【特別企画】
【FFXIV FAN FES】エンターテイナー祖堅の挑戦!「FINAL FANTASY XIV FAN FESTIVAL 2019 in TOKYO」スペシャルライブレポート
2019年4月9日 20:26
- 3月23日、24日開催
- 会場:幕張メッセ 4~6ホール
3月23日、24日の2日間にわたり、「ファイナルファンタジーXIV(以下、FFXIV)」のファンイベントである「FINAL FANTASY XIV FAN FESTIVAL 2019 in TOKYO」が開催された。通称「ファンフェス」と呼ばれるこの催しは約2年に一度行なわれており、2018年~2019年にかけての今回のツアーは、2018年10月にラスベガス、2019年2月にパリ、そして3月に東京での開催となった。
これまで「FINAL FANTASY XIV FAN FESTIVAL 2019 in TOKYO」について本誌で都度レポートさせていただいているが、本稿では各日の締めくくりに行なわれた「スペシャルライブ」にスポットを当てていきたい。
「FINAL FANTASY XIV FAN FESTIVAL 2019 in TOKYO スペシャルライブ」のセットリストならびに出演者は以下の通り。
【3月23日(土) スペシャルライブ・ピアノ】
【セットリスト】
・Revolutions (Vo.スーザン・キャロウェイ)
・忘却の彼方 ~蛮神シヴァ討滅戦~ (Vo.スーザン・キャロウェイ)
・古傷 ~ギラバニア湖畔地帯:夜~
・父の誇り ~ヤンサ:昼~ (with オタマトーン:祖堅正慶)
・宵の海 ~紅玉海:夜~
・美の謀略 ~蛮神ラクシュミ討滅戦~(Vo.スーザン・キャロウェイ)
・Dragonsong(Vo.スーザン・キャロウェイ)
・龍の尾 ~神龍討滅戦~
・紅の夜明け ~クガネ:夜~ (with 尺八:辻本好美)
【アンコール】
・万世の言葉 ~禁書回収 グブラ幻想図書館~ (※連弾 with 祖堅正慶)
【出演者(敬称略)】
・Keiko(Piano)
・スーザン・キャロウェイ(Vocals)
・辻本好美(尺八)※「辻」は“一点しんにょう”
・祖堅正慶(オタマトーン、Piano)
【3月24日(日) スペシャルライブ・THE PRIMALS】
【セットリスト】
・混沌の渦動 ~蛮神リヴァイアサン討滅戦~
・忘却の彼方 ~蛮神シヴァ討滅戦~(GUNN Ver.)
・曲がらぬ刃~蛮神ラーヴァナ討滅戦~
・eScape ~次元の狭間オメガ:アルファ編~
・天つ風 ~白虎征魂戦~
・メタル ~機工城アレキサンダー:起動編~
・魔神 ~魔神セフィロト討滅戦~
・千年の暁 ~朱雀征魂戦~
・月下彼岸花 ~蛮神ツクヨミ討滅戦~
・メタル:ブルートジャスティスモード ~機工城アレキサンダー:律動編~
・ライズ ~機工城アレキサンダー:天動編~
・過重圧殺! ~蛮神タイタン討滅戦~
・ローカス ~機工城アレキサンダー:起動編~
【出演者(敬称略)】
・THE PRIMALS
祖堅正慶(Guitar & Vocals)
マイケル・クリストファー・コージ・フォックス(Vocals)
GUNN(Guitar)
イワイエイキチ(Bass)
たちばな哲也(Drums)
・南條愛乃(Guest Vocals)
・吉田直樹(Guest Vocals)
笑ったり涙したりと忙しいピアノライブ!
3月23日は「スペシャルライブ・ピアノ」として、Keiko氏のピアノを軸に展開された。23日のトリということもあり20時スタートと決して早い時間とは言えなかったが、メインステージ四方に用意された観覧用座席は早々に埋まり、その周囲も人で溢れかえった。その他の催し物も全て終了し、会場内全ての視線がメインステージに注がれる中、FFXIVサウンドディレクター祖堅正慶氏、グローバルコミュニティプロデューサー室内俊夫氏がオープニングとして登場。続いてピアニストのKeiko氏と歌手のスーザン・キャロウェイ氏が登場し、演奏が始まった。
スーザン氏はこれまでの「FFXIV」メインテーマのヴォーカルを務めており、今回も「紅蓮のリベレーター」のメインテーマ、「蒼天のイシュガルド」のメインテーマを朗々と歌い上げた。トレーラーやゲーム内でお馴染みの曲であるが、ステージ上でのKeiko氏とスーザン氏は、ピアノに声にそれぞれの情念を乗せて時には流れるように、時には思いを溜めるかのように音を紡いでいった。ライブで聴くスーザン氏の歌声は、より一層の豊かさと力強さを肌で感じられた。そのスーザン氏に寄り添うかのようにKeiko氏のピアノが絶妙の協和音を奏でる。随所に見受けられたスーザン氏のアドリブにもしっかりと応えていくKeiko氏。2人はもはや鉄板コンビと言えるほどの阿吽の呼吸を会場内に見せつけた。
そして「蒼天のイシュガルド」メインテーマである「Dragonsong」のイントロが流れた瞬間に会場がざわついた。イントロで瞬時に分かるオーディエンスである光の戦士達の練度も相当なものだが、それほど感慨深い曲でもあり光の戦士達の心の奥底にまでこの曲が浸透しているという、まさに名曲と呼ぶに相応しいものであろう。ディスプレイには「蒼天のイシュガルド」メインストーリーのシーンが流れる。勿論オルシュファンのシーンも流れ、会場内がしんみりとなった。
だが、シックな雰囲気だけで終わらせないのが稀代のエンターテイナー祖堅氏である。「父の誇り」では怪しげなジュラルミンケースを片手に颯爽と登場、中からオタマトーンを取り出しピアノの伴奏に合わせてメロディを奏でようとするが、ことごとく音階を外して会場から笑いを引き出し、祖堅ワールドに引きずり込んだ。オタマトーンは押さえる場所によって音階が変わる電子楽器ではあるが、「音階を絶妙にずらしたままメロディを弾き続ける」という器用な真似に、オーディエンスの皆さんは笑いつつも、まるで熟練のピエロを見ているような感覚に陥ったことであろう。
そして「美の謀略」では祖堅氏とスタッフ達が、ラクシュミに魅了されてタコ踊りする光の戦士よろしくハートマークを持った両手を揺らめかせながらステージ上を駆け回った。これもラクシュミと戦ったプレイヤーであれば笑いとともに瞬時に理解出来てしまう心憎い演出である。
こういったネタを所々に挟んでくるのはファンに喜んでもらいたいという祖堅氏の確固たる思いのほかにも、後のインタビューでも述べているが「ヤマを作りたい」という意図があったのかもしれない。その意図が功を奏し、笑ったり涙したり実にエンターテイメント味溢れるステージとなった。
「龍の尾」ではKeiko氏の独壇場となり、原曲のオーケストラにピアノひとつで挑む形になったが、起伏に富み息をもつかせぬ見事な演奏は、これまでのファンフェス等で積み重ねてきたKeiko氏の熟練度の高さを感じさせ、ソロで神龍を倒すがごとくであった。
最後の曲である「紅の夜明け」では、花道から尺八を吹きながら尺八奏者である辻本好美氏が登場。ゲーム内でのクガネの夜明けが目に浮かぶような情緒たっぷりの演奏であった。実際にゲーム中の尺八パートは辻本氏が演奏したものを収録したという。辻本氏の堂に入りっぷりにも納得である。
全曲演奏が終わり大きな拍手が続く中、ステージ中心にあるピアノの椅子がもうひとつ並べられた。これは何かあるぞという期待に胸を膨らませつつも鳴りやまない拍手に応えるかのようにKeiko氏と祖堅氏が再び登場、お互いの演奏する鍵盤領域を押し付け合いながらのピアノ連弾という形でアンコールが始まった。
最初はたどたどしい演奏を見せた祖堅氏だが、ノリノリになっていき要所要所で手を止めていきなり顔をあげて会場中に変顔をアピールするというパフォーマンスを披露。後半では前半のたどたどしさはどこへやら、Keiko氏との流れるような連弾が会場を静かに盛り上げていく。「万世の言葉」は少々不規則なテンポで、FFXIVの曲の中でも難解な部類に入ると思われるが、それを感じさせないところに祖堅氏の演者としての技量の高さが窺える。それを隣で微笑ましく見守るKeiko氏もステージをとても楽しんでいるように見えた。そして床ペロするがごとく唐突に2人でピアノに突っ伏し演奏終了。最初から最後までネタ満載のアンコールであった。
アンコール後、再び沸き起こった拍手に演者全員が登場、カーテンコールに応え23日のライブは終了となった。
吉田氏・祖堅氏「24日のTHE PRIMALSはヤバいよ?」
翌3月24日は「スペシャルライブ・THE PRIMALS」がファンフェスのオオトリとして行なわれた。「THE PRIMALS」は祖堅氏を中心として2014年に結成された「FFXIV」オフィシャルバンドである。これまでに2つの「FFXIV」公式アレンジアルバム制作に参加、そして2018年5月には「THE PRIMALS」単独で1stアルバム「THE PRIMALS」をリリースし、単独ライブツアーやファンフェスでのライブと、精力的に活動を行なってきた。
開演1時間以上前からすでに会場内は待ちきれないファンが今か今かと待機場所に詰めかけ、ライブエリアの椅子が撤去されオールスタンディングの臨戦態勢が整った時点で開場、前へ前へとライブエリアに詰めかける熱狂ぶりに、「FFXIV」プロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏がステージに登場し、安全のため一歩下がってもらうようお願いをしたくらいの相当な人の入り様だった。その際のファンからの歓声に吉田氏は「俺は歌わないからな」と連呼していたが、これは壮大な前フリであった。
開演前にはコミュニティチームの望月一善氏、リードアイテムデザイナーの林洋介氏がステージに登場、公演に際しての注意事項と、「THE PRIMALS」のメンバー紹介が行なわれた。そのメンバー紹介内容もいじりとしか言いようがないもので、メンバー全員老眼だの漢方薬にハマっているだの「FFXIV」をプレイしていて野良パーティでダンジョンクリア時に挨拶の文字を打ち終える頃には誰もいなくなっているだのとネタまみれの紹介だったが、その中でも「オジサン達が泥臭くカッコよく頑張っている姿を見せたいという思いで祖堅氏はメンバー選定をした」と、「THE PRIMALS」の結成秘話が明かされた。
実はファンフェス1日目終了後の吉田氏インタビューの終わり際に吉田氏から「明日のTHE PRIMALSはヤバいよ!」と、その後偶然出くわした祖堅氏からも「明日のTHE PRIMALSやべーから」と、異口同音にコメントを貰っていたのだが、そのヤバさを身をもって知ることとなった。
セットリストだが、祖堅氏曰く「(光の戦士達の)お前らをぶっ倒すセットリストにした」と、ほぼノンストップの戦闘曲13曲。※セットリストについては別途「THE PRIMALS」インタビュー記事で詳細なコメントを貰っているのでそちらをご一読いただきたい。
開演と共に会場内が暗くなり、不気味さが漂うステージに登場する5人のアシエン。「THE PRIMALS」の登場だ。そのアシエン特有のローブを纏ったまま立て続けに「混沌の渦動(リヴァイアサン戦)」と「忘却の彼方(シヴァ戦)」を披露。一気に会場内が熱狂のタイダルウェイブに包まれた。「混沌の渦動」では祖堅氏の合図と共にメインステージ正面中央から左右へヒカセン達が文字通り青いペンライトでウェイブを作り出した。こちらは開演前説明時に一度練習しただけだったが、そこはさすがの光の戦士達である。シヴァ戦は1日目のピアノライブでも演奏されたが、こちらはGUNN氏が原曲バリバリの疾走感と共にメインヴォーカルを務めた。
その後アシエンローブを脱ぎ捨てて、彼らのバトル装備である黒いYシャツ、スラックスと白いネクタイのいでたちになった。準備が整ったところで祖堅氏が「今回はヒカセンをぶっ倒すセットリストで行くから」と堂々のヒカセン討滅宣言、ここからはほとんど休憩無しで最後まで突っ走ることとなった。
「曲がらぬ刃(ラーヴァナ戦)」、「eScape(オメガ:アルファ編)」と終えたところで雰囲気が一変。花道に人力車に乗った吉田氏が姿を現した。上から下まで和装で固め、背には白虎。ゆっくりと人力車から降りた後に腕を組んだままフォックス氏と並び立つそのサマはどこからどうみても大物演歌歌手のそれである。ヴォーカルポジションに立つなりヒカセン達に背を向けて思う存分背中の白虎を見せつけて始まった「天つ風(白虎戦)」にヒカセン達は大興奮。歌い終えると「何させとんねん」とノリツッコミを祖堅氏にし、再び人力車に乗って吉田氏は退場していった。古今東西どこを探してもここまでやるプロデューサーはいないのではないだろうか。
吉田氏が退場すると再び「メタル(アレキサンダー:起動編)」「魔神(セフィロト戦)」と続く。セフィロト戦ではゲーム内でバトルフィールドが緑に覆われるがごとく、場内が緑のペンライトで染まった。ここで謎の箱がひっそり運び込まれていたが、その謎は次の瞬間に解けることになる。
箱の中から出てきたのは、朱雀の声を当てた南條愛乃氏。大きなどよめきが起こる会場。確かに南條氏は24日の直樹の部屋 part2でゲスト出演しており、ゲーム内の朱雀戦も南條氏が歌っているので是非その後のライブにも……と期待していた方は多かったと思うが、本当にライブに降臨するとは何処までも期待に応える「FFXIV」チームである。勿論演ずるは「千年の暁(朱雀戦)」。リアル朱雀こと南條氏がテンゼンへの愛を紡ぎ、テンゼンこと祖堅氏が朱雀へ語りかける形で曲は進行していった。ステージ上での南條氏の歌声はとても艶やかで、まさに朱雀が歌っているようであった。
歌い終えるなり「テンゼンがいるときいて飛んできました!」と南條氏。会場中のテンゼン(光の戦士達)から大歓声が上がる。さらには一部(特にメインタンク)に根強い人気がある鬼宿脚(朱雀の技のひとつ。ヘイトトップのキャラを複数回蹴り上げ大ダメージを与え、さらに回し蹴りでステージから落とそうとしてくる)を披露するとさらに歓声が乱れ飛んだ。その後は「1曲で帰ってしまうのは勿体ないから……」と、悲壮感溢れる「月下彼岸花(ツクヨミ戦)」を想いと共に見事に歌い上げた。
その後、惜しまれつつも退場する南條氏と入れ替わるようにトランペット片手にフォックス氏が満面の笑みを浮かべて戻ってきた。祖堅氏へトランペットを差し出すフォックス氏。しぶしぶ受け取り試し吹きをする祖堅氏だがうまく音が出ない。これはもちろんフリであり、いざ始まった「メタル:ブルートジャスティスモード(アレキサンダー:律動編)」では見事なメロディラインを奏でた。
続いてはフォックス氏の畳みかけるようなラップの「ライズ(アレキサンダー:天動編)」である。リズムに合わせてノリノリでジャンプするヒカセン達。だがこの曲が面白いのはここからである。時報のような音が流れた瞬間にピタっと停止してしまい微動だにしないメンバー達。ヒカセン達もそれに合わせて動きを止める。この曲はアレキサンダー・プライムとのバトルで流れるものであるが、アレキサンダー・プライムの技のひとつ、時間停止ギミックを再現したものである。ゲームを通じて会場とステージが一体になれる素敵な演出と言えよう。
早くもステージ終盤にさしかかり「帰る体力以外は全部ここに置いていけ!」と煽る祖堅氏。「FFXIV」屈指の人気ナンバーと言えばこれを忘れてはいけない「過重圧殺!(タイタン戦)」だ。その凶悪な攻撃力と一撃でステージ下へ追いやる強烈なギミックに奈落の下で文字通り辛酸をなめてきた冒険者にとってはトラウマに等しい圧力をもって襲い掛かってきた。ここでもステージと会場は一体化。「Bow down overdweller!」~「Titan!」、「Bow down overdweller!」~「under the weight!」と見事なコール&レスポンスを行う「THE PRIMALS」とヒカセン達。
ラストは「ローカス(アレキサンダー:起動編)」である。アレキサンダー実装時にはさんざん聴いたであろうこの曲をラストに持ってきたのには訳がある。この曲もバスドラムに合わせて「跳べる曲」なのである。最後とばかりに残りの体力を振り絞り跳ぶヒカセン達。広大な会場が揺れに揺れる様は圧巻の一言であった。こうして全13曲を走り切った「THE PRIMALS」とヒカセン達の熱い夜は大盛況のうちに幕を閉じた。
すべてはファンのために
2日間のスペシャルライブを見て感じられたのは、徹底したファンへのサービスである。それもそのはず、ここはただのステージではない。「FAN FESTIVAL」のステージなのだ。「FFXIV」を愛するファンに少しでも喜んでもらおうと考えに考え、微に入り細に入り練りに練った結果がスペシャルライブ、ひいてはファンフェスを大成功に導いたと言えるであろう。
今回の会場はセンターステージだったということもあり、苦労も多かったと祖堅氏は後に語っていたが、それだけに「FFXIV」チーム側もファン側も確かな手ごたえを感じられたのではないだろうか。それにつけても吉田氏、祖堅氏両名のエンターテイメント性には舌を巻く思いである。この並び立つ2人のエンターテイナーが率いるFFXIVチームはこれからもファンのために挑戦し続けるであろう。