【特別企画】

ゲームのサブスクで世界制覇を目指すMicrosoft。Xboxアジア部門のトップに最新の日本戦略を聞いた

6月14日収録

 米国時間の6月15日、E3 2021最後の公式イベントとなるE3 2021 Awardsが発表され、E3 2021が幕を下ろした。日本のゲームファンにとっては時差の関係で久々に寝不足の一週間を過ごしたことかと思うが、皆さんが期待していたタイトルの発表はいくつあっただろうか?

【Xbox Series X - Games Trailer - Xbox & Bethesda Games Showcase 2021】

 今年はオールオンラインということもあり、2年前までのオフラインで行なわれていた時代に比べると、発表の機会が限られることで、発表タイトルの絶対数が減り、各メディアのBCD(Behind Closed Door、ビジネスブースでの取材)でのスクープ合戦もないため、全体的に寂しい印象は否めない。早く完全なるE3の復活を願いたいところだ。

 こうした中で、今年大いに気を吐いていたのがMicrosoftだ。ゲームプラットフォーマーとして唯一フルサイズのカンファレンスを実施し、実に30ものタイトルを発表した。例年より自社タイトルがやや多めだった印象があるが、今年はついにBethesdaまで傘下に収め、23の開発スタジオを擁する世界最大規模のゲームパブリッシャーに成長。そして世界を代表するヒットメーカーであるBethesda Game Studiosの最新作「Starfield」を、Xbox Series X|SとPC向けにリリース予定であることをカンファレンス冒頭で発表。ゲームプラットフォーム戦争が、新たな局面を迎えたことを内外に示した。

【Starfield】

 今回のカンファレンスで「Microsoftはしたたかだな」と感じたのは、Bethesdaのタイトルを含め、ほぼすべてのタイトルをXbox Game Pass対応を謳いながら、Xbox Game Passそのものについてはほとんど言及しなかったことだ。

 Xbox Game Passは、ゲームファンなら誰でもご存じの通り、Microsoftが世界に先駆けて2017年(日本は2020年)より展開している、ゲームのサブスクリプションサービスだ。月額固定の金額を支払うだけで、MicrosoftがXboxで提供している100を超えるタイトルが遊び放題になる。しかもプラットフォーマーが任意でチョイスした一部タイトルや、ベータ版の先行プレイといった話ではなく、前述の「Starfield」や、今回E3 2021がOverall Most Anticipated(もっとも期待のタイトル)に選出した「Forza Horizon 5」、そしてXboxイチオシの「Halo Infinite」といった、ゲームファン垂涎の新作AAAタイトルが発売日からXboxとPCで遊べる。そして今年からはXbox Cloud Gaming、つまりあらゆるデバイスでプレイできるようになる。

【Xbox Game Pass】
2021年のXbox Game Pass新作ラインナップ。毎月数珠つなぎに新規タイトルを提供していく。Microsoftにとってもはやゲームはホリデーシーズンに売るものではない

 こうなるとまさにAmazonプライムやNetflixで映画を見るような感覚で、ハード、場所、時間を問わず、いつでもどこでも最新のAAAタイトルが遊べる環境がやってくる。これこそがMicrosoftの真の狙いだ。「Microsoft Flight Simulator」が手元のスマホでサクッと遊べる時代がもうすぐそこまで来ているのだが、あえてそこは力説しない。気づいた時にはもうやってきているわけだ。このMicrosoftの戦略に対して、任天堂やソニーはどう対抗するのか。いずれにしてもゲームファンにとっては、ゲームが従来より安価で手に届きやすいワクワクする未来が来ることだけは間違いない。

【魅力的なXbox Game Passタイトル】
「Halo Infinite」
「Microsoft Flight Simulator」
「Forza Horizon 5」

 だが、ちょっと待って欲しい。そのMicrosoftのエンタメ戦略に、果たして日本は含まれているのだろうか? 日本は、Xbox OneではTier1から外され、Xbox Game Passはまさかの3年待たされた過去を持つ。そこで今回は「Xbox & Bethesda Games Showcase」終了後に、アジア地域のXboxのヘッドを務めるJeremy Hinton氏にインタビューを行なった。結論だけ先に書いてしまうと、上記の素晴らしい未来は日本にもやってくる! ぜひ最後までお楽しみ頂きたい。

【Xbox & Bethesda Games Showcase】

Xbox Cloud Gamingは日本のゲーマーに相性の良いサービス

――まずは、Xbox Games Showcase発表の手応えを聞かせてください。

Jeremy Hinton氏: 30ものタイトルが発表され、そのうち27作品がXbox Game Passに収録されると発表された今回のXbox & Bethesda Games Showcaseは世界的に見ても強い支持を受けており、ありがたいことに日本からもポジティブなメッセージが数多く寄せられています。

 また、これまでのXboxと比較しても今回の発表は最大規模の専用タイトル群を誇っています。しかもその多くがGame Passで発売日当日から楽しんでいただけるのです。それもあってか、多くの人たちがタイトルの多さ、そしてそれぞれのタイトルのクオリティの高さに驚愕しています。誰にとっても楽しめる作品を揃える、という私たちの取り組みが非常に良い影響を与えていますね。

――日本市場で期待しているタイトルは何ですか、その理由も合わせて教えてください。

Jeremy Hinton氏: 個人的に、『Forza Horizon 5』は日本でも発売を楽しみにされているタイトルだと思っています。Xbox Seriesでプレイされている多くのタイトルの中でも『Forza Horizon 4』は特に人気を誇っていますし、『Forza』シリーズは一時期、日本国内でも最も人気のタイトルに輝いたことがあります。

 日本の皆さんの多くがクルマ、そしてそれを取り巻く文化が好きだということを私たちは認識しています。かつてない自由度のカスタマイズ、そして広大なメキシコの大地という素晴らしい舞台で様々な車を思うままに運転できるという体験が、『Forza』シリーズの中でも本作をさらに際立たせています。ぜひ発売を楽しみにお待ちください。

 他にも是非期待いただきたいのが『百英雄伝』で、こちらは『幻想水滸伝』のクリエイターたちによって開発されている、いわば精神的な後継作にあたります。発表後から日本国内の多くの方々から非常に前向きなコメントをいただいています。

 最後に付け加えるとすれば、Xboxは日本国内でも成功を収めてきた西洋発のRPGを数多く生み出してきています。既にサービス展開や発売をしている『Fallout 76』、今後発売を予定している『Elder Scrolls VI』、『Starfield』や『Fable』などを含め、私たちはこれからも日本の皆さんの琴線に触れるようなタイトルをお届けし続けます。

――今回も多くのXbox独占や先行タイトルが発表されました。これらは日本国内においても同一時期に展開されるものと考えて良いのでしょうか?

Jeremy Hinton氏: まさにその通りで、現在私たちはそれぞれのタイトルが世界中で同時に手に取っていただけるように取り組んでいます。その取り組みの中でも日本というのは非常に重要視されていて、日本のマーケットに見合う各種ローカリゼーションを実施し展開を、という動きは更に勢いを増しつつありますし、その勢いは今後も強まっていくものとお考えください。

――その際、ゲームのローカライズはどうなるのでしょうか? 『Sea of Thieves』や『Flight Simulator』のように遅れての対応となるのか、それとも同時対応に早まるのかをお聞かせください。

Jeremy Hinton氏: 私たちのこれからのコミットメントとして、Microsoft Game Studiosから発売される各種タイトルを日本のように重要なマーケットに対して、より多くのタイトルに完全なローカリゼーションを速やかに行うというものがあります。過去を辿ると『Sea of Thieves』などのように、ローカリゼーションが発売から遅れて提供されたパターンなどがありますが、より日本のファンを大切にする姿勢を強める意味合いもこめて、可能な限り発売日、もしくは発売直後にローカライズされたタイトルを提供していきます。

――『Sea of Thieves』の「パイレーツ・オブ・カリビアン」コラボや、『Flight Simulator』の「トップガン」コラボは日本でも楽しめるのでしょうか?

Jeremy Hinton氏: もちろん、どちらのコラボも日本国内にてお楽しみいただけます。また、どちらのコラボも全世界と同じくして提供が開始されます。『Sea of Thieves』が日本語に対応して以降、多くの日本人ユーザーの皆さん本作を楽しまれるようになったように、「パイレーツ・オブ・カリビアン」コラボがディズニー好きな日本の皆さんの好奇心を大いにくすぐり、さらに多くのファンの獲得に繋がることを私たちは期待しています。

【映画とのコラボは日本でもプレイ可能】

――フィル・スペンサーにX019でインタビューした際、「日本発のXboxタイトルにも力を入れる」と言っていたが、今回それはあまり感じられませんでした。日本発のXboxタイトルの準備状況を聞かせてください。

Jeremy Hinton氏: 日本国内で生み出される数々のゲームタイトルですが、私たちはこれらをさまざまな方法で世に送り出しています。一つ確かなのは、サードパーティーのパブリッシャーや開発パートナーとの協力のおかげで、現在Xboxは史上最も多くの日本発のゲームコンテンツを取り扱っているということです。

 いくつか例を挙げるとすれば、発表タイトルの中でも『龍が如く』シリーズ、それも最新の『龍が如く7 光と闇の行方』までがGame Passでプレイできようになりましたし、日本国内で最も遊ばれているGame Passタイトルを見てみると、『Minecraft』、『Minecraft Dungeons』、『Forza Horizon 4』、そして『Gears 5』といったMicrosoft Game Studiosタイトルに並んで『ドラゴンクエストビルダーズ2』、『OCTOPATH TRAVELER』、『NieR:Automata』、そして『ドラゴンクエスト XI』といった日本発のタイトルが非常に目立っています。

 私たちはこれまでも日本のゲームタイトルをXboxプラットフォーム上で提供する取り組みを続けてきましたが、これからもより多くの日本のタイトルを提供できるよう努力を続けます。

――Xbox Game Passへのより一層の注力が明らかになりました。Xbox Game Passのコンテンツの内容が日本と海外で異なるという課題がありますが、これは最終的に克服されるのでしょうか?

Jeremy Hinton氏: 確かに、権利関係の課題などに代表されるさまざまな理由で、国内においてはXbox Game Passのコンテンツとしてお届け出来ないタイトルがあることは認識しています。それぞれのタイトルごとにはなりますが、私たちはそういった課題に対して、なるべく早くの提供の開始を目指して取り組み続けています。未来へと歩みを進めるにつれ、こうしたしがらみは徐々に取り除かれていくものと信じています。

――Xbox Games Showcaseでは、Xbox Game Pass Ultimateの優れた特典の1つであるXbox Cloud Gamingの発表がありませんでしたね。Xbox Cloud Gamingの最終的な展開計画を教えてください。合わせて日本市場への展開計画も教えてください。

Jeremy Hinton氏: Xbox Game Pass Ultimateの特典として位置づけられているXbox Cloud Gamingに関しては先週、「What's Next For Gaming」と銘打たれたイベントでXboxヘッドのPhil SpencerとMicrosoft CEOのSatya Nadellaの談話にて日本国内でプレビューされているXbox Cloud Gamingを正式サービスとして展開するという発表がありました。私としても、日本国内に向けた正式なクラウドゲーミングサービスが開始出来ることをとても嬉しく思っています。

【Satya Nadella and Phil Spencer discuss Gaming at Microsoft】

 また、Xbox Cloud Gamingの正式なサービスが開始される頃には、皆さんはまた新たなゲーミングのスタイルの体験者になるかもしれません。プレビュー中の本サービスはまだAndroidデバイス上でのみ提供されていますが、非常に近い将来、それも正式サービスとしての提供が始まる頃に同サービスはiOSとPCのブラウザ上で、そしてPCアプリ上でも動作するようになります。さらに、これはもう少し先の未来の話になりますが、Xbox Cloud Gamingはネットワークに接続されているテレビやコンソール機からでも楽しめるようになる予定です。

 これらの「プレイヤーを全ての中心に置くゲーム体験」への取り組みは、世界的に見ても最も多様なデバイスを駆使してゲームを楽しまれている日本の皆さんにとって非常に相性の良いサービスであると私たちは考えています。

【Xbox Cloud Gaming】
Xbox Game Passは、XboxやPCのみならずモバイルにも対応する

――昨年発表されたForza MotorsportがShowcaseには登場しませんでした。Forzaフランチャイズに何が起こっているのでしょう?

Jeremy Hinton氏: 今回のXbox & Bethesda Games ShowcaseではPlayground Gamesの開発チームから『Forza Horizon 5』が発表され、同タイトルがどのように『Forza Horizon 4』の築き上げた土台を継承しつつ、Xbox Seriesのハードウェア性能を最大限活かした最先端の体験をメキシコの雄大な大地を舞台に実現しているかを、Showcaseを視聴された皆さんにお伝えできたかと思います。もちろん、この発表の裏でTurn 10チームは『Forza Motorsport』最新作の開発を続けていますし、関連した新情報を今後お伝え出来る日を私としても楽しみに待っています。

【Forza Motorsport】
今年は発表が見送られた「Forza Motorsport」。2年ペースで新作をリリースしてきた「Forza Motorsport」シリーズだが、2017年の「7」以来、4年以上間が空くことになる

――日本でもXbox Series Xが買えない状況が続いています。品薄はいつ頃に解消する見込みなのでしょうか? 抽選予約の実施など買いやすくする工夫は実施されていますか? 何らかの施策があれば教えてください。

Jeremy Hinton氏: 発売から今まで、Xbox Seriesの需要は非常に高いまま横ばいの状態であることや、今後もコンソールゲーミングのみに限らず、サプライチェーンや世界的なチップ不足といった大局的な状況が今後もあらゆる分野に打撃を与え続ける可能性が高いことも踏まえると、状況は決して良いとは言えません。しかしながら、Xboxではこれからもサプライチェーンパートナーとの増産の協議や空輸などのあらゆる手段を模索することで日本国内でXbox Seriesコンソールを待ちわびている皆さんに一刻も早く製品をお届け出来るように手を尽くしています。

 また、私たちは転売やグレーなマーケットへとXbox Series X|Sを横流しされないよう、小売パートナーと様々なお話合いをしています。例として、抽選形式での販売やパートナー店のクレジットカードを所有していなければ購入が出来ない場合など、やっとの思いで日本国内に届けられたXbox Seriesが正しくファンの皆さんの手元へと届けられるよう、さまざまな対策を講じていただいています。

【Xbox Series X|S】

――2020年は新型コロナの影響で思うように行かない年になったと思います。今年はXboxにとってどのような年にしたいと考えていますか?

Jeremy Hinton氏: 新型コロナウイルスによるパンデミックによる最大の学びは、人々が如何にゲーミングを通じて他の人と繋がりあっているかをまざまざと見せつけられた、の一点に尽きるかもしれません。外出の自粛による影響もあってか、ゲーマー、特に友人らとゲームを楽しむ人たちは確実に増えています。また、こうしたゲーム人口の増加の影響を受けて、新たにゲームを楽しみだした人たちがいるのはもちろん素晴らしいことですが、なによりゲーム自体はもちろん、ゲームを共に遊ぶことで生み出されていく繋がりの価値がとてもポジティブに再確認され始めているのだと私たちは考えています。

 もちろん負の側面が無いというわけではなく、ハードウェアの生産やゲームの開発において多くの「普通」が打ち壊されてきましたが、やはり最後にはゲームがパンデミックに苦しむ世界で人と人との繋がりを維持している、というポジティブな思いに辿りつきます。2021年も同様に、人と人との繋がり、そして絆を大切にできる環境を目指し続けます。日本国内で見てもXboxでゲームをプレイしている人は歴代で最も多く、そうしてゲームを楽しむ皆さんに新たなタイトルや新たな楽しみ方を提供できることがとても喜ばしいですね。

 全ての体験においてプレイヤーを中心に置くという取り組みの結果、運よくXbox Series X|Sを購入できたプレイヤーはもちろんですが、たとえXbox Seriesの入手が困難であったとしても、PCで、そしてXbox Cloud Gamingの正式サービス後にはブラウザ、PC、コンソール機、テレビ、そしてモバイル機器といったあらゆるデバイスで、Xboxのタイトルをお楽しみいただけます。

――最後に、日本のゲームファンに向けてメッセージをお願いします。

Jeremy Hinton氏: 日本国内のファンの皆さんからのXbox SeriesとGame Passに対する継続的でポジティブな反応にはチーム一同、大変感謝しています。今後もXbox Seriesに対する需要は高止まりし続ける可能性が高く、これを一朝一夕で満たすのは非常に難しいと思われます。が、解決に至るまであらゆる手段を検討しつづけますので今しばらくお待ちください。今年の後半にはXbox Cloud Gamingが正式なサービスとして展開され、同時に私たちがいかに多様なゲーム体験を楽しまれている国内ユーザーの皆さんの声を真摯に受け止め、快適なサービスの提供を目指しているかを引き続き行動で示していければと考えています。改めて、日本のファンの皆さんに感謝します。

――ありがとうございました。