【特別企画】

腕がプルプルする! ひたすら登るだけだが妙に楽しいVRクライミング「The Climbs 2」プレビュー

辛さ、スリル、達成感が「登る」ひとつに集約されたクライミングアクション

3月4日 発売

価格:2,990円(税込)

 両手を使って、崖や岩べり、あるいは都会のビル群をガシガシと這い登っていく。手を離したら真っ逆さまだが、苦難を乗り越えて頂上へとたどり着けば、360℃に広がる絶景が待っている。いわゆる「クライミング」をVRゲームとしてアレンジしたのがOculus Questシリーズ用スポーツ「The Climbs 2」だ。

 ゲームとしては「両手で登るだけ」と実にシンプルなのだが、ゲームデザイン的に緩急をつけつつ、「ずっと腕を上げ下げし続ける」という肉体の酷使が加わって本作ならではの味わいになっている。今回は3月4日に発売された本作を事前にプレイし、その感触をお伝えしていきたい。

 なお、価格は2,990円(税込)。対応プラットフォームはOculus Quest/Quest 2。前作「The Climb」とセットになった「The Climb 1 & 2 Duo Pack」は3月5日3時~3月13日3時まで販売される。価格は3,990円(税込)。

【The Climb 2 - Announcement Trailer】

「登る」だけなのに楽しい! 緊張をうまく組み込んだゲームデザイン

 「The Climbs 2」でやることは本当に単純で、崖や壁の取っ掛かりを「掴んで登ること」を繰り返すだけ。両手にコントローラーを持ち、人差し指のトリガーを押して崖の取っ掛かりを掴む。

 両手で同じ操作が可能なので、掴んで移動して離す、掴んで移動して離すを繰り返してルートを徐々に攻略していく。なお足は動かさないが、両手をめいっぱい伸ばして登る必要は出てくる。スペース的にはなるべく広い方がおすすめだ。

 プレーヤーの体を支えているのは2つの手だけ。もし、両手とも崖から離れてしまったら……。その場から真っ逆さまに落ちるスリル体験を味わうことになる(暗転後、途中のチェックポイントからやり直し)。視界がサーッと動いて、体が「ヒュンッ」と反応する。VR内で自由落下する怖さといったらない。

用意された地形を登っていく。言ってみれば、それだけのゲーム

 ルートは岩山から都会まで、数種類のロケーションと、その中にさらに異なる難易度のものが用意されている。それぞれ架空の場所だが、世界のどこかにありそうな絶景が広がっている点では共通している。

 最初はチュートリアルから始まって、その次に各地の初級ルートが開放される。これをクリアしたら、中級ルート、上級ルートと進むことができる。プレイ時間にして、初級や中級で、じっくり進んでだいたい10分~15分ほどだろうか。

 ゲームのポイントは、両手の使い方に「スタミナゲージ」と「チョーク」の管理を組み込んでいること。崖を掴む際、片手だけだとスタミナゲージが減っていき、ゼロになると手を離してしまう。両手で掴めばスタミナは回復するが、ルートを進むことは手を交互に離すことを意味するので、モタモタしていればあっけなく落下となる。

 つまり、移動中は常に焦りを感じながら、ある程度一気に進むことになる。ルートの先を確認して、ある程度まで一気に移動、良きところで両手で休憩。また先のルートを確認して、一気に移動、休憩。そうしていると、ほどよく緊張しながら、地形に合わせて臨機応変に体の使い方を変えていく楽しさがわかってくる。

手を片方離すだけでも緊張が走る。緊張に打ち勝ちながら少しずつ前に進む。なお天候は常に一定で、雨や吹雪といったアクシデントの類は発生しない

 さらに「チョーク」は、手につける滑り止めの粉のこと。チョークは地形を掴むたびに手から落ちていくもので、残りチョークが少ないほどスタミナの減りもはやまる。手を崖から離し、中指のトリガーを押したまま手を降るとチョークを付け直せる。手の動きとスタミナにばかりに注意が行っているとうっかりチョークが全部落ちていて、次に手を離したときにガツンとスタミナが減ってそのまま落下、ということが起こる。

 単純に上っていく最中でも、色々なところに気を遣いながら腕と手を動かし続けないといけない。時には両手を離して「ジャンプ」し、遠くにある地形に飛び移らないといけない瞬間もある。ジャンプは、ボタン操作か、掴み状態で手をグッと引き寄せながらトリガーを離すと見ている方向にピョーンと飛ぶ。ジャンプによってうまくいけば一気に距離を稼ぐこともできるが、失敗すればもちろん落ちる。プレイの中では、ときに勇気も必要となる。

チョークはこまめに付けていった方が、攻略は楽になる

腕の疲労が辛い! が、その分達成感も強くする

 また個人的にもっとも気に入っているのは、“一度始めたらなかなか腕を下ろせない”ところだ。ひとつのルートは頂上にたどり着くまでに休憩ポイントがあるが、数箇所程度しかない。あとは崖の途中にチェックポイントがあり、もし落下したら最後に通過したチェックポイントからやり直しとなる。

 つまり、チェックポイントを通過する際にも両手は崖を掴んだまま。腕の力を抜いて、だらんと筋肉を休ませるポイントはゲーム中にほぼ出てこない。そんな状態がずっと続くので、運動不足の筆者の腕はプレイ数十分と経たないうちにプルプルと震えてきた。

登れば登るほどリアルの方のHP(肩から先)が削られていく

 これが、結構キツい。乳酸が溜まって、筋肉が酷使されている感じ。実際のクライミングに比べたら最初に出会ったスライムに手こずっているような弱小ぶりだが、肉体的な辛さがゲームデザインに組み込まれているように感じられて秀逸な体験になっていると思う。

 コースが長ければ長いほどあらゆる意味で追い込まれていくわけで、その辛さを乗り越えてたどり着く頂上での達成感は、「ついにゴールした!」という爽やかさがある。ずっと崖を眺め続けて、頂上でバッと目の前に壮大な景色が広がる開放感も気持ちのいいものだ。

 ほかにも“うんてい”のように腕を前後させて進んでいくコースや、掴むと崩れる地形など、行く手を阻むギミックは多くある。3D酔いについては、自分の手で動かしていく実感があるので比較的感じにくい作りだろう。ただ、落下シーンやグラグラ揺れるオブジェに掴まるときは、若干の酔いを感じたのでその点は注意だ。

 本作はそこまでヘビーな内容ではないが、「腕の運動がてら、ちょっと登ってみようかな」と思ったらすぐにプレイできるような気軽さがある。内容はしっかり日本語化されているし、(高所恐怖症でなければ)多くの人が遊びやすいタイトルだ。

登り切ると景色も一望できて気持ちがいい
様々なギミックがあり、ルートごとの様々な表情を楽しめる