インタビュー

ゲームギアミクロ開発スタッフインタビュー

前代未聞のミクロゲーム機はいかにして生まれたのか?注目の続報、新展開の秘密にも迫る!

【セガ ゲームギアミクロ ブラック/ブルー/イエロー/レッド(全4色)】

10月6日 発売予定

価格:各4,980円(税別)

【エムツー アレスタコレクション(ゲームギアミクロ ホワイト同梱版)】

12月24日 発売予定

価格:14,800円(税別)

 いよいよ発売を迎える、セガの懐かしの携帯型ゲーム機、ゲームギアをコンパクトサイズにして復刻したゲームギアミクロ。発売に先駆けて、改めて本機の特徴やオススメの遊び方などを伺うべく、筆者はセガへと足を運んだ。

 取材に応じていただいたのは、「SEGA AGES」シリーズでもおなじみのセガの奥成洋輔氏、開発を担当したエムツーの堀井直樹氏と駒林貴行氏のお三方。はたしてゲームギアミクロは、どんな紆余曲折を経て完成へと漕ぎ着けたのだろうか?そして本機には、開発スタッフのどんな思い込められているのか?今後の新たな展開も含めてたっぷりとお聞きすることができたので、ぜひ最後までご一読を!

【インタビュイーのみなさん】
セガの奥成洋輔氏
エムツーの堀井直樹氏
エムツーの駒林貴行氏

液晶の見やすさと、消費電力に配慮した設計を実現

――本日もよろしくお願いします。まずはパッケージデザインについてお尋ねしたいのですが、ゲームギアミクロのパッケージは、ゲームギア+1(※1)をイメージして作ったのでしょうか?

奥成氏:はい、そうです。私が提案したイメージ案を元に、以前にメガドライブミニのパッケージデザインを担当したスタッフが作りました。今回は全4色を発売するということで、全種類のパッケージデザインを統一しつつ、ゲームギア+1を意識したデザインにしました。ゲームギア+1のパッケージには、同梱されたソフトのキャラクターが描かれていましたが、ゲームギアミクロについては全4タイトルのキャラクターを入れるとごちゃごちゃしてしまうので、キャラクターは2種類だけ入れました。

 今回の商品は店頭ではなく、セガストア、アマゾン、楽天の3つのECサイトだけでの販売ですから、パッケージはそれほど凝ってなくても大丈夫なんですよ。極端なことを言えば白箱であっても良いくらいなのですが、ゲームギアミクロを買っていただく皆さんは、それではご満足いただけないだろうと。ちゃんとお店に並んだときのイメージができるようにして、パッケージでも喜んでいただけるようにと思ってデザインを考えました。最初のデザイン案では、収録ゲームすべてのタイトルロゴを入れておいたのですが、それだとサイト上の小さいサムネイルで表示されたときに読めなくなってしまうんですよ。そこで、商品名の表示は文字に変更しました。

 それから、ビッグウィンドーミクロ(※2)は購入特典、つまりオマケですので、これこそパッケージは不要なのですが、せっかく本体のパッケージをこだわって作りましたし、こちらも皆さんに喜んでいただけるものにしようと、デザイナーがノリノリで作ってくれました。ちなみに、ビッグウィンドーミクロのデザインは、パッケージも本体も、ビッグウィンドーII(※3)を踏襲したものになっています。

※1……ゲームギア+1(プラスワン):世界累計100万台を出荷した記念に登場した、ゲームギア本体と「ソニック・ザ・ヘッジホッグ2」や「なぞぷよ」などのソフトを同梱したパッケージのこと。1993年7月発売。以後、さまざまなソフトの同梱版が多数リリースされた。

※2……ビッグウィンドーミクロ:全4色のゲームギアミクロを購入するともらえる特典アイテム。画面を拡大表示するためのレンズが付いている。

(写真上)ビッグウィンドーミクロとゲームギアミクロ本体(ブルー)のパッケージ

――ゲームギアミクロの発売は6月に発表されましたが、現在までの受注状況はいかがですか?

奥成氏:最初の発表をセガの60周年記念日である6月3日にすることはすでに決まっていましたので、あらかじめ製造数も目標数に合わせて決めたうえで今回発売する3社に配分をして予約を開始したのですが、いざフタを開けてみたら3社とも翌日には完売となってしまいました。「買えないよ!」というお客様がたくさん出てきてしまいましたので、発売日までに間に合う限界の製造数を大慌てで確認して、追加製造しました。

 現時点ではまだ予約の段階で、実際に皆さんの手元に届くまでは「売れた」とは言えないのですが、すべての商品が無事に届いたと仮定しますと、当初の販売目標の2倍近い数が出たことになりますね。

堀井氏:おお、それはスゴイ!

奥成氏:エムツーさんやメディアの皆さんの応援もあり、お陰様をもちまして本プロジェクトは大反響、大成功となりました。元々ゲームギアミクロはセガ60周年をお祝いするためのグッズとして作ったもので、「何台売れるのかはわからないけど、採算的にはトントンになればまあいいかな」という商品でしたが、おかげで立派な黒字プロジェクトになりました(笑)。

 新しいゲームハードを作るというのは非常にハードルが高く、金型を作ったりして初期コストとかが結構掛かる商品ですから、本来相当な利益を出せる見込みが立たないとプロジェクトとしては成立しないのですが、今回のところはセガサミーグループ総出でお祝いしようというなかで、損を出さずにお客様が盛り上がってくれたらいいや、という勢いで作っちゃったんです(笑)。

堀井氏:いやあ、いかにもセガさんらしい作り方です!

――堀井さんが、セガからゲームギアミクロのお話を最初に聞いたときは、率直にどう思われましたか?

堀井氏:私が最初にセガさんとお仕事をさせていただいたのが、ゲームギア版の「ガンスターヒーローズ」だったので、何か運命めいたものを感じましたね。ゲームギアが発売30周年、セガさんが設立60周年を迎えるということで、そのタイミングでウチにゲームギアミクロを作るというお話をいただいたのでびっくりしました。こんな小さなものでもちゃんと見えるのか、操作ができるのかをずっと気にしながら、開発の進行を見ていました。

――駒林さんは、今回のプロジェクトではどのような業務を担当されたのでしょうか?

駒林氏:ディレクションと企画、それからデザイナーやプログラマーが出社するたびに、私がミスタードーナツでみんなのおやつを買ってくる係という仕事ですね(笑)。

堀井氏:ちょっと待って! おやつを買ってくる係のことを記事に載せるのは……まあギリギリ大丈夫かな(苦笑)。

――私も実機をお借りしたところ、液晶ディスプレイはすごく小さいのに、想像以上に明るくて見やすかったので驚きました。液晶ディスプレイの設計、あるいはセレクトにも相当こだわって開発されたようですね。

奥成氏:そうですね。液晶はセガトイズのスタッフが探してきたもので、「こんな感じで動いています」という試作品を見せられたところ、もうひと目惚れしましたね。私は当時隣りの部署にいて、それを見せて貰って「今度これを商品化しようと思うんだ」という話を聞かされ、「いつでも全面的に相談乗りますよ!」みたいな返事をしたんですけど、実際に開発が始まることになって、そのまま私のところにお鉢が回ってきたという次第です。

 このハードをエムツーさんに見せたら、きっと開発をやりたがるだろうなと思ったりもしました。メガドライブミニのときにも、モックを持ってきて、「だいたいこんな感じになります。皆さんも欲しいでしょ?」というお話をセガにプレゼンしていたんで、効果はありますね。

堀井氏:まさに、そこは大事なポイントですよね。

奥成氏:もちろん最終的に商品化するにあたってブラッシュアップはするんですが、最初に実物見せられると弱いですよね。そのうえで、メガドライブミニでもゲームギアミクロでも、オリジナルの当時の製造に関わったスタッフなどが中心になって、しっかり開発や監修をします。

――確か、今回のゲームギアミクロの収録タイトルは、すべて奥成さんが決めたんですよね?

奥成氏:はい。今回もメガドライブミニに続き、私がすべて決めました。

駒林氏:ただし、「The GG忍」だけは、ぜひ入れて下さいと私のほうからプッシュさせていただきました。

堀井氏:確かに今回のプロジェクトでは、駒林は「The GG忍」をひたすらプレイしていたイメージがありますね。

駒林氏:「このハードでクリアできますか?」と聞かれて、「できると思います」と返答したので、初めの頃は自分でずっと試してましたね。最初にお借りした基板がむき出しのボードで、方向キーのところに1円玉を貼り付けてやってました。

レッドに収録されている「The GG忍」

奥成氏:そうでしたね。最初のボードには、まだ方向キーが付いていなくて、ただ基板に小さいモニターがくっ付いていただけのものをエムツーさんにお渡しました。まずはこれでちゃんと動くかどうか、まともに遊べるかどうかを確認しようということで、RPGで文字が読めるかどうかをチェックするところから始めました。その次に、アクションゲームをこのハード、画面サイズでもプレイできるのか、「GG忍」を最後までクリアできるのであれば、その他のアクションゲームも問題ないだろうと。

堀井氏:で、駒林が1円玉を使ってクリアしているのを見ていたら、ちゃんとしたコントローラーが用意できれば、きちんと遊べるものになるなと思えるようになりましたね。

――以前、奥成さんの単独インタビューをさせていただいたときには、ゲームギアミクロとメガドライブミニの開発スタッフは同じだと仰っていましたよね?

奥成氏:はい。で、私がこのプロジェクトに参加した際にまず驚いたのは、とにかく開発期間が短いことでした。話を具体化したのは年末でしたが、「春までには開発を終了させたい」という計画を聞いていました。じゃあ、計画どおりに作るとなると、つい半年前までメガドラミニを作っていた、社内も社外も含めた全スタッフを再招集しなければいけないだろう、エムツーの皆さんさんがいなければダメだろうと初めに考えました。

堀井氏:また今回も我々にお声掛けをいただけて、とてもありがたかったですね。でも、「本当にこのスケジュールで発売するんですか?」ってすごく驚きましたけど……。

奥成氏:エムツーさんであれば、ゲームギア用ソフトを作ったことがありますし、最近ではゲームギアから3DSへの移植もやった実績はありますが、今回はゲームギアミクロに使用する新しい基板を使ったうえでの開発で、商品として通用するレベルでエミュレータが動かせるかどうかというのが、ます最初のポイントでしたね。

堀井氏:最初にテスト用の基板をお借りしたときは、メガドラミニよりもスペックは当然下がりますから、はたしてこれで動くのかなあと。基板がめちゃくちゃ小さいですし、でももしこの大きさで収まったら、確かに持ち運ぶのはすごく楽ですし、身に着けやすいガジェットになるなあとは思っていました。

奥成氏:それから、ゲームギアミクロは乾電池で動かしますので、基板の性能の良し悪しにかかわらず、もしフルスペックでずっと動かし続けると、あっという間に乾電池が寿命を迎えてしまいますから、消費電力を意識して開発をする必要もありました。もし快適に動いても1時間しか持たないようではいけませんので、エムツーさんにはこの基板で完璧なソフトの再現をしつつエコノミーな動作が実現するよう、最後の最後まで本当に頑張って作っていただきました。

――いくら経験豊富なエムツーさんと言えども、これほど小さなハードでゲームを開発するのはおそらく初めてですよね?

堀井氏:そうですね。今までに経験したなかでも一番小さいハードでしたし、我々がずっと慣れ親しんだコントローラーよりも小さいこの基板の中に、元祖ゲームギアの機能を全部入れるというのはかなりチャレンジングなことでした。

――ゲームギアミクロ用に、何か特別なツールを開発したのでしょうか?

堀井氏:このボード専用にカスタマイズしたエミュレーターを作りました。カスタマイズしたのは、私も消費電力をなるべく抑えようと思っていましたから、できるだけ高速化を実現したかったからですね。電源に直接つながっているマシンであれば、そのCPUが一番速く動くコードを書くのが正解なのかもしれませんが、今回の場合は「電力を食わない割には、うまく動作するよね」というものを目指すのが最善だろうと。

――各タイトルを移植するにあたり、元祖ゲームギア版のソースコードやマニュアルなどの資料は、セガの社内には残っていたのでしょうか?

駒林氏:今回はかなりオリジナルのソースコードに助けられました。セガさんがかなり保管しておいてくれたおかげで無事に16本収録できたと思います。

収録タイトルはこだわりの改良、アレンジ要素が満載。隠しコマンドの存在も次々と明らかに!

――ブルーに収録された「ガンスターヒーローズ」は、元々エムツーが開発を担当した作品ですよね。

奥成氏:はい、そうです。ゲームギア版の「ガンスターヒーローズ」は、エムツーさんとしてはメガドライブ版の「ガントレット」に続く、会社としての第2作目でしたよね。

堀井氏:「『ガントレット』を作った会社さんですよ」と、セガさんに最初に紹介していただいたときに「何をやってみたい?」と聞かれたので、夢いっぱいの気持ちでいた私からは、「好きなゲームは『R-TYPE LEO』や『エドワードランディ』(※3)です。『ガンスターヒーローズ』は、メガドライブで遊べる『エドワードランディ』ですよね!」って答えたら、「じゃあ、『ガンスターヒーローズ』をゲームギアで出しませんか?」と言われたという、そんな経緯があったんです。

※3……「R-TYPE LEO」や「エドワードランディ」:前者はアイレムが発売したアーケード用横スクロールシューティングゲーム。後者は1991年にデータイーストが発売した、ムチを持った主人公ランディを操作して敵と戦うアーケード用アクションゲーム。

――ナルホド。「ガンスターヒーローズ」はゲームギアミクロのブルーに収録されましたから、エムツーの皆さんはきっと喜びもひとしおだったでしょうね。

堀井氏:はい。もう相当にひとしおでした。で、ゲームギアミクロ版の開発中は、駒林からすごいクレームがきまして……。元祖ゲームギア版のほうは、当時の液晶の超ウルトラ残光を利用してスプライトのキャラクターをチラつかせながらたくさん表示させるというやり方で作ってあるんですよ。「セガさんから、『このまま出すんですか?』って指摘されてますよ!今の液晶でそのまま出したらおかしく見えるので、もう何とかしてください!」ってさんざん怒られてしまいました。

駒林氏:「今回のゲームギアミクロ版では、何とかしてくれませんか?」というご要望があったんですよ。当初は、「これは仕様です」とお答えはしたのですが、やっぱり何とかしないといけないだろうと。

奥成氏:元祖ゲームギアの液晶画面では、チラつかせることであまり気にせずに遊ぶことができたんですけどねえ。

堀井氏:ええ。うまくチラつかせることで、うっすらとした半透明みたいな表現になるんですよ。

奥成氏:そんなゲームギアの時代にエムツーさんが確立した、限界まで多くのキャラクターを表示させる技術ですが、当時から約30年が経過した現代のゲームギアミクロに使用する液晶ディスプレイは、サイズは小さいですがすごく高精細なので、チラついたキャラクターがそのままチラついた状態で見えてしまうんです。そうなると、遊んでいてちょっと気持ち悪いんです。

堀井氏:そうなんですよ。ブラウン管に表示させたときみたいに、普通にチラついたり消えちゃったりするなあと。ちょっと申し開きをさせていただきますと、最初のゲームギア版の企画段階で、「液晶の超残光を利用して多くのキャラクターを何とか表示させます」と企画書に書いて、ちゃんとセガさんに提出して了承をいただいたんですよ。ですから、今回だけダメだったのではなくて、実は当時からイレギュラーな方法を駆使した問題児なのでした(苦笑)……。


ブルーに収録されている「ガンスターヒーローズ」

――すると、ゲームギアミクロ版では何かチラつき対策をしたということですか?

堀井氏:はい。そこはもうちゃんと直さないといけないなあと。

駒林氏:余談ですが、普通にゲームを選択するとちゃんとチラつき対策をしたものが起動するのですが、メニュー画面であるコマンドを入力すると、元祖ゲームギア版と同じチラチラのもので遊べるようにもしてあります。弊社内に、当時特殊なキャラクター表示機能を作ったプログラマーの岡田が今もおりまして、ゲームギアミクロに「ガンスターヒーローズ」が収録されることをすごく喜んでいたんですよ。ですから、岡田が当時頑張って作ったアイデアの結晶を、もし入れずに出したらきっと悲しい顔をするのかなあと……。

――そんな仕込みがあったとは!ファンの皆さんには、まさに朗報ではないでしょうか。

堀井氏:元のままのゲームギア版「ガンスターヒーローズ」はとにかくチラつくんですが、ハードの仕組みがわかっている方が見れば、当時はすごく頑張って作っていたんだねっていうことがすぐにわかると思います。

奥成氏:確か、エムツーさんも来年で設立30周年を迎えられますが、当時からずっといらっしゃるスタッフが多いですよね?

堀井氏:ええ。かなり残っていますね。

奥成氏:エムツーさんにとっては今回の16タイトルの中でも「ガンスターヒーローズ」は特別なタイトルですよね。オリジナル版の作り手であり、当時の開発スタッフが目の前にいらっしゃいますから、もし何かあったときにはすぐ相談もできる。実際、今回初めて見つかった不具合があって、「25年ぶりに直しました」って聞きました(笑)。

――最初の発売から四半世紀が過ぎたのに、そこまでブラッシュアップをされていたとはビックリです……。

駒林氏:それから、最初にセガさんからすべてのゲームのバイナリデータをまとめていただいたときに、見覚えのないものがあって試しに起動したら、オープニングデモが終わると「COMING SOON」と画面に表示されて、ただデモループが流れるだけのROMでした。で、このデータはいったい何なのかを堀井に聞いたところ、おもちゃショーのデモ用に作ったものだとわかりました。

奥成氏:多分、東京おもちゃショーか、東京ゲームショウの前身にあたるCSGのどちらかの展示用に作ったものですね。プレイは⼀切できませんので普通こういうROMは処分されてしまうのですが、外注開発タイトルだったおかげなのか、たまたま弊社に保管されていたんですよ。

堀井氏:ショーの会場で、デモが流れているところを確かに⾒た記憶があります。

奥成氏:駒林さんから、「せっかくROMがみつかったんです、ぜひこのデータも入れて出しましょう!」」というご要望がありまして、同じデモが収録されている製品が遊べるのに、別にこんなROMを見てもお客さんはうれしいかな、とも言ったのですが、最終的にはエムツーさんの記念でもあるし、じゃあ入れるか!と。

堀井氏:それにしても懐かしいですね、このデモ。ゲームギア版の「ガンスターヒーローズ」は、デモシーンにはレッドとブルーの2種類のキャラクターが登場するのですが、両方とも出せる容量がなかったので、実際のゲーム本編にはレッドしか出てきません。最初の頃は、通信ケーブルをつないで2人同時プレイができるようにしてはどうかとも考えましたが、スペック的にそこまでやるのは無理でしたね。

【「ガンスターヒーローズ」幻のデモ版が見られる!】
イベント用に制作された、発売前の貴重なデモ動画を収録している


「ガンスターヒーローズ」の隠しコマンド


・元祖ゲームギア版のチラつき再現モード

 「ガンスターヒーローズ」の説明画面で⽅向ボタンの↓を押したまま決定ボタンを押す。

GGM版の「ガンスターヒーローズ」(左)はちらつきが軽減されているが、オリジナル版と同様のちらつきを体験できる(右)

幻のデモ版の再生コマンド

 「ガンスターヒーローズ」の説明画面で方向ボタンの↑を押したまま決定ボタンを押す。ゲーム起動時のSEGAロゴの背景が黒で、トレジャーの旧ロゴにマークが無ければ成功

通常起動するとSEGAロゴの背景が青、トレジャーの旧ロゴにはマークがある
隠しコマンドの入力に成功するとSEGAロゴの背景が黒、トレジャーのマークがなくなり、デモが再生される

――今回、駒林さんは収録タイトルのテストプレイもされたのでしょうか?

駒林氏:はい。ひととおり試したうえで、新規で移植するタイトルは全部クリアするまでプレイしました。今回はRPGがとにかく多くて、「ロイアル・ストーン」はプレイ時間がかなり長いですし、「女神転生外伝 ラストバイブル」も作業の合間を縫ってクリアするのはきつかったですね……。

奥成氏:駒林さんには、解析のほうでもかなり細かいところまで見ていただきました。それから、ゲームギアミクロは対戦プレイには対応しておりませんので、対戦モードに関する部分はオミットしてあるのですが、駒林さんから「どうせなら美しく見せたい」というご相談がありました。

 例えば「ぷよぷよ通」では、オリジナル版ではメニュー画面に「ひとりでぷよぷよ」、「ふたりでぷよぷよ」、「みんなでぷよぷよ」、「おぷしょん」の4つのモードが田の字型に並んでいて、各項目がカーバンクルの顔になっています。ゲームギアミクロには対戦プレイがありませんので、オミットした「ふたりでぷよぷよ」と「みんなでぷよぷよ」の2つのモードは、オリジナルを1人で遊ぶ時と同じで選択できないようにすればいいだけだと思っていました。

 ですが、あるとき駒林さんから「画面の半分が使えないのはなんだか勿体ないのでデザインを変えたい」という提案をいただいたんです。じゃあどうするんですかとお尋ねしたら、「グラフィックスを見てたらメガドライブ版とドット絵が完全に同じだったので、それをコンバートして表示します」というお話で。

 つまり、元のゲームには目と口の部分しか表示されていなかったものを、コンパイルの開発者が当時打ち込んだ、全身まで描いてあったドット絵を利用して、耳にまで全部見えるように広げたわけですね。

――いつもながら微に入り細に入り、エムツーの皆さんらしい、すさまじいまでのこだわりぶりですね。

奥成氏:それからゲームギアミクロ版では、カーバンクルが目を時折パチパチとまばたきをします。これも元のゲームギア版にはなかった仕様ですが、ROMの中には当時作られていたアニメーションのデータが残っていたので、こちらも新たに入れました。

駒林氏:アニメーションの追加は、収録タイトル全ての解析をした弊社チームの五十嵐という者が担当しました。仕事が非常に早くて技術・発見能力も高く、こちらから頼まなくても「入れておきました!」と、気の利いたものを作ってくれました。

奥成氏:オリジナルのソースを解析して極限まで引き出すという、料理人が与えられた素材をいかに調理しておいしくするかみたいな、エムツーさんならではの味わい深い、伝統料理というか技術力のお陰ですよね。

堀井氏:ええ。かなり泥臭い技術ですけど(笑)。


【ゲームギアミクロ版オリジナル「ぷよぷよ通」のメニュー画面】
モードの表示を2つに絞り、カーソルのカーバンクルは耳の先端まで見えるように拡大し、まばたきもするようになった

――ほかの収録タイトルにも、何か追加要素とかアレンジモードなどは用意されているのでしょうか?

駒林氏:いろいろなゲームを開発中に見付けた、細かいバグはどんどんつぶしておきました。

奥成氏:普通にプレイしたら見つからないであろう細かいオリジナルバグのフィックスとかも、どんどんやって下さいますからね。その最たるものが、「女神転生外伝 ラストバイブル」と「女神転生外伝 ラストバイブルスペシャル」のイージータイプですね。これを実装するために、エムツーさんにはかなり深いところまで解析をしていただきました。

――今、お話が出た両タイトルにはイージータイプがあるんですね!

駒林氏:はい。皆さんに喜んでいただけるとうれしいのですが……。

奥成氏:イージータイプは裏技でも何でもありませんので、メニュー画面でカーソルを右にずっと動かすと最初から選べるようになっています。イージータイプでは、「ラストバイブル」では戦闘で入手できる経験値とお金が通常の3倍に、「~スペシャル」のほうは2倍に増えます。

 セガの社内でも、実機でのクリア確認はしていたのですが、開発スタッフの最若手である駒林さんから、「『ラストバイブル』は難易度的にかなりしんどかったです」というご意見がありましたので、イージータイプがあると便利なのかなあと。

駒林氏:「コラムス」を目当てでレッドを買っていただいた方が、「『ラストバイブル』も遊んでみるか」とやってみたら手ごたえがありすぎて厳しいだろうと。しかも2本ともですからね。私自身が遊んでいてもつらかったですし、それはどうかと思ったのでイージータイプを作ることにしました。

奥成氏:プレイ時間のかかるRPGの場合、オリジナル版の発売当時はこれが最適だったかもしれないけど、今遊ぶと高い難易度が目立ってしまうなと思ったんですよね。そこで、昔PS2でリリースした「ファンタシースター コンプリートコレクション」や、直近ですと「SEGA AGES」版の「ファンタシースター」みたいにゲームバランスを変えたバージョンも用意しようと。

 「ファンタシースター」については、以前のGAME Watchさんのインタビューでもお話したと思いますが、昔は夢中になってプレイしたけど、大人になった今では十分なプレイ時間を確保するのが難しくなってしまった、そんな人でもお手軽に観光旅行気分でプレイしやすいものを作ろうと思い付きました。で、今回の「ラストバイブル」と「スペシャル」でも、同じようなものを用意しようと思ったわけです。

――今の「ファンタシースター」のご説明は、「SEGA AGES」版のインタビューで「AGESモード」のご説明をされたときのお話ですね。

奥成氏:ええ。それで、最初は「ラストバイブル」は2倍にしていたのですが、駒林さんから「2倍でも厳しいかも……」ということで、3倍になりました。

堀井氏:そうかあ。そんな理由で3倍に増やしたんだ!

駒林氏:「ラストバイブル」を、試しに2倍に設定して2時間ほど遊んでみたところ、最初の20分ぐらいは快適に進むのですが、2人目の仲間が加わった瞬間に、突然お金がなくなって困っちゃったんです。じゃあ、3倍に増やしたほうがいいだろうと。かなりプレイしやすくなったと思いますので、皆さんにぜひ、最後までクリアしていただきたいですね。

奥成氏:逆に言いますと、「ラストバイブル」と「スペシャル」以外のRPGは、この辺の設定を⼀切いじっていません。もし「ロイアル・ストーン」や「シャイニング・フォース外伝」シリーズのようなシミュレーションRPGで難易度を下げてしまうと、本来の面白さをスポイルしてしまうという判断です。


【「女神転生外伝 ラストバイブル」シリーズのイージータイプ】
メニュー画面で「女神転生外伝 ラストバイブルスペシャル」のイージータイプを選択したところ。「女神転生外伝 ラストバイブル」にもイージータイプが用意されている

――もし差し支えなければ、ほかの隠しコマンドなどの情報もぜひ教えていただきたいのですが?

駒林氏:「ソニック&テイルス」と「ぷよぷよ通」の裏技用のコマンドを簡略化しました。この2タイトルだけはサウンドテストモードなど、コマンド入力がすごく難しいものが結構あって、私も試したらなかなか成功しなかったので、簡単にしようと思い付きました。

奥成氏:「ぷよぷよ通」では、ぷよの形をカーバンクルや人間の形にして遊べる裏技などが遊びやすくなります。オリジナル版と同様、ぷよの姿を変えると難しくなりますけど(笑)。



簡略化された隠しコマンド一覧


・ぷよぷよ通:ぷよぷよの姿がカーバンクルやナスグレイブになる

 起動時のデモ中に、1ボタン+スタートボタン(オリジナル版はタイトルデモ で↑、1、↓、2、→、1、←、2を16回の順に入力)を押す。


ぷよぷよ通:ぷよぷよの姿が人型になる

 起動時のデモ中に、2ボタン+スタートボタン(オリジナル版はタイトルデモ で←、↑、←、2、1の順に入力)を押す。


ソニック&テイルス:好きなアクトを選んでプレイできる「ゾーンセレクト」

 タイトル画⾯で↑、↑、↓、↓の順に入力(オリジナル版はタイトル画⾯で ↑、↑、↓、↓、→、←、→、←、2、1、STARTの順に⼊⼒)する。


ソニック&テイルス:サウンドを任意で聴くことができる「サウンドテスト」

 タイトル画⾯で↓、↓、↑、↑の順に入力(オリジナル版はタイトル画⾯で ↓、↓、↑、↑、←、→、←、→、1、2、STARTの順に⼊⼒)する。


メニュー画面、サウンドなどにも驚きの秘密が!

――各カラーのメニュー画面や、収録タイトルのシステムメニューの画面構成、機能を設計したのはどなたですか?

駒林氏:メニュー周りの仕様を作ったのは全部私ですね。

奥成氏:こちらからは、メニューの内容はメガドライブミニを踏襲して下さいというお話をしました。ただ本商品は日本国内のみの発売で、収録タイトルも国内のみ発売されたタイトルが中心ですので、海外版ROMとの切り替えや英語メニュー化などは用意しておりません。

駒林氏:海外版の切り替えはありませんが、ゲームギアミクロでもメガドライブミニに続いて、メニュー画面でパッケージの背表紙に表示を切り替えられるようにはしてあります。

奥成氏:背表紙にすると、小さ過ぎて全然読めないんですけど、駒林さんがどうしても実装したいというこだわりをお持ちでしたので入れました。

駒林氏:やっぱり、メガドライブミニと同じスタッフが作っているのに、それと同じ機能が入ってないのは悲しいですから!

奥成氏:駒林ディレクター渾身のギャグということで、こちらもぜひご覧になって下さい(笑)。それから細かいところでは、ゲームギアミクロではすべて決定ボタンを2ボタンに統一しました。初期のゲームギアのソフトは決定ボタンが1ボタンで、途中から2ボタンに変わったという歴史があるのですが、そのまま再現するとバラバラでわかりにくいので、決定は全部2ボタンになっています。

――前回の奥成さんのインタビューでは、メニュー画面で流れるBGMはChibi-Techさん作曲のオリジナルであると伺いました。これはどのようなイメージで作られた曲なのでしょうか?

駒林氏:今年でセガ60周年を迎えることにちなんで、とにかくおめでたいイメージでとお願いしたら、素晴らしい曲を作ってくれました。それから、実はメニュー画面のBGMはもう1曲、坂本慎一さん(※4)が作曲した曲も入っていますよ。

奥成氏:私は全然話は聞いてなくて、完成した後で知りました。

※4……坂本慎一さん:テーカン、NMK、ウエストンなどに在籍したプログラマー、サウンドコンポーザー。「アーガス」「オーライル」「ワンダーボーイ モンスターランド」などの作曲を手掛けた。

――本当ですか!?その坂本慎一さんの曲は、どうやったら聴けるんですか?

駒林氏:特に難しいことはありません。何かゲームを選択してから、またメニュー画面に戻ると曲が切り替わりますよ。

奥成氏:それから、駒林ディレクター謎のこだわりが裏技的にもうひとつありまして、「このゲームは、これらのオープンソースライブラリを使いました」という、ユーザーの皆さんには全然メリットも面白味もない権利表記を羅列して表示する項目があるんですけど、実はここでしか聴けない専用のBGMがあるんです。

――それも気付きませんでした!ちなみに、そのオリジナル曲はどなたが作ったんですか?

駒林氏:曲自体は既存のものです。ゲームギアミクロの効果音制作は、すべてぱっく藤島さん(※5)が担当したのですが、「メガドライブミニのメニュー画面の曲ってUFOキャッチャーっぽいイントロだよね。だからゲームギアミクロには『グリーンスリーブス』を入れようよ」って提案がぱっく藤島さんと弊社の久保田からほぼ同時期に出たんですよ。そんな社内外で希望があり、藤島さんの耳コピデータが早々に来て、更にはサウンドの春日も大好きな曲だとの事だったので、じゃあ入れちゃいましょうと。

※5……ぱっく藤島さん:コンパイル時代には「ザナック」などを開発し、後に自身が設立したフューパックでは「ルプ★さらだ」などを開発した藤島聡のこと。

奥成氏:そんな経緯もあって、ここでは、かつてUFOキャッチャーDXでも使われた「グリーンスリーブス」と、それから「フリッキー」のネームエントリーの曲を元にした、アームが動いてるときの曲が流れるようになりました。ゲームギアもUFOキャッチャーDXも音源的にも近しいものですからね。ゲームギアとの関連性は薄いのですけど、セガ60周年記念だから面白いかなと。と、いうことで、私のおすすめの遊び方なのですが、ゲームギアミクロの権利表記画面でこのBGMを流しっ放しにしておいて、アストロシティミニを遊んでいただくと、もうゲーセン気分が倍増しますよ!外付けの連動機能です!

駒林氏:それにしても、企画の人数よりもサウンド担当者のほうが多いとは、実に不思議なプロジェクトですね。

(一同爆笑)


【ゲームギアミクロオリジナル曲にも注目!】
メニュー画面のほか、何と権利表記の表示中もオリジナル曲を聴くことができる

――ところで、乾電池を使った場合は、だいたい何時間ぐらいゲームが遊べるのでしょうか?

奥成氏:乾電池の持つ時間は、乾電池の種類や環境によっても変わってしまうのですが、おおよそですが3時間ぐらいは持つようにしています。元祖ゲームギアとひとつ違う点として、ゲームギアミクロでは駆動ランプをなくしましたが、その代わりに、メニュー画面内に乾電池の残量を表示するようにしてあります。

 それから、ゲームに夢中になるあまり、途中で乾電池が突然切れてセーブ前にRPGが終了したら困りますよね︖ そこで、もうすぐ乾電池が切れそうになったときには、なくなることを知らせる警告画面を出すようになっています。

駒林氏:もし画面が切り替わった場合は、ポーズメニューでプレイデータをセーブできるようにしてあります。その後はゆっくり電池を交換するなりしていただければと。

奥成氏:画面が切り替わったら、ゲームには復帰できませんが、セーブするチャンスの時間を用意してありますから、⼀度中断セーブをしてから乾電池を交換、またはUSB電源を接続するなりしてプレイして下さいね、ということですね。で、ここでもまたエムツーさんが、なぜかこの電池が少なくなったときの警告画面を数種類作って下さいまして、それが毎回ランダムで表示されるようになっています。

駒林氏:画面が切り替わったら「俺はこんな絵が出たぞ!」と、盛り上がっていただければと思います。リードデザイナーでトロ企画の三嶋が作った、セガファンの方であればきっと喜ぶ、とても可愛らしいデザインになっていますので、全6種類ある警告画面にもぜひ注目して下さい。


【電力切れ間近の画面にも秘密が!】
乾電池の残量がなくなる寸前に、数種類のオリジナルイラストが表示される。写真は「フリッキー」を題材にしたもの

まさかの限定追加発売が決定! ゲームギアミクロ ホワイト誕生秘話

――先日、エムツーのYouTubeチャンネル「エムツーショットトリガーズ生放送」と、東京ゲームショウのセガの公式放送などで、「アレスタコレクション ゲームギアミクロホワイト同梱版」の発売が発表されました。こちらの商品内容を改めて教えていただけますか?

奥成氏:まず前提として、これはセガの商品ではありません。エムツーさんパブリッシュのゲームソフトであり、ハードです。

駒林氏:ゲームギア版の「GGアレスタ」と「GGアレスタII」、セガ・マークIII/マスターシステム版の「アレスタ」、海外版の「Power Strike II」と、新作の「GGアレスタIII」を加えた全5タイトルを収録した、「アレスタコレクション」というソフトが、弊社より12月24日にプレイステーション4とNintendo Switch用で発売予定となっています。

 そこに、限定版として「アレスタコレクション」と、今ご紹介した収録タイトルが全部入ったゲームギアミクロをセットにした、しかもゲームギアミクロは新カラーのホワイトの「アレスタコレクション ゲームギアミクロ同梱版」を、同時発売する予定です。つまり、PS4またはNintendo Switch、ゲームギアミクロのすべてで「アレスタ」シリーズのゲームが遊べるセットになりますね。しかも、同梱版にはビッグウィンドーミクロホワイトも付いています。

堀井氏:これでついに、弊社もセガハードのサードパーティになりました!

「エムツーショットトリガーズ生放送」で突如発表されたゲームギアミクロ ホワイト。「アレスタコレクション」の限定版に同梱される
さらに限定版オリジナルの「ビックウィンドーミクロ」ホワイトモデルもセットに!

【M2STG生放送 ~アレもコレも大公開スペシャル~】


――カラーがホワイトということは、1993年に限定で10,000台が発売された、元祖ゲームギアのホワイトと同じデザインになるということですか?

奥成氏:そうですね。ゲームギアのカラーの歴史をお話しますと、まず最初にブラックが発売されて、その次に別売りのTVチューナーが同梱されたホワイトが限定セットとして登場しました。以後、ブルー、イエロー、レッドとスモークの4色が発売され、それ以降はブラック、ブルー、イエロー、レッドの4色がゲームギアの標準カラーとなり、最後にキッズギア(※6)が出たという歴史があるんですね。

 実は、ゲームギアミクロの開発の打診を最初にエムツーさんにお伝えした際に、ミクロをエムツーさんが発売するアイデアの提案を最初に出していたんですよ。「エムツーさん、『アレスタ』の新作である『アレスタブランチ』を今年の年末か来年辺りに出せますか?もし今期中に出すのであれば、『GGアレスタ』を収録したゲームギアミクロの付いた限定版とかあったら面白くないですか?」と具体的なお話を提案しました。当初は開発期間が短かったので、1台につき2タイトルぐらいしか入らないだろうと想定していましたから、「エムツー版には『GGアレスタ』と『GGアレスタII』の2タイトルを入れればちょうどいいじゃないですか」と。

堀井氏:そうそう。面白いですよね~って(苦笑)。そもそも、このゲームギアミクロというプロジェクトが、セガさんのほうでも成功するのかどうか、正直手探り状態でやっていましたし、ちょっとでも多くの台数を頑張って製造しましょうというお話だったので、じゃあウチもパブリッシャーとしても参加して数を増やす協力をしましょうかと。でも、最初にこのお話をいただいた段階では、期末までに「アレスタブランチ」を出せるとは思っていなくて、「アレスタコレクション」を作ろうということになったのはこれがきっかけだったんです。

 また、「GGアレスタ」を復刻するのは魅力的とはいえ、当初にお借りしていた基板がむき出しのままの開発用ボードは、先ほどの話にあったようにRPGやアクションは遊べるところまでは検証できましたが、シューティングゲームがちゃんと動かせるのかどうかは、全然わからない状態でした。ですから、発想を逆転させて、まずはPS4とNintendo Switch版で動くものを作って販売することにして、そのオマケみたいなものとしてできればいいのかなあと思っていました。オマケとは⾔っても、限定版のハードなのでお値段は高くなってしまうのですが、もしそこに加えるグッズのひとつとして用意ができたら、皆さんきっと喜んでいただけるだろうなとは思っていましたね。

 そして、メガドライブミニのときとは違って、新規タイトルを作る余裕がまったくないだろうと当初は思っていたのですが、外部の方も含めてすごく頼りになるメンバーが集まってくれましたので、ゲームギアミクロと「アレスタコレクション」の移植パートを作りつつ、「アレスタコレクション」のコンテンツも強化すべく、「GGアレスタ3」も作ることができました。

※6……キッズギア:ゲームギアから商品名を変更し、1996年にセガトイズから発売された最後発の機種。本体デザインや方向ボタンが改良され、「バーチャファイターmini」と対戦ケーブルが同梱されていた。

――「GGアレスタ3」という新作まで用意してしまうとは、いつもながらすごいサービスぶりですね。

奥成氏:先に作っている新作の開発が間に合わないから、もう1本別に新作を作るって意味がわからないですよね(笑)。

堀井氏:セガさんが発売する4色のゲームギアミクロといっしょに、我々が作ったミクロが発売されるというのは願ってもない話だったのですが、いろいろとやっているうちに話がどんどん大きくなってしまいまして(苦笑)……。

奥成氏:もともとゲームギアミクロは開発期間がとてもタイトでしたし、エムツーさんからも当初は「1色につき2本入れるのが多分限界です」と言っていたくらいなので、セガ版ではメガドライブミニの「テトリス」や「ダライアス」みたいな新作を入れることは想定していませんでした。

 その後、発売時期を見直して開発期間を確保したり、エムツーさんのほうでいろいろと解析を進めていただいたところ、「4本まで入りそうです」というご連絡をいただいたので、最終的に今の仕様になりました。で、セガ版4色が秋、エムツー版の発売が2カ月半後の年末になったことで、少し時間があるねとお話をしていたら……。

駒林氏:あれよあれよという間に、「GGアレスタ3」を作ってしまいました(笑)。

奥成氏:エムツーさんが「アレスタブランチ」じゃなくて、「アレスタコレクション」に同梱するという話をし始めた時は、なるほどPS4やSwitch向けにマークIII版の「アレスタ」が遊べるというのは良いなとは思っていましたが、同時に「ゲームギアミクロにマークIIIタイトルも入れていいですか?」というご相談をいただいたんです。でも、元々テレビで遊ぶためのマークIIIのゲームが、ミクロの小さい画面でちゃんと視認できるのか心配だったので、「もし実機でクリアできたら入れてもいいですよ」とご連絡したんです。

堀井氏:そう仰られたら、クリアするまで我々としては当然プレイしますよね(笑)。

駒林氏:で、「アレスタコレション」の企画を担当した、弊社の福井がクリアまでプレイできることを実証しました。

奥成氏:そうでしたね。それでも個人的に不安がありましたので、本体カラーをホワイトにするなら、TVチューナーは付けられないけど、ビッグウィンドーミクロも付けたらいいのでは、と堀井さんに提案をしました。提案を飲んでいただいてよかったです。ちなみに結局私も「GGアレスタ」と「GGアレスタII」をゲームギアミクロ版で初めてクリアできました。途中でセーブしながらですが(笑)。

堀井氏&駒林氏:それは良かったです!

堀井氏:これは皆さんへのお詫びみたいなお話になってしまうのですが、「アレスタコレクション ゲームギアミクロ同梱版」は、ビッグウィンドーミクロも付いていた限定生産で、正直お値段はかなり張ってしまう(※「同梱版」の価格は税抜で14,800円)のですが、何卒よろしくお願い申し上げます。

 私はドリームキャストの時代から、ずっと弊社がセガさんのサードパーティになりたいという夢があったんですよ。ドリームキャストの最後のタイトルが出たあたりの時期に、PCでデモを作ってセガさんにお見せしたこともあったのですが、始めたタイミングが遅過ぎてもう間に合わなかったんですね。で、それから15年くらいして、今回のゲームギアミクロで「エムツーさんでも出しませんか?」というお話を奥成さんからいただきましたので、もうどうしてもやりたくなったんです。

 もしウチからもセガさんの新ハードを発売できたら、とてもアツイじゃないですか!とにかく作りたい、何とか世に出したいなと思っていました。ゲームギアミクロにエムツーが参入したら、SG-1000の互換機としてオセロマルチビジョンを出したツクダオリジナル(※7)みたいな存在になれますから、その想いで、ついにゲームギアミクロ付きの「アレスタコレクション」の発売を実現することができました。

※7……SG-1000でオセロマルチビジョン:オセロマルチビジョンは、1983年にツクダオリジナルが発売した家庭用ゲーム機のこと。同ハード用のゲームソフトは、セガ初の家庭用ゲーム機であるSG-1000でも遊べる互換性を持っている。

奥成氏:先程もお話したように、4色のゲームギアミクロの予約が想定以上に入りましたので、「堀井さん、そろそろホワイトの数を決めなきゃいけないんですけど、セガ版の製造数は倍になっちゃいました。エムツー版はどうしましょう?最初の提案数では足りないんじゃないですか?」とご相談をしたら、当初の3倍以上となる、かなり攻めた限界に近い数を作ることになりましたので、堀井さん本当に頑張ったなと思いますよ。

堀井氏:いえいえ。ウチとしては、このぐらいがギリギリだろうという、個人的には少な目ではないかあなと。むしろ、セガさんのほうでゲームギアミクロを出すこと自体が、ものすごく頑張ったのではないでしょうか。

――ホワイトの収録タイトルにも、何かオリジナルの機能やモードを追加しているのでしょうか?

駒林氏:マークIII版「アレスタ」にイージータイプを追加しました。自分でプレイしていたら、途中で1回ミスをすると、パワーアップをすべて失うのが、もうとにかく厳しいなと思ったので、これまた「アレスタコレクション」の福井が改造してました。パワーダウンしなくなるので、かなりやりやすくなったと思います。

――楽しいお話が尽きませんが、そろそろお時間が迫ってきたようです。それでは最後に、GAME Watchの読者に向けて、皆さんからメッセージをお願いいたします。

奥成氏:ゲームギアミクロは、遊べるキーホルダー、マスコットというイメージで作りましたので、カバンの中に入れて持ち歩いていただいて、移動中のシチュエーションに合わせて遊んでいただければと思っておりました。ですが、今は新型コロナウイルスの影響で外出もままならない状況ですから、今後ウイルス問題が解決した頃に、外でお楽しみいただけたらうれしいですね。ひとまず今のところは、昔のゲームギアみたいにご自宅で遊ぶ携帯機になるしかないですね。各カラーそれぞれにRPGを収録してありますから、ぜひ腰を据えてじっくりと遊んでいただければと思います。

堀井氏:かつてセガさんが大鳥居にあった頃、弊社から移動するまでの間にゲームギアの電池が切れてしまった思い出があったのですが、今やこうしてゲームギアミクロが発売されるのは感慨深いですね。机の隅にとかに、自分でスタンドを用意して置いていただき、その日の気分によってカラーを入れ替えたり、気が向いたら電源を入れて音を鳴らしたり、手に取って遊んでいただければうれしいです。

 私にとってもすごく心の癒しになる、良い商品の開発に関われたなあと思っております。奥成さんからとても魅力的なオファーをいただけたこともあり、今回は社運を賭けてゲームギアミクロホワイトも開発しました。皆さんには経済的なご負担を掛けてしまいますが、もし宜しければぜひこちらもお買い求め下さい。

駒林氏:遊べるマスコットということで、イージータイプを入れたりですとか、権利表記画面で気さくな音楽を流すだけでも、飾るだけでも楽しくなるよう、いろいろとこだわって作りました。「俺なら絶対コレを買うぞ!」と胸を張って⾔える商品ができたと思っておりますし、実際に私もセガストアで限定版の全4色を予約しました(笑)。開発期間が短いなか、スタッフみんなで頑張って作ったゲームギアミクロを、ぜひよろしくお願いいたします。

――ありがとうございました。