【特別企画】
ケモノたちが暮らす世界に巨大ロボット?「バイオミュータント」の世界を散歩してあれこれ考察
なぜ人類は消えたのか。文明の足跡をたどる
2021年5月21日 00:00
- 【バイオミュータント】
- ジャンル:アクションRPG
- 開発元:Experiment 101
- 発売元:THQ Nordic
- プラットフォーム:PS4/Xbox One/PC
- 発売日:5月25日(※Steam版は5月26日配信)
- 価格:
- 7,590円(税込、PS4版)
- 7,600円(税込、Xbox One/Steam版)
THQ Nordicから5月25日発売の「バイオミュータント(Biomutant)」は広大なSFの世界を舞台としたオープンワールド・アクションRPG。開発はExperiment 101が担う。本作オリジナルの新規IPとなっており、ゲームの舞台となるのは近未来どころか遥か未来。人類はとっくの昔にこの地を見捨てて宇宙へと旅立っており、世界は人類が残していった環境破壊や放射能汚染などの「負の遺産」により、星そのものが終焉を迎えようとしている時代の物語となる。
ポストアポカリプスな雰囲気が漂う世界を冒険してみると、はるか昔の人類が残した物は環境破壊や放射能汚染といった「負の遺産」だけでなく、当時の人たちが暮らしていた事がわかる「ロストテクノロジー」も楽しめる。本稿では、PS4版の本作を用いて、「バイオミュータント」が生み出した、新しい世界を旅して、あれこれ眺めながらその厚みのある世界背景について考察する。
冒険の舞台は環境汚染で進化を遂げた動物たちが駆け回る新世界
「バイオミュータント」の世界では、人類が生み出した「負の遺産」の影響から、環境は劣悪となり、生物たちも進化を余儀なくされた。こうした過酷な環境に適応するべく進化した新たな生態系として、知能を持ち、二足歩行ながら、毛の生えたケモノのような不思議な生物たちが現在、この星で暮らしているのだ。プレーヤーは、そんなミュータントの1匹としてこの星の命運を左右する冒険へと身を投じていくこととなる。
本作の重要なポイントとなるのが、環境汚染が極まった状態でも星を支えてきた「生命の樹」と呼ばれる神秘的な巨木の存在だ。主人公に与えられた使命は現在終焉を迎えようとしている「生命の樹」に対して攻撃を続ける巨大な生物「ワールドイーター」を倒し、「生命の樹」を守る事だ。
また、この世界で暮らす者たちの一部は村などを建ててひっそりと生活しているが、現在の世界は6つの「トライブ」と呼ばれる集団による争いが発生している。主義主張はこれら6団体それぞれ異なるが、重要なのはこの6団体は「生命の樹」を守るために「ワールドイーター」を倒すべき、という「光」の考えと「ワールドイーター」を生かして「生命の樹」を破壊させるべき、という「闇」の考えの集団に2分されている事だ。
主人公のもう1つの使命はこの6団体のいずれかの集団に属する形でこの争いを収めて統治する事。世界が終焉に向かおうとしている段階でなお、争いが勃発する辺りも非常に知能を持った生命体らしいアクションだ。
本作に登場するケモノたちは、主人公を含めてどこか哲学的だ。筆者がそう感じたのは、香港のカンフー映画のようなセリフのテイストからだ。「正しい」事、「悪い」事とは何か。そういった哲学的なテーマは、本作の世界観にも通ずるように感じる。
世界を滅ぼそうとする巨大生物「ワールドイーター」と、それを退治してこの星を守ろうとする仲間たちの行動は本当に「正しい」事なのか?ここまで壊滅的になった世界なら、1度破壊してしまうべきなのか?答えを選ぶのは主人公の全ての行動次第というのが、本作の最大の魅力の1つと言える。
主人公が旅立つこの世界は非常に広大で、さらにかなりきめ細かく作りこまれている。そのため、この世界を旅してみると、環境破壊による気候変動、未だに化学物質が流出し続ける工場などの気味の悪い世界が見られるだけでなく、劣悪な環境下でも大地に根をおろして育ってきた自然の木々や草原などの大自然そのものといったおどろくような自然の景色も堪能できる。
有害な廃棄物による環境破壊が発生!
世界を終焉に導いた犯人の名前は本作をプレイしていると至るところでその名前が出てくる。巨大企業「トクサノール」だ。トクサノールは自然環境を無視して様々な開発を行ない、有害な廃棄物を次々と地面に埋めまくった。そして、埋める場所がなくなった彼らは続いて海中へと投棄を繰り返した。こうした行為により世界中の環境がみるみるうちに破壊され、人が住めない状態になってしまった。そのため、彼らの一部は「アーク」と呼ばれる宇宙船を建造して、宇宙に旅立ってしまったのである。これらはチュートリアル時に確認できる資料にもはっきりと記載がある。
この事実のみを捉えて本作が単に「環境破壊」を一方的に批判する事をテーマにしていると考えるのはちょっと短絡的すぎるだろう。現代より遥かに劣悪な環境破壊を行なったにも関わらず、その後も世界は姿と形を変えて、こうして生き残っているという大自然の強さをテーマにした一面もある。
また、人類は環境が破壊された星を捨てて、宇宙に旅立てるだけの科学力を身に着け、旅立っていった。今頃は新たな星に移住して平和に暮らしているかもしれないし、移住可能な星が見つからずに、全滅しているかもしれない。こうした「if」を想像させてくれる設定の数々は実にSF的で面白いし、プレイしていて非常に胸が踊る。
旅立ったあとのアークに関する記述は、少なくとも今回プレイしている中では確認できなかった。物語の進め方によっては、そうした他のアークに関するエピソードが確認できるかもしれない。
残されたこの星はどれだけの年月を経て、環境に適応した新たな生命を生み出したのだろう?現在のこの星は陸地が多く、海や川は非常に狭くなっている印象を受ける。こうした水辺についても、キレイな水のエリアもあれば、緑色に変色した水、さらには底なし沼のように泥まみれの水もあり、水中の生態系が見当たらない怖さも感じられる。
実際のゲームプレイでもそれは現れており、ぱっと見キレイな水であっても主人公は海や川を泳ぐ事ができない。正確に言うと、水に浸かるとすごい勢いで主人公の体力ではなく「気」がダメージを受け、そのまま気がなくなると絶命してしまう。ゲームのシステム上、普通に戦闘などで消耗した「気」は一定時間で回復するなど、これが空になっても、死ぬことはない。水などから受けるダメージが体力ではなく、気である事から単なる汚染ではなく、水源自体が主人公たちの弱点になっている可能性は高そうだ。
「バイオミュータント」の歩き方!世界中を歩き回ってみた
世界の地図を見てみると、大きく「ホウェアアバウツ」、「デッドゾーン」、「サーフ列島」、「ナップストーニーズ」、「イァーブフィールズ」、「フナッキーリーブス」、「クラッピー砂丘」、「ムシマッシュ沼地」の8エリアに分類される。本作の世界は全体的に高低差が激しい。環境破壊の流れからの地殻変動によるものか、前述の「生命の樹」による奇跡的なパワーの代償か、これに関する答えについて筆者は見落としたか、まだ見つけられていない。
名前がそのまま特徴を示しているエリアも多く、「サーフ列島」は海のような水源が中心のエリアとなっており、水上を移動できる乗り物「グーグライド」がないと散策すら困難なエリアだ。気温や湿度は現在の熱帯エリアに近いと思われ、その証拠に建造物の遺跡などに侵入すると、他のエリアよりも室内に多くの草が密生しているのが確認できた。
「ムシマッシュ沼地」は緑色の化学物質に浸食された緑の川が流れるエリアで、木々や草花も多いのだが他と比べて不自然に多く、緑が妙に毒々しく感じてしまうエリアだったので、放射能汚染などで、木々などが巨大化しているのかもしれない。
劣悪な環境の代名詞という点では「クラッピー砂丘」がワーストだろう。このエリアは全面的に「焦熱ゾーン」と呼ばれるエリアとなっており、主人公の熱耐性を高くしておくか、または耐熱服などの装備をしないと、普通に歩く事もかなわない。エリア内には工場の跡地もあるが、この工場付近は未だに有害な化学物質が流出し続けている「バイオハザードゾーン」となっており、耐バイオハザード装備が必要となる。
また、「デッドゾーン」は地域のあちこちにデッドオイルが溢れており、地面が沼地のようになっている。そこへ迂闊に足を踏み入れると底なし沼のように沈んでいってしまう。こうしたオイルの流出による地面の沼化は各地に見られるが、一番顕著に見られるのがこの「デッドゾーン」と「クラッピー砂丘」の最北エリアの海だ。
その他のエリアについては、部分的に「バイオハザードゾーン」や「低酸素ゾーン」、「放射能汚染ゾーン」が広がっている場合もあるが、全体的には比較的すごしやすいエリアが多い。「ナップストーニーズ」は赤黒い岩山が多く、高低差が激しいため、エリア内の散策は苦労するが、普通に動き回れる程度の温度だ。
「ホウェアアバウツ」や「フナッキーリーブス」なども、高低差が激しい山が多く立ち、周囲をキレイな水の川が流れるエリアだ。草木の生えるバランスもほどよく、美しい景観も多く見られる。そして、中央に位置する「イァーブフィールズ」の中央には本作最大の謎の1つ「生命の樹」の巨大な幹があり、そこから「ムシマッシュ沼地」の方面や、「サーフ列島」、「デッドゾーン」、「フナッキーリーブス」の4方向にそれぞれ巨大な枝が宙を這うという構造になっている。
そしてこれら4方向の枝の末端には、謎の巨大生物「ワールドイーター」が巣を作っており、そこで日々、「生命の樹」に噛みついて、その寿命を蝕んでいるのである。
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