【特別企画】

BYOC1,200席!アジア最大のLANパーティ「WirForce 2019」台湾現地レポート

80時間ぶっ通しで行なわれたゲーム、eスポーツ、実況、音楽4ジャンルの祭典

11月21日~24日 開催

会場:台湾・台北 花博

 PCゲームが好きな読者の皆さんであれば、"LANパーティ"について知っている方も多いのではないだろうか。最近、日本においてもその文化が少しずつ浸透してきたように思う。現在日本最大級の規模を誇るLANパーティといえば「C4 LAN」だが、何を隠そう筆者も熱心な「C4 LAN」の参加者であり、且つ設営撤収においてはスタッフでもある。

 今回は「C4 LAN」スタッフを含む総勢12名で台湾へ渡り、アジア最大のLANパーティと称される「WirForce」に参加してきた。これまで「C4 LAN」を取材した多くの記者が「レポート記事が書きにくい」とこぼしていたのを知っているが、この「WirForce」は輪をかけて書きにくい。

 その主な理由は多岐にわたっていて網羅するのが難しいことと、個々の体験の差がありすぎるために主観的にならざるを得ないからだ。そのためこのレポートでは「WirForce」の概要を紹介しつつ、敢えて個人的な体験をもとに雑感をまとめてみることにした。

日本からの参加者の一部メンバーと記念撮影

ゲームプレイからステージ観覧まで内容は盛りだくさん!

花博公園は地下鉄MRT円山駅の目の前にあり、交通の便も良い

 今年で6回目を迎えた「WirForce」。今回の開催日時は11月21日11時より24日17時30分の計4日間である。会場は台北市の西側に位置する花博公園内の争艶館をメインに、流行館と長廊広場で行なわれた。パソコンを持参してゲームプレイを楽しむ「BYOC(Bring Your Own Computerの略称)」は全1,200席で、すべて事前申請制である。

 一般入場は無料だが、BYOCエリアに立ち入ることはできない。また、基本的に夜通しのイベントであるものの、20時になると一般入場者は全員退場させられる。これは18歳未満への入場制限のためであり、21時から年齢確認を実施しつつ再入場となる仕組みだ。なお、BYOC入場者はこの限りではなく、退場させられることはない。

BYOCエリアに入るときは、受付で着けられるリストバンドを提示する
リストバンドから読み取られたデータがBYOCエリアのゲートに表示されている

 カウンターで受付を済ませたら、その後は出入口においてリストバンドの提示をすればOK。受付には英語や日本語のできるスタッフもいる、安心の台湾クオリティである。日本の「C4 LAN」はPCやモニターを会場でレンタルすることができるが、こちらは持参のみ。個性的な自作PCを披露するMOD PC勢はもちろん、さまざまな方法で自らの席を華やかに飾ろうとする姿も見受けられた。エリア中央には企業BYOC席が設置されており、ふらりと見に行く人たちも多かった模様。

BYOCエリアで「Call of Duty」プレーヤーの日台交流が実現
日本のカラオケを提供しているBYOC席。日本のゲーマーは大きな歓迎を受けた
「Sound Voltex」をプレイする台湾の凄腕プレ-ヤー。上手すぎてギャラリーができていた
「初音ミク Project Diva Arcade Future Tone」を自席で黙々と遊ぶ台湾ゲーマー

 そのせいか、実を言うとBYOC席でずっとゲームをしている層というのは「C4 LAN」と比べるとずっと少ない。それでもぐるりとBYOC席を見渡すと、「League of Legends」や「Teamfight Tactics」、シューティング系なら「Apex Legends」や「Call of Duty」などが目につく。ただBYOCエリアで1番多く見かけたゲームのジャンルは、会場で大会が開かれた「Just Dance」をはじめ、「Sound Voltex」や「初音ミク Project Diva Arcade Future Tone」などの音楽ゲームであった。また、BYOCエリア内にはステージも設けられている。ここで行なわれていたものはかなり特殊なプログラムが多く、怪談話や牛乳早飲み大会など、もはやゲームとはあまり関係がないものも。

BYOCエリア内のステージ。写真はクイズ大会の様子

 とは言え、ここまでは「C4 LAN」の雰囲気とそれほど大差はない。大きく違うのは、無料エリアの存在だ。BYOCエリアが設けられている争艶館もその半分が無料エリアとなっており、企業ブースで占められている。東京ゲームショウに近い感じであると言えば、日本人にもイメージしやすいかもしれない。こちらにもステージがあったが、音楽イベントがメインだった。そして常に行列の絶えなかった人気コンテンツは、なんとカラオケブース。自分の歌声がネットで配信され、視聴者からコメントがもらえるというものだ。長いときは4時間待ちというとんでもない状況に。

大人気だったカラオケブース。右が配信ありで左が配信なし
「WirForce」のオリジナルグッズやゲーム関連のグッズを扱うショップ
台湾企業AOCのブース。じゃんけん大会などで常に賑わっていた
GIGABYTEのブランド「AORUS」のブースでは「League of Legends」の1v1大会を実施

 敷地内の別の建物である流行館ではボードゲームが行なわれ、長廊広場ではアーマードバトル会場やプロレス会場があり、体験や観戦を実施。プロレスは残念ながら見られなかったものの、アーマードバトルは指導メンバーのなかに日本語の上手な方がいたのもあって、筆者も実際に体験させていただいた。なお、長廊広場のステージがメインとされており、記者会見や閉幕式などはこちらで実施された。

長廊広場のプロレスリング。このときは「大乱闘スマッシュブラザーズ」の大会を実施
筆者のアーマードバトル体験の様子

 その閉幕式で参加者に授与された各部門の賞が面白かったので、取り上げておきたい。受賞の際には観客も非常に盛り上がっており、ゲーマー達の熱意が感じられた瞬間であった。せっかくなので少しだけ紹介しておこう。

最も早く入場したBYOCゲーマーへの賞。なんと開催の前の週の金曜から並び始めたのだとか
素晴らしいMOD PCの製作者に与えられる賞。クレーンゲーム機能がついている個性的なPCだ
スペシャルなBYOC席への賞。現代的なPCのなかで古代の雰囲気を出したかったそう
WirForceのFacebook公開グループ内で最も活発な活動をした人に授与される賞

台湾ゲーマーの歓迎を受けて……かけがえのない体験

Facebookの公開グループ内の筆者の書き込み。200件以上の「いいね!」と50件以上のコメントをいただいた

 個人的な体験としては、現地の関係者やゲーマーらとの出会いがとにかく楽しかったということに尽きる。先ほどの賞の紹介でも触れたが「WirForce」にはFacebook公開グループがあり、筆者は事前にそこで参加者たちと少しだけ交流をしていた。つたない中国語で書き込みをしたところ、予想以上の歓迎を受けたのである。台湾の人は得てして日本人に対して優しく、好意的な人が多い。そんななか、「WirForce」のパートナーメディアである三立新聞から筆者への取材申請があり、インタビューをしていただいた。

 また、会場を歩いて見学していたところ、マレーシアのストリーマー集団に遭遇。「eGG Network」というネット放送局が台湾の「WirForce」を取材していたようで、我々が日本から来たということで大変驚かれた。彼らとの会話の間も常にカメラが回っていたため、徐々に人だかりが……。その様子を見た「WirForce」のスタッフから「エンディングムービーに使いたい」との申し出があり、その場で撮影を実施。そして本当に使われていたのだからすごい。個人的にはとても良い思い出となった。

マレーシアのストリーマー集団と撮影したエンディングムービー。後で彼らのSNSを見たところフォロワーが何十万といる錚々たるメンバーであったことがわかり驚愕した

 そもそも筆者は、ゲームプレイはあまりしないほうだ。普段は「StarCraft」シリーズや「League of Lenends」のeスポーツ観戦を趣味としている。今回そういったタイトルのeスポーツイベントがほぼなかったのは残念だったが、スタンプラリーをしながらゲームの体験プレイも楽しめたし、カラオケも配信のないブースで1曲歌ってみた。とにかくステージや展示など見るものが多いため、4日間あっても時間が足りないのである。

「Just Dance」の決勝戦の様子。一般部門とBYOC部門があった
優勝チームには賞金17,000台湾ドル(約6万円)が贈られた

 ステージは見られなかったもののほうが多かったのだが、夜中の怪談は中国語が難しかったのでもっと勉強したいと思ったし、「Just Dance」は見ていて本当に楽しかった。「C4 LAN」で見たことがあったので知ってはいたが、ゆっくり見たのは初めてだった。新たな楽しみを見つけた気分だ。もし次の「C4 LAN」でもステージがあるなら、ぜひ注目したい。

ブランド化された「WirForce」はゲーマーの夢の空間

4gamersの黄智仁氏。写真は閉幕式でのあいさつのとき

 幸いなことに、今回「WirForce」の主催団体である4Gamersのなかでもいわゆるコアメンバーと言える方々と知り合いになることができた。彼らのうち2名は帰国子女であり、幼少期から友だちの家にPCゲームを持ち込むLANパーティの真似事のようなことをして遊んでいたという。そしてその文化を故郷の台湾に持ち込んだというわけだ。台湾自体もかなり早い時期からeスポーツが発展していて、2011年には筆者も台湾eスポーツのプロシーンを取材した。開幕記者会見には台北市長の柯文哲氏も登壇し、「政府もゲーム産業を支援していきたい」と述べている。台湾のゲーム産業の発展の理由を垣間見たような気がした。

ボードゲームエリアの様子。

 ただ、LANパーティと謳ってはいるものの、ゲームをプレイしている人よりもほかのさまざまな活動をしている人のほうが印象に残ったのは、ある意味興味深い点である。コアゲーマーでない筆者としては、返って居心地が良かったようにも感じる。もちろんプレイしたい人は思う存分すればいい。楽しみ方は自由なのだ。個人的にはあの空間そのものに没頭し、現地のゲーマーらとの交流に大きな満足感を覚えた。

 花博の近くにホテルをとっていた筆者は、イベント終了後に別の街で友人と会い、再び会場の前を通った。あの夢の空間は暗闇に消え去っていたが、その入口はまだ残っているではないか。それを見た瞬間、この4日間の出来事が走馬灯のように頭のなかを駆け巡った。そして、もう一度ここに戻って来たい――そう思った。そうすれば、台湾のゲーマーたちは再び我々日本人を歓迎してくれることだろう。来年は、この記事を読んでいるあなたも一緒にこの入口をくぐってみるのはいかがだろうか。