【特別企画】
セガサミーグループの総力を結集したとびきりラグジュアリーなeスポーツ大会「ぷよぷよファイナルズ SEASON1」観戦レポート
2019年4月21日 06:25
- 4月20日開催
- 会場:フェニックス・シーガイア・リゾート
セガゲームスは4月20日、アクションパズルゲーム「ぷよぷよeスポーツ」のシーズンチャンピオンを決めるオフライン大会「ぷよぷよファイナルズ SEASON1」を、宮崎県宮崎市にあるリゾート施設フェニックス・シーガイア・リゾートにおいて開催した。シーズンチャンピオンは、既報の通り、ダントツ1位のランキングポイントで出場を決めていた優勝候補筆頭Delta選手。Delta選手には賞金100万円が贈られた。
「ぷよぷよeスポーツ」は、現在11タイトル存在する、日本eスポーツ連合が認定し、プロライセンスを発行しているeスポーツタイトルの1つ。「ぷよぷよ」シリーズは、eスポーツに特化した「ぷよぷよeスポーツ」のリリース以前から公式大会を実施しており、今回実施された「ぷよぷよファイナルズ SEASON1」は、2018年6月から2019年3月までに実施された公式大会や、ランキングポイント対象大会で上位7位までに入賞した7名と、4月14日に行なわれた一般向けeスポーツ大会「ぷよぷよランキングプロ選抜大会 SEASON1」で優勝し、新たにプロライセンスを取得した選手を加えた8名による大会。
すでにSEASON2も発表されているように、「ぷよぷよeスポーツ」では、シーズン制を採用してシーズンごとのチャンピオンを決めていく計画となっている。今後予定されている「ぷよぷよeスポーツ」自体の海外展開、それに伴うeスポーツとしての「ぷよぷよeスポーツ」のグローバル展開に向けた布石として非常に重要な大会となる。
会場に選ばれたのは、セガサミーグループの子会社フェニックスリゾートが宮崎県宮崎市で運営するリゾート施設「フェニックス・シーガイア・リゾート」。かつて「ホテルオーシャン45」と呼ばれ、現在はシェラトングループが運営する「シェラトン・グランデ・オーシャンリゾート」を中核に、ゴルフ、アミューズメント、公園などなど、複合型のリゾート施設となっている。ちなみに、同リゾート内の最大のアミューズメント施設であり、宮崎を代表するランドマークとして知られる「オーシャンドーム」は、セガサミーホールディングスによって解体されて、現在は空き地になっている。
さて、大会会場となったのは、シェラトン・グランデ・オーシャンリゾートの中庭にあるバー「KURO BAR」。通常は宿泊者向けのバーとして営業が行なわれ、全面ガラス張りの建物と、建物の外にある自然との調和を重視したリラクゼーションエリアでお酒が楽しめる。今回はこのKURO BARを貸し切る形で大会が行なわれた。
筆者自身が偶然宮崎出身なので遠慮なく書くが、なぜこのような“僻地”でプロeスポーツ大会が行なわれたのかというと、フェニックスリゾートがセガサミーグループが所有する施設だからだ。もともとの出発点は「ぷよぷよ」シリーズプロデューサー細山田水紀氏の「どうせやるなら派手な場所、選手が喜んでくれるような場所でやりたい!」という発言だということだが、その意見がセガサミーグループ内を駆け巡った結果、こういうことになったらしい。
選手やスタッフの宿泊先はもちろんシェラトン・グランデ・オーシャンリゾートで、この大会に合わせて、JTBとのコラボレーションで、大会観戦ツアーも企画されており、一般のファンも集めている。eスポーツの大会というと、それ自体が儲かるビジネスではないため、見えないところはとことん節約するというのが普通だが、本大会はeスポーツとして生まれたてのタイトルとしては考えれないぐらいコストが掛けられている。
逆に言えば、セガサミーグループとして、セガゲームスとして、「ぷよぷよeスポーツ」に賭ける期待が、それだけ大きいということを意味している。筆者も、トッププロばかりが参加する大会をオフラインで観戦するのはこれが初めてで、期待に胸を膨らませて大会会場に乗り込んだ。
大会は8名の出場選手を4人ずつ2つのリーグにわけて総当たり戦を行なう予選リーグと、各リーグ1位が出場する決勝戦の2つの工程で実施された。「ぷよぷよeスポーツ」のプロ選手達の多くは、本業を別に持っているため、本業に支障が出ないように、土曜の朝から移動を開始しても間に合うように、14時からスタートした。
MCに椿彩奈さん、スペシャルサポーターには橘ゆりかさん、そして実況解説にはプロ選手であり、なおかつ「セガフェス2019」の「解説者コンテスト」1位と2位を受賞したTom選手とくまちょむ選手が務めるなど、こちらも非常に豪勢だ。現役のプロ選手が、プロの試合を解説するというのはスポーツの分野でもままあることだが、日頃から戦っている対戦相手ということもあって、出てくる情報がディープかつ正確で、実際に戦っている相手だから知っているような情報もあって、聞いていて大変参考になった。
予選試合は、2つの4人リーグの総当たりということで計12試合。10先(10勝先取)ルールで、最大19ゲームを12試合ということで、これは午前様も覚悟しなければならないのでは?と思ったが、実際に始まってみると、まるで仕切りの制限時間のない相撲のような感じで、テンポ良くどんどん試合が進んでいく。
試合の方は、出場選手はランキングポイント対象大会のトップランカーばかりということで、予選から実力が拮抗した白熱の名勝負が繰り広げられた。
筆者自身は、メガドライブ版からの「ぷよぷよ」ユーザーで、友人と熱心に対戦した経験を持つが、プロの試合を観戦していて、筆者が記憶しているゲームとしての「ぷよぷよ」と、目の前で繰り広げられているeスポーツとしての「ぷよぷよ」は、まったく性質の異なるものであるということがよく分かった。
“階段積み”、“挟み込み”といった連鎖のセオリーは昔から変わっていないし、先に仕掛ける先打ち、先打ちを待ってからカウンターを当てる後打ち、そしてファースト、セカンド、サードと連鎖を繰り返し仕掛け合う展開など、基本はわかっているつもりだったが、ゲームとeスポーツのあまりの進化ぶりに最初から最後まで衝撃を受けっぱなしだった
たとえば、14連鎖を決めた後に15連鎖を決めて逆転勝ちを収めたり、たっぷり積んでからの全消しを決めたり、相手の呼吸を読んで相手が動けないタイミングを見計らって速攻を仕掛けて奇襲勝ちしたり、1/6の確率の壁を打ち破って相手の連鎖の起点となる箇所におじゃまぷよをきっちり落とし込んだり、1ゲームのスコアが10万点(16連鎖相当)を突破していたりなど、全員が全員、化け物のように巧かった。
ゲームとはカルチャーが違うなと思ったのは、勝敗が決しているにもかかわらず、連鎖の手を緩めないところだ。これは俗に“死体蹴り”と呼ばれ、ゲームとしての「ぷよぷよ」においてオンライン対戦でこれをやると、ノーマナーとされる行為だ。ところがプロ同士の戦いでは、逆転される可能性が0ではない限り、勝敗が決するまで手を緩めない。実況解説のtom選手も「オンラインなら嫌われますが、プロではありです。プロの宿命は勝つことだからです」と擁護。まさにプロの世界は厳しいのだ。
客席には、スタッフやメディア、ツアー参加者以外に、地元勢、あるいは偶然滞在していた宿泊客らしき家族連れの一般参加者も混じっていたが、子供連れのお父さんは、お父さんの方が楽しんでいたし、両親と共に参加していた少年は、10を超える連鎖の応酬に、目をきらきら輝かせていた。中には還暦はゆうに越しているであろう年配の夫婦も参加されており、eスポーツが地方においても徐々に認知されていることが感じられて嬉しかった。
本大会でプロの洗礼を浴びたのが、先週4月14日に行なわれたアマチュア大会「ぷよぷよランキングプロ選抜大会 SEASON1」で見事優勝し、プロライセンスを獲得したtekku選手だ。優勝したご褒美として8人目の特別枠で出場を認められたtekku選手だったが、8選手中唯一の3戦全敗、総得点15という結果で幕を閉じた。10先で1試合平均5ゲームしか取れていない計算になるが、他の7人のトッププロとtekku選手には、かなり大きな実力差が存在しており、将棋でいえばトップ棋士10人のみが参加できるA級棋士と、アマチュア大会優勝棋士ぐらいの差があるように感じた。
そうした中で圧倒的な強さで決勝にコマを進めたのがDelta選手だ。Delta選手は8人の出場選手の中で、唯一ランキングポイントが200を突破している人物で、オープニングでも優勝を宣言。そのままAブロック3戦全勝で決勝にコマを進めた。
一方のBブロックは2試合ずつ消化した時点で全勝がいないという混戦となり、実況解説のtom選手、くまちょむ選手が優勝候補として挙げていた高校生プロのマッキー選手を主軸に、そのマッキー選手を10対8で撃破したselva選手、またそのselva選手を10対9の僅差で破ったfron選手の3つ巴となり、決勝進出の行方はマッキー選手対fron選手の最終戦に委ねられた。
絶対に勝利したいマッキー選手の先勝ではじまった第12試合は、本大会最高クラスの熱戦となった。対戦相手のfron選手は、実況解説のくまちょむ選手が「試合中に成長している」とまで言わしめ、マッキー選手に先にマッチポイントを握られながら最後の最後で9:9と追いつき、逆転勝利を収めた。このドラマティックな展開には実況解説のくまちょむ選手は「もうなんもいえない」と解説を放棄する事態となり、大方の予想を覆す形でfron選手が決勝にコマを進めた。
試合開始からすでに5時間が経過しており、日の長い宮崎も夕闇が差し込んできた。改めてライトアップする形で行なわれた決勝戦は、優勝候補のDelta選手と、もう1人の優勝候補を撃破して決勝まで勝ち進んだfron選手の対戦となった。
この決勝のみ5先の2マッチ制、つまり最大27ゲーム行なわれることになる。予選の10先1マッチも、最初は「そんなにやるのか」と驚いたが、この1日でeスポーツとしての「ぷよぷよ」を学習した筆者は、むしろ短いぐらいに感じていた。
優勝予想は依然としてDelta選手だが、勝負はまさに互角。1マッチ目も2マッチ目も9ゲーム目までもつれる熱戦となり、実況解説を務めたtom選手も「(fron選手の)進化が止まらない」と評価。相手の実力、手の内を分かっているからこそ出てくる言葉であり、まるで「ドラゴンボール」のように、試合中に強くなっていってる感じがおもしろい。
勝負の行方は3マッチ目の結果に委ねられたが、fron選手は2マッチ目までで力尽きていた、あるいはDelta選手がようやく攻略の糸口を掴んだといった印象で、5:1でfron選手を退け、Delta選手がSEASON1のチャンピオンに輝いた。
優勝したDelta選手は、「正直、嬉しいです。実力を出し切ることができました」と有言実行できたことにホッとしている様子だった。優勝賞金の100万円は、その一部を、自身も練習場として活用している東京上野の「ぷよぷよeスポーツ」コミュニティに提供するということで、コミュニティリーダーとして「ぷよぷよeスポーツ」を盛り上げていくことを約束。
なお、Delta選手もまた「ぷよぷよ」のプロ選手として食べて行くことは難しいため、本業を別に持っているということだが、競技生活を支えてくれるスポンサーが付いてくれれば、「ぷよぷよ」のプロとして一本化することも検討しているということで、「スポンサー募集中です。お願いします」と笑顔で語っていた。
「ぷよぷよeスポーツ」SEASON2として「ぷよぷよカップ SEASON2」が5月18日セガサミー本社社屋で開催される。選手エントリーは明日4月21日までとなっており、エントリー多数の場合は抽選となる。
また、「ぷよぷよeスポーツ」は、「いきいき茨城ゆめ国体」の文化プログラム「全国都道府県対抗eスポーツ選手権2019」の正式種目になっている。「一般の部」、「小学生の部」の2部門で、現在、全国44カ所のイオンモールで代表決定戦が行なわれており、見事都道府県予選を勝ち上がると、10月の茨城本大会に出場が可能。腕に自信のある「ぷよぷよ」プレーヤーは参加してみては如何だろうか?
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