【特別企画】
ケモノたちが暮らす世界に巨大ロボット?「バイオミュータント」の世界を散歩してあれこれ考察
2021年5月21日 00:00
「光」と「闇」の違いを考えさせられる6種類の個性的な「トライブ」たち
普通に考えれば倒すべき、憎き世界の敵「ワールドイーター」だが、その生死を巡って争っている6団体についても紹介しておこう。まず初回プレイでは、必ず「ジャグニ・トライブ」か「ミリアド・トライブ」のいずれかに属する必要がある。「ミリアド・トライブ」は「より偉大な善と名誉の規範の理解に基づいて行動する」という信条の「光」に属するトライブだ。一方で「ジャグニ」は「あらゆる場所に存在を拡大し、他者に恐れられたい」という目的の元に、全てのトライブを統一する事を掲げた「闇」に属するトライブとなる。
本作では「ワールドイーターを倒して生命の樹を救う」目標を掲げるトライブを「光」、「ワールドイーターを生かして、生命の樹を破壊させる」目標を掲げるトライブを「闇」として設定している。
ただ、同じ闇に属するトライブであっても、その思想はかなり異なる。名前だけはかわいい「ピチュウ・トライブ」は「自然進化と強者生存」を教理として支持しているほか、「ロータス・トライブ」は「その過程でどれほど多くが傷つこうと完璧な秩序を築き上げる」事を目標としており、これら全てが同じ「闇」の属性というのは面白い発想だ。対する「光」の陣営についても、「アンカティ・トライブ」は団結を重要視し、「ネトラ・トライブ」は自由を尊重し、それを守るためのトライブとなっている。
どのトライブも概ね「なるほど」と納得できる思想となっているが、筆者の個人的な感想では、「ミリアド・トライブ」の「偉大な善と名誉の規範の理解に基づいて行動する」という信念の中に登場する“善”は、割と一方的な善行のように感じた。これを「光」として受け入れるのは違和感がある人も多そうだ。また、逆に「徹底した秩序の構築」が「闇」となっているのは独裁政権的な思考が含まれているのかもしれないと邪推した。
このように、どのトライブもちょっと意味深な思想が設定されており、ここでの言及は避けるが、各トライブのビジュアルと合わせて、どの国や考えをモデルにして、これらトライブを設定したのかをあれこれ想像してみるのも面白そうだ。ただしぶっちゃけると「ジャグニ・トライブ」のビジュアルはどう見ても日本の鎧武者のデザインだし、「ジャ」とつく感じもすごく日本っぽいと筆者が感じた事にだけは触れておこう。
巨大ロボからテレビまで!待ってましたの「ロストテクノロジー」
宇宙船「アーク」でこの星を去った人類が残したのは「負の遺産」だけではない。主人公たちの役に立つ便利な道具や乗り物など、当時開発されて放置されたギミックの数々、いわゆる「ロストテクノロジー」も多く残されており、これらは実際に「ワールドイーター」との戦いで使用するなど、我々の役に立つことになる。
個人的に感動したのは二足歩行の巨大ロボット「メクトン」だ。腹部にコックピットがあり、動作はかなり機敏な巨大ロボットとなる。普通に歩くと沼のようにハマってしまう「デッドゾーン」の油溜まりなどであっても、一定量の油溜まりであれば、吸い上げる機能を備え、道を遮る油溜まりを解消できる。他にも普通のバトルと同じコマンドで戦えるのだが、このバトルアクションも激しくカッコいい。ビジュアルの感じや黄色ベースのカラーリングからすると、戦争用のロボットというよりは、土木作業などで使用していたようなので、旧世界ではこうしたロボットが土木作業に従事していたのだろう。
また、今でも普通にありそうな、1人乗りの小型ボート「グーグライド」もスピーディーに水上を移動できる、ロストテクノロジーの1つだろう。改良することで水質の悪い地域も移動できるようになるなど、強化していける設定がうれしい。こちらはシンプルにレジャーなどで使われていた事が容易に想像できる。
もう1つ、「ワールドイーター」とのバトルで登場するメカはなんと「オクトポッド」というタコのようなイカのような潜水艦だ。こちらは「ワールドイーター」とのバトル以外では使えないが、こんな冗談のような1人乗りの潜水艦がなぜあるのかという背景を考えると、技術の進歩でより小型の潜水艦が建造可能となっており、これを使って水中の調査などに使われていたのかもしれない。
これら以外にも、主人公が搭乗して乗り回せる“メカ”は2つ用意されている。1つは進化したウマのような四足歩行の動物「ムート」をモデルとした四足歩行のメカ「メカ・ムート」だ。名前こそ「メカ・ムート」だが、これは恐らく過去では馬型ロボットとして、馬の代わりに乗馬などで使われていたのだろう。環境汚染にあれだけ無頓着な人たちの事だから、ウマが絶滅してしまい、その代わりに使われていた可能性を考えたら、ちょっと切なくなった。
そしてもう1つのメカが、人の「手」をモチーフにした多足歩行の謎の搭乗メカ「メカフィングロ」だ。5本の指を足の代わりとして動く挙動はかなりキモいが、妙な悪趣味感が面白い。しかも攻撃時には人差し指の部分を相手に向けて指をさすようなポーズを取り、銃発射のコマンドと同時に人差し指を銃身と見立てて実際に先端から攻撃が行なえる。これについては正直なところ、何の目的で作られたのか経緯がイマイチ、ピンとこない。
そして、実は物語の冒頭からずっと主人公に同行するバッタ型のロボット「オートマトン」も立派な不思議メカだ。「オートマトン」の役割は実に多彩で、原則としては、主人公の翻訳係をやっているようで、本作における主人公と他者との会話は全てこの「オートマトン」を介して行なわれる。
「オートマトン」はゲームを進める中で過去の記憶を巡るサブイベント「蜃気楼」をクリアすると、クリアごとに、様々な機能が解放されて使えるようになっていく。特に主人公を背後から援護してくれる「援護射撃」の機能はかなり役に立つので、順次解除していきたいところだ。これはもう明らかにスマートフォンなど個人向け端末の進化系とみて間違いないだろう。当時の人たちはこれを頭の上に飛ばして音声による命令で各種情報にアクセスしていたのだと想像できる。
ほかにもこの世界には、レコードのような物やテレビ、映写機のようなもの、電話のようなもの、スポーツジムのトレーニング機器のようなものなど、色々な「ロストテクノロジー」が楽しめるし、これらを全てチェックするといったサブミッションも用意されている。
独特ながら深みのあるSFの世界観を満喫!ゲーム的にも魅力たっぷり
以上、ざっくりとではあるが、「バイオミュータント」の世界を眺めて、色々と考察してみた。振り返ってみると、現代よりも高度な文明が栄えていた可能性が高そうだ。一方でエネルギーなど自分たちの利潤追求の結果、環境をないがしろにして自分たちが住めない星に変えてしまったという功罪も感じられる。既存のSF映画やSFアニメなどでも触れられてきたテーマの1つだが、人類のために必要なエネルギー確保のために、どこまで犠牲にしていいのか、というのは普遍的かつ答えを出すのが難しいテーマだ。
本作をプレイすることで、宇宙に行ける技術革新を行なうにはやはり地球にとってのオーバーワークはやむなし、という考え方もアリだと思うし、電気を大切にしようと考え方もアリだ。筆者個人としては、これまでも「無理」だったり「不可能」だったりした物を全て「科学の発展」で解決してきた人類の、今後の更なる「科学の発展」を信じていきたい。
こんな感じの世界観の中で、ド派手なカンフーアクションや銃撃バトルが楽しめるのが「バイオミュータント」だ。かなりユニークなSF世界観となっているので、SF好きな人や、ド派手アクションが好きな人、カンフーアクションが好きな人にも触れてほしい1本だ。
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