【特別企画】
「ゲームギアミクロ レッド」全収録タイトルレビュー
「女神転生外伝」シリーズを筆頭に、コアなゲームファン必見のラインナップ!
2020年10月5日 00:00
- 【ゲームギアミクロ ブラック/ブルー/イエロー/レッド(全4色)】
- 10月6日 発売予定
- 価格:各4,980円(税別)
生誕30周年を記念して、セガから10月6日に発売される携帯ゲーム機「ゲームギアミクロ」。本体は4色のカラーバリエーションがあり、それぞれ4本のゲームが収録されている。カラーごとに収録タイトルが異なるのもポイントである。
今回筆者がレビューするのは「ゲームギアミクロ レッド」。収録タイトルは「女神転生外伝 ラストバイブル」、「女神転生外伝 ラストバイブルスペシャル」、「The GG忍」、「コラムス」の4作品。「RPG」、「アクション」、「パズル」と、バラエティに富んだ内容だ。
「女神転生」ファン、アトラスファンの筆者としては「女神転生外伝 ラストバイブル」シリーズ2作品はもっとも注目のタイトルである。特に「女神転生外伝 ラストバイブルスペシャル」に関しては移植や配信などもされておらず、ゲームギア以外のハードでは遊べない貴重なタイトルなのだ。筆者自身この作品を未プレイということもあり、待ちわびていた1本である。
「ソニック」シリーズや「シャイニング」シリーズなど、セガの看板タイトルを目玉にしている他のバージョンと比べて、異色を放っている「ゲームギアミクロ レッド」。コアゲーマー必見の収録タイトルをプレイしていこう。なお、開発者インタビューにもご参加いただいたインタビューエムツーの広報・プランナー 駒林貴行氏のオススメも本機「レッド」とのことだ!
オススメは赤、The GG忍が遊べる赤いゲームギアミクロでございます。どうか赤いゲームギアミクロを宜しくお願い致します。(何だかんだで4色予約したディレクター)
— EQUITES Komabayashi (@kakikukecat)September 30, 2020
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間もなく発売! セガ「ゲームギアミクロ」開封レポート - GAME Watchhttps://t.co/HG8auZ3ru9@game_watchより
「女神転生」シリーズの魅力を継承した「女神転生外伝 ラストバイブル」
ダークな世界観でファンの心を掴んで離さない、アトラスの人気RPG「女神転生」シリーズ。その外伝作品として1992年に別ハードで「女神転生外伝 ラストバイブル」はリリースされ、本作は1994年にゲームギアの圧倒的マシンパワーで生まれ変わったリメイク作品である。
物語は、「ガイア」と呼ばれる力を持つ主人公たちが、突如現れた「魔獣」から世界を守るため旅に出るという王道のストーリー。現代の東京からファンタジーな世界に舞台を変え、一人称視点ではなくトップビュータイプのオーソドックスなRPGとなっている。
ゲームを始めると、開始2分足らずで魔獣が現れ、各地で人々を襲っていく。長い前置きは抜きでサクッと始まるレトロゲーあるあるな展開だ。
町を一歩出れば、魔獣の脅威が主人公にも襲い掛かる。初めのうちはフィールドでエンカウントするザコの魔獣も手強く、ワールドマップで町から離れてしまうと、宿屋に戻る前に全滅させられるなんてこともままある。ゲームオーバーの概念は無いが、所持金が半分になってしまうというペナルティがあるので、戦闘では常に緊張感が付きまとう。
本作は“エンカウントする敵を倒して、レベルを上げながらストーリーを進めていく”というような何の変哲もないRPGとは一線を画している。会話で敵を仲間にし、合体を重ねてパーティを強化していくという「女神転生」シリーズの醍醐味をバッチリ継承している。
会話や合体などのシステム面はとてもマイルドに調整されている。本家の「女神転生」では悪魔との会話でこちらが同じ返答をしても、悪魔の喜怒哀楽のリアクションが毎回変わるというランダム要素を含んでいる。さらに、交渉ではお金やアイテムを要求してきて“貰うものだけもらって仲魔にもならずトンズラする”なんていう悪魔的暴挙に出ることもある。
しかし、本作の魔獣との会話では金品を要求されることもなく、そのうえランダム要素も一切ない。魔獣ごとに設定されている仲間になる会話パターンさえわかってしまえば確実に仲間に引き入れることが可能なのだ。
魔獣を合体させる「魔獣合成」も特別な施設にわざわざ足を運ぶ必要がなく、どんな場所でも行なうことができるのでとてもテンポが良い。ワールドマップでひたすら仲間を増やして合成に明け暮れることもできる。
パーティの魔獣が強くなればなるほど、かつて苦戦していた敵がどんどん弱くなっていく。自分の手で作った魔獣の力で強者の優越感に浸れる……この感覚こそが、このゲーム最大の面白いポイントなのだ。
他機種ではプレイ済みだが、ゲームギア版の「ラストバイブル」は今回初めてプレイした。別ハードのバージョンと比べると映像の良さは段違い。フルカラーになってるのはもちろん、グラフィックスの向上により魔獣がさらに禍々しいデザインになっているのも見所だ。
90年代のゲームを今遊んでみると、システム周りやインターフェイスなど様々な面で時代相応の粗さが目立ち、ぶっちゃけてしまうと真面目にプレイするのはかなり苦行という作品も結構存在する。しかし、本作はプレイしていてほぼ文句の付け所がない。
ゲームギアミクロ本体に備わっている機能を使わずともゲーム単体でどこでもセーブが可能。ゲームギア版ではダッシュの機能も導入されておりフィールドの移動速度も爆速。戦闘は高速オートを使えばザコ戦はサクサク。といった感じで、1994年のゲームとは思えないほど、あらゆる面で丁寧に作り込まれている。アトラス作品のクオリティの高さを改めて実感した。
「ゲームギアミクロ レッド」には本作のイージータイプも収録されており、こちらは戦闘時の経験値と取得金額が通常の3倍となっているので超快適にプレイすることができる。「それじゃあ簡単過ぎて面白くない」と思うかもしれないが、本作はもともと歯応えのある難易度なので、イージータイプでも標準的なRPG同等の遊び応えを感じられる。
恐らくほとんどの人が1番気になっているであろう“画面の小ささ”なのだが、「ゲーム内のテキストもまったく問題なく読める!」……と言ったら嘘になるが、画面を近づければ想像していたよりも普通にゲームを楽しめるので安心してもらいたい。
テイストをガラリと変えた異色作「女神転生外伝 ラストバイブルスペシャル」
「ラストバイブル2」、「ラストバイブル3」とさまざまなハードでシリーズ展開していく中で、唯一セガが開発を手掛けたゲームギアオリジナルの「女神転生外伝 ラストバイブルスペシャル」が1995年にリリースされた。現在でも、実機か「ゲームギアミクロ レッド」でしかプレイできない作品なので、筆者をはじめ、本作を目当てにしている人も多いのではないだろうか。
まず触れたいのはオープニング画面だ。本作のパッケージイラストは「女神転生」のカラーを色濃く継承しており、「ラストバイブル」シリーズ屈指のダーク感を放っている。しかし、パッケージの空気感に反して、ゲームを起動するなりキャラクターや魔獣のシルエットがアニメーションするオシャレ感満載のオープニング。異色作と語り継がれている理由がゲームをプレイする前から垣間見えた気がする。
ゲームは、主人公の勇者マテルが仲間を集い、魔獣を率いて地上を占拠した魔獣王グライアス討伐を目指すダンジョンRPG。ナンバリング作品と大きく違う点は、本作はトップビュータイプのRPGではなく、本家「女神転生」に近い一人称視点のゲーム性となっていることだ。
勇者とて、魔獣が巣食うダンジョンを1人で攻略することは不可能。まずは広場でパーティメンバーを募集するのが最初の作業だ。本作にはなんと60種類以上の職業が用意されている。戦士や魔法使い、ヒーラーなどの王道なものから、通訳や学生、さらにはホームレスなどのイロモノ職業まで幅広く用意されている。最大6人のメンバーを集めて、自分だけのオリジナルパーティが作れるのも本作の魅力である。
本作はパーティ作りがキモとなるのだが、キャラクターの職業は任意に選ぶことはできず完全なランダム性となっている。希望の職業のキャラでパーティを組むには、ハズレを引いたらお帰りいただき、再度冒険者を募るという流れを繰り返す必要がある。スマホアプリのリセマラのような根気が必要だ。
冒険者を集めるのに結構な時間が掛かったが、ようやく待ちに待ったダンジョン探索だ。ダンジョンの中は薄暗く“一歩足を踏み入れたらタダでは済まない”という雰囲気が伝わってくる。
ダンジョンで出現する魔獣だが、先の「ラストバイブル」では戦闘画面に最大2体までしか敵が表示されなかったが、今作では魔獣の表示数が増えて威圧感がかなり増している。
強くなったのは圧だけではない。前作よりも敵が圧倒的に強くなっている。油断をしていると最初の階層で全滅なんてことはザラにある難易度。パーティを半壊させられては街に戻り、回復させて再び出撃を繰り返しキャラを成長させていくという、この一筋縄ではいかなゲームバランスはプレイしていて熱が入る。
本作にももちろん魔獣との会話、魔獣合成のシステムは健在で、最強の魔獣を作り上げるという楽しみがある――のだが、プレイしていて少し残念な点に気づいてしまった。本作では人間のキャラクターはレベルを一定上げることで上位職へと転職が可能。人間はどんどん強くなっていくのに対して、魔獣は戦闘でレベルが上がることもなく、強くするには合成を重ねるしかない。魔獣が成長しないのは他の作品でも同じだが、今作だけは人間キャラクターだけでパーティを編成することができてしまうので、魔獣が入り込む余地があまり無いように感じられた。
シリーズのキモとなる魔獣合成の重要性が若干薄くなり、その反面、人間キャラクターを成長させる面白さはシリーズ随一。「ラストバイブル」シリーズとして見るとかなりの異色作ではあるが、本作の豊富な職業と歯応えのあるゲーム性は、純粋なRPGとしてはかなり良く出来ている。
「ラストバイブル」同様、こちらもイージータイプがあり戦闘時の経験値と取得金額2倍で楽しむことができる。両方のタイプをプレイしたが、イージーでも成長には結構な時間が掛かるので“絶対にオリジナル版を楽しみたい”という人以外はイージータイプでのプレイを強くお勧めする。
カラフルな忍が悪を討つ!?「The GG忍」
80年~90年代にかけて、セガを代表するアクションゲームの1つであった「忍」シリーズ。アーケードやメガドライブで展開された後、1991年にゲームギアオリジナルタイトルとして「The GG忍」がリリース。
現代に生きる忍者「ジョー・ムサシ」が、悪の組織を壊滅させるために戦う――という、シリーズお馴染みのテイストだが、本作では「朧五人衆」というブルーやピンクなどの色とりどりな忍の仲間が登場。操作キャラクターをチェンジしてプレイできるのが最大の特徴だ。
ゲームを開始すると、プレイするステージを4つの中からセレクトでき、プレーヤーの好きな順番で攻略することが可能。「忍」シリーズといえば、骨太で難易度の高いゲームとして有名な作品で、本作も例に漏れずなかなかに手強い難易度。
唐突に飛び出してくる敵や予測不能の即死ポイントなど、初見殺しの要素が満載。正確には初見のプレイではないのだが、遊んだのが20年以上前ということもあり見事なまでに次々とトラップを踏み抜いてしまう。
「こんなの絶対引っかかるだろ」というような理不尽な罠が随所に張り巡らされているが、トライ&エラーを重ねて敵の出現パターンやギミックを覚えていくことで段々と簡単に進められるようになってくる。これが「忍」シリーズ通しての面白さだ。
操作キャラが増えたことでアクションの種類も多く、これまでのシリーズよりもステージを攻略する戦略の幅が広がっている。キャラによって攻撃方法が異なり、刀や鎖鎌、爆弾など様々。ステージによって得意不得意が大きく出るので、ステージに合わせたキャラ選びが攻略の鍵になる。
「ゲームギアミクロ レッド」のラインナップでは唯一のアクションゲームをプレイしたが、ミクロサイズになっているので仕様がない話ではあるのだが、通常のゲームギアと比べてやはり操作面は快適とは言い難かった。とはいえ、その欠点を帳消しにするほど面白いゲーム内容となっているので、プレイする価値は十分にある。
ミクロとの相性バツグン! 王道パズルゲーム「コラムス」
最後のタイトル「コラムス」は、アーケードで人気を博し、さまざまなコンシューマハードに移植された「テトリス」に並ぶ定番落ち物パズルゲームである。
遊び方はとてもシンプル。上から落ちてくる宝石をうまく積み上げて、同じ色でタテ・ヨコ・ナナメに3つ並べて消していく――、ただそれだけなのだが、ついつい何度も遊んでしまう中毒性のある作品だ。
遊べるモードは2種類。落ちてくる宝石を延々と消していき最大スコアを狙う「オリジナル」。そしてもう1つが、1番下にある特定の宝石を消すスピードを競う「フラッシュ」。同じゲームでありながら、それぞれ全くの別ゲーのような感覚で楽しめるのも本作の面白さ。
筆者的には、難しいこと抜きでずーっと遊んでいられるオリジナルがかなり夢中になった。最初のうちはミスすることなく容易に宝石を消していけるのだが、スコアを稼いでいくとレベルが上がり、宝石の落下速度がどんどん速くなっていくのだ。
スピードが上がってからが「コラムス」の真骨頂。目まぐるしい速さで落ちる宝石を如何に無駄なく配置していくかという戦いが始まる。上手く処理して宝石を消していくその瞬間ごとに、ランナーズハイのような高まりを味わえる。連鎖で一気に宝石消せたときは爽快の一言だ。
「ゲームギアミクロ レッド」に収録されている他のゲームとは違い、気軽に始められてサクッと終われるというのも「コラムス」の魅力だ。文字の小さいテキストを読むこともなく、複雑な操作も要求されないので「ゲームギアミクロ」と相性はバツグン。重めの収録タイトルの中で、本作はとても良いアクセントになっている。
今回レビューで触れた「ゲームギアミクロ レッド」は、他のバージョンと比べて通好みの骨太なタイトルが揃っており、女神転生ファン、忍ファンには間違いなくお勧めできる内容となっている。重ね重ねになるが、「ラストバイブルスペシャル」は他で移植も配信もされていないレア度の高いタイトルなので、興味がある人ならこの1本の為だけに買っても損はないだろう。