【特別企画】

コナミのシューティングゲーム22年の歴史と素晴らしさを耳で感じろ! 「ミュージック フロム コナミアーケードシューティング」を全曲聴いてみた

DISC1:コナミ基板、サウンドの歴史が学べる1枚

 DISC1には、バブルシステムの「Morning Music」と、「ツインビー」、「グラディウス」、「沙羅曼蛇」、「ライフフォース」、「フラックアタック」の5タイトルの曲が収録されている。

 バブルシステムとは、コナミが開発したシステム基板の名称で、「ツインビー」「グラディウス」などに使用されていた。本基板は、電源を入れてからゲームが遊べる状態になるまでにアイドリングをする必要があるが、この間に流れる曲が「Morning Music」だ。音楽ゲーム好きの人であれば、「キーボードマニア」に本曲のアレンジ版が楽曲のひとつとして収録されたことをご記憶の方もいることだろう。その原曲が聴けるという点でも、DISC1は貴重な1枚と言える。

 ポップで軽快な「ツインビー」、プレーヤーの士気、テンションを高めまくるノリノリの曲がそろった「グラディウス」、そして「沙羅曼蛇」はコナミ初となるFM音源チップが使用され、前作「グラディウス」とは違った味の軽快な曲がズラリとそろう。また「沙羅曼蛇」の改良版にあたる「ライフフォース」は、「沙羅曼蛇」と重複した曲は省き、本作オリジナルの2、4、5面のBGMのみ収録している。

 「フラックアタック」のBGMを一度聴けば、上記の収録タイトルよりもドラム音がよりリアルになっていることに気付くハズ。ライナーノーツの解説によると、コナミが初めてドラム音にサンプリングを使用したのが実は本作とのこと。ドラム音に注目しながらながら聴くことで、DISC1の曲がさらに楽しめることだろう。

こちらは筆者所蔵の「Morning Music」や「ツインビー」、「グラディウス」などを収録した、「コナミ」の社名が入った初のアルバム「コナミ・ゲーム・ミュージックVOL.1」(※初版は1986年発売で、写真は2000年発売の再販版)

DISC2:名作、名曲ぞろいで文句なしのラインナップ!

 「A-JAX」「グラディウスII」、「サンダークロス」の3タイトルを収録。「A-JAX」には、2Dステージのボス戦の曲「MELT DOWN」をはじめ、オーケストラヒットを使いまくった力強い、かつ聴いているだけで元気がわいてくる曲が目白押し。また、海外版の1面とボツ曲が3曲も聴けるのも、本作のファンなら絶対に聴き逃がせないポイントだ。

 不朽の名作横スクロールシューティング「グラディウスII」は、今さら改めて称賛するのが無粋ではないかと思えてしまうほど、ゲーム内容も曲もあまりにも素晴らし過ぎる作品。それでも私見を書かせていただくと、プレイしていてテンションが上がりまくる1面のBGM「Burning Heat」、4面の「A Way Out of The Difficulty」、ステージの途中で敵のモアイが怒りモアイとなった直後、曲がハイテンポの3拍子に変わる5面の「The Old Stone Age 1.2」、最終面の終盤、巨大な6本足のクラブが出現したときの緊迫感を煽る「The Final Enemy」も秀逸。そしてエンディング曲の「Farewell」も感涙モノだ。

 「サンダークロス」は、「グラII」と同じ1988年に登場した横スクロールシューティングゲームだが、曲調は軽快なものばかりで「グラII」とはまったく異なる。ちなみに、コナミの自社レーベル第1号作品が実は「サンダークロス」で、その記念すべきタイトルの歴史を振り返れるという意味でも、本作の収録はとてもうれしい。

実は、筆者が生まれて初めて買ったCDが、まさにこの「サンダークロス」(1989年発売)。当時のゲーム雑誌には、本アルバムの広告が盛んに掲載されていた

DISC3:高難易度ゲームのすべての曲が、いつでも聴ける幸せを満喫

 横スクロールシューティング、「グラディウスIII」と「パロディウスだ!」の2タイトルのBGMをあまねく収録。ゲーム自体はどちらも本当に難しく、筆者もさんざん苦しめられた思い出ばかりが残るが、サウンドは掛け値なしに素晴らしい。

 「グラディウスIII」はメチャクチャ難しく(特に、9面のクリスタルステージのつらさときたら!!)、筆者は後に発売された本作のアルバムで初めて全ステージの曲を聴くことができて、本当にうれしかったことを今でもよく覚えている。当時、多くのプレーヤーが全曲を聴くことなく白旗を上げたであろう激ムズタイトルのBGMが、またこうして聴く機会が得られるありがたみを痛感せずにはいられない。ほかにも復活ステージのBGM(※ラスボスの弾を浴びると飛ばされるステージ)や、未使用曲もバッチリ収録されているのもうれしい。

 「パロディウス」シリーズの魅力と言えば、ユニークなビジュアルとともに、有名クラシック曲をモチーフにした数々のセンスあふれるBGMが聴けること。まだサウンド制作の専門職がいなかったビデオゲームの黎明期は、クラシックやポピュラーソングをそのままBGMに使用したタイトルがいろいろとあったが、本作のBGMはそれとは比較にならないほどのクオリティで、その当時の段階で「随分と進化したなあ……」と隔世の感があったが、今聴いても十分に楽しめる。

 また、6面ボスの「電飾コアのテーマ」など、「グラディウス」シリーズの曲をアレンジしたBGMが入っていたり、自機の種類によって空中戦のテーマ曲がそれぞれ異なるところも、シューティングファンなら見逃せないポイントだ。

こちらは「グラディウスIII」のアルバム(1990年発売)。このCDのおかげで、最終面のBGMや感動のエンディング曲などが聴けたのは本当にありがたかった!

DISC4:プレーヤーのテンションを高めるノリノリの曲がズラリ

 縦スクロールシューティングの「トライゴン」と「出たな!!ツインビー」、横スクロールシューティングの「サンダークロスII」の3タイトルの曲を聴くことができる。

 またも筆者の私見で恐縮だが、「トライゴン」は1面と2面のBGM「Faraway」に注目していただきたい。本作を実際に遊んだ経験がない人には伝わりにくいかもしれないが、ゲームを始めたばかりのプレーヤーに対し、テンションを大いに高めてくれる実に素晴らしい曲だ。対ボス戦や終盤のステージでは、オーケストラヒットを交えた力強い曲が聴けるのも、いかにも当時のコナミ作品らしい。

 「出たな!!ツインビー」では、タイトルデモ曲の最後に「ツインビー、行きま~す!」というボイスが入っているのを、本作を遊んだことがある人ならば覚えているハズ。1面の「風の贈り物」をはじめ、元祖「ツインビー」とはまた違った曲調の軽快なBGMがズラリと並ぶ。2P側の自機に搭乗する女性パイロット(※後にパステルと命名された)の「アイドル化計画」が進行するきっかけとなった作品であることを振り返りつつ、本作の曲を鑑賞するのもまた一興だろう。

 「サンダークロスII」は、前作とは打って変わって激しいハードロック調のBGMばかりで、前作しか知らないプレーヤーが聴いたらきっと驚くハズ(3面のBGMは、その名も「Heavy Metal Bomber」だ!)。また本作では、ほかに類を見ないボス、およびラスボス接近の知らせるBGMを導入したアイデアも注目に値する。

DISC5:往年の横スクロールシューティング2本立て

 「ゼクセクス」と「極上パロディウス」という、90年代を代表すると言っても過言ではない、横スクロールシューティングゲーム2タイトルの曲を収録している。

 筆者が「ゼクセクス」を初めてゲーセンで見たときは、今までに見たことも聴いたこともない、斬新なビジュアルとサウンドに衝撃を受けたことを今なお鮮明に記憶している。特にサウンドは「まるで楽器の生演奏みたいでカッコイイ!」とすぐさま魅了され、アルバムを発売直後に買ってしまったほど、今でも大のお気に入りだ。ちなみに、「ゼクセクス」(1992年発売)のライナーノーツには「『開発のときからライブで演奏したい!』という思いを込めて作曲していた」と、作曲者のおひとりである古川もとあき氏がコメントを書いている(ナルホド納得!)。

 なおDISC5には、ステージ間デモでヒロインのイレーネ姫や、悪役のクラウス王子がしゃべるセリフが入っていないのは少々残念だが(※タイトルデモ中に流れる、イレーネのストーリーの朗読は収録されている)、本作のBGMの素晴らしさは今なお色あせない。

 「極上パロディウス」は、前作に続きクラシック曲をモチーフにした楽しい曲が目白押し。またもや私見で申し訳ないのだが、とりわけ4面の高速スクロールステージで流れるロッシーニ作曲「ウィリアム・テル序曲」をアレンジしたBGMは、そのステージ構成にピッタリとハマった秀逸な一曲。ほかにも、7面の「ジュリアナ東京」を彷彿とさせるディスコステージでは、ドボルザーク作曲「新世界」をモチーフにしたBGMが流れ、さらには自機の一種「コイツ」でプレイして人型ミサイルを発射すると、ミサイルが着地後に扇子を振る演出も相まって、プレーヤーを大いに楽しませてくれた。

 キャラごとに異なる空中戦のテーマが聴けるのも前作と同様で、最終面(スペシャルステージ)のBGMは、歴代のコナミシューティングゲームの曲をアレンジしたメドレーになっていて、なおかつ過去作の敵キャラをモチーフにしたが出現するのも、これまた素晴らしい演出だ。本作を遊んだことがない人でも、本作のBGMはポップスや童謡などと同じように楽しめることだろう。

「ゼクセクス」のアルバム(1992年発売)。こちらには、イレーネがしゃべり倒す独り芝居のオマケトラックも入っている