使用できるため、黒魔法も使える白魔道士、モンスターを捕らえるナイトといったような、様々な遊び方でゲームを攻略できる点が素晴らしかった。

 この「様々なジョブでアビリティを覚え、覚えたアビリティでさらにジョブをカスタマイズしていく」というようなシステムは、「FFV」の時点でほぼ完璧と言っていいほど完成されたシステムで、今でも「FFV」が最も面白かった、と語るファンも多くいる。

白魔法が使える黒魔道士

 そんなジョブシステムの中でも、最も人気だったジョブはやはり忍者ではないだろうか。育てるのは大変だが、最後まで育て切れば「にとうりゅう」のアビリティを覚え、どんなジョブでも二刀流でズガガガガガッ!と攻撃していくのは爽快だった。また、「なげる」で使える忍術が強いことでも知られ、魔力を上げれば、黒魔道士顔負けの破壊力を持つ全体攻撃を使えるようになった。

 さらに意外な人気だったジョブは狩人だ。というのも、狩人も育て切れば覚えられるアビリティ「みだれうち」が非常に強力だった。防御無視+必中4回攻撃は、確かに強力。ここに「にとうりゅう」をあわせると、防御無視必中攻撃が8回できるため、最強の組み合わせと言われている。さらにそこに魔法剣を組み合わせていくと……というような様々な派生があるが、何にしても「にとうりゅう」+「みだれうち」は強かった。そこにさらに「ものまね」というこれまた最強のアビリティもあり、ひとりが「にとうりゅう」+「みだれうち」+「フレア剣」を撃ったら、残りのキャラクターはものまねをする、というような戦法も使われたのだが、「FFV」の素晴らしい点は「自分が思う最強の組み合わせ」がこのひとつに限ったことではない点だ。

 赤魔道士が覚える「れんぞくま」を使用して強敵相手に安全に戦う方法などもあり、クイックと組み合わせて魔法を5連発する→残りのメンバーはものまね、というのは使った人も多いのではないだろうか。

 他にも多様な組み合わせがあり、“私が考えた最強の組み合わせ”は今でも語られることが多い。そして新規プレイヤーにとっては「そんな組み合わせがあるのか」と目から鱗が落ちるような戦法も披露されたりする。いまだにプレイヤーのトラウマとなっている「しんりゅう」や「オメガ」との戦いも、意外と“これだけ準備して挑めばほぼ完封できる”といった戦法もあるのだ。しかもその戦法に必ずしも「にとうりゅう」+「みだれうち」が使われていたかというと、そうでもないところが面白い。むしろ最終的には魔法剣と「ちょうごう」、「ものまね」のほうが使用頻度が高いとも言えるだろう。

最初期ジョブの「すっぴん」が最終的には一番強くなるというのも驚きだった

ストーリーだって面白かったぞ

 バトルに特化したタイトルだっただけに思い出もバトルに直結しがちな本作だが、ストーリーもドラマがあって非常に面白かった。シンプルではあったが、火・水・風・土の4つのクリスタルによって成り立っている世界は初代「FF」からの世界観を踏襲しており、それでいて各キャラクターたちの個性付けや感情表現などにも長けており、笑いあり、涙ありのストーリー演出となっている。

演出は当時としてはかなり凝っていた

 特に本作で初めて登場するギルガメッシュは、非常にコミカルなストーリーになっており、シリーズ屈指の人気キャラ入りを果たし、後世の作品にも彼はしばしばゲスト出演をすることとなる。ギルガメッシュの専用BGMとも言える「ビッグブリッヂの死闘」も、ゲスト出演のたびに新アレンジで登場するため、もう何回アレンジされたかわからないほど。実際「FFV」はプレイしていないけれどギルガメッシュのことならばよく知っている、という人も多いはずだ。ゲスト出演でもほぼ「FFV」と同じような演出での登場となるため、「俺が悪かった」、「手も足も出ないぜ」、「……ってのは嘘だけどな!」というセリフと共に攻撃してくるギルガメッシュ。刀剣コレクターでもある彼は、「FFV」の中で様々なドラマを生んだ(主にギャグ側のドラマとも言う)。

 もちろん、ドラマを作ったのはギルガメッシュだけではない。主人公のバッツを始め、ヒロインのレナ、おじいちゃんキャラのガラフ、ギルガメッシュに続いてドラマを巻き起こしたとも言える海賊ファリス、ガラフの孫のクルル、「無」の力を手に入れて世界を支配しようとした邪悪な魔導士エクスデス。彼らを中心に、第1世界、第2世界、そして第3世界へと連なる旅は、時にドラマチックで、時に愉快で、時に涙を誘う、そんな物語だった。

 ステータス面でこそ全員ほぼ横並びになるため個性に劣るという欠点もあったが、物語上ではバッツ、ファリス、ガラフなど登場時から印象的なイベントも多く、またエクスデスにおいては絶対悪と呼ぶにふさわしく、本作の物語に君臨している。あの人の思惑、この人の思惑といった複雑な要素が絡まないシンプルなストーリーだったが故に、王道の良さを感じさせられた。

 確かに「ストーリーは偶数、システムの奇数」と呼ばれる作品の頂点ではあるものの、システムを存分に堪能するにはちょうどよい塩梅だったと言えるだろう(なお、個人的に「FFV」のキャラクターのもっと深いストーリーを見てみたい人には、スマートフォンアプリの「ディシディアFFオペラオムニア」を推奨したい)。

写真は「ディシディアFFオペラオムニア」のクルル断章より。歴代キャラクターのその後が描かれるので、ストーリーがもっと欲しかったという人にはぜひプレイしてみてほしい

「ビッグブリッヂの死闘」をはじめ、音楽が秀逸

 「FFV」の音楽といえば、もちろん「FF」シリーズ楽曲の産みの親である植松伸夫氏であるのだが、歴代「FF」シリーズの中でも非常に名曲が多い。

 「ファイナルファンタジーV・メインテーマ」を始め、メインテーマをベースにした「4つの心」や「バトル2」、「暁の戦士」などはティンパニのような打楽器の音が非常に印象的だった。また「ハーヴェスト」のようなイントロには手拍子、そしてバグパイプのような音を使用した民族調の音楽も素晴らしかった。

 前述の「ビッグブリッヂの死闘」については、もはや語るまでもないだろう。様々な派生作品で20曲以上ものアレンジが存在する楽曲とあって、歴代「FF」シリーズでもプレリュードや「FFメインテーマ」を除いて最も多くアレンジされている楽曲ではないだろうか。「FF」シリーズのオーケストラコンサート「Distant Worlds」でも演奏されているほどで、その迫力といえば凄まじいものである。個人的には和風ロックとなった「FFXIII-2」の「ビッグブリッヂの死闘 -Oriental MIX-」も捨てがたい。

 もちろん、「ビッグブリッヂの死闘」以外にもまだまだ名曲揃いの「FFV」。「バトル1」やエクスデス戦などバトル曲の熱さは歴代楽曲の中でも評価が高い。「はるかなる故郷」や「未知なる大地」などの切なさを感じさせるメロディには、ぎゅっと胸が締め付けられたりもする。一方で「モーグリのテーマ」や「ん!」、「マンボdeチョコボ」などのコミカルな曲が多いのも「FFV」ならではだろう。特に「マンボdeチョコボ」はチョコボ曲のひとつの完成形に近く、後々のアレンジ(オーケストラなどのコンサートアレンジも含めて)も、この曲をベースに行なわれていることが多い。

 ピクセルリマスター版では全曲アレンジされておりこちらのアレンジも評判がいいが、スーパーファミコン版も今聞いても秀逸なので、ぜひこの記事をきっかけに「FFV」のサントラをBGMに1日を過ごしてみてほしい。

チョコボの鳴き声などのSEも良い

完璧すぎたが故に……

 「FFV」で、完璧とも言えるジョブシステムを作り上げてしまったせいか、はたまたストーリーのほうにスイッチしてしまったせいか、後のシリーズにはジョブシステムらしいジョブシステムがほとんど登場しなくなってしまうのだけが残念でならない。確かにキャラクターの個性を重んじるほど、これだけ自由なジョブシステムの組み合わせはあまりいいものではないものの、だからこそあえて新たなジョブシステムに挑んだ「FF」というタイトルを見てみたい気持ちが捨てきれない。

 なお、「FFV」のジョブシステムに近いものとしては、「FINAL FANTASY TACTICS」、また意外なところでは「FFXIII」(※ジョブではなくロールだが、システム的には似ている)などが挙げられるだろう。「FFXIV」にもジョブがあるものの、システムとしては「FFXII ZODIAC JOB SYSTEM」のような固定ジョブに近い概念のため、「FFV」のジョブシステムとは遠いものである。「FFV」が好きだったという人にはぜひこれらのタイトルにもチャレンジしてみてほしいところだ。

 逆にまだ「FF」のジョブシステムの真髄を味わったことがない人や、「FFXIII」でのロール切り替えが好きだった人、シミュレーションRPGとはいえ「FFT」でのジョブシステムが好きだった人には、一度「FFV」をプレイしてもらいたい。育成には少々時間がかかるが、手間をかけた分だけ答えてくれるゲームだと思っている。

 そしてかけた時間の分だけ愛着が増す、そんなゲームが「FFV」だ。ピクセルリマスター版ではオートバトル搭載でアビリティポイント稼ぎも楽になっているので、ぜひ改めてのプレイをオススメしたい。

「ファイナルファンタジーV」のストアページ

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・App Storeのページ
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