インタビュー

「FFXIV: 新生エオルゼア」プロデューサー吉田直樹氏インタビュー(前編)

まずは3カ月の運営の評価と既存コンテンツの行方についてたっぷり聞く

【パッチ2.1 覚醒せし者たち】

12月17日実装予定

 12月17日、いよいよ「ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア」に初の大型アップデート「パッチ2.1 覚醒せし者たち」が導入される。本来は11月の実装が予定されていたが、ブラッシュアップのため実装時期を1カ月延期しての公開となる。

 コアな「新生FFXIV」ファンの中には、メインクエストをはじめとした主要コンテンツをあらかた遊び尽くし、「次はまだかまだか」とやきもきしている方も多いだろう。今回は、「パッチ2.1」の実装を踏まえて、「ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア」プロデューサー/ディレクターの吉田直樹氏にインタビューを行なった。

 今回のインタビューで設定していたテーマは以下の3つだ。1つは、正式サービス開始からこの3カ月間の手応えと現状認識、そして今後の方向性。2つ目は、先日行なわれた「第10回プロデューサーレターLIVE」の発表内容の補完、3つ目は今回のお題である「パッチ2.1」について。

 例によってロングインタビューとなったため、前後編の2本立てでお届けしたい。前編では、ときおり「パッチ2.1」の話も交えながら、現バージョンの現状認識と今後の方向性について聞き、後編では「パッチ2.1」とそれ以降の展開について話を伺っている。

【FINAL FANTASY XIV パッチ2.1トレーラー「覚醒せし者たち」】

フォーラムの課題と、前回のLIVEでの黒魔道士発言の真意について

「新生FFXIV」の定例イベントとなった「プロデューサーレターLIVE」
「新生FFXIV」公式フォーラム

――先日放送された「第10回プロデューサーレターLIVE」を拝見していましたが、回を重ねる毎に凄い反響ですね。フォーラム等での反応を見てると、中には結構酷い罵詈雑言も散見されますが(笑)。

吉田氏:生放送のある意味醍醐味ですし、言われている間はまだありがたいです(苦笑)。

――そうですね。オンラインゲームは、本当に酷い状態になるとユーザーは無言で去って行くものですからね。

吉田氏:ちょっと余談になりますが、第10回のレターLIVEをやる前に、僕がフォーラムに4つポストした時、閲覧数の数値を取っていたのですが、「旧FFXIV」と比較しても、数字が割に合わないというか、少し方針を固め直した方が良いかなと思っています。

――割に合わないとは?

吉田氏:「新生FFXIV」からプレイを始めて頂いた多くのプレーヤーは、「今の」フォーラムにあまり興味を持っていただけてないのかなと。だから見に行かない。これは傾向として「旧FFXIV」とも違いますし、フォーラムの属性の変化が、閲覧数という数字の結果が現われているかも? と考えていて。

――なるほど。現在もレターLIVEのまとめも、全部フォーラムにポストしているじゃないですか。にも関わらずユーザーさんはあまり来ない?

吉田氏:うーん、そうですね、契約いただいている総数から考えると、あまり来てはいただけてないですね。ツイッターも変化が出てきていて、最近は生放送中のライブも質問があまり来なくなりました。放送中のリアルタイムに視聴し、感想をツイートして楽しんで下さるのがメインです。感想を言って貰えているのは、放送をする上でとてもありがたいですし、単純に「スゲー楽しみ!」などのツイートは励みになるので、それ自体はとても嬉しいことです。

――意外ですね。フォーラムは質問の投稿がどっさりあって、むしろ活況だなと思ったぐらいなのですが。逆にツイッターからの質問は少ないわけですね。

吉田氏:ここも「旧FFXIV」から変わった部分ですね。当時は「フォーラムもFFXIVのメインコンテンツ!」と言われたくらいでしたしね(笑)。

――面白いですね。それぞれでユーザー層が異なり、層の属性も変わってきてるわけですね。

吉田氏:もっとも混沌としていながら、ある程度全方位な意見が多いのは、実は2ちゃんねるだったり。ゲームは基本的にエンタメなので、本来は受け身で楽しむものです。そういう楽しみをしている方のほうが普通で、飽きてしまえば何も言わずに去って行ってしまう。でもこれが本質です。逆にフォーラムに書いてくれる方は、熱量が一定以上あって一言ある人。良くなって欲しいからそういう声を挙げてくれる人たち。

 ただ、LIVEに関しては、開発が思う次のパッチのおもしろそうなところを、大いに語ることこそやはりメインにすべきなのかなと。それを楽しみに待っているよ!という人たちに、まずはそれを伝えるのが最初にあるべきではないかと。毎回いきなり謝罪ばかりする放送になっていくのは、本質を外れていくような気もして。前述した2派は両極ですが、いずれも大切なお客様なので、僕らがブレないようにしないと、と数字を見ながら色々考えています。コミュニティの皆さんがとても気にされている案件は、番組の冒頭でお伝えし、あとは徹底的に楽しんでいただける放送をする、という方針を固めるべきかなと、今はそう思っています。

――今後フォーラムはどのような流れに?

吉田氏:ちょっと悩んでいるところです。僕はユーザーインターフェイス(UI)に関するディスカッションはすごく正常運転だと思っていて、単純な要望だけの時ももちろんあるのですが、逆に言うと、ある程度考えられる人しか発言しなくなってきている。あれは皆川(裕史氏、「新生FFXIV」リードUIアーティスト)が、できる事とできない事を常に語っているからです。他の分野であまりにも忙しさに僕のポストが減っているのは事実なので、もう少し増やすことで議論を活性化すべきなのか……、それにしてはあまりにもカバーすべき領域が多すぎる。皆川みたいに、UIだけって絞れば可能だと思うのですが、あまりにも僕の発言が重くなってしまっているのも事実で、だからどうしたものかなと。

――そうですよね。先日のLIVEだと、吉田さんの黒魔道士を一種擁護するような発言があったじゃないですか。黒魔道士以外のDPSを遊んでいるユーザーからすると、不満を覚えてしまうだろうなと思って見ていましたが、フォーラム等の反応を見ていると、予想通りの展開になっていました。インタビューの1番最初に聞きたかったのは、あれは何が言いたかったのかということなんですが。

吉田氏:えーと、基本的にはそのままなのです。

――吉田さんは、黒はMPがなくなったら何もできず、MPを管理することが1つのリスクなので、それで全体としてバランスが取れていると。でも近接DPSや他のキャスターからすると、長期戦になるとTPがすぐ枯渇したり、MPがなくなって回復ができなくなったりするわけですが、それらを管理しようにも選択肢そのものが用意されていない。これは不公平ではないかということではないかと思うんです。

吉田氏:まず前提としてTPとMPだけ見ても、議論にはならないです。それぞれのジョブの役割、特性、HP総量、MP総量などなど、全部合わせてバランスですので。そして、公平/不公平というクラスやジョブの比較論が過熱するのは、MMORPGの場合、通常運転だと思っているので、あの発言はそれ以上でもそれ以下でもないです。回答を考える際に多少悩みましたが、細かく言い過ぎてもキリがないので、絞りに絞った結果、超シンプルな回答になりました。ちなみに、MPが無限に回せるといっても、しっかりDPSを出そうとすると、プレーヤースキルが必要になりますよね?

――そうですね。ただ、MP回しそのものは、難しいテクニックが必要な話ではなくて、慣れてくれば比較的誰にでもできることだと思うのですが。

吉田氏:本当にそうでしょうか? たとえば、真タイタン戦で、スライドや重みを避けながら、あと何秒でバフが切れるかを、カウントしながらちゃんと繋げてるでしょうか。Procが発生しているのを無駄にせず、ギリギリまでMPを使い、しっかりLv3のバフで回して詠唱時間を短くすることで、ボスの攻撃を回避しつつ、DPSを下げずにMPを回すことが、比較的誰にでもできるというレベルではないと思います。使い込んでできるようになることと、簡単である、というのは意味が違います。

――「黒をやってみてください」という発言の意図はそこですか。つまり、アディショナルスキルを習得する程度の低レベルのプレイと、レベル50以降のプレイは質が全然違うし、低レベルの印象で語って欲しくないと?

吉田氏:以前、βテストの際にも「バトルシステムは、それ単体ではあまり意味を持たない」、「バトルコンテンツとしてプレイしなければ、システムだけ見ても単純さしか見えない」というお話をしました。単純にクエストベースのレベル上げ、レベル50までやっただけでは、どのクラスもジョブも難易度はどんぐりの背比べです。そして「隣の芝は青い」というのは、ある意味MMORPGの花形でもあります。そして「強すぎる!」と感じる場合、そのクラスやジョブで使ってみるのが1番良いと思うのです。「FFXIV」はアーマリーシステムがあり、同じキャラクターで別のクラスやジョブを育てられますし、他ゲームに比べるとレベリングが楽なゲームです。真イフリートや真ガルーダくらいまでだったら、ダークライト装備も必要ないですし、もし「超強い」のであれば、やらないのはもったいないなあと……。

――たぶんユーザーさんはこういいますよ。「吉P、そうじゃない、俺は竜騎士がやりたいんだよ」と。結果として、近接DPSと遠隔DPSの対立みたいな雰囲気になっていますよね。

吉田氏:はい、でも「相手のクラスやジョブが羨ましくなる」のは、普通だと思うのです。

――つまり、「強いと思うなら使えばいいじゃない?」と?

吉田氏:僕も人間ですし、同じ感情はあるわけですよ。上手い人が使う召喚士を見て「あれは強いぞ!?」って(笑)。自分が使っていないもので、強そうなものは、やっぱり全部羨ましくなります……。それは自分のクラスやジョブが好きだからこそ感じるもので、その点はプレーヤーの皆さんも、僕自身もまったく同じです。

 今回、黒魔道士に関しては、色んな視点から複数のご質問をいただきました。中には単なるネタと、僕に対しての挑発も含まれていて(苦笑)。ですので、まとめてひとつだけピックアップしたのがMPのお話であって、僕の結論としては、「本気で黒魔道士が強いと感じたなら、せっかくなのでプレイしてみましょうよ!」というシンプルなものだっただけなのです。

 それでも強いと思うなら、そのまま黒魔道士を続けたって良い。もちろん前述のように「竜騎士一筋だから!」という方は、僕も黒魔道士が好きですし、同じプレーヤーとしてとても尊敬できます。その場合は、黒魔道士について言うより、竜騎士の強さについて、ディスカッションしたり要望検討する方が建設的だと思っています。

 AとBは同じジョブではない。Aの特徴をBに持ってきてしまっては意味がない。AとBはそれぞれの特徴を伸ばす方がいいですし、お互いを牽制し合ってしまい、お互いの強いポイントが弱体されてしまうのはもっと意味がない。ただし、AとBが同じロール内であり、そのロールのベーシックな部分で差が付いている場合、そこは調整の必要があります。

 それがいまのナイトと戦士の差であったり、近接DPSと遠隔DPSのダメージ量の差などです。ですので、この点は「強いものを弱体する」ではなく「差が付いてしまっている方を強化する」ことで、バランスを取るという考え方をしています。

 プロデューサーレターLIVEの時間絵、これを事細かに話すことが、本当に多くのプレーヤーの皆さんの満足や楽しみに繋がるのかな、と思ったというのが先ほどのお話です。パッチの中身の話をしたほうが良い。もちろん、触れないわけにはいかないので、シンプルな回答と動画をご用意させていただきました。

 細かく言い始めたら本当にキリがないのです。MPを回すこと自体が、黒魔道士にとっては制約になっています。黒魔道士はDPSを最大化している最中、ポーションやエーテル1本飲んだくらいでは、魔法が唱えられないくらいに消費MPがデカいです。その緊急回避策にあるのがコンバートですが、リキャストタイマーを長めに設定しています。スタンスの切り替えがある前提なので、1回ミスをするとリカバリーが大変です。

 もちろん同じくMPを消費する白魔道士や学者も、MPを注視しなければいけませんが、こちらは「細かいMP管理」が必要になるデザイン。MPが無尽蔵で効果の大きい回復魔法ばかり唱えるデザインでは、バトルコンテンツのバランスが取れません。MP消費の少ない回復魔法をベースに使い、基本それをかけ続ける。

 黒魔道士はファイガや、アストラルファイアIIIを積んだ状態のファイアは、目も当てられないくらいMPを消費します。おおむね4回の詠唱で、もうスタンス切り替えを意識しなければならず、しかし切り替え用のブリザガの詠唱を先行させた際、直前のファイアがProcしたら……と、これ以上の言及は避けますが、かなり面倒で細かい制約が多い。これによってお伝えしたいのは「比較」ではなく、ジョブ内の「デザイン」の違いです、ということです。

 「MPを回復できる」という前提があるからこそ、その行為に面倒だと思う側面や、ミスに繋がる要素が入っているというデザイン。バトルコンテンツ中のDPSと、待ちにある「かかし」を殴るDPSとは、まったく違います。「スタンスによって、上手くやればDPSを落とさずにMPを常に回復し続けられる」、というのは大きな特徴です。

 そしてそれと引き替えに「サンダーを切らしてはならない」、「止まって詠唱しなければならない」、「詠唱を止めてはならない」、「MPを枯渇させてはならない」、「詠唱の間に時間ロスは許されない」……。ちょっとキャストが遅れたら、ロール役であるDPSとして、どんどんダメージが出なくなっていく。

 DPSメーターをバランスチェックに使っている開発チーム内では、DPSが出ていないと煽られるので、本当にもうしんどいのです(笑)。これは黒魔道士はあくまで例であって、お伝えしたいのは、どのクラス/ジョブにもこういったリスクとリターンは存在しますという点なのです。

――つまりどういう意味においてもLIVEでの発言は、もうまったくそのままの意味なんですね。でも、私自身がそうですが、ようやく真意がわかったって人は多いと思いますよ。

吉田氏:意味としてはそのままなのです。そして、やはりこれを40分以上に渡って、延々とお話しするのは、やはり番組としてのLIVEの方向性としては違うかなあと。もう1点、LIVEでも言ったのですが、ジョブとして現状とてもバランスが取れているのが黒魔道士です。ウォールとマジックバリアがあり、エーテリアルステップがある。あとはシンプルにひたすらDPSを出す。

 ただ、アクションの数は全ジョブ一緒で、その結果、黒魔道士は「ボスモンスターに対して決定的な仕事」がない。自己防衛か、他人を防衛するか、高速移動するか、ダメージを出すか。スリプルはあるんですが、ボスには効かないですからね……。最終的には、とにかく高いDPSを維持できないと、「おまえなんかいらない」と言われるジョブです。その制約やプレッシャーと戦っていかなくてはいけないのが黒魔道士。ただ、攻守共にバランスが取れているのは、間違いなく事実です。

――なるほど。特に今はレベル50到達後は、いくつかのダンジョンを周回するしか遊びがなくて、そこで吉田さんも以前推奨されていた範囲狩りで黒が大活躍しているから、そのイメージに引きずられて強い印象に繋がっているのかもしれないですね。

吉田氏:半フレアという詠唱速度のバグもあり、確かに今だと黒魔道士は有用だと思います。

広報担当:ヒーラー目線で言わせていただくと、あと黒がいいなといわれるのはたぶん、ヒーラーから見て黒がいると、ワンダラーパレスとかは、ヒーラーの仕事が1つ減るという部分ですね。

吉田氏:リポーズを入れる負担は減りますが、ワンダラーは睡眠無効の敵も多いですし、範囲スリプルよりも黒魔道士はダメージに集中して、寝せられる敵だけピンポイントに白魔道士が寝せる、という方が早い場合もあります。ただ、戦術や初見かどうかでも見方はかわるので、ケースバイケースですね。やはり戦術になりますが、4人で遊ぶコンテンツで、範囲焼きの効率だけを考えると、DPSというロール内で攻撃特性の有利不利は出てしまいます。それは事実です。ただ、その観点だけで強弱を語るのは、違うと思うのです。最後はもう、僕が黒魔道士使いと広言している部分もあって、かといって他ジョブ使っても同じ事になりそうですし(苦笑)

――しかし、「FFXI」の田中(弘道氏、前「FFXI」、「FFXIV」プロデューサー)さんとも、「ジラートの幻影」や「プロマシアの呪縛」の際に、ジョブバランスに関して同じようなやりとりをした記憶があります。ナイトばっかり強くて戦士はダメだとか。赤が強すぎるとか。全盛期のMMOって、やっぱりこういうのも楽しみのひとつだよなと見ていますが(笑)。

吉田氏:楽しいと感じるかどうか、人それぞれではありますが、MMORPGではついてまわりますね(笑)。

――ただ、吉田さんは、表にどんどん出るタイプだし、ゲーマーとしてガンガン言うタイプで、発言の重みが違うから、ユーザーにとっては悲喜こもごもがあるわけですね。たとえば戦士の人は、ナイトに若干遠慮気味に静かに喜びをかみしめているだろうし、かたや吟遊詩人の人は、何が削除されるのかはらはらして心臓が止まりそうなわけですよね(笑)。

吉田氏:ちょっと反省しています。初回のアップデートであることもあって、バランス調整のポイントとなる部分は、事前にお話ししておく必要がある、と思ったのです。吟遊詩人は「瞬間的に高いDPSを出せても、持続できなくて息切れしやすい」というリスク/リターンを考えていたのですが、各コンテンツのボスに存在する「フェーズ(攻撃モードの切り替わり)」が、息継ぎの良いタイミングになり、結果コンテンツクリアまでの時間で計算すると、DPSが想定より高すぎました。さらにPT内で担う役割も、非常に重要なものが集中しすぎたので、その点を「微調整します」が意図だったのです。かといってこれを語り出すのもLIVEの主旨と異なりますし、次回からはもう少し慎重にいきます。吟遊詩人ユーザーの皆さん、本当に極端な弱体などではないのでご安心下さい。

――1点だけ基本スタンスを確認したいのですが、物理系のジョブは長時間のバトルになるとTPが枯渇しますよね。これはユーザーのTPの使いすぎであって、攻撃の手を緩めたり、TPを使わないインスタントを入れてTP消費を調整してくださいという考え方ですか?

吉田氏:いくつかの調整はしましたが、基本的にその質問に対しては「はい」とお答えします。先ほども出た「フェーズ」の切り替えで、息継ぎがありますので、そのタイミングを見て調整していくことをプレーヤースキル幅だと思っているからです。また、その消費量でダメージ計算上、バランスを取る役目も担っています。細かく踏み込めば、Procの発動率も同じ考え方になりますが、さすがにお話しするには細かすぎますね。

――なるほど、TP枯渇は基本はプレーヤースキルの範疇の話で、今後も状況を見ながら微調整を加えていきますよ、という感じですか。

吉田氏:はい。今回に限らずですが、細かい調整は毎回入ります。ただ、これを言い出すと「俺のジョブは?」、「あのジョブは?」となってしまうので、本来パッチ前に細かくお伝えするべきではないと思っています。LIVEを見てくれた方はまだ良いですが、伝聞となると「弱体」というキーワードだけが独り歩きする、ということを今回身にしみて感じました。ただ、戦士はあまりに僕らのミスが大きかったので、しっかり修正しますと事前に詳細を出させていただきました。

――戦士に関して、ひとつ気になっているのは、吉田さんは、以前のLIVEで、「戦士は実は強いんだけど使いこなせていない」という発言があったじゃないですか。あの発言と今回の大幅な上方修正は整合性が取れていないような気がするんですが。

吉田氏:バハムートの有用性が違いすぎたのが発端となり、いくつかの要素が複合してしまったため、大きく変更を入れることになりました。

【「大迷宮バハムート」公式トレーラー】
「大迷宮バハムート」は、「新生FFXIV」における最難関コンテンツという位置づけでそれは「パッチ2.1」でも変化はないようだ

――バハムート以外ではバランスが今でも取れていると?

吉田氏:真タイタンまでは全く問題ないと今でも思いますし、やはり印象値の方が大きいです。僕も含め開発チームでは、「大迷宮バハムート」の調整を、ナイトと戦士のコンビで、全5層を通しプレイしていました。ただ、本来もっと難易度が高いつもりで調整していました。方法をミスすると、いかにタンクであっても、ナイトであろうが、戦士であろうが、数値的に耐えられない状況を作ったつもりだったのですが、皆さんの研究によって、ナイトがそれを耐えられてしまった、しかも、同じ事が戦士にはできませんでした。その結果、パーティー全体の総DPSが、僕らが想定していたよりも出ていなくても、クリアできてしまっていたり、バフが3スタックした時点で計算上は全滅へ向かうはずが突破できたりと、プレーヤーの皆さんの攻略が僕たちの予想を見事に超えてしまいました。これ自体は本来とても良いことなのですが、それによってその戦術が「安定化」され、「練り込まれていく」中で、戦士のポジションがなくなってしまいました。これが僕たち開発の最大のミスです。

 今からコンテンツを調整することはできます。ナイトでも絶対に耐えられないようにするか、特定アクションの能力を下げてしまえばいいのですが、これは不毛ないたちごっこにしかならない。「開発の意図通りにならなければ修正される」という負のイメージもつきまといます。クリアできていた正攻法が使えなくなり、先行してやっていた人だけが突破できるでは、緩和どころか難しくなってしまいます。今回は「大迷宮バハムート:邂逅編」の正攻法として今の戦術を称賛し、その代わり、戦士にもそれができるだけの修正を加えましょう、というのが大方針です。

 もうひとつ、ヒーラーから見た戦士の印象が、ナイトに比べるとわかりにくかったというのも、不人気に拍車をかけてしまったと思います。戦士はダメージをギリギリまで受け続けても、凄い勢いで自己回復するというデザインでした。リスキーですがナイトの硬さに対して、自己回復も含めたHP総量は戦士は互角になる、という考え方をしていました。ただ、回復している側から見ると、戦士はもの凄くHPが減るけど、もの凄く回復する。しかも回復魔法をかけていないのに、どうなってるんだこのジョブ?と(苦笑)。

 戦士はバーサーカーらしいデザインをしたつもりなのです。自己を削って戦って、最後「原初」で300%戻す!みたいな。プレイする側から見れば、凄く気持ちいいジョブ。この細かいテクニックは、なかなかどうして、プレーヤーを選ぶよ!というような、ちょっとした優越感。限界までHPが減っても、大丈夫、まだ大丈夫……ドーンと自己回復! ところが回復側から見ると、ナイトは特定アクションで硬い、という印象プラス常時安定した防御力。でも戦士はそうではないので、どこで回復するのがベストか、よほど戦士を理解していないとわかりにくかったと思います。

 結果的にタイタンまでは「ジョブ間の特徴の違い」くらいで、せいぜい「真イフリートのスタンが、ナイトのほうがリキャスト時間分だけ有利」くらいだったものが、大迷宮バハムートの差が決定的すぎ、さらに先ほどのヒーラー側から見た「不安定な印象」が絡まってしまい、“戦士は弱い”になってしまいました。ですので今回、全部一気に情報を公開させていただき、大きく変わります、シンプルに言えば「強く硬くなります」とお伝えさせていただきました。周りから見ても戦士は硬くなった、強くなったと、はっきり思って貰える強さじゃないと、なかなか印象は変えられないと思いますので。

――なるほど、戦士の大幅強化は、一種の“風評被害”を払拭する狙いがあるわけですね。

吉田氏:戦士はそうですね。「研究してください」というのは、以前LIVEでも触れましたが、ラースと原初の使いどころ、回復役の方との意識共有だったのですが、戦士本人が分かったとしても、回復役の方にそれを求めたのはやりすぎだったと思いました。全方位的にテクニカルにしすぎた面があったので、その点は反省です。

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(中村聖司)