【特別企画】
懐かしの歴代ニチブツシューティングのBGMを収録したアルバムが登場! 「ニチブツ シューティングサウンドボックス」開封レポート
CD9枚組の大ボリューム!
2022年6月28日 19:20
- 【ニチブツ シューティングサウンドボックス(Nichibutsu Shooting Sound Box)】
- 6月29日 発売
- 価格:14,850円(税込)
80年代のゲームセンターを彩り、ファミコンをはじめとする家庭用ソフトも多数発売した「ニチブツ」こと日本物産のシューティングゲーム。その歴代タイトルのBGMをまとめて収録したゲーム音楽アルバム「ニチブツ シューティングサウンドボックス」が、シティコネクションから6月29日に発売となった。
本アルバムは、1981年に登場した「ムーンクレスタ」をはじめ、「マグマックス」、「テラクレスタ」、「アームドF」などのアーケード用タイトルに加え、ファミコン版の「セクロス」やPCエンジン版の「テラクレスタII マンドラ—の逆襲」など、家庭用も含めた歴代ニチブツシューティングのBGMをまとめて収録。
さらにボーナストラックとして、実際の作品には使用されなかった幻の曲や、多くのニチブツ作品で作曲を担当した音楽家、吉田健志氏の資料用音源や本邦初公開のアレンジ曲も収録された、実にCD9枚組にも及ぶ豪華セットとなっている。
以下、本稿では本アルバムのパッケージ内容の紹介と、「ムーンクレスタ」以来ニチブツシューティングの大半のプレイ経験を持つ、筆者なりの聴きどころや注目ポイントなどをお伝えしよう。
【収録タイトル】
・DISC 1
「ムーンクレスタ」[AC]
「ニチブツアーケードクラシックス ムーンクレスタ」[SFC]
「チューブパニック」[AC]
「セクターゾーン」[AC]
「セクロス」[FC]
「悪戯天使」[AC]
「マグマックス」[AC]
「マグマックス」[FC]
「COP01」[FC]
・DISC 2
「テラクレスタ」[AC]
「テラクレスタ」[AC]※海外ver
「テラクレスタ」[FC]
「テラクレスタ」[NES]
・DISC 3
「聖戦士アマテラス」[AC]
「UFOロボ ダンガー」[AC]
・DISC 4
「妖魔忍法帖」[AC]
「超時迷宮レジオン」[AC]
「テラフォース」[AC]
・DISC 5
「アームドF」[AC]
「戦え! ビッグファイター」[AC]
「ライサンダー」[GB]
・DISC 6
「テラクレスタII マンドラーの逆襲」[PCE]
「テラクレスタ3D」[SS]
・DISC 7
「VIDEO GAME ANTHOLOGY vol.1 テラクレスタ/ムーンクレスタ」[X68000]
・DISC 8 [BONUS TRACKS]
カセットテープ音源 復刻盤
・DISC 9 [SPECIAL TRACKS]
秘蔵未公開音源 発掘盤
「ニチブツ シューティングサウンドボックス」開封の儀:ブックレット掲載のロングインタビューも必読
本アルバムを手に取ったら、まず注目したいのがパッケージ表面のデザインだ。ニチブツシューティングを代表する名作「テラクレスタ」のラスボスであるマンドラーに対し、5機合体に成功して無敵の火の鳥と化した自機が真っ向勝負を挑む、「これぞニチブツシューティング!」という象徴的なシーンの写真が使用されている。さらには各収録タイトルの自機、および主人公がズラリと並んだデザインも実にカッコいい。
ブックレットの充実ぶりも見逃せないポイント。歴代ニチブツ作品の大半で作曲を手掛けた吉田健志氏が語る、自身の作風や当時の職場環境など、貴重な証言が満載のロングインタビューが掲載されている。またゲーム画面の写真キャプションには「『コスモポリス ギャリバン』のクレジット音が、ゲーム音楽史上初のオーケストラヒット」と書かれているなど、ゲーム音楽の歴史も学べてとても面白い。
各CDのジャケットと表面には、各収録タイトルの画面写真と自機または主人公がデザインされている。DISC8には、原盤のカセットテープの写真と、開発機材のPC(※ソニー製の「SMC-777」と思われる)やキーボードの写真が、DISC9には日本物産のオフィス外観と、オフィス内の写真が印刷されているのも面白い。
ハンパない「テラクレスタ」愛が込められた逸品。門外不出の幻の音源にも驚愕!
早速、本アルバムの収録曲をざっと聴いてみたところ、最新の高品質デジタル録音で収録したことで、いずれも古い作品でありながら、音質がとてもいいというのが第一印象。実は筆者、1988年にポニーキャニオンが発売した「GAME SOUND NICHIBUTSU -G.S.M. Nichibutsu 1-」を今でもたまに聴くのだが、こちらにも収録されている「ムーンクレスタ」や「マグマックス」「テラクレスタ」などの曲と比ても、明らかに音質が向上している。
また、「妖魔忍法帖」や「聖戦士アマテラス」など、一部のタイトルでは過去に発売されたアルバムとは収録内容が異なっているので、その違いを聴き比べつつ楽しむこともできる。
本アルバムならではのこだわり、かつ一番の聴きどころは、やはり数あるニチブツシューティングの中でも最も人気、知名度ともに高いであろう「テラクレスタ」のBGMが、あまねく収録されているところにあるだろう。DISC2の収録曲はすべて「テラクレスタ」で、元祖アーケード版だけでなく、海外版とそのアナザーバージョンメドレー(※前述の「GAME SOUND NICHIBUTSU」にも収録された、海外版の再調整バージョン)、さらにファミコン版およびNES(※海外版ファミコン)版も加えた、実に5種類もの音源が収録されている。
特に、当時アーケード版をやり込んでいた人であれば、国内版のBGMは主にPSG音源、海外版はFM音源を使用しており、同じタイトルでもまったく曲が異なっていたことをご記憶のハズ。DISC2を再生すれば、かつてゲーム雑誌「Beep」の付録だったソノシートに海外版のBGMが収録され、国内版との違いに衝撃を受けた懐かしい思い出に浸ることができるだろう。
また、筆者は本アルバムで初めてNES版のBGMを聴いたが、「これが同じファミコンの曲なのか!?」とびっくりするほど国内版とは異なり、なおかつとてもカッコイいい曲だったので大いに驚かされた。
DISC2だけでも十分なボリュームがあるが、DISC7には1992年に電波新聞社が発売した、X68000版の「テラクレスタ/ムーンクレスタ」の「テラクレスタ」までもが収録されている。
本作は、元祖アーケード版の忠実移植がセールスポイントのPC用ソフトで、「テラクレスタ」には最初から国内版と海外版のBGMを切り替えて遊べる機能が搭載されている。さらに驚きなのが、両バージョンの音源に加え、裏技を使用すると選択できるようになる、隠しバージョンの音源も全曲収録していること。恥ずかしながら、筆者もX68000版を持っているのに隠しバージョンの存在を今までまったく知らなかったので、その存在を教えてくれたスタッフには心から感謝したい気持ちでいっぱいだ。
ボーナストラックのDISC8には、ファミコン用ソフト「テラクレスタ」のキャンペーン賞品として制作され、後に日本物産が通販で発売した「ニチブツ テラクレスタ オリジナル・サウンドトラック」の復刻と、かつて吉田氏が開発基板を使用して自主的にカセットテープに録音した、幻の音源を復刻した曲を収録しているのも注目ポイントだ。
今では入手が極めて困難であろう、カセットテープ盤もわざわざ入手して収録する、「テラクレスタ愛」に満ちあふれた制作スタッフの尋常ならざるこだわりぶりには感服するばかりだ。
さらに数々の未使用曲が収録されたことで、「ナルホド。『セクロス』や『UFOロボ ダンガー』のBGMは、最初はこんなイメージで作っていたのか!」と聴き比べつつ楽しめる。
DISC9には本邦初公開となる、吉田氏によるアレンジ曲集と、「セクロス」と「八犬伝(※「妖魔忍法帖」の開発版の名称)」のスケッチ集がたっぷりと収録されている。「鎮魂歌[歌声合成ソフト](テラクレスタ:マーチング・ラスタ)」など、アレンジ曲の一部はボーカル付きで、オリジナル版とも過去のアレンジ作品ともまったく違った作風が楽しめる。
ボツ曲を収録したゲーム音楽アルバムは昔から多数出ているが、まだ試作段階、スケッチレベルの未発表曲が多数聴ける本アルバムは、「当時のゲーム音楽のコンポーザーは、こんな試行錯誤をしながら作曲をしてたのか……」などと想像を膨らませながら鑑賞する、ゲーム音楽の新たな楽しみ方を我々に提供してくれた。
さらに本アルバムを購入すると、「ハイレゾ音源ダウンロードカード」が付いてくる。はたして、「ハイレゾ音源」とはいったいどんなものなのか? その中身は、買ってからのお楽しみということで、本稿では明かさない。どうか皆さん自身の耳で確かめていただきたい。
他社とは一線も二線も画す、一度聴いたら容易に忘れることのできない、往年のニチブツサウンド独特の金属音が奏でる軽快なメロディ、派手なベースやドラム音を使用したBGMの数々は、いったいどのようにして誕生したのか? 個々の収録タイトルを遊んでいた頃の思い出に浸れるだけでなく、往年のニチブツサウンドの原点から発展の歴史も堪能できる、とても面白いアルバムができたなと率直に思えた。
アーケード版の存在を知らず、家庭用ソフトで断片的にニチブツ作品に触れた程度の人であっても、元祖アーケード版との違いを聴き比べたり、各DISCで歴代タイトルのBGMの変遷をたどりつつ聴くことで、本アルバムを存分に楽しめるのではないだろうか。
・クラリスショップ「ニチブツ シューティングサウンドボックス」のページ
・秋葉原 BEEP「ニチブツ シューティングサウンドボックス」のページ
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