【特別企画】

「ゲームギアミクロ イエロー」全収録タイトルレビュー

シャイニングなゲームギア!疲れた時は「なぞぷよ」で頭をリフレッシュ

【ゲームギアミクロ ブラック/ブルー/イエロー/レッド(全4色)】

10月6日 発売予定

価格:各4,980円(税別)

 「ゲームギアミクロ イエローセット」はコンセプトがかなり明確な1台だ。何しろ収録ソフトの4本中3本が「シャイニング・フォース外伝」のシリーズなので、「シャイニング・フォースカラー」と言っても差し支えないほどだからだ。実際に公式サイトでも「光輝くイエローセット」と銘打っており、「シャイニング・フォース外伝」シリーズを楽しみたい人はイエローセットで決まりだ。

 メガドライブミニのレビューで初めて「シャイニング・フォース」シリーズに触れた筆者にとって、今回その外伝となるゲームギア版のオリジナルが全てプレイできるのは非常に嬉しい。筆者と同様、メガドライブミニで初めて同シリーズに触れた人も多いと思うが、そんな新規の「シャイニング・フォース」ファンにとってもありがたい収録タイトルと言える。

 さらにイエローの構成が見事なのは、残る1本にあえてパズルゲームの「なぞぷよ アルルのルー」を収録した点だろう。シミュレーションで敵との戦いをどう攻略するか、戦術に頭を使って少し気分転換したい時に、シンプルななぞぷよで頭を解きほぐすことにより、再び「シャイニングフォース」の世界に戻って戦術を練り直せる。

収録ソフトはこの4本

 セガマニアとしては新参者の筆者はセガマニアの弟と会話し、オリジナルのゲームギアの現物を借りつつ、ゲームギアミクロと比較しながら本体をチェックしてみた。

 やはり改めて見直すとゲームギアはデカくて重い。ゲームギアにはストラップホールが付いており、ストラップを装着できる。ゲームギアミクロもその作りは踏襲されており、小さなストラップホールが用意されているが、ゲームギアミクロのストラップは、そのサイズ感から、カバンや携帯電話に装着できるアクセサリー用途としても使えるのに対して、ゲームギアのストラップは完全にゲームプレイ中の落下防止の意味合いが強い。

 ただ、オリジナルのゲームギアは、ディスプレイサイズも当時としては大型で、カラー液晶を搭載するなど、プレーヤーサイドからするとハイエンドな雰囲気を持った端末だったのは間違いないだろう。

みんな絶対やると思われる、ゲームギアとゲームギアミクロのサイズ比較をやってみた
ゲームギアの上にゲームギアミクロを乗せてみると画面サイズよりも小さい事がわかる。こうしてみるとボタンとボタンの隙間がゲームギアミクロではかなり詰められている印象だ
本体のサイズと比較すると、ゲームギアミクロの方向キーのサイズが占める割合はかなり大きい

 筆者宅には当時のオプション「TVチューナーパック」もあったのでチェックしてみたが、1990年代という時代を考えると、携帯テレビとしても使えるというのは驚愕の一言だ。TVチューナーパックにはAV入力機能も備えるので、モニターとして使えるというのもユニークな作りだ。

 ゲームギミクロはこのコンパクトなサイズながら、移動などに使うカーソルキーの大きさがオリジナルと比較しても、本体全体における比率が非常に高く、カーソルキーはあまり小さくなっていないのも驚愕のポイントだ。また画面サイズも非常に小さくなっているものの、解像感の高いディスプレイを採用するため、視認性が非常に高く、ゲームをちゃんと遊べるようにデザインを再構築しているところは、流石セガ、といったところだろう。さて、本体の比較はこのくらいにして、早速収録ソフトについて紹介していこう。

オリジナルのゲームギア付属の「TVチューナーパック」とゲームギアミクロの比較
ゲームギアのカートリッジとの比較もしてみた。とにかくゲームギアミクロの小ささが伝わる

20年後のガーディアナ王国を満喫できる「シャイニング・フォース外伝 ~遠征・邪神の国へ~」

 メガドライブの名作シミュレーションRPG「シャイニング・フォース」シリーズの外伝作品第1弾が「シャイニング・フォース外伝 ~遠征・邪神の国へ~(以下、外伝I)」 だ。本作の舞台となるのは、メガドライブ版「シャイニングフォース 神々の遺産」から20年後のガーディアナ王国が舞台となる。ゲーム内に登場していたガーディアナ王国のメンバーたちが本作にも出演するなど、外伝と言うより、続編としての印象が強い作りに仕上がっているのが特徴だ。

「シャイニング・フォース外伝 ~遠征・邪神の国へ~」。ゲーム開始後は女の子が絵本を読んでいるところ、というシリーズ屈指の黄金シチュエーション

 ストーリーとしては、20年後のガーディアナ王国に、謎の国サイプレスからの使者が訪れる。ここで本編の頃は王女だったが、外伝では女王に即位したアンリ王が登場し、彼らと面会する。サイプレスの使者ウォルドルはここで謎の小箱をアンリ王に渡すが、それを迂闊にも開けてしまったアンリ王は永遠の眠りにつく呪いにかけられてしまう。ウォルドルたちは、サイプレスに服従しなければアンリ王の眠りは解けない、と告げて姿を消してしまう。

 本作の主人公は本編のラストで他の仲間たちとは生き別れになった主人公「マックス」……とそっくりの少年「ニック」とのことで、ゲーム開始後のデモでは、ニックに向かって本編の時にも登場したケンの口から「きっ きみは! あなたはマックス? いや・・にているが・・ちがうようだ」というセリフが飛び出すのが熱い。

 ほかにも本編に登場したキャラクターたちの子供たちが今回の登場キャラクターとして登場するため、名前は微妙に変化しているが、子供たちの物語としてストーリーを満喫できる。

 システムは大きく変わっておらず、バトル時にはメガドライブの時に衝撃を受けたアニメーションバトルが再現されており、全4章、22バトルが楽しめる。コンパクトなサイズながらもシミュレーションの雰囲気はそのままだし、表現力も高く、メガドライブ版と比べても遜色ない演出になっている。

 また、シリーズのお約束として、マップによっては、隠しユニットも存在しており、こうした強力な隠しユニットを仲間に加える事で、戦いをより有利に進められる。

 ゲームギアミクロのコンパクトなサイズでも、シミュレーションであれば慎重に操作できるため、ゲームプレイ上、気になるところもあまり感じない。スタートボタン長押しでの中断セーブ機能もあるので、メガドライブミニ版で楽しんだ人たちは同じように戦闘時に中断セーブを利用して、戦いを有利に進める事も可能だ。

 なお、外伝シリーズ共通の裏技として、主人公の名前を決める時にスタートボタンを押しながら「おわる」を押すことで、他の仲間の名前が一括で変更出来たり、1度クリアした後、「つづきから」でデータを選ぶ時にスタートボタンと上を押しっぱなしにすることで、サウンドテストが開いたり、1度クリアした後、起動時のSEGAのロゴが出ている間に下を5回押す事で、難易度の高いエクセレントモードが遊べるようになるなどの裏技が用意されている。

バトルアニメーションはメガドライブ版と比べてもかなり頑張っている
キャラクターの顔が表示される会話シーンも健在だ

「外伝I」をクリアしてからプレイするのがおススメ! 「シャイニング・フォース外伝II ~邪神の覚醒~」

 本作は「外伝I」のラストから2年後が舞台となる、「外伝I」の続編と言う位置付けだ。ここで警告だが、「外伝II」をプレイする時は是非「外伝I」を先にクリアしてから遊ぶことをお勧めしたい。というのもオープニングデモを見ていると、ストーリー的には完全に「外伝I」から繋がっており、キャラクター同士の会話を聞いていても、「外伝I」クリア前ではピンとこない内容が多かったからだ。

「シャイニング・フォース外伝II ~邪神の覚醒~」。「外伝II」では「外伝I」と同じ女の子の服の色が違うという細かいこだわり。女の子が同じということから続編とわかるようになっているのもポイントだ

 実際、「シャイニング・フォース」シリーズとして見ると、ゲームギア版の外伝は容量の関係もあって、携帯機らしいボリュームとなっており、これらは2本で1本としてストーリーが構成されているようだ。なお、これら「シャイニング・フォース外伝」のIとIIの2本はまとめて「シャイニング・フォースCD」として、後にメガドライブ用メガCDソフトでも発売されたという経緯もある。

 と言いつつも、ゲーム自体は単体の製品なので、主人公も前作とは異なる、「シュウ」という寡黙な少年が新たに登場するし、登場キャラクターもレベル1からの開始なので、レベルを上げたりといった展開は変わらない。ストーリー展開については、よりシビアな内容になっていくのは間違いない。

 「外伝II」についてだが、こちらも「外伝I」を踏襲した作りになっており、共通項は多い。難易度も上がっているようなので、レベルが足りないと感じた場合などは、シリーズ共通の主人公のみが使える「リターン」の魔法を使って同じステージを繰り返しプレイする事で、キャラクターたちを強化していくのがいいだろう。こうしてストーリーを進め、全4章、24バトルをクリアしてエンディングを迎えてほしいところだ。

バトルアニメーションのテイストは「外伝I」とあまり違いは感じられないが、動くところはよく動く
キャラクターの顔のアップを表示してのストーリー展開は、キャラクターたちの感情が伝わりやすく、感情移入しやすい

マックス再び! 「シャイニング・フォース外伝 ファイナルコンフリクト」

 「外伝I・II」とはまた異なる外伝として用意されたのが外伝シリーズとしては3作目となる「シャイニング・フォース外伝 ファイナルコンフリクト」だ。しかも「シャイニング・フォースI」の主人公であるマックスのその後の冒険が描かれているという驚きの展開だ。起動後のオープニングデモではそんなマックスが登場し、敵のミシャエラを追って古代神殿にやってくるといういきなりクライマックスな展開を見せつける。

 マックス同様、「シャイニングフォース 神々の遺産」で登場したロボット「アダム」も登場するが、オープニングデモでは、マックスたちがやられてその後どうなったのかわからないまま、オープニング画面が姿を現わす。ゲーム開始後のデモでもマックスは姿を見せる事なく、後半まで登場する事はなさそうな雰囲気だ。

 一方、本作の主人公「イアン」はスタート直後は影が薄い。何しろ本作の1戦目の戦いでは、主人公は無視し、オープニングで登場したほかの仲間たちのみでの戦いとなるからだ。こうしたこれまでの常識を裏切る展開は、今後のストーリー展開を期待させるいい意味での裏切りの演出と言える。

 こうやってストーリーの流れを見ていると、「シャイニングフォース 神々の遺産」の外伝的な雰囲気もあわせ持つ一方で、最初の舞台となる町の名前はなんと「シャイニング・フォースII 古えの封印」に登場したみなと町ハッサンなのだ。しかも、後半になると味方としてこれまた「シャイニング・フォースII」でも登場したオッドアイが登場するなど、正にIとIIが同じ世界観である事を示すための繋ぎの物語として用意されたような作りとなっている。つまりメガドライブの「シャイニング・フォースI」、「~II」を両方遊んだプレーヤーたちは是非プレイすべき、ということだ。

 ちなみにストーリー全体では全4章22バトルと、これまでの外伝シリーズと同じくらいのボリュームだが、ビジュアルのディティールが向上するなど、全体的に細部まで調整が施され、さらに遊びやすくなっているのもポイントだ。こちらを先にプレイして懐かしのマックスの姿を堪能するのも楽しみ方の1つと言えるだろう。

バトルシーンのビジュアルは多少ディティールが細かくなったように見える
キャラクターの顔グラフィックスのテイストも少し変化が感じられるのが面白いところだ

シンプルな構成のやりこみぷよぷよ「なぞぷよアルルのルー」

 「ぷよぷよ」のゲームモードにはメガドライブ版やアーケード版のような敵と対戦するモードの他にも、プレーヤーの精神力が尽きるまでぷよぷよをけしまくるエンドレスモードや、詰将棋のように予め画面上に配置されたぷよと落下予定のぷよを利用して、提示された条件を達成するなぞなぞぷよぷよ、通称なぞぷよモードがある。

旧デザインのアルルがお出迎え。今度の対戦はなぞぷよだ!

 これらのうち純粋な1人プレイ用モードのエンドレスモードとなぞぷよモードのみを収録し、ゲームギア用にアレンジしたのが「なぞぷよ アルルのルー」だ。「ぷよぷよ」のオリジナルとも言えるファミコンや8ビットパソコンのMSXでのみリリースされていた、昔の「ぷよぷよ」の頃から存在していたなぞぷよモードの収録は、ゲームギア未所持の当時から注目の存在だった事を記憶している。

 本作のなぞぷよモード「NAZO PUYO」は簡単なストーリー仕立てになっており、主人公のアルルが、カレーを作るための材料を集めるために、シンプルなマップを移動し、材料をかけて敵となぞぷよ勝負していく、というもの。敵を1人倒すごとにパスワードが提示され、このパスワードを入力する事で続きがプレイできる。

 なぞぷよモードは前述の通り、画面上に予めぷよが配置されるほか、落下するぷよも予め決まった状態で、「4連鎖しろ」、「10ぷよを同時に消せ」などの提示された条件をクリアしていく。ルールがシンプルなので、やり出すと止まらない、やみつきになる魅力があり、ついつい時間を忘れてプレイしてしまう。

「NAZO PUYO」モードでは、街中を歩いて他のキャラクターと会話することでなぞぷよバトルが発生! 勝てばカレーの材料をゲットできる
なぞぷよは、画面右下に提示された条件を、予め配置されたフィールド画面に指定された落下ぷよでクリアする。失敗しても何度もやり直しできるのでこちらもとことん遊べる

 なぞぷよは一通りクリアするまで楽しむタイプのモードだが、本作にはもう1つ、心ゆくまでぷよぷよの連鎖などが楽しめるエンドレスモード「TOKO PUYO」も収録される。とにかくひたすら落下するぷよぷよで連鎖を決めていくのは気持ちいい。連鎖回数が増えるとスピードも上がってくるので、よりスリリングなぷよぷよが体感できるのも面白い。こちらは名前の通り、とことん楽しめるエンドレス仕様なので、高速落下に慣れてくると延々と遊び続けることも可能だ。

 本作でも中断セーブ機能が利用できるようになっているため、「NAZO PUYO」のコンティニューのためにパスワードを取る必要がなく、快適にプレイできるのはゲームギアミクロならではの恩恵だ。

「TOKO PUYO」モードではひたすら落下するぷよを積んで連鎖して、を繰り返すエンドレスモードだ。連鎖回数が増えるほど、落下スピードが上がるため、従来のぷよぷよとは異なるスリリングさが楽しめる

外部映像出力がほしかった! 2020年最強のおもちゃ!

 ゲームギアミクロは共通の仕様として通電用のmicroUSB端子と、音声出力のイヤフォン端子のみを備える。このおもちゃのようなコンパクトなサイズにゲームギア本体を丸々入れて仕上げた作りは正直、驚嘆しかない。一方で今回非常に残念なのは、本製品に外部映像出力の機能が存在しない点だ。

 もちろん、本製品が小ささや価格を考慮してこの仕様になった事は十分に理解できる作りだし、このハードウェアに外部映像出力が追加できるかと言われるとその難易度が高い事は十分に理解している。おもちゃとしての完成度は非常に高く、これ以上余計な機能の追加が難しいのは議論の余地もないところだ。

 その上で、あえて外部映像出力が存在しないのが残念だと言いたいのには、いくつかの理由がある。1つは昨今の流行りであるゲーム実況などの映像配信が手軽に行なえない点。そしてもう1つは筆者自身もそうだが、40代以上の年齢層にはこのディスプレイはちょっと小さすぎる場合があるという点だ。

 ディスプレイが小さすぎる点については、4セット購入特典の「ビッグウィンドーミクロ」などもあるが、やはりテレビなどのディスプレイに出力して手軽に遊びたかったのが正直なところだ。

 映像配信については、ゲームギアミクロを無改造で配信しようとすると固定カメラなどで直接ゲーム機の映像をそのまま配信することになる。そうなるとせっかくの高品質な映像が環境によって台無しになってしまう恐れもあるので、やはりここは専用端子を利用してでも実現してほしかったところだ。

 上記1点だけ気になるポイントをあげさせてもらったが、ゲームギアミクロはこのコンパクトなサイズ感から、従来のセガファンだけにとどまらず、ちっちゃなおもちゃや小物が大好きな層も喜ぶ納得の仕上がりだ。こんなに小さいのにゲームもプレイできて、アクセサリーとしてもかわいい。筆者は4台セットで予約しているので、特典のビッグウィンドーミクロについても楽しみだ。

 今後もセガには色んなミニシリーズに挑戦してもらい、我々の度肝を抜いてもらいたい。

電池含めて実測56g程度なので、ブルース・リーでもどうにか持てる重量感だ