インタビュー

「NINJA GAIDEN 4」インタビュー。13年ぶりの最新作は“シングルプレイでソリッドなニンジャガ”に

Team NINJAとプラチナゲームズによる注目作。タッグを組んだ経緯など、気になる話を訊いた

【NINJA GAIDEN 4】

発売元:Xbox Game Studios

開発元:プラチナゲームズ/コーエーテクモゲームス

ジャンル:アクション

プラットフォーム:PS5/Xbox Series X|S/PC

2025年秋 発売予定

価格:未定

 コーエーテクモゲームスの看板タイトルである忍者アクションアドベンチャー「NINJA GAIDEN」シリーズ。同社の開発部隊「Team NINJA」の代表作だが、ナンバリングタイトルは2012年に発売された「NINJA GAIDEN 3」で途切れ、その後は「仁王」シリーズや「Wo Long: Fallen Dynasty」、「Rise of the Ronin」といったタイトルを世に送り出した。

 だが、前作から13年の歳月を経てシリーズ最新作「NINJA GAIDEN 4」が突如Xboxの配信イベント「Developer Direct」にて発表された。これだけでもシリーズファンからすると衝撃的な発表だが、今作は「ベヨネッタ」や「ニーアオートマタ」などで有名なプラチナゲームズが開発を手掛けており、これまでにない「NINJA GAIDEN」になりそうな気配を強く感じさせる。

 今回、Team NINJAのプロデューサーである安田文彦氏、プラチナゲームズのプロデューサー兼ディレクターである中尾裕治氏の2名に「NINJA GAIDEN 4」についてさまざまなお話を伺ってきた。本稿ではその模様をお届けしていく。

 なお「NINJA GAIDEN 4」は、プレイステーション 5/Xbox Series X|S/PC向けに2025年秋発売予定。サブスクリプションサービス「Xbox Game Pass」のUltimateプランや「PC Game Pass」加入者の方は追加料金なしでプレイすることができる。

左からTeam NINJA プロデューサー・安田文彦氏、プラチナゲームズ プロデューサー兼ディレクター・中尾裕治氏

長年眠っていた「NINJA GAIDEN 4」の開発はどのように動き出したのか?

――最初に突如「NINJA GAIDEN 4」が発表されてビックリしたのですが、開発の経緯やプラチナゲームズと組んだ理由を伺えますか?

安田氏:まず今日いきなりの発表で、そして何も情報が無いなかで来ていただいてありがとうございます(注:このインタビューは「NINJA GAIDEN 4」発表後すぐのタイミングで行なわれた)。開発経緯について「NINJA GAIDEN」はもう十数年ナンバリングが止まっている状況というのは皆さんご存じだと思いますが、Team NINJAとしてはずっと新作を作りたいと思って検討を続けていました。

 ですがなかなか決め手が無いという中で、コーエーテクモゲームス社長の鯉沼(鯉沼久史氏)とプラチナゲームズさんの稲葉社長(稲葉敦志氏)が同世代で仲も良いという縁があって、一度お話させていただきました。その後、マイクロソフトのフィル・スペンサーさんからもぜひ「NINJA GAIDEN」のナンバリング新作をプラチナゲームズさんとコーエーテクモ含めて、3社でやりましょうという話になったのがプロジェクトのスタートです。

 我々としてもアクションゲームは開発してきたんですけど、「NINJA GAIDEN」を新しく十数年ぶりにやるという中で、プラチナゲームズさんはこれまでも「ベヨネッタ」や「ニーアオートマタ」だったりさまざまなアクションの素晴らしいタイトルを作られてきていたので是非ご一緒させていただきたいということで協業を始めた経緯になります。

――Team NINJAとしては新作を作りたいと仰っていましたが、これまで上手くいかなかったのでしょうか?

安田氏:なかなか言い辛いんですけど、「仁王」だったり「Wo Long: Fallen Dynasty」だったり、様々なタイトルを作っていく中でなかなかラインの確保が難しかったという経緯もあります。

――なるほど。それで鯉沼さんと稲葉さんが話し合って進んだと……。

安田氏:恐らく鯉沼の方から話をさせていただいて稲葉さんに乗っていただいたと思います。

――開発は何年前くらいからスタートしたんですか?

安田氏:正確に覚えてはいませんが、5年前くらいですね。

――「NINJA GAIDEN」の新作をやろうとなって、どういった形で話が進んだのですか?

安田氏:まず企画をどうするかという部分があって、大きなところとしてはシリーズの価値を伝えられるナンバリングタイトルを両社で作りましょうという形で始まりました。その中でプラチナゲームズさんの提案で新しい主人公になりました。

 リュウ・ハヤブサは超忍として完成されたキャラクターという側面がありました。そこで今作は新しいキャラクター「ヤクモ」で皆さんに入ってきやすいような形を提案いただいて、ナンバリングではありますけど新しい主人公になりました。当然、我々の“リュウ・ハヤブサは登場すべき”という判断はご理解いただいて、トレーラー映像などにも登場しています。

今作からの新主人公・ヤクモ。ハヤブサと比べてまだ若く未熟なところもあるようだ
これまでのシリーズで主人公だったリュウ・ハヤブサも登場

――今作の主人公はヤクモですが、リュウ・ハヤブサもプレイアブルキャラクターなのですか?

安田氏:プレイアブルキャラクターです。

――2人を交互に進めていくとか、そういった形ですか?

中尾氏:詳しい事は続報をお待ちいただきたいのですが、それぞれの目的や物語があって戦っていくといった流れになります。その中で映像にもあった通り、新しい主人公のヤクモとリュウが対決するっていうことになっていくので、そこがなぜそうなったのかというところは今後の情報にご期待いただけるところかなと思います。

――ヤクモに立ちはだかる壁のように感じたのですが、最初は対立しているのでしょうか?

中尾氏:そうですね。リュウは隼一門ですが、ヤクモは隼一門ではなく、それと対をなす「カラス一門」という里に所属している忍者で、とある理由からリュウと敵対せざるを得ない状況になっていくストーリーになります。その中でヤクモもまだ若く、これから成長していくというところで超忍の頂点であるリュウ・ハヤブサと対立していて、それを越えて自分も新たな超忍になるという形でクロスしていきます。

――ヤクモとハヤブサのW主人公という認識で合っていますか?

中尾氏:今回の主人公はヤクモなので、プレイするバランス感でいうとヤクモの方が多いです。ただ、リュウが少ないのかというとそうでもなくて、リュウが強いということをしっかり感じ取ってもらえるぐらいの時間は確保しているかなと思います。

――ハヤブサが強くて、ヤクモも次第に強くなっていくと思うのですが、この2人のプレイスタイルの違いについても教えていただけませんか?

中尾氏:まずリュウ・ハヤブサに関しては、シリーズの手触りとかアクションのスタイルをそのまま引き継いでいます。映像でも見たことある技がたくさん出てきたかなと思いますが、それを踏襲していて、達人技などが多く含まれる一対一の戦闘がすごい得意なキャラクターです。

 ヤクモは先ほどお話していた“成長”というのもありつつ、その中で一対一の戦闘ももちろんこなせます。その中でヤクモなりに工夫してたくさんの敵と戦ったりとか、大きな敵と戦うための「鵺の型」っていう新しいシステムを通して味わえるように作っていて、ダイナミックかつ繊細というのがヤクモの特徴です。

ハヤブサとは違った「鵺の型」というスタイルで戦うヤクモ
力強い斬撃や、ハヤブサの代名詞でもある“飯綱落とし”も映像から確認できた

――「NINJA GAIDEN」といえばハヤブサの存在感が大きいですが、新しい主人公を起用することに不安ありませんでしたか?

中尾氏:ないということは全くないです。ただ今回メッセージとして伝えたいなと思っているのが、リュウ・ハヤブサは「NINJA GAIDEN」というIPのアイコン的な存在として、我々プラチナゲームズとしてもすごいリスペクトしているところです。

 ヤクモという新主人公にすげ変えるということではなく、リュウ・ハヤブサというとても強い忍者に対して、新しい忍者が出てきてその2人が物語を織りなしていくというところを楽しんでいただきたいなっていうのがメッセージとしてあります。ある種、両方立っているっていうゲームにしているので、これまでのファンの方にもぜひ受け入れてもらいたいなと。

ハヤブサが端に追いやられたのではなく、どちらの活躍も見られそうだ

2つのアクションゲームメーカーが手を組んで生まれた新たな変化

――Team NINJAはやはりアクションゲームのイメージがあって、もちろんプラチナゲームズもアクションゲームのメーカーで、タッグを組んだ「NINJA GAIDEN 4」はとても楽しみなのですが、一方でなぜプラチナゲームズに力を借りる必要があったのですか?

安田氏:先ほどちょうど仰ってましたけど、我々もシリーズを作っていたりとか、新作のチャレンジをしている状況でした。当然タイトルとして我々も深く関わるということは前提として、これまで我々も他社のIPを預からせていただいて制作したこともありますし、逆に我々からお願いして作っていただいた経験もあって、そこからいろんな学びがありました。繰り返しになりますけど、今回のプラチナゲームズさんは優れたアクションゲームを作られてるという部分があったので、一緒にやらせていただきたいってなったのが本当のところの経緯です。

中尾氏:今のお話でいうと、今回はもちろんご依頼いただいて「NINJA GAIDEN 4」を作っています。ですが実際のところ、気持ち的には2つのアクションゲームの会社が一緒に合わさって、このコーエーテクモさんの伝統的で大事なIPを最強にしていきましょうという気持ちの方が強いので、代わりに作ったみたいな感覚はあまりなくて、一緒に作っているという感覚が一番強いかなと思います。

安田氏:そうですね。私もプロデューサーとして入っていて、あと柴田(柴田剛平氏)というマスターコレクションのプロデューサーも入ってます。あとは「Wo Long: Fallen Dynasty」を担当した平山(平山正和氏)もかなり深く入らせていただいてますし、そこはしっかり新作として“Team NINJAが丸投げした”ということではないです。

――忍者の隠し里に新しい血が入ったみたいな感じで楽しみですね!

安田氏:そうですね。Team NINJAもそんなにオープンなチームじゃないので(笑)。でもすごく刺激をいただいて、やっぱり我々もずっとアクションゲームを作ってきた分、変えられないようなところもあったと思います。やっぱりプラチナゲームズさんのゲームってケレンミがあったり、本当に直感的な気持ちよさがあったり、多分映像からも感じていただいてる方が多いんじゃないかなと思います。そういった部分は非常に学びになっています。

――両者で協業をされて新鮮だったポイントであったり、それが作品に生かされてるようなポイントはありますか?

中尾氏:私が実際にやり取りさせていただく中で一番感じたところが、同じアクションゲームを作る会社でも、やっぱりアクションの手触り感を見ていくとここも違うそこも違うみたいな、ある種プラチナゲームズとしても勉強になったと思う瞬間でした。安田さんがお話していた“プラチナゲームズのケレンミ”、プラチナならではのド派手な表現も織り交ぜつつ、アクションの手触り感はすごく勉強になりましたし、プラチナでもそこを生かしながら良さを出していけるだろうなっていうのが、進めていく中でだんだんと確信に変わっていきましたね。

安田氏:我々も最近は歴史ものが多かったり、アクションRPGを作っていたりします。「NINJA GAIDEN」はピュアなアクションゲームとして、プレーヤーが気持ちいいって感じるようなところをプラチナさんらしいケレンミであったり、派手さという部分は、Team NINJAだけではちょっと達成できないところまで踏み込んでやられています。今日の実機映像も含めて発表しましたけど、その反応を見ててもすごくいい形でゲームを作っていけてるのかなっていうふうに考えています。

中尾氏:互いの良さをミックスできたなっていう感覚はありますね。

安田氏:そうですね。制作の考え方とかやっぱり違ったりする部分ももちろんあるんですけど、中尾さんが元々「NINJA GAIDEN」の大ファンだったっていうのもあって、そこはすごく汲んでもらえるというか……。言語化しづらい部分も感じていただいて、実際それを改善していっていただけたりするので、そのあたりは非常にありがたいというか、良い関係性なのかなと感じております。

Team NINJAとプラチナゲームズは“良い関係性”と語る安田氏

「NINJA GAIDEN」らしさはそのままに、プラチナゲームズならではの爽快アクション

――ぞれぞれのアクションが融合ということですが、今回そのポイントとなる軸になるようなアクションはどういった感じなのでしょうか?

中尾氏:それはですね、映像の中で赤いフィルターがかかって思い切りズバッと斬っているシーンがあると思いますが、あれが今回の新しい主人公のヤクモが使える忍術です。先ほども挙がった「鵺の型」というのですが、これが今回の新しいアクションの肝になってます。

 これが何を生むのかというと、先ほどお話しした「NINJA GAIDEN」の良さです。「NINJA GAIDEN」といえば、無慈悲なほど敵が来る多勢に無勢という状況が続いていくゲームだと思うんですけど、そこに「鵺の型」の大きな太刀でたくさんの敵を思いっきりズバッと斬る爽快感とか、一気に逆転する緊張と緩和を新たに作り出して、より緊張から解かれた気持ちよさを強調するものとして入れています。だからといって難易度が下がったかということではなくて、これまでの「NINJA GAIDEN」のヒリヒリした難しさを表しつつ、ご褒美的に気持ちよくなれるポイントをプラチナなりに用意した感じです。

――ニュアンスとしてはシューティングゲームのボムみたいに、敵が集まってきて大変になったときに一発逆転で使って切り抜けるみたいな感じですか?

中尾氏:そういう使い方もできますし、それこそボス戦とか、映像でもでかい敵と戦っている姿をご覧になったと思いますけど、ああいう強大な敵にも対等に立ち向かえる武器として扱っているので本当に使い方やシチュエーションによってはより繊細に忍術で戦うこともできます。

――忍術の種類もいろいろありそうですね。

中尾氏:そうですね。単純なボムみたいな要素以外にもいろいろな深みも入れてますね。

「NINJA GAIDEN 4」の軸となる「鵺の型」

――「NINJA GAIDEN」はガードも重要だと思いますが、ジャスト回避だったり、パリィといったアクションはどういうふうに組み込まれているのでしょう?

中尾氏:ジャストでかわして反撃してとかは入れてますが、こちらも「NINJA GAIDEN」の激しい攻防の切り替えというところに対して、今回はしっかりマッチするようなシームレスな形に作ってます。なので敵の攻撃を見極めてパリィしてみたいなじっくりした対戦というよりは、目にも留まらぬ速さでかわしたり、ガードしたり、弾いたり、いろんなアクションをきっかけに開始できるような形になってます。

――動きを見極めてパリィを合わせていくみたいなのが、Team NINJA的なアクションでもあるような気もしますが……。

安田氏:Team NINJAもパリィに重きを置いたアクションを多く作っていたり、スタミナがあったりとか、そういった部分はもちろん現代のアクションゲームとして一つの形だと思います。ですが「NINJA GAIDEN 4」はそういった部分を前提にするのではなく、やっぱりシリーズとして正しい形にしましょうというのがありました。

 そういったアクションも検討しなかったわけではないですが、今の形に落ち着きました。パリィというかジャストガード、ジャスト回避系のものは元々「NINJA GAIDEN」はあったので、それをよりバトルの1つの駆け引きとして、よりバリエーションが多くなっているっていうイメージです。

中尾氏:あとは今回から攻防がシームレスに敵とプレーヤーで移行するようになっていて、詳細はちょっと今お伝えできないのですが、例えば映像でいうと攻撃をかわして反撃するもそうですし、攻撃同士がぶつかり合って、そこから逆転するみたいな攻防もあったり、本当に多彩なシステムで構成されて、アドリブでスピーディーに戦っていくっていうのが楽しめる唯一無二の遊び心地になっていると思います。

――アクション面の話で「NINJA GAIDEN」といえば、ボタンを押して斬るだけでも爽快に戦えて、過去作では首切り投げや飯綱落としといった多彩な技、アクションがありましたが今作ではどうですか?

安田氏:単純にシステム的には絶対に増えていそうですよね。前作までは完成された超忍だったんですけど、今回はヤクモという新しい主人公でゲームを進行していくうちに成長していくっていう部分があります。ストーリーやアクションも含め描かれているので、アクションとしてできることはすごく多いのですが、ある程度順序立てて学べて、皆さんに合った形でヤクモとしていきながらレベルアップできるという部分は今回もしっかりできているんじゃないかと思います。

中尾氏:先ほどお話したのに加えて、はっきり言ってしまうと今お話いただいてた特殊な技やアクションとかは増えてまして、さらに深みがでていると思います。それぞれの細かなシステムの組み合わせというのがさらに深まっていて、シリーズで一番多くなっています。

 ある程度のところは初心者や中級者の方も爽快に遊べるようになってますし、そこから上級者の方とかシリーズファンの方がさらに深く、これとこれの組み合わせみたいなところで遊べるように設計されているので、かなりそこの深みの部分は噛めば噛むほど味が出るほど作られているかなと思います。

これまで以上に豊富なアクションでバトルが楽しめるようだ

「NINJA GAIDEN 4」で変わるところ/変わらないところ

――先ほど中尾さんは「NINJA GAIDEN」のファンと仰いましたが、「NINJA GAIDEN」新作の話を聞いたときの感想を教えてください。

中尾氏:いやもう本当に嬉しかったです。全然リップサービスとかじゃなくて、僕は人生で一番「NINJA GAIDEN 2」が好きなんですって、当時の上司とかに言ってプラチナに入ってるんですよ。

安田氏:おかしいじゃないですか(笑)

中尾氏:というのを公言していたので、もうプロジェクトのお話をいただいたときは、もう“入りたい入りたい”って話をして、半ばごり押しで入れてもらったみたいな感じでした。

 自分自身も前作の「NINJA GAIDEN 3」から4を待っているファンの一人だったので、まさか待つ側じゃなくて提供する側になるとは思いませんでした。そこは本当に嬉しかったですし、だからこそ僕なりに思ってる「NINJA GAIDEN」を進化させていきたいみたいなところが思いっきり入れ込めたなと。

――新しい主人公やアクションとか、そういうところを最初にご自身が手がけるときには、こうやろうみたいなことを見据えていた感じなんですか?

中尾氏:そうですね。提案させていただきながら調整を加えてみたいなところでやっていきました。私は「NINJA GAIDEN」で大事なのが“フェアな攻防と”思ってまして、敵とプレーヤーはあくまでも対等ということを実現するために、その攻防の切り替えにおけるあらゆるアクションとか、逆転から劣勢の状況に陥るという、もはや対人戦をしてるような感じを楽しめるというのが「NINJA GAIDEN」の良さと思っています。今回はそこをより強調したりとか、しっかり進化させていこうという思いが大きかったですね。

自身も「NINJA GAIDEN」ファンだと語った中尾氏

――「NINJA GAIDEN 3」は13年前になりますが、発売当時のユーザーからのフィードバックといった部分は解消できたのでしょうか?

安田氏:「NINJA GAIDEN 3」は私がディレクターを務めたタイトルで、シリーズの中では大きくベクトルを変えた部分がありました。その反応であったりとか、我々の方でやりきれなかった部分も含めて、タイトルとして必要な究極の公平性だったりとか、今回はしっかり関わらせてもらいました。我々であればリュウ・ハヤブサでこれまでやってましたけど、やっぱり手触りが良いこと、究極のプレイアビリティがあるからこそ、歯ごたえのある難易度が実現できて、そこにプレイヤーの人が楽しんでいただけると思っています。

 そういったシリーズの本筋みたいなところ、外しちゃいけないところというのは、より自覚的になったところがあるので、そういった部分をプラチナゲームズさんにしっかりお伝えしています。中尾さんは元々「NINJA GAIDEN」コアプレーヤーなので当初からご理解いただいたと思うんですけど。

――今作はナンバリングタイトルになりますが、時系列的にはどういった位置にあたるのでしょうか?

中尾氏:「NINJA GAIDEN 3」の後ですね。具体的な年数とかは今回の場では言えないのですが、それなりに年数が経っています。一つ落ち着いて今回「NINJA GAIDEN 4」の冒頭でまた問題が起きたという感じです。

――前作からもう10年以上が経って、アクションゲームに求められる要素も変わってきたと思いますが、過去作から変えたところと、あえて変えなかったところがありましたら教えてください。

安田氏:今はジャンルも細分化されてきたりとか、それこそアクションRPGが主流になっていたり、オンラインの要素が入ってるアクションゲームが増えてきたりっていう中で、シングルプレイでちゃんとソリッドな「NINJA GAIDEN」を作るというのは最初から決めていたことです。やろうとすれば、色々な要素を付け足すことができると思います。例えばオープンワールドにするとか、オンラインプレイを充実させるとか、運営タイトルのようにアップデートを重ねていくとか。

 そういったことはせずに基本的にシングルプレイで、何度も死にながらじゃないですけど、プレーヤーがヤクモを動かして、リュウ・ハヤブサを動かしてという部分は絶対ブレないようにと決めていたので、その点はシリーズとして、ナンバリングとして、絶対に変えないところだと思います。

 ただ一方で、今回「NINJA GAIDEN 2」のリマスター「NINJA GAIDEN 2 Black」も発表と同時に発売しています。「NINJA GAIDEN 2」は2008年のタイトルですが、さすがにプレーヤーがプレイしやすいようなユーザビリティ、アクセシビリティ、オプションはこの10年間で大きく変化しています。「NINJA GAIDEN 4」も「NINJA GAIDEN 2 Black」もう10年以上空いてのリマスターであったり新作ですけど、そういったところは当然ケアしながら作っています。

――公式サイトを拝見していたら、難易度カスタマイズっていう文言が出てきたんですけれど、高難易度のゲームに対するフォローのようなものなんですか?

中尾氏:初心者の方への救済というよりは、より遊びやすくなるような、ゲームがわかりやすくなるようなものがオプションだったり、アクセシビリティに入っています。あと難易度設定ですね。こちらに関しては結構な段階を用意していて爽快に遊べるような形にはなっています。

 ですが、やっぱり「NINJA GAIDEN」はそのヒリヒリとした戦いがやっぱり一番の肝だと思っているので、そういったところは外さないように、初心者の方でもそういうヒリつきを楽しみながらプレイできるような形でカスタマイズできるものを目指しています。

――今回も何度も死ぬゲームだとはもちろんあると思うんですけれど、チェックポイント的な仕組みっていうのはどうなってますか?

中尾氏:先ほど安田さんのお話からもあった通りでプレイしやすいようにしています。リプレイ性は高いように作っていて、純粋に戦闘を楽しめるような形にしているので、直前に戻れるというのはちゃんとフォーカスしています。

過去作ではゲームオーバーになると最後にセーブしたポイントに戻されたりもしたが、今作は存分にゲームオーバーになれるようで安心

新たな主人公「ヤクモ」は“殺しの任務をずっとやってきた心の無い未熟な忍者”

――ヤクモというキャラクターの魅力や、ユーザーの方を受け入れるために注力したポイントなどありますか?

中尾氏:「NINJA GAIDEN」のナンバリングではあるんですけれども、前作から結構間が空いてしまったので、新規の方がこれから歩んでいただけるようにキャッチーな見た目にしていこうというのは初めからありました。その上でリュウとの対比になるように若くて、リュウとは違うまたクールさというか寡黙さみたいなところを取り入れて、現代的なデザインにしていったっていうのが魅力の一つですね。

――キャラクター作り的には試行錯誤とか、いろいろ紆余曲折があったのでしょうか?

中尾氏:大まかなところは初めから結構固まりましたが、細かいところの詰めですよね。口数とかはそうでしたね。

安田氏:最初は結構喋るという設定でしたが、あまり喋らない方がいいんじゃないみたいな話を我々からして、ただ全然喋らないのもあれなので、周囲のキャラクターも含めてですけど調整していただいたりっていう経緯はあります。大まかな設定であったりとかキャラクターのビジュアルのイメージだったりとか、そういった部分は基本プラチナさんの提案をいただいてその形になっています。

――簡潔に一言で言うとどんなキャラクターですか?

中尾氏:殺しの任務をずっとやってきた心の無い未熟な忍者ですね。任務は実直に遂行していくんですけど、その中で起こる影響ですよね。Aさんを殺すとBさんが悲しむみたいな、殺しがどういうものなのか、それがどう影響していくのか、どう世界が変わっていくのかみたいな、まだ大海を知らない感じのキャラクターになっています。リュウとの戦いとかを経てヤクモが学んでいくというか、理解していくみたいな心の成長を描いたキャラクターです。

――人の悲しみを知っていくとか、そういった感じでしょうか?

中尾氏:それもですし、何より大きいメッセージとして出しているのが、“忍者とは一体何なのか”っていうところですね。そこをユーザーの方とヤクモがリンクして、一緒に理解していく形を作りたかったというのが大きいです。人の心というよりは忍者とは一体何かみたいな感じですね。

――ハヤブサが「NINJA GAIDEN」シリーズらしさを担って、新主人公のヤクモが新しく解釈した「NINJA GAIDEN」を担うというのが、すごく自然な形に感じましたね。

中尾氏:間違いなくお伝えしたいのはそこで、ヤクモに新しく切り替わりましたということではない、というのが強くメッセージとして伝えていきたいなと思っています。完全に切り替わったっていうよりは、新たに立ったっちうところが大きいかなと。

――マイクロソフトからクリエイティブに関して、こうして欲しいという意見は無かったのですか?

安田氏:クリエイティブに関してはある程度、我々に任せていただいてます。基本的に最初の企画の立ち上げであったり、我々の規模だとなかなか難しいワールドワイドでのユーザーリサーチだったりとか、そういったところで「NINJA GAIDEN」に何を求められているかとか、そういった部分はやっぱり定性的な部分から意見をいただいたり、調査の結果をいただいたりして開発を進めてきました。

 当然プラチナさんのデザインだったり3Dモデルだったりを駆使しながら、マイクロソフトさんの方でどういったものが「NINJA GAIDEN」のファンの方に伝わりやすいのかという部分で、マーケティングや宣伝はマイクロソフトさんに主導いただいています。

「NINJA GAIDEN 4」のメインビジュアル。ハヤブサが目立ち、一目で「NINJA GAIDEN」シリーズというのが伝わってくる

――改めて、今回Team NINJAとプラチナゲームズがタッグを組まれましたが、お互いの長所を組み合わせたとき、新しく生まれた変化や価値みたいなものがあったら教えてください。

中尾氏:先ほどお伝えした中で、やはり大事にしていたところというとアクションの手触りです。ここが今回タッグを組んだ結果、すごく洗練されたなというふうに思いました。

 Team NINJAさんの繊細なものに対して、プラチナの派手な部分が合わさっていて、そこが私としては唯一無二だと思っています。この味はこのタッグを組まないと生み出せなかったんだろうな、と思っているので、新しいヤクモとか鵺の型の気持ちよさを実際にプレイした時に感じ取ってもらえたらなと思います。

安田氏:我々はこれまでずっとアクションゲームを作って来たという自覚・自負がありますが、チーム内だけだとアクションの手触りを言語化しないんですよね。なので、どうお伝えするとこれが伝わるのかとか、どういう目的でやるんだみたいなことを言語化できて、しかもコロナの時期にやることが多かったので、プラチナゲームズさんとタッグを組んで凄い良かったなと感じました。

 あと、お若いスタッフも多いというのもあるとは思うんですけど、圧が強いデザインであったりとか、サウンドやBGMなど我々が作ったら出てこないであろう提案があったりとか、そういったものをいただけて、新しいものを作られようとしてるんだなということは、我々にとってもすごく刺激になりました。そこはお互い制作をご一緒させていただくことで成長感じるよねということは、よく我々のチームの中でも話すことがあります。

――なるほど。そんな「NINJA GAIDEN 4」ですが、実際にプレイできるような機会になりそうでしょうか……?

安田氏:発売は2025年秋を予定していますが、アクションゲームなのでどこかのタイミングで実際に触っていただけるような機会を用意したいなと思っています。

――発売と体験の機会を楽しみにお待ちしています。ありがとうございました。