【特別企画】

コナミのシューティングゲーム22年の歴史と素晴らしさを耳で感じろ! 「ミュージック フロム コナミアーケードシューティング」を全曲聴いてみた

DISC6:旧シリーズ作品のアレンジ曲も織り交ぜた、ノリノリのBGMが盛りだくさん

 こちらは横画面縦スクロールシューティングの「ツインビーヤッホー!」と、縦・横両方にスクロールする「沙羅曼蛇2」という組み合わせ。

 「ツインビーヤッホー!」は、パステル(※2P側の女性パイロット)がゲーム起動時にしゃべる「おはようございます。今日も一日、一生懸命頑張ります!」のセリフこそ入っていないが、オープニングデモ曲「失われたメロディ」もバッチリ収録。1面のノリノリのBGM「Twin Flight」をはじめ、プレーヤーを「ツインビー」シリーズならではのポップな世界観に引き込み、モチベーションをぐっと高める曲の数々は実にお見事。最後のトラックに収録されている未使用曲も、本シリーズのファンは聴き逃がすことのないようにしたいところ。

 「沙羅曼蛇2」は、前作「沙羅曼蛇」のリリースから10年のブランク(※初代は1986年、後者は1996年発売)があったためなのか、前作とはまったく違う曲調となり、不気味さをほとんと感じず、プレーヤーをまるで宇宙旅行をしている気分にさせてくれるかのような、軽快な曲が多いのが特徴というのが筆者なりの解釈だ。

 本作にも過去作のアレンジ曲があり、2周目の1面と5面で流れる「POWER OF ANGER」と「PLANET RATIS」は、前者が初代「沙羅曼蛇」の1面、後者は3面のBGMが元ネタ。また2周目の4面の「LAST EXIT」は、MSX版「沙羅曼蛇」のヴェノム艦ステージ(※ゲーム上の表記はX面)のBGMが原曲で、そして偶数ステージの対ボス戦のBGMは、初代「沙羅曼蛇」のボス戦のBGMをアレンジしたものだ。いずれもオリジナル曲とはまた違ったカッコよさがあるので、じっくりと堪能していただきたい。

「沙羅曼蛇2」のアルバム(1996年発売)。筆者のゲームの腕はヘタクソだったが(苦笑)、本作のBGMは今でもお気に入りで、仕事中に時折聴いている

DISC7:これぞ「パロディウス」シリーズBGMの集大成!

 横スクロールシューティング「セクシーパロディウス」の曲だけを、全44トラックに収めた1枚。

 本作も歴代「パロディウス」シリーズと同様にクラシックやポップス、童謡のアレンジと、コナミ歴代タイトルのアレンジ曲とを織り交ぜ、プレイ中は耳でも楽しませてくれるBGMがズラリと並ぶ。

 1面の北の牧場ステージのBGM「PASTORAL MARCH」は「アメリカン・パトロール」をモチーフにした、ポップなノリとシリアスな戦いのイメージが混在した、いかにも本シリーズらしい1曲。ちなみに、「PASTORAL」とは「牧畜の」という意味の言葉で、実にシャレが効いている。さらに1面ボス、コーンチワ戦のBGMは「コーンこん狂詩曲」という曲名だが、こちらは童謡「こぎつね」が元ネタで、これまた心憎いネーミングだ。

 また、3面の竜宮城ステージのBGMは、懐かしの格闘アクションゲーム「イー・アル・カンフー」のBGMがモチーフになっていて、これまたノリノリで素晴らしい1曲。ほかにも自機の一種、シューティングスターの空中戦のテーマは「ツインビーヤッホー!」の「Twin Flight」がモチーフで、カプセル怪獣カプチーノ戦のBGMは「極上パロディウス」の5面ボスの曲、スペシャルステージの曲は「サンダークロスII」「グラディウスII」「トライゴン」などのメドレーになっており、コナミシューティングオールスターズとでも言うべき、実にゴージャスな構成だ。

 なお、最終トラックに収録されている「Help Me!」は海外版の倉庫ステージ(4A面)のBGMで、モーツァルトの「交響曲第40番 第1楽章」がモチーフだ(※PS版であれば、国内バージョンでも本曲を聴くことができる)。

DISC8:当時の最先端技術、トレンドを体現した2タイトルはBGMも意欲作ぞろい

 3Dポリゴンで描いたキャラクターが登場することで、当時のプレーヤーを驚かせた縦スクロールシューティング「とべ!ポリスターズ」と、「グラディウス」をモチーフにした大型体感筐体を使用した3Dシューティング「ソーラーアサルト」および「ソーラーアサルト リバイズド」のBGMを収録した1枚(※「リバイズド」は「ソーラーアサルト」の新バージョンのこと)。

 「とべ!ポリスターズ」に登場するキャラクターは、そのほとんどがコミカルなデザインということもあり、BGMは1面からポップで軽快な曲が多いというのが当時の筆者の印象だった。本アルバムのライナーノーツの解説を読んでみると、「とべ!ポリスターズ」は「ツインビーヤッホー!」のスタッフが参加したとのことでナルホドナットクだ。

 1面の「ゆけ!ポリゴンタウンへ」から、最終面(7面)の「救え!ポリゴン星」まで、各ステージのBGMは、まるで空中散歩をしているかのような気分にさせてくれる曲ばかり。対ボス戦のBGMですら、おどろおどろしさをほとんど感じさせず、プレーヤーの緊張感を高めるような曲は、(あくまで筆者の体感だが)5面以降のボス戦に限られるのが、本作の大きな特徴と言えるだろう。

 「ソーラーアサルト リバイズド」は、「ソーラーアサルト」に炎のステージ(2面)を追加して全6面構成となった作品だが、本アルバムにも追加ステージのBGM(「FIERCE BLAZE」とボス戦の曲)がバッチリ収録されている。

 オープニングデモ曲から「グラディウス」や「沙羅曼蛇」シリーズと全然違う曲調で、各ステージのBGMも、異空間に引き込まれたかのような気分にさせられる、テクノ調の不思議な曲が並ぶ。本作をプレイしたことがない人は、これらの曲を初めて聴いたときは、旧シリーズとの違いにきっと驚くことだろう。またエンディング曲は、初代「グラディウス」の空中戦の曲「Beginning Of The History」をアレンジしたものになっている。

DISC9:ボーナストラックに、懐かしのマニアックシューティングゲームの曲が登場!

 横スクロールシューティングの「グラディウスIV」と「オトメディウス」の全曲、さらに最終トラックにはボーナストラックとして、縦スクロールシューティング「ファイナライザー」が収録されている。

 「グラディウスIV」は、「グラディウスIII」の発売から10年後に登場したこともあり、使用した基板も音源も異なるが、ライナーノーツの解説にもあるように「グラディウスII」をほうふつとさせるBGMがいくつもあるのが特徴。なので、本作と「グラディウスII」の各曲を聴き比べながら楽しむことをおすすめしたい。また,旧シリーズの敵キャラが出現する、いわゆるボスラッシュステージのBGMのみ、過去作と同様に初代「グラディウス」と「グラディウスII」のボス戦の曲を、それぞれアレンジした構成になっている。

 「オトメディウス」は、ビックバイパーやロードブリティッシュなど、機体を主に女性キャラに擬人化した戦闘騎が登場するが、敵キャラのデザインは「ツインビー」や「パロディウス」シリーズほどコミカルではないこともあり、BGMも総じてコミカルさよりもカッコよさ志向というのが筆者の印象。東京ステージ(の高架下)のBGMには笛のメロディを使用して和風テイストにしたり、アレキサンドリアのピラミッド内部のBGMは、いかにもエジプトや中近東の古代遺跡を彷彿とさせる曲にするなど、旧「グラディウス」シリーズとも違った作風になっている。

 36トラック~最後の47トラックまでは、歴代コナミシューティングのアレンジ曲がズラリと並ぶ。例えば「MOAN」は、何とMSX版「スペースマンボウ」のラスボス戦のBGMがモチーフで、「STAGE BOSS」はPS2版「グラディウスV」のボス戦のBGMを、「DON'T LEAVE ME ALONE」はMSX版「グラディウス2」の最終面のBGMをアレンジしている。アーケードだけでなくPC、家庭用からの言わば逆輸入曲もあり、プレーヤーを大いに楽しませてくれる粋な演出だ。

 「ファイナライザー」の曲は、ゲームスタートからメインBGM、ゲームオーバーなどの各曲と、プレイ中のショット、爆発、アイテム獲得音などの各種SE(効果音)を聴くことができる。元のゲームは1985年に発売された古い作品ゆえ、今となっては実に貴重な音源だ。

「ファイナライザー」は「コナミ・ゲーム・ミュージックVOL.2」(※写真は2001年発売の再販版)やコナミミュージック名曲コレクションVol.6(2004年)などに収録されていた

DISC10:アルバムでしか聴けない貴重なアレンジ、未使用曲がズラリ

 最後の10枚目は「ボーナストラック(アレンジ曲等)」と題し、「パロディウスだ! ~神話からお笑いへ~」、「極上パロディウス」、「沙羅曼蛇」、「沙羅曼蛇2」、「出たな!!ツインビー」、「グラディウスIV」の各タイトルから、全18のアレンジ曲(※「沙羅曼蛇2」は未使用曲)を収録。過去に発売された、各タイトルのアルバムにのみ収録されたアレンジ、未使用曲を再録した1枚だ。

 ゲームミュージックアルバムを買ったことがない人はご存知ないかもしれないが、実は古くからゲームミュージックアルバムにはアレンジ曲がよく収録されている。メドレーやボーカル付き、あるいはオーケストラ楽団やバンドの生演奏など、ゲームの基板やソフトを持っていても聴くことができない曲を鑑賞できるのも、アルバムならではの楽しみどころなのだ。(※ちなみに、1986年にアルファレコードが発売した「コナミ・ゲーム・ミュージックVOL.1」の時点で、すでに「グラディウス」と「ツインビー」の素晴らしいアレンジ曲が1曲ずつ収録されている。)

 今から昔のアルバムを購入しようと思っても流通量が少ないし、もしあったとしても値段が高騰して手が出せないなんてことは、筆者の経験上ザラにある。だからこそ、またこうして貴重なアレンジ曲を聴ける機会に恵まれたことは素直にうれしい。もし今回、初めてゲームミュージックアルバムを購入される方は、DISC10を通じて「ゲームミュージックって、アレンジしても楽しめるんだ!」という新たな感動をきっと体験できることだろう。

こちらは「沙羅曼蛇」などの曲が収録された「コナミック・ゲーム・フリークス」(※初版は1987年発売で、写真は2005年発売の再販版)

早期購入特典:「ミュージック フロム オリジナル・パロディウス」

 前述したように、MSX版の元祖「パロディウス」のBGMを全曲収録している。ビジュアルはコミカル、かつ良い意味でおふざけ要素が満載の本作だが、クラシック曲をモチーフにした素晴らしいBGMがズラリとそろっている。筆者も本稿執筆のため久々に聴いたが、そのクオリティの高さには改めて驚かされた。

 またまた私見で申し訳ないのだが、第三惑星(3面)のテーマ 「幻想蛸興曲」は、グリーグ作曲「ペールギュント第1組曲 山の魔王の宮殿にて」と、ショパン作曲「幻想即興曲」がモチーフで、ネーミングのセンスも含めて実にカッコイイ曲に仕上がっているので必聴である。4面のBGM「お菓子な世界」も、ドボルザーク作曲「新世界より」と、イェッセル作曲「おもちゃの兵隊の観兵式」をアレンジした、シリアスさとコミカルさが融合した見事な曲だ。またメインのBGMとは別に、SEだけを集めたトラック「S.E.コレクション」が収録され、本作のサウンドの魅力を余す所なく楽しめるのも実に素晴らしい。

 なお申し遅れたが、本アルバムのライナーノーツには、歴代「パロディウス」シリーズのBGMのモチーフとなった曲リストも載っているので、こちらを見ながら鑑賞することをおすすめしたい。あるいはクラシック好 きの方であれば、最初はライナーノーツを閉じておき、元ネタとなった曲は何なのか、全部で何曲当てられるかを自身で試しながら聴くのもまた一興だ。