インタビュー

【TGS2022】「バイオヴィレッジ」DLC「シャドウズ オブ ローズ」プレイレポート&インタビュー

「イーサンとローズマリーの親子の愛をもう一度描きたい」開発陣インタビュー

 ここからは、試遊後に本作プロデューサーの川田将央氏とディレクターの木下研人氏にお話を聞けたので、こちらのインタビューの模様をお届けしたい。

本作のプロデューサーの川田将央氏(左)とディレクターの木下研人氏(右)

――この追加コンテンツである「ウィンターズ エクスパンション」を含めた「バイオハザード ヴィレッジ ゴールドエディション」を制作するに至った経緯を教えてください。

川田氏:「バイオハザード ヴィレッジ」は発売前からお客様の反応が良く、発売後も「もっと遊びたい」という熱烈なファンの方の後押しがありました。そのおかげで、発売後早々には「バイオハザード ヴィレッジ ゴールドエディション」の制作が決定していました。もちろん、発売前から「できるのであればこんなことやりたいな」、「あんなことやりたいな」という構想はたくさんあって、中でも我々が最優先でやりたいと思っていたものが「サードパーソンモード」です。

 「バイオハザード」ファンの方には「バイオハザードRE:2」、「バイオハザードRE:3」のような三人称視点で遊んできた方が多いので、機会があればぜひ入れたいと思っていたところでした。

 「バイオハザード7」で初めて一人称視点にチャレンジした際に、ホラーとしてすごく怖いゲームだと評価していただいた反面、「バイオハザード6」までをプレイしていたお客様からは操作に慣れない、難しいという声もありました。「バイオハザード ヴィレッジ」開発中から三人称視点に対応することで、三人称視点に慣れた方にも遊んでもらえるようにしたいなと思っていたんです。

 今回の「サードパーソンモード」を追加することで、今まで操作面が不安で「バイオハザード ヴィレッジ」をプレイしたことがない方にも遊んでいただけたら、という思いが込められています。

 そしてすでに「バイオハザード ヴィレッジ」をクリアしたお客様には新シナリオの「シャドウズ オブ ローズ」、更に「ザ・マーセナリーズ」は前回あったコンテンツをバージョンアップとクオリティアップをして、キャラクターやステージを追加した「ザ・マーセナリーズ アディショナルオーダーズ」をあわせて「ウィンターズ エクスパンション」となりました。

木下氏:「サードパーソンモード」は、本編を一人称視点で遊んでくださった方にもまた別の体験として楽しんでいただけると思います。1度クリアした人も、改めて三人称視点で遊んでほしいですね。

――「バイオハザード ヴィレッジ」では一人称視点が怖すぎてプレイしづらいプレーヤーもいたと思いますが、三人称視点ではその怖さが少し和らぐことはあるのでしょうか

川田氏:あります。プレイ開始直後に、小屋に入って村に行くというシーンがありますが、そこをプレイするだけでもしっかり違いを感じられると思います。三人称視点にすることで印象が変わり一人称視点で感じた恐怖とは違う感覚で進められると思います。ゲームとしてもおもしろくなっていると思いますよ。

木下氏:カメラがキャラクターの後方に移動することで、視界が広くなります。周りを見回しながら遊べるので、それだけでも安心感は少し上がります。自分の視点で自分が襲われる恐怖感よりも、周りが見回すことができる中で、操作しているキャラクターを死なないように動かせばいいという感覚になれるので、体感は結構違ってきます。

――追加コンテンツは、3つともなるとかなりボリュームがあるように感じます。

川田氏:僕も少し後悔しています(笑)。「多すぎたかな? やりすぎたかな?」と思うこともありましたが、その分お客様が喜んでくれるのではないかなと思っています。

 今回の追加コンテンツの中で特にお客様の興味を引くことができるのではと思っているのが、新シナリオの「シャドウズ オブ ローズ」です。

――なるほど。その「シャドウズ オブ ローズ」についてお聞きしたいのですが、どうしてローズマリーを主人公とした物語にしたのでしょうか。

木下氏:「バイオハザード ヴィレッジ」の発売前から、構想としては追加シナリオの候補がいくつかありました。ただ、「バイオハザード ヴィレッジ」が発売してプレイしていただく中で「戦闘が楽しい」、「怖い」というポジティブな反応の中で、「感動した」という意見が出てきたんです。ホラーゲームとして初めていただく意見ではありましたが、その反響は大きいものでした。

 「バイオハザード ヴィレッジ」はイーサンが愛娘を死にものぐるいで守る、というコンセプトでした。ならば、「イーサンが死にものぐるいで守った娘はどうなったのだろう?」というところに焦点を当てて描いてみようとなり、新シナリオ「シャドウズ オブ ローズ」が完成しました。

川田氏:今回は「バイオハザード ヴィレッジ」がきれいにまとまったところに更にエンディングを作る、フィナーレを作るという意味も込めて、ローズマリーを主役にした物語を作りました。

――ということはローズマリーのこの物語を持って完全に「バイオハザード ヴィレッジ」が完結するということですね。

川田氏:ウィンターズ家に関してはここで一旦終わりとなります。

木下氏:ローズマリーの物語を出すなら、あまり長く時間が空きすぎてもよくないなと。イーサンが決死で守った思い出が新鮮なうちに、「シャドウズ オブ ローズ」の中で親子の愛を描きたいなとの思いがありました。

――なるほど。それは楽しみです。そして本作の舞台はリアルの世界ではなく“意識の世界”となっています。どうしてリアルではない“意識の世界”にしようと思ったのでしょうか。

木下氏:お話の大筋として、ローズマリーがイーサンから特別な力を受け継いでしまい、普通の女の子としての生活ができない孤独な状態で生活をしているという設定があります。ローズマリーは「普通の女の子に戻りたい」、「この力を捨てるにはどうしたらいいのだろう」という悩みから、ある人物と出会います。

 その人物から「あの忌まわしい村にお前の能力を捨てるヒントがあるかもしれない」と言われて非現実世界にダイブする、という描写が冒頭のシーンに少しあります。自分の力を捨てるために、父親を失った過去の村に自分が行くストーリーを導入で説明しています。

 村にはあの時の記憶が残っていて、それに触れて非現実世界の村に入っていくという展開にしています。

――プレイしていて全体的に「バイオハザード」であって「バイオハザード」でない感覚を受けました。

川田氏:すこしファンタジーのような印象を受けるかもしれません。実は、「シャドウズ オブ ローズ」は「バイオハザード ヴィレッジ」本編とは違うチームで制作しています。そういった関係もあって少し方向性が変わっている可能性はありますが、トータルでは「バイオハザード ヴィレッジ」の物語をうまく締めくくれたなと思っています。そこに関してはぜひ期待していただければと思います。

――菌根の記憶は、過去の村の状態がそのままに再現されているのでしょうか

木下氏:そのままではなくちょっと歪んだ状態で記憶として再生されます。その悪夢のような世界に入っていくというのが今回のストーリーになっています。

川田氏:ゲーム体験的にはステージ自体は見覚えのあるところですが、レベルデザインも1からすべて見直しています。ローズマリーの特殊な力もただ障害物を取り除くと言うだけではなく、その能力を生かして謎解きをするなど「バイオハザード」らしい体験を新しい側面から押し出せるようになっています。ゲームの体験面からみてもシナリオにふさわしい新しい体験、内容に仕上がっていると思います。

――怖さの点でも、いつもの「バイオハザード」とは違うものがありました。

木下氏:非現実の世界なので、精神的な怖さを今回描こうと思っています。敵のクリーチャーにキャラクターの顔を吸われるといった、高熱にうなされて見る悪夢のような世界をポイントに恐怖感を作っています。今回の試遊でプレイしたのはチャプター1ですが、その後も様々な精神世界のホラーを用意していますので楽しんでいただきたいと思っています。

――本作では戦う敵はゾンビではなくクリーチャーとなっていましたね。ここもポイントのように思いました。

木下氏:クリーチャーもそうですが、他にも城の中にはいろいろと目につくところがあったと思います。なぜそういうことが起きているのかという謎は、ストーリーを遊んでいただく中で明らかになっていきます。その謎が明かされていく感じや、それにともなってローズマリーの心がどう変わって成長していくのかというところも4時間ほどのストーリーの中で体験してもらいたいと思っています。

――本作にはローズマリーを文字でナビゲーションするマイケルという人物が出てきました。彼は物語ではどのような立ち位置でしょうか

川田氏:ローズマリーをサポートするような役割です。ただマイケルと言うのは、名前と言うよりは名無しの権兵衛というイメージです。ですので、名前にも特に意味があるわけではありません。ただ、一般人のローズマリーがあんな怖いところを脱出するためにはあのようなポジションのキャラクターが必要かなと思って作りました。あのキャラクターがいるおかげで、随分ゲームが進めやすくなったとは思います。

木下氏:そうですね。そしてローズマリー1人があの世界に入ったことで、様々な意思や思惑が動き出しているということだけ今お伝えできます。

――最後に発売を楽しみにしているプレーヤーにメッセージをお願いします。

木下氏:「バイオハザード ヴィレッジ ゴールドエディション」は少しお待たせしてしまいましたが、お求めやすいお値段で豪華なボリュームの3つのコンテンツが入っています。ぜひ遊んでいただきたいです。よろしくお願いします。

川田氏:「バイオハザード ヴィレッジ」を遊んでいただいた方にも、まだ遊んでいただけない方にもそれぞれ「バイオハザード ヴィレッジ ゴールドエディション」、DLCの「ウィンターズ エクスパンション」をご用意しています。ぜひ興味を持っていただいた方には遊んでいただきたいなと思っています、

 また、「バイオハザード ヴィレッジ」は先日発表させていただいたNintendo Switchで「バイオハザード ヴィレッジ クラウド」の発売、そしてMAC版も開発中です。今まで「バイオハザード ヴィレッジ」を触る機会がなかったお客様にも広く触っていただきたいと思っています。「バイオハザード ヴィレッジ」は2年目に入ります。なかなか1つのタイトルを継続して開発していくということも少ないかと思いますが、我々は「バイオハザード ヴィレッジ」にすごく自信がありますのでまだまだ楽しんでいただけたらと思います。

 それと、10月に開催される「バイオハザード」ショーケースでも「バイオハザード ヴィレッジ」に関する続報が出ます。そちらも楽しみにしていただければと思います。

――ありがとうございました。