【特別企画】

SunSister Suicider's敗れる! 「PUBG」日本リーグ「PUBG JAPAN SERIES」は群雄割拠の時代に。RAYZE amonot選手やSCARZ Dep選手など新たなスターも誕生!

【PJS Season2】

4月6日全日程終了

 「SunSister Suicider'sが敗れた」。「PUBG」ファンの多くがそう感じた「PJS」Season2最終日だったのではないだろうか。

 SunSisterは、「PUBG」がまだβだった2017年からチームとして活動し、2018年3月に解散した姉妹チームSunSister Royalty、その前身であるSunSister Unknownの時代から、あらゆる国内大会の栄冠を総なめにし、2017年11月の「PUBG ASIA INVITATIONAL G-STAR 2017」から、2019年2月に行なわれた「Predetor League 2019」に至るまで様々な国際大会に出場してきた名門中の名門チームだ。

【PJSseason2 Phase2 Grade1 Day6】

【常勝軍団SunSister Suicider's】
2018年11月のPJS Season1で総合優勝したSunSister Suicider's
2018年12月の「PJS WINTER INVITATIONAL 2018(PWI2018)」で優勝したSunSister Suicider's

 「Counter-Strike: Global Offensive」といえばAbsolute、「レインボーシックス シージ」なら野良連合といった具合に、SunSisterは「PUBG」において常に結果を出す常勝軍団だった。昨シーズンのSeason1は2位のCrest Gaming Xanaduや3位のV3 FOXに大差を付けてぶっちぎりのスコアで総合優勝を獲得。世界レベルのチームとして格の違いを見せつけていた。そのSunSisterがSeason2で敗れたのだ。

 筆者はSeason2は主にオンラインで視聴していたが、久々に収録スタジオに赴き、生で観戦してきた。理由は2つだ。1つはスタジオに初めて一般の視聴者を入れ、公開収録の形を採ったため、その様子を見ておきたいと思ったこと。もうひとつはSunSister Suicider'sを直に激励したいと思ったためだ。

【PUBG JAPAN SERIES】
この64人を集めるスタイルは、2018年2月からスタートしたαリーグから続いている
写真だと伝わらないが、かなり大きな声でオーダーを出し合っている
試合前に雑談を交わすSunSister Suicider'sのCiNVe選手(左)とCrazySam選手(右)

【初の公開収録】
これまで関係者席として使われていたエリアが公開収録用に開放された
ドン勝に拍手を送る来場者の皆さん

 開幕前、トイレから席に戻ろうとするCiNVe選手に「4連ドン頑張って。そういうストーリーのレポートを書かせて欲しい」と伝えると、「4連ドン頑張ります!」と元気よく応じてくれた。“4連ドンで大逆転優勝”というのは、2017年から追っかけていて大のSunSister贔屓の筆者だけが考えていたシナリオではなく、「PUBG」ファンの過半数がそう思っていたと思う。

 それほど数が多くないビデオカメラの1台がSunSister Suicider'sに常に張り付き状態だった。ディレクターにその理由を尋ねたところ、「何かやってくれる期待感があるから」と主催側でも高い期待を寄せていたし、インタビュアーの橘亜李彩さんが、開幕の前座インタビューとして真っ先に駆けつけていたのもSunSister Suicider's CiNVe選手だった。

 彼女は「期待値が最も高いチーム」と煽るだけでなく、「もしロンドンに行けたらムーブを変えるのか?」という冷静に聞き直すと気が早すぎる質問までしており、それだけSunSister Suicider'sの逆転優勝は現実感のあるストーリーとして運営側も観客側も捉えられていた。実際、事前アンケートでも最終日のトップチーム予想、MOST KILL予想はともにSunSister Suicider'sだった。

【注目されるSunSister Suicider's】

 しかし、そうした期待とは裏腹に、最終日はSunSister Suicider'sにとっては厳しい戦いが続いた。平地が多く遮蔽物が少ないため運の要素が出やすいMiramar 2連戦を、2キル12位、2キル11位という不本意な結果で折り返す。この時点でほぼ総合優勝は消えたが、トップチーム予想は依然としてSunSister Suicider'sのまま。20キルの連ドンを誰もが信じている。私もだ。なぜならまだErangel2連戦が残っているからだ。思わず、「PWI 2018」、Erangelで行なわれた最終戦で、劇的なドン勝によって逆転優勝したシーンが蘇る。彼らが宿敵韓国チームを最終決戦で撃破したように、残り2ラウンドで何かやってくれるのではないか。

 そして迎えた「PJS」Season2 11ラウンドのErangel。どのチームにとっても“ホーム”であり、SunSister Suicider'sとしても絶対に取っておきたいところだ。しかし、11ラウンド目はSunSister Suicider'sにとって最悪の幕開けを迎える。

 「ああ、これは神が試練を与えたな」と思ったのは、最初のサークル位置だ。Erangel南方に位置するミリタリーベースをぐるっと囲むようにサークルが遷移したのだ。SunSisterファンならご存じの通り、彼らは北端のSevernyをホームとしており、長距離移動を強いられるだけでなく、Erangel本島とSnsnovka Islandを隔てる内海を渡らなければならない。しかも輸送機は南から北に向かう進路を取ったため、SunSister Suicider'sの降下がもっとも遅い。あまりの不運に大きなどよめきをあげる観客席。なるほど、今回抽選倍率4倍を勝ち抜いて参加した一般来場者たちの多くもSunSisterファンのようだ。

【11ラウンド、サークルに嫌われるSunSister Suicider's】
どよめく会場、ふとモニターを向けると、確かに驚くべき光景が広がっていた。北端にいるチームがSunSister Suicider's。サークルはミリタリーベース。一番キツいパターンだ

 現行のSUPERルールに基づくメタは、格段に強化されたパルスダメージや、高精度で狙われる移動時の狙撃を避け、なおかつ有利なポジションから戦うために、早め早めのサークル中央への布陣が鉄板とされる。

 この点、SunSister Suicider'sは、Severnyでフェーズ1ギリギリまでたっぷりファーミングしてから、最終的なサークル位置を予測し、敵の薄い位置を見計らって、4輌の車輌でダイナミックなムーブを行なうのを基本戦法にしている。良く言えばPJS王者の風格を漂わせた王道的なムーブ、悪く言えばメタを無視したややレガシーなムーブだ。

 他のチームは、最終サークルがミリタリーベース内に遷移すると確信して、フェーズ1の比較的初期段階から次々に橋や内海を渡り始めたのに対して、SunSister Suicider'sはもっとも遠い位置にいるにも関わらず16チーム中もっとも立ち上がりが遅く、斥候役のSabrac選手以外の後続メンバーがパルスダメージを受けながら移動するような状況になっていたのが気になっていた。

【動き出しが遅いSunSister Suicider's】

 2本の橋には当然検問がいて、内海に点在するボートの類いは取り尽くされている。偵察によってその状況を把握したSabrac選手が取ったムーブは、プロリーグでは珍しい泳ぎによる渡河作戦だった。橋を無理攻めするよりはマシという判断なのだろうが、ミリタリーベース側の家屋に布陣していたV3 FOXはこのムーブを予期していた。待ってましたとばかりに家屋から飛び出したV3 FOXのManju選手らにつるべ打ちにされ、あえなく全滅。0キル16位というまさかの結末に終わった。

【地獄のような状況に】
動き出しが遅かった影響で後手後手に回り、地獄のような状況になってしまったSunSister Suicider's

 ロンドンへの道は完全に閉ざされたSunSister Suicider'sだったが、Season2最終戦となった12ラウンドで、11ラウンドでつるべ打ちにされたV3 FOXを直接対決で制すなどして奮戦を見せ、9キル3位と最後の最後に意地を見せてくれた。最終的にSunSister Suicider'sはSeason2 Phase2は8位、総合6位という結果で終わった。

【12ラウンドで奮戦するSunSister Suicider's】
まずはPhase2で好調だったSCARZを屠る
続いて優勝候補の一角V3 FOXを破る
そして立ち塞がる優勝候補筆頭のTeam RAYZE。ここでかなり戦力が削られてしまう
アタッカーのCrazySam選手がダウンする度に救援に駆けつけるgabha選手
待望のSunSister Suicider'sの活躍に絶叫するOooDa氏。「ミスターPJSが、CrazySam選手が再び立ち上がります!」
しかし、漁夫の利を持っていったのはDAY6で1位となったCrest Gaming Xanaduだった

 この最終結果はファンは残念だろうし、筆者も残念だが、一番残念だと感じているのは本人達だろう。APACで5位という上々の成績を収めた2月の「Predetor League 2019」に続く世界戦として「FACEIT Global Summit: PUBG Classic」を目指してPJS Season2に臨んでいたはずなのに、国内ですら勝てなくなったのは何故なのか。しばらくは自問自答を繰り返すことだろう。

 それにしても常勝軍団が何故勝てなくなったのか。それは本稿でしつこいぐらい触れたように運営から、ファンから、そしてメディアから注目されすぎて映像に映りまくった結果、他のチームから徹底的に研究されたからだと思う。これはスポーツの分野においても、トップチーム/選手が必ず陥る問題で、研究されてもなお勝てる力が持てるかどうか、真の意味でグローバルで活躍できるチームになれるかどうか、重大な局面に差し掛かってるように思う。

 Season3は既報の通り、6月上旬の開催が予定されており、今から約2カ月間のインターバルが発生する。CiNVe選手は、インタビューでヨーロッパのプロチームG2 Esportsへ武者修行する計画を語っていたが、この期間をぜひ有効活用して、常勝軍団の復活を期待したいところだ。

【常勝軍団の復活に期待】
ラウンド11で0キル16位でフィニッシュした直後のSunSister Suicider's。大勢のファンが彼らの復活を期待していると思う。頑張って欲しい

 さて、SunSister Suicider's以外に目を向けると、これまででもっとも収穫の多い大会だったと思う。eスポーツとしての「PUBG」の選手プールが豊富になり、強さを求めて韓国スクリムにも参加するプレーヤーが増えたことで、全体の実力が底上げされ、新たなスターが続々誕生しつつある。

 代表的なのは、今回惜しくも総合優勝を逃したものの本大会を牽引し続けたTeam RAYZEのエースamonot選手と、名門SCARZにSeason2から新加入したDep選手だ。Season2 Phase2で、実況OooDa氏の口からこの2名の名前が挙がるケースが多いなと感じていたが、個人成績を見て驚いた。1ラウンド平均のキル数が2.0を大きく上回っているのだ。

【Kill/Roundランキング】

 Phase1でトップスコアだったのは、DetonatioN Gaming WhiteのGokuri選手とV3 FOXのpoly選手で1.83。ちなみにこれまで数々のMOST KILLに輝いてきたSunSister Suicider'sのエースCrazySam選手で1.5だ。

 これに対してPhase2における2人は、amonot選手が2.42、Dep選手が2.33でずば抜けている。この2人は順位にかかわらずすべてのラウンドで2人以上キルしている計算になる。3位のRascal Jester Kendesu選手が1.83、4位のDetonatioN Gaming WhiteのMelofo選手が1.75、5位のSunSister Suicider's CrazySam選手が1.50となっており、彼ら2人がいかに突出しているかがわかる。

 韓国のプロリーグ「PUBG Korea League」を見ていると、一発の精度の高さもさることながら、射撃開始からキルまで持っていく“キル力”が非常に高い。サッカーなどでよく言われる“決定力”とも似通っているが、いくら当てようが、いくらダウンを取ろうが、キルまで持っていって、ポイント獲得と敵チームの戦力ダウンに繋げなければ意味がない。その点について、日本の「PJS」に決定力を持つプレーヤーが生まれつつあるのは頼もしいところだ。オンライン配信もGrade1で16,000人以上、Grade2でも10,000人が視聴しており、順調に成長している。Season3も引き続き大きく盛り上がりそうだ。

【新たなスター達】
Team RAYZEのamonot選手。大阪出身20歳の新鋭
MOST KILLの予想で2位に選出されたDep選手。カメラに抜かれていることに気づいて照れている

 最後に総合優勝を獲得したBLUE BEESは、元々野良連合で活躍していたLiavely選手、sssat0選手を中心に結成された比較的新しいチームで、「PJS」Season1 Phase1の入れ替え戦からのし上がってきた。日本のスクリムに加えて、韓国スクリムにも参加して実力を付けてきたようだ。Team RAYZEのエースamonot選手のような突出したスコアを出す選手こそいないが、先述した現行のメタを強く意識した早め早めのムーブをとにかく徹底しており、安定感が素晴らしい。この安定感が世界大会でも通用するのかをはじめ、新たに誕生したピカピカの日本代表が世界でどう戦うのか注目したいところだ。

【とにかく動き出しが早いBLUE BEES】
DAY6に行なわれた9ラウンドから12ラウンドまで、最初の収縮が始まる6分前後の各チームの位置。略称BBの水色がBLUE BEES。どのラウンドでもかなり早いタイミングででサークル入りしていることがわかる

【DAY6のドン勝チーム】
Crest Gaming Xanaduは9ラウンド、11ラウンドでドン勝を獲得し、賞金20万円を獲得した
一時はトップとなり、Phase2は大活躍だったRascal Jester。10ラウンドでドン勝を獲得
12ラウンドは、総合優勝したBLUE BEESが獲得した
MOST KILL賞は、大方の予想を覆してCrest Gaming Xanaduのkurad選手が獲得した

【総合優勝はBLUE BEESに】
優勝したBLUE BEESには、優勝賞金25万円と、「FACEIT Global Summit: PUBG Classic」の出場権と渡航費が贈られた

【PJS Season2最終結果】
Grade2からの昇格組であるCrest Gaming Rapidが降格。Grade1の層が厚くなっているのを感じる
最終結果はこの通りとなった。SunSister Suicider'sは総合6位となった