インタビュー

【E3 2014】「新生FFXIV」プロデューサー吉田直樹氏E3 2014インタビュー

「新生FFXIV」初のRvR「フロントライン」について。吉田氏「『DAoC』と同じにはしない」

「新生FFXIV」初のRvR「フロントライン」について。吉田氏「『DAoC』と同じにはしない」

「フロントライン」について熱く語る吉田氏。RvRは初期構想に挙げられていた大型コンテンツのひとつで、RvR好きの吉田氏の肝いりでもある
「バトルフロント」のスクリーンショット

―― 「フロントライン」について、その実装意図を改めて聞かせて下さい。

吉田氏: 「フロントライン」が「新生FFXIV」の中でのPvPのメインになるつもりで、まずは「ウルヴズジェイル」を先行実装しました。ですが、正直ここは調整をミスしたと思っていて、本当は「ウルヴズジェイル」で対戦格闘ゲームの初期のようにPvPに慣れてもらった上で、その勢いで「フロントライン」に行っていただきたかったのです。ですが、むしろ格闘ゲームのストイックなところが出てしまって、モラルというパラメータのキツさ、装備格差、PvPアクションの差、ジョブバランスの差によって、やりこんでいる人と、初心者の人の差がかなりキツくなってしまいました。コンテンツに付けた名前も「オオカミたちの檻」だったので、まさにたまに初心者のウサギちゃんがぽんといくとすごい勢いで食べられてしまうという……。

 しかし、初めて「新生FFXIV」でPvP体験してみて「とてもおもしろかった! でも格差が激しいので、そこを何とかして欲しい。もっと沢山の人と戦いたいです!」と、各地のイベントで言っていただきました。ですので、「フロントライン」では、できるだけ格差がなく、気軽で、バトルの責任範疇が重くならないものを目指しました。クリスタルタワーと同じですね。人数が多いぶん1人にかかってくる責任の比重が軽いのです。しかも今日ライブでお話したように、全滅したらゲームエンド、ではなくて、あくまでポイントを競う合う形になっています。倒されてもリスタートして戦線に復帰できますし、本当にカジュアルに作ったつもりです。

 今回のフロントラインには、いわゆる攻城兵器みたいなものは入ってないです。カタパルトやラムを駆使して城を攻め落とすような要素はないのですが、今後はそういったルール追加をしていって、より大規模なマップだったり、外壁がある建物を奪い合ったりという形で発展させていきたいなと思っています。

―― 「フロントライン」の最終的な構想は、「DAoC」並の規模感でRvRをやる感じですか?

吉田氏: 要素はある程度近いかもしれませんが、広さやコンテンツの位置づけ的に、そこまでやるつもりはないです。なぜなら「新生FFXIV」はメインがPvEのゲームだからです。1週間プレイする中の何時間を、どのコンテンツに割くかはプレーヤーの皆さん次第で、PvPはあくまで選択肢のひとつです。

 「DAoC」は、RvRに勝つことが目的のゲームなので、RvRにほとんどのプレーヤーが来ないと意味がありません。そこが「FFXIV」と「DAoC」の違いです。「DAoC」は大好きですけど、中期以降はとにかく敵プレーヤーに出会うのがしんどかった……。

 MAPの広さも要素の多さも、大規模PvPになりすぎて、少人数での競り合いが発生しにくかったのです。新しいコンテンツが入ると、みんな新しい装備が欲しくてPvEに行っちゃう。僕みたいに当時ガチだったプレーヤーだと凄い勢いでアイテムをファームして、その新装備で全身ガチガチになって戦場に帰っていきます。でもまだ他の人はPvEをやっていて、結局PvPフィールドにあまり敵も味方もいない。2時間MAPを延々と走り回って、やっと見つけた同数の敵とぶつかり合った瞬間、20秒ぐらいで勝負がついてしまう。PvEで装備が強くなっていることもあって、向こうにしてみたらたまったもんじゃない。次に彼らが40人ぐらいで徒党を組んできても、結局こちらが8人で全滅させてしまう。そうなると相手は萎えて戦場にこなくなってしまう。こうなってしまうと、装備が整うまで行くのは止めようとカジュアルな方は考えますし、集まるスピードもあまり早くはない。しかし、血に飢えた僕のギルドは戦場を何時間もマラソンして敵に会えない会えないといって切なくなり、ログインしてあまり時間がないから、とにかく戦場に行きたいという人たちは、僕らみたいなのにぶつかって、一瞬で倒されてしまうし……。

 ですので、「DAoC」のRvRを目指していくと「新生FFXIV」も絶対にそうなっていくと思うのです。それはダメだと思っていて、だから今回「フロントライン」の報酬の中に、参加賞的な意味で戦記や神話が入っているのも、今までPvEのトームストーンを稼ぐのに使っていた時間を、「せっかくだからPvPに時間を使ってみませんか?」という開発チームからのお誘いだと思っていただきたいです。

 パッチ2.3でクリスタルタワー「シルクスの塔」も入るので、「シルクスの塔」に行くというのも大きなモチベーションになると思います。そこで稼げる戦記や神話の量、さらに新しく入った「フロントライン」でみんなで盛り上がろうと。ログインして楽しい2時間、3時間を過ごしたら、それなりのストーンが貯まっていて……という状態を作ることで、PvPに参加してみようかなと、思って貰えると嬉しいです。

―― 「ウルヴズジェイル」とは違って、基本的には全員に参加してくれたらいいなという考え方ですか?

吉田氏: そうですね。もっともっと気軽なので、1回はやってみて欲しいです。

―― レターLIVEでモラルのパラメータは使いませんと発表されましたが、そうなると「ウルヴズジェイル」と、今回の「フロントライン」は継続性みたいなものはないのですか? 当然プレーヤースキルはあるのでしょうが、装備的な面やあるいはポイント的な面では?

吉田氏: PvPアクションは「ウルヴズジェイル」で稼いだポイントはそのまま「フロントライン」のフィールドでもPvPアクションが使えるので、その分は若干有利だとは思います。ですが、今回「フロントライン」実装にあたってほぼすべてのPvPアクションに関しては調整をかけます。少し効果が強すぎたもの、あまりにも弱すぎて使えないもの、ちょうど良かったのだけれど効果が短くて使えないもの、長すぎたものなどを全部今回のタイミングで見直しをかけました。

 パッチ2.28の修正により、全ジョブでPvPアクションのレベル1が取得済みの状態になりました。効果量が大きいか小さいかの違いだけで、そもそも「PvPアクションを持っていない」というシチュエーションがなくなりましたし、かなり対等になったと思います。「ウルヴズジェイル」でも公平なバトルで楽しみたいという声をすごくいただいて、モラルを消してくれと言う声もいただいています。今回「ウルヴズジェイル」にも調整はいれているのですが、今後もその辺りはプレーヤーの皆さんの声を聞きながら細かく調整していこうと思っています。

―― フロントラインの戦場の広さは今の1エリアくらいですか?

吉田氏: そうですね、1ゾーンがグリダニアの中央森林よりも若干狭いくらいかな?

―― 場所によっては相手が見えない?

吉田氏: 基本全然見えないと思います。3つのアウトポストは相当離れているので。

―― 相当近づいてきたら、少しずつ見えてきて来てるなということがわかる感じですか。

吉田氏: カメラの視界外から、大軍団に巻き込まれるとびっくりすると思います。もしかすると、HDDからの読み込みやメモリ展開によって「なんか画面の右のほうが重い! これは敵がいるぞ!」ってなるかもしれません(笑)。「DAoC」をプレイしていた時は、あえてスペックを下げたPCを使って、描画ラグで敵の集団を感知してたりしました。

―― 今回の72人という制限は初期の構想からあったのですか?

吉田氏: そうですね。24対24対24は最低限という話をしていたので。なんとか。

―― それが16対16対16や8対8対8にもなると。これはフレキシブルで良いシステムだと思います。これは何故入れたのですか?

吉田氏: 24時間戦場を開いておき、かつ人が来てすぐPvPができるためには、ヨーイドン!というスタートタイミングが必要です。常に誰かが攻めていて、奪い返さなければ、常にどこかの国が勝利を収めている。「DAoC」のようにそういうタイプのゲームもありますが、人が少ない時間では、砦を奪い返したくても、奪い返せない。そもそも劣勢になってしまった勢力は、盛り返しようがないという部分がポイントだったので、そうならないようにワンサイクルの中でスタートとエンドがあるものを作りました。夜勤なので早朝や昼間にしかプレイできない方もいらっしゃいます。コンテンツファインダーは複数ワールドをマッチングさせるので、人を集めやすくはありますが、それでも早朝や昼間に24対24対24が揃うとは限りません。

 僕らが忙しくて1日2時間とか3時間しかプレイできないのと同じように、そういった人たちも当然2時間か3時間しかプレイできないのに、人数がいないことで今日もフロントラインができなかった……にはしなくなくて。ですので、vs16、vs8という仕組みをバトルチーム、コンテンツプログラムチーム、サーバーチーム、一丸で作ってくれたシステムになっています。

―― コンテンツファインダーのシステムを使ったら、ワールド対抗戦ってできますね。それで大会みたいな構想はあるのですか?

吉田氏: そうですね。今後PvPのリアル系イベントはぜひやっていきたいと思っています。世界中で大手ハードベンダーさんがスポンサーをして、PvPをeSports的に転戦しているイベントもありますし、キチンとアップデートして、バランスもしっかり調整していき、いずれはそうしたところにも参加したいと思っています。まだまだ夢の話かも知れないですが、国産のゲームでなんとかそれを広めてみたいとは思っています。日本のゲーマーの皆さんは、本当にゲームが上手い。ですのでPvPをやれば、絶対ワールドクラスの強いFCなどもできると思っています。ぜひeSportsの世界でもいろいろ楽しめるように着実に進んでいきたいと思っています。

 「フロントライン」はぜひ気軽に参加して、エキサイトメントをとれますし、「もうワンゲームいっちゃおうかな?」みたいな感じで最初は楽しんでもらえればと思います。ロールの縛りもないので、めんどくさいから全員白魔道士で突っ込んで、全員で迅速ホーリーしてみるとか、アリだと思います(笑)。

―― しかし、全員黒魔道士が最強じゃないかと思うのですが?

吉田氏: どうでしょう(笑)。敵とぶつかったらまず散開することをオススメします。固まっているとBomb戦術食らうと思いますので……。

(中村聖司)