インタビュー
「3D アフターバーナーII」インタビュー
今までのノウハウを注ぎ込んだ新たな「アフターバーナーII」
(2013/12/18 00:00)
今までのノウハウを注ぎ込んだ新たな「アフターバーナーII」
――「セガ3D復刻プロジェクト」第2期は「アフターバーナーII」からスタートですね。今回の移植作業はいかがでしたか?
奥成氏: アーケード版「アフターバーナー」は「X-BOARD」の第1弾タイトルです。「スペースハリアー」から「アウトラン」を経て、さらにパワーアップしたハードウェアでした。これを実現させるのが最初のハードルでした。「ギャラクシーフォース」で使われている「Y-BOARD」はさらに先の基板でして、この「Y-BOARD」はプレイステーション 2の「SEGA AGES 2500 ギャラクシーフォースII」の制作時にかなり解析できていて、それでも3DSにコンバートする際はかなりの苦労があったわけですが、PS2版「GFII」を開発したこと、そしてPS2版を元に「GFII」を3DSに持っていくという作業を経験したことによって、「X-BOARD」の移植である「ABII」を3DSに持っていくことは、実は割とスムーズにできました。
堀井氏: 「すんなり」って言っていいですよね。今回はそんなにご迷惑をかけてないっすよね?
奥成氏: そうですね。
堀井氏: よしっ(一同笑)。最初に「アフターバーナーが動きましたよ! 頼まれてないけど!」と伝えたら、奥成さんに「メガドラ版がですか?」と言われてずっこけました。
奥成氏: ギガドライブのタイトルを選んでる途中だったしねー。
堀井氏: その時は笑いましたが、実のところメガドラ版の3D化は、まったく楽じゃないと思います。移植してないのでわかりませんが(笑)。
ちなみにいちばん移植しにくそうなのはセガ・マークIII版です。すべてをBG1枚だけで描いているから立体になりやしないので。
――(笑)
奥成氏: と、すぐに話を脱線させたがる堀井さんの話は置いといて、第1期の苦労が実を結んだな、というところで「3D ABII」の開発は始まったわけですが……毎回こんな話をしていますが、ただ動くだけじゃダメなんですよね。最初、「3D スーパーハングオン」ができあがって、「3D GFII」を手がける前ぐらいに、「ABII」をテストでエムツーさんが動かしていたんですね。まだまだ商品としては不完全なものでしたが、立体視も実装されていて。
堀井氏: 奥成さんに見せたのはそれぐらいの時期ですね。
奥成氏: ところがいざ遊んでみたところ、全然ロックオンができないんです。3D立体視に対応させたことで、ゲームの難易度が上がってしまった……これが僕が感じた「ABII」の最初のハードルでした。どういうことかというと、まずゲームシステムについて簡単に言いますと「スペハリ」は手前にいるプレーヤーが、奥にいる敵に向かって「誘導弾」を撃ち込むゲームなんで、割と自機のいる手前を見ているのですが(編注:ロックオンはある程度アバウトでOK)、「ABII」は、地平線の彼方にいる敵を素早く発見して、ロックオンを手動でやるゲームなので、常に奥と手前の両方を見ている。ゲームとして似ていても、プレーヤーの目の動きは結構違うものになっているんじゃないかと。
堀井氏: キチンと位置あわせをして、モグラ叩きをするゲームなんですよね。
奥成氏: 「出現したモグラはすぐに叩く。叩きもらしたモグラからは逆に攻撃されるので避ける」というのが基本的なゲームです。それが3D立体視に対応させたときに、敵がちゃんと奥にいるので、手前から奥に焦点を合わせてロックオンさせるのが大変になってしまったという。3Dボリュームを2D側にすると、昔通りにプレイできるんですが、3D側にすると、敵が遠くてロックオンがしづらいという……。これがテスト版を最初にプレイした時の感想です。遊んでいるゲームは同じなのに、なぜこんなことが起きるのか、その当時はわからなかったんですが……。
ただ単純にソフトウェア的にポンっと3D立体視に対応させて奥行きを持たせるだけでは、見た目は良くても、遊びやすさの調整がされていないとダメなんだ、ということを初めて思い知ったんですね。
堀井氏: その「遊びやすさの調整」、そこそこ手間がかかるものと、案外さっくりいくものとあるんですが、「ABII」はそこそこやることがありましたね。立体視の破綻も含めて。
――奥行きが作られたことで、敵が遠くに見えて難易度が上がった、という部分ですが、もう少し具体的に説明していただけますか?
奥成氏: 結局、手前に存在するプレーヤー機体と、遠くにいる敵機は、2Dでは視覚上同じ平面上に捉えることができるんですよ。
堀井氏: 同じ紙の上にいるものを見ている感じですよね。そして敵の位置に向けて機首を向けて、ロックオンすると。
奥成氏: そこに奥行きができると、手前のプレーヤー機と奥の敵を同時に見ようとすると、視点が定まらなくなるんですよね。頭の中で「これは奥にあるものだ」と認識して敵機を見ようとするので、ピントが合わなくなる感じです。
――例えとして適当かどうかはわからないのですが、カメラのレンズ越しにゲームの映像を見ているとした場合、絞りを絞って被写界深度を上げて遠くまで見通せるのが2D、絞りを開けて被写界深度を下げた状態が3D立体視、ということになるんですね。視点をどこかにあわせる(ピントを合わせる)と、他がボケて見えるイメージですね。
堀井氏: 1つの画面を見ていても、目線の移動が結構起こるんですね。
奥成氏: この部分は、後に「3D GFII」でもかなり調整した部分なんですが、「3D GFII」が完成する前に、「ABII」のテストバージョンを見たときは、「これは後で苦労するな」と思いました。結果としては、エムツーさんが「3D GFII」の最終面ですとか、かなり奥行きのある部分の調整をしてきたことで、調整のノウハウを蓄えることができ、無事に奥と手前の両方を見ても2Dでのプレイと同じようにプレイできるものになったと思います。
堀井氏: 遊びやすくするための工夫は沢山しましたが、それでもまだロックオンがしづらいという方もおられると思います。その場合は思い切って難易度を☆1つにしてみてください。ロックオンの範囲が広がって、バリバリ撃墜できるようになりますよ。
――「3D スペハリ」、「3D スパハン」、「3D GFII」と奥行き進行型の3タイトルだけで比較すると、プレーヤーがいる座標から1番奥まで、オブジェクトの距離感というか、奥行きの感じられ方が違ってきたな、という気がしたんですが……。
奥成氏: そもそも「Y-BOARD」の場合、画面こそ2Dでしたが、もともと奥行きに対する計算方法も、それまでのシリーズに比べてより緻密に計算されているんですよね。
――それに加えて、「スペハリ」は地面と天井(ステージによる)に板があって、「スパハン」は地面のみ、「GFII」は板(BG)がない代わり、上下左右がスプライトで埋まっているといったシチュエーションの違い、ステージ=箱の作りの違いもあるんじゃないかとも思うんですよね。ネットの反応を見ていても、「3D GFII」と同じように「3D スペハリ」にも深度をつけて欲しかった、という声があったのが気になっていて。視差のつけ方や立体感の感じやすさといったノウハウと個人差といった違いはあると思うのですが……。
奥成氏: 3D写真を撮る際、手前に対象物を置かないと立体感が味わえないということと同じように、深度ごとに対象物が多ければ多いほど立体感を感じやすい、という意味でいうと、「3D GFII」はオブジェクトの数も多かったので、立体感を感じやすかったと思うんですよね。
――それに、スクロールスピード、ゲーム進行のスピードも結構違いますしね。不勉強で申し訳ありませんが、いろいろ違っているからこその感じ方の違いになっているんだなと改めて考えさせられました。
奥成氏: 「Y-BOARD」では、実際にZ軸の計算も内部でやっていますしね。
堀井氏: 最初から頂点が立体になるようにZ値を持っているのは大きいですね。
――その部分が奥行きに対してウソにならない……スプライトではあるけれども、奥行きに対してきちんと計算されているという部分は、3D立体視にすることでより効果的に働いた、ということなんでしょうかね。
奥成氏: そういう部分では、「ABII」の「X-BOARD」ではまだ「スペハリ」に近いウソを付いていたわけですが、オブジェクトが多層構造で見えるという3D感覚という点においては、「ABII」は「スペハリ」よりもずっと向上してます。その映像表現の進化は立体視にもそのまま反映されています。また一方で、エムツーさんの奥行きを設定するノウハウも向上していて。
堀井氏: ちゃんと画面奥まで続く広い地平があって、そこにいろんなオブジェクトが配置されていて、「ああ、空を飛んでいるな」というところまではすんなりいけたかなと。
奥成氏: なので、「3D スペハリ」以上、「3DGFII」に近い奥行き感は「ABII」でも感じられると思います。
堀井氏: 「3D スペハリ」の頃は、深度の付け方に関しては、第1弾ということもあって多少押さえ目にしていたところがあったんですが、今は開発環境も整って、開発中に柔軟な深度調整ができるようになっています。
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