インタビュー
「シドマイヤーズ シヴィライゼーション VI」開発者インタビュー
「ニューフロンティアパス」で目指したのは「似ているが完全に同じではないもの」
2021年3月24日 00:00
- 3月26日 配信予定
- 価格:
- 550円(税込、単品)
- 4,400円(税込、シーズンパス)
いよいよ3月26日に配信される、「シドマイヤーズ シヴィライゼーション VI(以下、Civ6)」のシーズンパス「ニューフロンティア・パス ~新たな世界への誘い(以下、ニューフロンティアパス)」最終弾「ポルトガルパック」。
「ニューフロンティアパス」は「Civ6」における「文明の興亡」、「嵐の訪れ」に続く3つ目の拡張パックで、「マヤ&大コロンビアパック」を皮切りに、2020年5月から2021年3月にかけて隔月で配信されてきた。2つの拡張パックで完成することが多かった「Civ」シリーズにおいて、第3弾拡張パックが出るというだけで驚きだが、新指導者や新ゲームモードといった追加コンテンツを「パック」という単位に分けた上に、シーズンパスという方法での配信となったのは予想外だった。
「ニューフロンティアパス」は内容面でも従来のプレイを刷新するような内容で、基本システムの拡張はもとより、例えばバトロワモードである「レッドデス」や、マルチプレイ用シナリオ「海賊」などの新しい視点での遊びが次々と開拓された。配信されるたびに「そこに目を付けるのか」と感心させられたものだ。
弊誌では「ニューフロンティアパス」を締めくくる「ポルトガルパック」リリースを前に、「シドマイヤーズ シヴィライゼーション VI ニューフロンティア・パス」アソシエイト・プロデューサーであり、トレーラー動画などでもおなじみのケビン・シュルツ(Kevin Schults)氏にメールでのインタビューを実施。「ニューフロンティアパス」はどのような発想で開発されたのかや、開発におけるコミュニティとの関係について聞いた。
「ニューフロンティアパス」遂に完結!ケビン・シュルツ氏メールインタビュー
――先日発表された「ニューフロンティアパス」を締めくくる「ポルトガルパック」はどのようなものですか。また、これによりゲームがどのように変化しますか?
ケビン・シュルツ氏:最後のDLCで登場する「ポルトガル」は、交易から利益を得る方法が独特です。交易による産出物がすべて50%増しになるなど、ポルトガルには強力なボーナスがいくつもありますが、沿岸にある都市や港を持つ国際交易都市としか取引できません。固有ユニットである「ナウ船」は、新しい施設である「フェイトリア」を他のプレーヤーの土地に築けます。「フェイトリア」は水辺にしか築けず、特有の建設条件もあるので、この施設を他のプレーヤーの領土にどんどん築くのは難しいでしょう。また、「フェイトリア」はポルトガルの交易をいっそう活性化させますが、その土地の所有者も施設を活用し、そこから利益を得ることができます。
また、「ゾンビ撃退」モードも加わります。マップ上で倒されたユニットは、新たなゾンビ・ユニットとして甦り、脳みそを求めて付近にいる人間を襲います。ゾンビが増える結果になる可能性が高いので、軽々しく戦争や蛮族との戦いに踏み切ることはできなくなるでしょう。ゾンビの群れを片付けるため、罠を仕掛けて身を守ることもできます。付近にいるゾンビを支配するプロジェクトもあって、工夫次第では様々な使い方が可能です。たとえば私たちがよく使うのは、ゾンビの大群を支配し、近くの敵文明の領土へ移動させた後、支配を解くという手です。つまり、厄介者を敵に押しつけるわけですね。他にも、他文明の都市にゾンビを大量発生させて大惨事を引き起こすスパイ・プロジェクトもあります。本当に個性的で挑戦しがいのあるモードなので、ぜひ試してみてください。
――そもそも、「ニューフロンティアパス」が”シーズンパス”という形での配信になったのは驚かされました。このような提供提供方法を選んだ経緯や狙い、実際に行なってみての手ごたえを教えてください。
ケビン・シュルツ氏:「ニューフロンティアパス」をこのような形で発売することにした理由はいくつもあります。拡張パックを発売すると、プレーヤーは熱狂をもってそれを迎え、プレイし、やがて離れていくというのが一般的なパターンです。シーズンパスは、ファン(コミュニティ)に「シヴィライゼーション」の話題を1年間絶え間なく提供する手段として素晴らしいものでしたし、プレーヤーのゲームへの関わりを促進するゲームチェンジャーとなってくれました。毎日のようにプレイしてくださっているプレーヤーの数は時間とともに増え続けていますが、これは発売から5年目を迎えようとしているゲームとしては驚くべきことです!
また、この方法を採用したことにより、これまでにはなかった形でコミュニティに開発プロセスへ参加してもらうことができました。私たちがコンテンツの開発を進めている一方で、ファンはコンテンツを体験し、それについて語り合えるようになったことにより、私たちは新しいDLCパックやコミュニティ・アップデートを発表しつつ、ファンからのコメントやフィードバックに向き合えるようになったのです。全体としては、この発売ペースによってファンとのフィードバックのループがより緊密なものとなったことにとても満足していますし、こうしたやり取りを今後も続けていきたいと考えています。
――「ニューフロンティアパス」での追加要素はシリーズでも今まで当たり前だった部分に変化を加えているように思えます。例えば蛮族の存在をプラスに利用できる「蛮族の部族」や高級資源の存在感をより際立たせる「企業」システムなどがそうです。こうした斬新なアイデアは、何にインスピレーションを得て開発されたのでしょうか? また、既にある「嵐の訪れ」までのゲームシステムに対し、これらの要素を追加する際特に気を付けたことはありますか?
ケビン・シュルツ氏:「嵐の訪れ」の発売により、「Civ6」のゲーム体験はとても豊かなものとなりました。それを成し遂げたことを私たちは誇らしく思っています。しかし、プレーヤーにゆだねられている決定事項や複雑なシステムはすでに沢山あります。システムや選択肢をさらに広げてプレーヤーの手に負えなくし、この素晴らしいゲーム体験を台無しにしてしまうことは、私たちの望むところではありませんでした。そこで思いついたのが、特定の時代や特定の産出物の操作など、ゲーム中の特定の要素に焦点をしぼった、自由に選べるミニサイズのゲームモードというアイディアです。中には現実離れしたものもありますが、どのモードもその背後にある核となるコンセプトは、アップデートしてほしいゲーム要素に関するファンからの意見がもとになっています。
――「ニューフロンティアパス」で提供されたコンテンツはどれもリプレイ性を高めることに加え、プレーヤーの側でその度合いを調整できるようになっているように思えます。例えば、新モードはオン/オフの切り替えが可能となっていたり、「都市国家ピッカー」や「文明選択プール」のようにプレーヤーの好みに合わせてバランス調整を行なえるシステムがそれに当たります。このような設定にした意図や、手ごたえをお教えください。
ケビン・シュルツ氏:「ニューフロンティアパス」のリードデザイナーであるアントン・ストレンジャー(Anton Strenger)なら、こうした新しいオプションやゲームモードはすべてアイスクリームのトッピングのようなもの、と言うでしょう。色鮮やかなチョコレートの粒やクマの形をしたグミを乗せるか、飾りなしでそのままアイスクリームを食べるか、それはプレーヤーの自由です。“似ているが完全に同じではないもの”が「ニューフロンティアパス」」の背後にある重要なコンセプトです。
私たちは「シヴィライゼーション」シリーズのゲーム体験の核の部分を変えることは望んでいませんが、その一方でプレーヤーが望む要素については自由に手を加えられるようにしたいと考えています。この考えはファンにも十分に受け入れられています。「Civ6」は多くの選択肢を持つリプレイ性の高いゲームになっており、自分だけのゲーム体験をより詳細に調整できることはプレーヤーからも高く評価されてきました。私たちにとっては、こうした新しい選択肢、たとえば「都市国家ピッカー」や「指導者選択プール」が、新しいプレーヤーと昔からのファンの両方に喜ばれることも重要でした。
まだ見ていない都市国家や自然遺産があるというプレーヤーも、これらのピッカーを使えば念願を叶えることができるでしょう。特定の都市国家と文明を組み合わせた戦略を試すのも、これまでより簡単です。ゲームを100%完了することにこだわるプレーヤーは、「指導者選択プール」を使うことで、まだ誰で勝っていないか忘れる心配がなくなります。
――「嵐の訪れ」で追加された「環境」の要素ですが、「ニューフロンティアパス」でも「黙示録モード」や「保護区」などの要素で強化されています。現実世界でも環境問題は関心の高いトピックとなっていますが、意図して社会問題化しているトピックをシステムに取り入れたのでしょうか?
ケビン・シュルツ氏:世界をモチーフにしたゲームを作っているのですから、世界の動向に関心を持ちつづけないわけにはいきませんが、それをプレーヤーにとって面白いものにすることも大切です。必ずしも社会問題を新コンテンツに取り入れようとしているわけではないにしても、「嵐の訪れ」での環境汚染のように、そうすることが大きな意味を持つ場合もあります。前作以前の「シドマイヤーズ シヴィライゼーション」にも気象の要素は取り入れられていたのですから尚更です。
――「ニューフロンティアパス」での指導者や英雄の選定基準を教えてください。
ケビン・シュルツ氏:新しい指導者を追加するプロセスはとても複雑で、それだけで何時間も語れるほどです。普通はまず膨大な候補者リストを作り、そこから様々な要素を考慮しながら取捨選択していきます。これまでのシリーズで人気のあった指導者にも目を向けますし、かつて一度も登場したことのない指導者や、新しいゲームシステムと結びつけることが可能な歴史的要素を持つ指導者が候補に挙がることもあります。常に心がけているのは、世界の様々な地域と時代を代表する、男女の偏りがない、多様性に富んだ構成にすることです。もちろん、歴史学者や有識者に監修してもらい、新しい指導者のゲーム中での姿が史実をきちんと反映したものになるようにすることも非常に重要です。
――アップデートで追加された「レッドデス」や「海賊」といった新しい遊び方には驚かされました。特に私はレッドデスがお気に入りで、友人と一緒によく遊んでいます(笑)。こうした全く新しいコンテンツを実装した狙いはどんなところにありますか?
ケビン・シュルツ氏:そう言っていただけるのは嬉しいですね! 「レッドデス」のシナリオと展開は、私たち自身とても気に入っています。優秀なマルチプレーヤープログラマーであるブラッドリー・オルソン(Bradley Olson)が初期バージョンを作ったのですが、それがある夜、ついに「レッドデス」として完成したときは、チームのみんなが驚きました。「シヴィライゼーション」のバトルロワイヤル・ゲームを作ることが彼の仕事だったわけではありません。彼は単に楽しみのためにやったのです。私たちはいくつかのグループに分かれて「レッドデス」をプレイしてみましたが、その熱中度たるや驚くべきものでした。「シヴィライゼーション」としてはかなり異色のモードですが、シナリオとプレイの展開がとにかく面白くて盛り上がるので、敬遠せずにプレイしてみてください。
シナリオ全般に関して言えば、私たちは「ニューフロンティアパス」をすべてのプレーヤーが喜んでくれるものにしたいと考えました。ファンが特に望んでいるものをリストにすれば、当然、新しい指導者と文明、ゲームシステムが一番上に来ます。マルチプレーヤーの拡張や新シナリオなどの順位はもう少し下ですが、そのような要望を持つプレーヤーも非常に大切な存在なので、「ニューフロンティアパス」でそうした期待に応えるコンテンツを作れてよかったです。
――「ニューフロンティアパス」では追加コンテンツに加え、アップデートによってプレーヤーのフィードバックが素早くゲームに取り入れられています。プレーヤーの声を重視しているのでしょうか?
ケビン・シュルツ氏:SNS等でファンが交流をはかるコミュニティからのフィードバックがどれほど大切か、どんなに強調してもし足りないほどです。「ニューフロンティアパス」をこのような構成にした大きな理由は、コミュニティからの声を開発プロセスへこれまで以上に取り入れるためです。これまでの拡張パックでは、ファンがプレイしてくれた後、そのフィードバックを反映させるのに長い時間が必要でした。そこで「ニューフロンティアパス」では、ファンにプレイしてもらいながらコンテンツの製作を進めることにしたのです。これによってファンからの意見により素早く対応できるようになりました。
フィードバックのループは以前より緊密になりましたが、私たちはこれをさらに改善したいと考えています。ファンはこのゲームのことをよく知っており、そのフィードバックは肯定的なものであれ批判的なものであれ、チームにとって等しく建設的で価値があります。一言で言えば、ファンとその意見に私たちは信頼を置いているのです。
――発表済みの拡張・DLCがすべて揃った今、ファンにメッセージをお願いいたします。
ケビン・シュルツ氏:ゲーム界で最高のファンです。これはプロモーション動画で何度も言ってきたことですが、本当の本当です。「嵐の訪れ」でシニア・フランチャイズ・プロデューサーのデニス・シャーク(Dennis Shirk)はざっくばらんにこう語りましたし、これがファンに知ってもらいたい自分たちの気持ちであることについてはチームの全員が同意見です。
――ありがとうございました。
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