インタビュー

「新生FFXIV」プロデューサー吉田直樹氏インタビュー(後編)

パッチ2.1の手応えと、バトルの難易度の設計哲学について切り込んでみた

2月22日 βテスト開始予定

4月14日 正式サービス開始

価格:
3,394円(PS4通常版)
10,584円(コレクターズエディション、パッケージ)
5,452円(コレクターズエディション、ダウンロード)
2,365円(デジタルアップグレード)

 インタビュー前編に続いて、インタビュー後編では、「ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア」の今後の展開について質問してみた。パッチ2.2やそれ以降の展開については、次回のプロデューサーレターLIVE等を通じて発表していくということだったので、今回はパッチ2.1の手応えや、パッチ2.1コンテンツの設計哲学に関して質問してみた。

 今回、特に質問してみたかったのは、最終的にはバトルコンテンツへと帰結していく、バトル重視のMMORPGである「新生FFXIV」において、その難易度の設定や、実装後の調整は、どのような根拠に基づいて行なわれてるかということだ。

 インタビューでは、吉田氏から非常に明快な回答を得ることができ、パッチ2.2で実装されるバトルコンテンツ向けの「超える力」についても聞くことができた。筆者を含め様々な理由からエンドコンテンツにアクセスできないカジュアルゲーマーにとっては大きなモチベーションになるような内容になっているため、ぜひご注目いただきたい。

パッチ2.1の手応えと、開発側が想定する理想のバトルバランスについて

パッチ2.1のF.A.T.E.の発生間隔のミスで発生した“よしだシャウト”について語る吉田氏
24人でチャレンジできる初のレイドコンテンツ「クリスタルタワー」。装備が獲得できるのは週に1つまでということもあり、装備を揃えるためにいまでも定期的に遊ばれる人気コンテンツになっている
シリウス大灯台のボス「セイレーン」。彼女の攻撃がかなり凶悪だったため、難易度が緩和される
こちらはすでに難易度が緩和された「善王モグル・モグXII世討滅戦」

――パッチ2.1についていくつか質問です。12月に初めての大型アップデートを導入されましたが、その手応えと、もし反省点があれば教えてください。

吉田氏:反省点は細かくあげていったらキリがないのですが、リリース直後のF.A.T.E.のあの発生頻度は酷かったです。本当に申し訳ありませんでした。事前に発生頻度を上げるように修正指示を出していたのに、その修正が入っていなかったので余計ショックで。パッチリリース直後、蛮神デイリーをやりにいったら、ザナラーン中「よしだあああああ」ってシャウトが流れていて……。「『パッチ2.1』ってF.A.T.E.待つゲームだっけ?」と書かれていて、本当にその通りで申し訳なかったです。

――だから即ホットフィックスで修正したわけですか。

吉田氏:そうです。久しぶりに僕も怒って、「そもそもなぜ、指示した修正が入ってないの?」と……。

――開発担当者は忙しくて忘れていたわけですか。

吉田氏:いや、お見合いでした。規模の大きいプロジェクトなので、僕の修正指示は個人宛ではなく、リスト管理になっているのです。ですので誰かに「これ修正しといて」ではなく、リストを各担当者が見て調整していくのですが、みんな「誰かが対応しただろう」と思ってしまったようです。

 すぐ担当の所に行って「さすがに俺の心も限界だぞ、このザナラーンのよしだシャウトを見ろ!」と。そしたらたまたまオーディンが出たらしく、オーディンにプレーヤーが群がって「見える、見えるぞ!」って。担当者から「こっちのゾーンでは、みんな“吉田神”って言ってますよ」って返って来て、「そんなのは見えて当然なんだよ、いいからこっちを何とかしろ!」と(苦笑)。あそこはパッチの滑り出しだったし、事前に修正指示もしていただけに悔しかった場所ですね。初動の印象ってひきずるので。本当にごめんなさい。

――パッチ2.1のコンテンツについてですが、個人的にはクリスタルタワーが良かったです。難易度もほどほどで、遊びごたえもあって、BGM等の演出も良くて本当に素晴らしいコンテンツだなと思いました。

吉田氏:本当に調整して出して良かったです。

――初期段階だともっと難しかったのですか?

吉田氏:難しかったです。たぶん最初の、左行ったところ。あそこで5、6回どころじゃなく全滅しますね(笑)。

――個々の敵がもっと強かったんですか?

吉田氏:いえ、ギミックがもっと凝っていたのです。A、B、C、3つに分かれてそれぞれ床を踏んでお互いのバリアを無効化して倒していくじゃないですか。あんなのばかりだったのです。これは無理だろう。1チームDPS出せなかったら、全部壊滅みたいな状態で、もうムリムリムリと。

――今くらいのバランスがちょうど良いと思いますね。完全に作戦なしだとやっぱりダメだけど、ある程度話合いができているといけるという絶妙なところを突いていると思います。

吉田氏:例えばですけど、ベヒーモスなんかはとりあえず1つだけでもコメットが残っていればみんな助かる。全部壊れてしまうとみんなで「ウハー」という感じで。メテオのセリフが出て、周囲を見渡したらコメットが1つもない!って、みんな笑ってる感じがちょうど良かったなと。

――クリスタルタワーは今後もあの難易度で行くつもりですか?

吉田氏:あのくらいでいきます。

――その一方で、極の蛮神戦や、大迷宮バハムートは非常に難しいですよね。そうした中でモグル・モグは難易度調整が行なわれ、さらにシリウス大灯台については難易度の緩和を明言されましたが、この辺りの難易度の緩和・維持の線引きはどういう考え方に基づいているのでしょう?

吉田氏:極に関しては、想定通りの難易度になっています。バハムートも本当はもっと難しいはずだったのですが、プレーヤーのみなさんの突破力はやはり凄いですね。モグル・モグに関しては、メインストーリー上に置くには、強くしすぎました。

――でもモグル・モグの難易度自体は、極やバハムート以下ですよね。モグル・モグはメインストーリーの導線上にあるからもう少し優しくないとダメという考え方ですか?

吉田氏:はい。ダメだと思います。特に8人を要求するので、余計にもっと簡単である必要がありました。データを見ていても、メインストーリーが詰まってしまう方が多かったんです。報酬についても進んでしまっているプレーヤーにとってはあまり必要のない報酬ですし、だから上手い方が引っ張ってくれるというシチュエーションが少なかったのです。ちょっと厳密に倒す順番を縛りすぎてしまった。

――なるほど。バトルバランスについてはどのように考えているのか、難易度に関する設計哲学みたいなものがあれば、教えていただきたいのですが。

吉田氏:僕1人で考えているわけではないですが、だいたいバトル班がコンテンツを提案してきた時に、まず事前にやりたいコンセプトを確認して、そのときにあまりにも手順が複雑とか、踏まなければいけない工数が多いのであれば、「今のタイミングでこんなのはいらない」という全体感で見ます。ですが、ほとんどは一通り実装してあとで調整するパターンの方が多いことは多いですね。

 実際にある程度仮組みしたら、バトル班が自分たちで攻略しながら、これはないんじゃないのっていう理不尽な部分は自分たちで修正していきます。最後は僕も入って8人で装備を変えながら戦って最終調整。バトルチームはかなりロジカルなチームで、僕もそうですが、ロジックがわかれば安定するバトルが好き、という傾向があります。そういう意味でシリウスのボスは、ロジックがわかったとしても、雑魚の体力や数など、安定性に欠ける要素が多く、難しすぎたかなと。

――「シリウスは難しすぎた」ということですが、シリウス大灯台のようなパッチごとに追加が予定されている新規ダンジョンやハードダンジョンはどのくらいの難易度に設計しているつもりなのでしょうか?

吉田氏:あそこは稼ぐ場所という考え方をしています。

――1日1回、ある程度気軽に行ける場所ということですか。

吉田氏:例えばそれがドロップアイテムの場合もあれば、ギルという場合もあるし、セカンドキャラだったらドロップギアを使えますし、後はアラガントームストーンを稼ぐ場所の選択肢の1つと考えているので、あそこはやはりファインダー用です。ファインダーでマッチングして戦術さえ見つければ周回してもそれほど苦にはならない。初動で40分、慣れたら1回20分から25分、平均30分というのが僕らの設計なのです。

 それでいくと、シリウスはボスの難易度が高すぎた。ツラかったのはヒーラーが常に全員のHPを満タンにしていないと魅了されて行動不能になるというのが、なかなか伝えにくい。その上雑魚の発生とボスの突進が意図的に全部重なるので、あそこはちょっと担当者の性格の悪さが出たかなと(笑)。あそこはウェーブの数を間引くのと、雑魚のヒットポイントを減らすのと、もう1枚2枚重なる部分を抜けば、かなり楽になると思います。

 シリウスのボスは、全部突破しないとクリアできない、隙が少ないボスだったので、得られるストーンの量だったり、かかる時間から考えたらやり過ぎたなと。ロジカルには出来ていて、その点はとても良いのですが、目的と難易度の噛み合わせでミスったと思います。

――ただ、極蛮神やバハムートは、シリウスとは比べものにならないぐらい難しいですよね。

吉田氏:あれは得られるリワードが大きいので、そういうものですね。

――なるほど。そういう考え方なのですね。

吉田氏:そうです。リワードに合わせて作っています。例えば極シリーズはクエスト制になっていて、3体倒すだけでレベル90の武器がもらえます。しかも好きなジョブのレベル90武器が、毎週3匹倒すだけで確実にもらえるという、ある意味報酬が非常に確実なコンテンツなのです。確実だからこそ、難しくしてあります。

――極はそれこそ初見でほいほいクリアされたら困るわけですね。

吉田氏:そうです。だから、かなりロジックを積み上げますし、テーマをちゃんと決める。例えば極ガルーダだったら、ガルーダ本体とスパルナ、チラーダの位置関係を確立しなければいけないし、かつスパルナとチラーダの位置が近すぎてもバフがかかって倒せなくなるから、綺麗に役割分担して、役割分担の中にさらにチラーダの攻撃はDPS全員でシェアダメージしないとダメなど。

 極ガルーダは、役割分担がテーマなのです。3カ所に分かれて戦う、ダメージすらみんなで頭割りしなくてはいけない。でも分身を越えると、皆また中央に集まって、「よし、分身乗り越えた!あと2回!」みたいな。

 極タイタンはすべてのパターンをきっちり覚えていただければ、ノーミスクリアできますのである意味シューティングゲームに近い。ただ、DPSが高すぎるとたまにパターンずれして怖いですが(笑)。

 極イフリートは、これまであまりギミックに絡むことがなかったヒーラーが、立ち位置を考えてヒーラー2人が協力をしないと突破できませんと。かつDPSは、とにかく集中してDPSが出せないと楔が破壊できませんという。あそこも役割分担なのですが、ひと味変えてあります。それぞれのロールが全力を出すバトルが極イフリート。

 タンク全般に関しては、今回の極を通してタンクスイッチという概念がひととおり浸透したと思うので、次からはたぶん応用でタンクスイッチが使われ出すと思います。

【「新生FFXIV」の高難易度コンテンツ】
カジュアルゲーマーにとって高い壁としてそびえ立つ4つのコンテンツ(大迷宮バハムート、極ガルーダ、極タイタン、極イフリート)。今クリアできなくても焦る必要はないようだ
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(中村聖司)