【特別企画】
「LoL」はやっぱり最高だ!「第2回全国高校eスポーツ選手権」、「LoL」部門の若き選手達が感動をもたらす
まりも選手の常軌を逸したプレイが会場を大歓声の渦に巻き込んだ!
2019年12月30日 17:15
- 12月28日、29日開催
- 会場:EBiS303
毎日新聞とサードウェーブが主催/共催する高校生のためのeスポーツ大会、「第2回全国高校eスポーツ選手権」。12月29日には「リーグ・オブ・レジェンド(以下、LoL)」部門の決勝大会が行なわれ、劇的で、感動的で、あまりにドラマティックな最後の決勝戦を経て、優勝は学校法人角川ドワンゴ学園N高等学校ネット学習コース「KDG N1」(沖縄)が勝ち取った。
今大会はまさにプロ顔負けといっていいほどにレベルの高い試合が次々と繰り広げられた。優勝候補と目され、その下馬評通りに優勝した「KDG N1」はもとより、惜しくも決勝で破れたクラーク記念国際高等学校 秋葉原ITキャンパス「Yuki飯食べ隊」は元プロチームRascal Jesterのプロ選手である料理上手なYukiコーチの指導の元、チームとして高い完成度を誇っていたし、準決勝に進んだ豊田工業高等学校「豊工LOL組」、横浜市立南高等学校「The Grateful Feed」の試合も素晴らしかった。
また、高校生たちがまさに甲子園よろしくチームで一丸となって優勝を目指し、やっと勝利を掴む、あるいは、努力も虚しく敗者として散っていく。勝てばガッツポーズとともに雄叫びをあげ、負ければ悔し涙を流す。その姿は大真面目に「LoL」に取り組んできた姿が透けて見えるからこそ、見る人の胸を打つ。
筆者も現地で大会を観戦していて、記者としての仕事でそこに居たにも関わらず、試合の展開にあわせて何度も雄叫びを上げたし、優勝が決まった後、大会メインテーマのBURNOUT SYNDOROMESによる楽曲「ナミタチヌ」をバックに出場選手たちの姿がハイライトとして映し出されたときには思わず目に涙が滲んでしまった。それは、必死で戦う選手たちの姿にいつしか感情移入してしまったからに他ならない。
弊誌では既に各試合のレポートを掲載しているが、今一度この素晴らしい大会について振り返っておきたいと思う。
高校生たちの練習、戦略、そして結果。インタビューで高校生プレーヤーをもっと知る
大会の話をする前に少し「LoL」について説明しておくと、本作はMOBA(Multiplayer Online Battle Arena)というゲームジャンルに属するゲームで、「5人で1チーム、計10名が互いに相手の本拠地の破壊を目指して戦っていく」というものだ。……と、ゲームの目的こそ一言で語れるほどにシンプルだが、その過程にはCSを取る、相手を倒す、タワーを破壊する、ドラゴンやバロンを取るなど、相手に対して少しでも有利を築くための無数の少目的があり、そのためにチャンピオンピックや戦略を考えたり、序盤の1:1で負けないように練習したり、奇襲を受けないような位置取りや視界確保を心がけたり、集団戦でターゲットを合わせたり、行動の優先順位をチームで考えたり……とこれまた最終的に相手の本拠地を破壊して勝つためには沢山の考えるべきこと、やるべきことがある。
「LoL」はよく複雑で難しいゲームだと言われるが、それはそう、全くもってそのとおりだ。勝つためにやるべきこと覚えるべきことが多く、さらに少なくとも自分のチャンピオンは上手に動かせるくらいでないと、ゲームに勝つのは難しい。一方で、複雑な要素が絡み合ったゲームだからこそ毎試合に違う展開があり、毎回違うドラマがある。だからこそ「LoL」にはある種中毒的な面白さがあり、これが大会を見る楽しみにも繋がっている。
今大会で言えば、例えば準決勝第1試合。学校法人角川ドワンゴ学園N高等学校ネット学習コース「KDG N1」と横浜市立南高等学校「The Grateful Feed」の試合は、最序盤のレーン戦はほぼ互角と言っていい流れだった。しかし、「KDG N1」は2つめのドラゴンで2キルを獲得したのを皮切りに、リフトヘラルドやタワー、バロンやドラゴンソウル(ドラゴンを4体倒すことで獲得)といったオブジェクティブを、「The Grateful Feed」にひとつも渡すことなく次々と獲得。これぞ理想といったゲームの流れを実現するチーム力は驚くべきものだ。
試合のあとは、各回敗れたチームに対するインタビューが行なわれた。そこでは大会の感想や、大会に挑むまでの経緯やプランなどが語られたが、「The Grateful Feed」は全身から悔しさを滲ませつつも、チャンピオンのバンピックも思い通りにでき、やりきった感があると話していた。「The Grateful Feed」は過去の高校生大会でも上位に食い込む実力を持ったチームだ。その上でこの日に向けて練習量を増やし、コーチをつけてまで勝利に向かってきたが、それでも「KDG N1」は更にその上を言っていたと語る。
「敗者にインタビューをする」というのは取材する側からしても辛い。見るからに憔悴していたり、落胆していたりする選手に対して、何故ダメだったのかを問いただすことになるからだ。ただ、今大会においてはこのインタビューが、そのチームの魅力やなりたち、先の試合に繋がる意気込みを聞く機会にもなり、"負けたらそのままひっそりと退場"という形にはなっていないのが良かったように思う。
また、「失意泰然」ではないが、選手たちは敗北を喫したばかりの若き高校生ながら、周囲を取り囲むメディアに対して自分たちの想いを真っすぐに語っていたのが非常に印象的だった。果たして自分が高校生の頃にはステージ上で堂々と発言したり、きちんとインタビューに応えたりすることができたかどうか……今の高校生たち、あるいはeスポーツに全力で取り組む高校生は本当にしっかりしているなという感想を抱いた。
決勝戦では「KDG N1」のリーダーまりも選手のルシアンが会場を虜に!
さて、話を試合の中身のほうに戻すと、今大会のベストバウトはやはり学校法人角川ドワンゴ学園N高等学校ネット学習コース「KDG N1」がクラーク記念国際高等学校 秋葉原ITキャンパス「Yuki飯食べ隊」から1勝を獲得して迎えた運命の決勝戦第2試合だ。ちなみに、「KDG N1」のコーチは元Rascal JesterのコーチLillebelt氏、「Yuki飯食べ隊」のコーチは元Rascal Jesterのサポート、Yuki選手が務めており、この試合は奇しくもコーチ同士の先輩後輩対決という様相をも呈していた。
初戦にて「KDG N1」は準決勝時点では控えに回っていた決勝大会の紅一点、shakespeare選手を起用するという作戦を用いて1勝を獲得していた。決勝戦のみBO3(2本先取)という形になるため、ここで勝てれば優勝が決まるという局面で、「Yuki飯食べ隊」には強いプレッシャーが掛かっていたことは想像に難くない。
そんな中、「Yuki飯食べ隊」は最序盤の小競り合いで勝ち取ったキルを足がかりに、ゲーム中盤まで「KDG N1」に対する有利にゲームを進めていく。しかし「KDG N1」は劣勢にも怯まず集団戦に活路を見出し、徐々にキル数で追い上げていく……が、キル数では追い上げられているものの、「Yuki飯食べ隊」は最終的にドラゴンを4体倒してドラゴンソウルを獲得する。ここまででも有利と不利が秒単位で入れ替わったり、集団戦を決めるファインプレイが続発、シーソーが激しく左右に振りきれ続けるかのようなレベルの高い攻防はプロ顔負け。手に汗握る試合とはまさにこのことで、高校生がこの試合を繰り広げているかと思うと、ある意味空恐ろしさを感じてしまうほどだったが、さらに「KDG N1」は試合を決定づける凄まじいムーブを見せる。
時間は36分過ぎ、1人が倒された状態でbotレーンをプッシュする「KDG N1」の3人に、これを好機と見た「Yuki飯食べ隊」の5人が総出で集団戦を仕掛ける。後ろからは「KDG N1」のジャングラー、キンドレッドがフォローしていたが、仮に上手く合流できても「KDG N1」が不利な4vs5の局面だ。大多数のケースで「LoL」の集団戦は人数差が多いほうが勝つ。しかも「Yuki飯食べ隊」はインファーナルソウルを獲得しており、見ていたこちらとしては「あ、これ『Yuki飯食べ隊』このまま勝って1戦返すな」と思うに十分な状況だったのだ。
しかし蓋を開けてみれば「KDG N1」は全員生存して相手を全滅させ、エースを獲得。そのままの勢いでネクサスを破壊し、優勝を決めた。このプレイには思わず一瞬目が点になったが、この結果を導いたのはチームのエースでありリーダー、ADCのまりも選手だった。集団戦に於いてはまず相手のADCを倒すことが定石だ。これは装備が整った後半はADCの通常攻撃が大きなダメージソースになるからで、可能な限りターゲットを集中して、火力が高い一方HPや防御が低いADCをさっさと倒してしまうのが望ましい。
だからこそ「Yuki飯食べ隊」のノーチラスはULTをまりも選手の駆るルシアンに放って動きを止め、レネクトンは張り付いてなんとか倒そうとしたし、普通はこれでADCから崩されて集団戦は敗け……となるはずだったのだが、まりも選手はフラッシュと「クイックシルバーサッシュ」、そしてルシアン持ち前のブリンクを使って縦横無尽に戦場を前に横にと駆け巡り、スキルショットとターゲットを上手く躱して最前線で火力を出し切った。もちろんキンドレッドがultでギリギリのところでシンドラのultを凌いだり、ブラウムが全力でルシアンのピールに回ったり、育ったイレリアが的確に相手を倒し切ったりといったチームのサポートはあったものの、まりも選手のプレイは文字通り常軌を逸していた。こんなものはもはや普通の高校生ができるプレイではなく、プロの試合でも年に一回見られるかどうかだと言っても過言ではない。このプレイは会場の大歓声を巻き起こし、試合後のステージでは全登壇者がまりも選手を称賛することとなった。
試合後のインタビューにてまりも選手は自身が中国でトップクラスのADC、UZI選手のファンであることを語り、彼が時折見せるような"不利な状況でも何故か相手を全滅させて生き残る"プレイが頭にあったと語った。あっけらかんと「自分でも何故できたかわからないが、できた」とも語っていたが、これはまさに卓越した実力と集中力が為せる技だろう。さらにまりも選手は優勝コメントの際、「勝ったらここに返そうと思って持ってきた」と「KDG N1」が決勝敗退となった前回大会の授賞式で降り注いだ"金のピロピロ(注:リボンの意)"を持参。「勝ったのでここに返します!」と、"ピロピロ"を会場に返すパフォーナンスを行ない、会場の笑いと歓声を浴びていた。
会場の熱が大人たちにも伝播!第3回大会にも期待
今大会はまりも選手というスター選手率いる「KDG N1」が優勝を飾った。しかし、惜しくも敗れたチームも口々に「楽しかった」、「試合に出られて良かった」と語っており、「LoL」を愛する高校生プレーヤーたちにとって、またとない晴れ舞台になっていたようだ。
また、会場には選手たちはもちろん、同じく高校生の友人たちや、先生や両親、業界関係者といった大人たちも訪れていた。そこで非常に印象的だったのは観客席の最前列に熱量の高い学校ごとの応援団が陣取って、プレイごとに大きな歓声を飛ばしていたことと、それに釣られてか、あるいは「LoL」を見たこともプレイしたこともない大人たちが一緒になって選手たちを応援していたことだ。
会場では「LoL」のオフィシャルグッズの物販が行なわれていたが、イベントの終了時にも売り切れの商品はなく、在庫もある程度残っていたようだ。LJLやオフラインイベント、つまり「LoL」ファンが訪れるイベントでは毎度長蛇の列ができ、人気商品から続々在庫切れになっていく光景が常なことから考えると、本イベントに訪れた675人(公式発表)のうち、大多数は「LoL」のグッズを欲しい!と思う、熱心なプレーヤーやファンではなかったことが予想される。
それでも、最初は「LoL」のこともわからず静かに試合を観戦していたのも関わらず、試合の後半にはサンダースティックを打ち鳴らして盛大に応援する姿などが見られ、会場の熱が徐々に伝播して行くさまを目の当たりにできたのは、試合とはまた別軸で非常に感動的な光景だったし、イチ「LoL」ファンとしてこんなに嬉しいことはなかった。
さて、「全国高校eスポーツ選手権」は既に第3回の開催が告知されており、競技タイトルとして「ロケットリーグ」と「LoL」が採用されることが内定している。次なる高校生たちによる超高校級の試合が今から楽しみだし、プロの試合とはまた違った熱量を会場で感じられる日が待ち遠しい。大会の詳細は追って公開されるとのことなので、その日を楽しみに待ちたい。
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