【特別企画】
「シドマイヤーズ シヴィライゼーション VI 嵐の訪れ」は「Civ6」をどう変えたか
最後までプレーヤーを飽きさせない、ストラテジーゲームの名作へ
2019年2月14日 15:00
2KとFiraxis Gamesが2月14日に発売したPC用ターン制ストラテジー「シドマイヤーズ シヴィライゼーション VI」の拡張パック「シドマイヤーズ シヴィライゼーション VI 嵐の訪れ(以下、嵐の訪れ)」。気になっているストラテジーゲームファンも多いだろう。「Civ6」は、文明の指導者となり、自国を発展させていくターン制ストラテジーで、「嵐の訪れ」は本作2つ目の大型拡張パックとなる。
「嵐の訪れ」には、新たなシステムとして「環境の影響」、「電力システムと枯渇性資源」といった新要素、そして前作プレーヤーにとっては待望となる「世界会議と外交による勝利」が導入されている。インプレッションも本稿に先駆けて掲載しているので、そちらも参照して欲しい。
「Civ6」といえば序盤の戦争にリスクがなさ過ぎたことや、中盤以降の要素がやや薄い、終盤になると作業感が出てきてしまうなど、幾つかの問題点が存在した。それが拡張パック「嵐の訪れ」でどのようにプレイが変化したか。今回はその点に焦点を当てながら、ゲームの流れを序盤から終盤まで通してお送りする。
序盤から環境の影響を受ける不確実な展開
今回選んだ指導者は「アキテーヌ女公アリエノール」。この指導者はイギリス・フランスどちらかで使用することができるが、今回はイギリスでプレイする。尚、今回アリエノールは初プレイ、かつ時間も限られているため難易度は「皇帝」。ゲームスピードは「早い」に設定した。それ以外のところは変更していないが、ゲームスピード「普通」、難易度「神」でないことはどうかご容赦願いたい。
「Civ6」の序盤といえば、手ごわい蛮族に備えるためにまずは最低限の軍備を整えることから始まるが、「嵐の訪れ」でもそれは同じだ。しかし、闇雲にユニットを出して戦争を仕掛ければいいかと問われれば、それは違う。本作は序盤から環境による影響をうけるため、序盤から不確実性と向き合わなければならない。
序盤からよく発生するのは水害で、川沿いのタイルの施設が破壊されてしまう。労働者で修理するまで都市の産出が減少するが、水害によって土地は肥え、修復時には以前より高い産出を得ることができる。序盤の労働者に割く生産力を考えると、最初期の水害で被害を受けるのはかなりの痛手だ。かといってユニットを生産するにも土地は改善しなければリソースが不足してしまう。常にリスクを頭に入れながら次の一手を考える必要がある。今まではとりあえず川沿いに都市を立てていたが、リスクを見越して避けるのもアリになった。
また、以前から序盤に蛮族対策で生産したユニットが遊ばないようにするため、都市国家や近隣の文明と戦争するのが有効な手段だったが、「嵐の訪れ」でもそれは変わらない。しかし、こちらも災害の影響で思わぬ事態になることがあるので要注意だ。
今回選んだイギリスは、特徴として鉄鉱山と石炭鉱山での産出量が増加するほか、固有建造物「王立海軍造船所」が存在している。また、アリエノールの能力は敵都市の忠誠心を削る能力であるため序盤から戦争することによるメリットが大きい。積極的に宣戦していくことにする。
今回の大きな変更点として、戦略資源が改善された土地から毎ターン産出され、それを備蓄するようになった。その結果、鉄が自領土にあれば剣士を生産したり、戦士からアップデートできたが、「嵐の訪れ」では備蓄がなければ不可能になった。そのため、鉄や馬を用いるユニットを機転にラッシュをかける文明は、タイミングをしっかりと見極めなければ痛い目を見ることになる。なお、備蓄の最大上限は兵舎区域の建造物で増やすことが可能。今まで終盤になるほど立てる価値が薄かった兵舎区域の価値が上昇した。
また、戦争中でも災害の影響は存在する。例えば、ハリケーンやブリザード、火山の噴火が起きればユニットが被害にあうことも十分にあり得る。攻めているときに被害にあった場合、大人しく撤退して体勢を立て直すことも重要になった。
序盤から災害による不確実性が増し、戦略資源の変更によって序盤の「取り敢えず戦争」のような戦略はやや安定度を下げた。その分、災害によって産出量が増したタイルを活用できれば発展は望めるし、時代スコアも手に入る。今回はイギリスのアリエノールの特性により、序盤から戦争をするのが有効的だったが、他の指導者を触ってみて全ての指導者で共通する戦略なわけではないと感じた。実際、アリエノール以外の新指導者もプレイしてみたが、マリの「マンサ・ムーサ」は序盤の生産力に難があり、カナダの「ウィルフリッド・ローリエ」は都市国家に宣戦できないため、それぞれ序盤は内政を重視した方がいい。
また、戦略資源の使用変更は、他国との関係性も重要度を増した。戦略資源の仕様変更により、備蓄から溢れてしまう資源は無駄になるので積極的に他文明との取引に使いたい。そのためにも、他の文明との関係性は重要だ。
また、今回追加された「世界議会」と「外交による勝利」は、戦争をしなくても勝ち筋をつくれる重要な要素。これらを活用するために用いるのが「外交的支持」と呼ばれるポイントで、プレーヤーの外交的な善行を数値化したものだ。これは都市国家や他文明との同盟、各種世界大会に参加で入手が可能で、他の文明に何かを約束させたり、世界会議における投票力などになる。
世界会議では、毎回様々な「決議」の投票が行なわれる。決議の内容はある高級資源を禁止するものや、特定の区域の建設物にかかるコストを減らすものなど様々で、通った決議は全ての文明に適応される。自分にとって有利な決議を通すだけで、次の議会まで効果が続くのでかなりの発展が望める状況になる。そしてゲームが後半に差し掛かると「外交による勝利」ポイントを得られる決議が登場する。この投票に勝ち続け、一定以上のポイントを得られれば「外交による勝利」を達成することができる。
しかし、都市国家を滅ぼしていたり、他国に不平を抱かれていると自分に不利な決議が通されることもある。戦争した結果、破産に追い込まれる可能性も存在するため、宣戦理由はできるだけ使用しておくのが望ましい。
中盤~終盤の要素が豊富に。先の見えない未来への準備期間
前作までは終盤に差し掛かれば差し掛かるほどやることが減っていく「Civ6」だったが、今回からは中盤以降の要素が拡充された。まず、産業時代に入り工場を建設すると都市に電力の要素が加わるため、「嵐の訪れ」で工場のスペックをフルに生かすには都市に電力を供給する必要がある。その為に必要なのが発電所なのだが、発電に用いる石炭や石油、ウランといった燃料を使用するほど、大気中のCO2が増えて温暖化が発生。災害が起きやすくなり、海水位が上昇して土地が水没するなど様々なリスクを抱えることになる。
発電所は、対応する資源の時代が早く解禁されるものほど排出するCO2の量も多い。さらに時代が進むと、水力、地熱、風力、太陽エネルギーなど、CO2を排出しない代替エネルギーを研究で解禁し利用できるようになる。今すぐ発電所を建設し、都市の生産力を上昇させるか。環境に気を使って電力の使用を避けるかはプレーヤー次第だ。
中盤からは災害に対応できる「工学プロジェクト」が続々解禁される。水害を防げるダムや、都市を水没から守れる防波堤など様々だ。なお、本作からは用水路が干ばつを防げるようになり、序盤唯一の災害対策となっている。
また、今まで生産する価値の薄かった「工兵」にも変更が入り、鉄道を建設できるようになったり、山を通過可能にするトンネルを掘れるようになった。同時に工兵の生産には都市に武器庫を建設しておく必要がある。ちなみに、アリエノールは工兵に対する生産力が高いため、手が空いたときに手軽に生産することができた。
中盤以降の要素が増えたことで、この時代から先も考えることがかなり増えた。特にCO2の排出量が増えると、序盤より災害が起きやすくなるため、工学プロジェクトを駆使しなければ大きな被害を出しかねない。
また、「嵐の訪れ」では技術ツリー・社会制度ツリー双方に「未来時代」が追加された。これは不確定な時代のため、ゲームごとにランダムに変化する。中盤は先の見えない未来に対応すべく、あらゆる事態に対応できる文明を作り上げる準備期間といえるだろう。
本作では、制覇勝利以外の勝利条件は未来時代になってようやく達成できる。制覇勝利も、災害による被害や、戦略資源の関係で安定して早期に達成できる文明は少なくなった。そのため、文明の強い時間を活かし、そこで差をつけて未来時代を迎えることが安定した勝利への道筋となる。
今回使用したイギリス版アリエノールは、鉄鉱山による産出量増大で序盤の戦争が得意だが、産業時代の戦争で本領を発揮する。石炭鉱山の産出量増加に加え、電力を供給すると他の文明よりも産出量が増加するので、戦略資源さえあればユニットを大量に算出できる。また、海を渡っての戦争も王立海軍造船所の効果で得意だ。占領した都市に港があれば、王立海軍造船所に上書きされ、忠誠心が手に入る。また、その都市に傑作を入れるスロットがあれば周囲の都市に圧力をかけることが可能だ。産業時代に向けてしっかりと準備をし、ここで一気に勝負をかける。
このように、未来が不確定となり、中盤~終盤にかけてできることが増えたため、自文明と指導者の強い時代を最大限生かすプレイングの重要度が増した。
未来時代で起きる動乱を乗り切り勝利
これまでの「Civ」シリーズは、終盤になるとできることが減り、作業をしている感覚になってしまうことも少なくなかった。しかし、「嵐の訪れ」では終盤に差し掛かっても何が起こるか分からない不確実な展開や、新しい要素による逆転などがまだまだ存在する。それらをフルに活用し、勝利を目指すのが未来時代だ。
また、この時代になると環境が荒れに荒れることがある。世界中を災害が襲い、内政をおろそかにして戦争ばかりしていると甚大な被害を被ることになる。ゲーム終盤には様々な発電方法が登場するほか、未来時代には二酸化炭素を吸収するまさしく未来の技術も登場するので、環境をこれ以上悪化させず、むしろ改善していくことができる。
終盤になると世界議会も重要度を増し、勝利条件に直結するような決議も出るので、外交的支持はより重要になってくる。また、外交による勝利ポイントが貰えるコンペが開催されることもある。
また、今まで改善できなかった土地を、終盤になって活用できるようになった。例えば山岳は「スキーリゾート」への改善が可能。シーサイドリゾートと同様に観光力を得ることができる。他にも水上に養生風力発電所や、水上都市を建設可能になり、最後まで土地を余すことなく活用できるようになった。
他にも新ユニット「ロックバンド」は他国でライブを行なうことで観光力を得ることができる。また、強力な戦闘ユニットである「巨大戦闘ロボット」も登場。圧倒的な戦闘能力を持つが、生産コストも高い。
これらの新要素に加え、先ほど簡単に触れた未来の技術と社会制度も加わり、終盤まで様々な選択肢が提供されている。自文明が置かれている状況を分析し、最も達成しやすい勝利条件を考えてそれに合わせた未来技術を研究。政府や政策も選択していくことが大切になった。その結果、作業感は減り、常に緊張感をもってプレイすることができる。
今回のプレイでは中盤の戦争で多くの文明から都市を奪い、他文明になんとか追いつくことができた。しかしスコットランドとマプチェの首都が割れていないため、制覇勝利以外の勝利条件で勝つ必要が生じるかもしれないと考え、戦争をしながらも文化勝利や外交勝利を念頭に置いている。
しかし、災害により自国の施設や区域が被害を受け、ユニットの生産が滞り敗北が濃厚に。一旦スペイン、マプチェと和平をし、状況を整えた。このように、展開次第では終盤も様々な状況に対応せざるを得なくなる。今までの「Civ6」にはない感触だ。
序盤から終盤まで、本作をプレイしてみて感じたことは、とにかく1ゲームを通して考えることが多くなったことだ。プレイ中に付きまとう災害のリスクはもちろん、工学プロジェクトや新しい施設などの新要素に加え、今まで生産する価値の薄かったものが強化されたこともあり、選択肢は終盤であろうと膨大にある。特に未来時代では今までの「シヴィライゼーション」シリーズにはない要素が盛りだくさんだ。今回のプレイでは、戦争に強いアリエノールを使用したため、「文明の興亡」に近いプレイの流れとなったが、それでも飽きることなくプレイすることができた。
アリエノールは文化プレイでも敵の都市を奪えるため、そうした新たなプレイも開拓していきたい。その場合、イギリスではなく、フランスの指導者として選択することになるだろう。
また、「嵐の訪れ」では非戦闘プレイも可能だ。筆者は難易度「王」程度ならば戦争せずとも勝利することができる。現在は最高難易度「神」で非戦勝利ができないか研究中だ。
「シヴィライゼーション」シリーズは「拡張パックで完成する」と言われることもある。実際、本拡張パック「嵐の訪れ」がもたらした変化は、「Civ6」の領土拡大をベースにしたデザインはそのまま残しながらも、ゲーム性は大幅に強化されたように思える。
もちろん、今後のアップデートに期待したい部分は存在している。例えば、今回使用したアリエノールの様に、複数の文明で選択できる指導者が何人か欲しい。また、未だにユニット数が増えると移動が億劫なので、一括で移動できるシステムがあると便利だ。こちらは今後に期待している。
総評として、本作は拡大生産型のストラテジーゲームの中でもかなりバランスが取れた名作といっていいだろう。「シヴィライゼーション」は少数精鋭戦略の「Civ5」から、複数都市戦略の「Civ6」に移行した。もしかしたらまだ「Civ6」をプレイしていないプレーヤーもいるかもしれないが、「Civ6」は「嵐の訪れ」で完成を見たと言っていい。拡張パックが発売された今、是非プレイしてほしいと思う。
先行配信提供元:2K
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