インタビュー

「モンスターハンターライズ」辻本P&一瀬Dオンラインインタビュー

「百竜夜行」はやりこみコンテンツに? 辻本氏の最も好きなモンスターは「フルフル」

【モンスターハンターライズ】

3月26日 発売予定

価格:
7,990円(税別、パッケージ版)
7,264円(税別、ダウンロード版)

 カプコンが3月26日に発売予定のNintedo Switch用アクション「モンスターハンターライズ」。

 本作はスピーディーで新しい狩りアクションを可能とする「翔蟲」や「オトモガルク」などの新要素に加え、和のテイストを強く押し出した世界観とモンスターが特徴的な今までに無い「モンスターハンター」作品となっている。

 本作の体験版リリース後にはSNSでトレンド入りを果たし、一時はサーバーがパンクしてDLが難しくなるほど多くのプレーヤーが注目していた。また、体験版とあわせて実は「狩猟笛」も大きな話題となっていた。演奏システムの変化や「鉄蟲糸技」を始めとした新たな攻撃アクションの多くが派手かつ高性能であり、全体的に新感覚の強力武器に仕上がっている。実際に遊んだプレーヤーからは感動の声が多く溢れ、特に過去作品から狩猟笛で遊んできたプレーヤーはその進化に驚愕している様子が各所で見受けられたのである。

【今作一番の注目株である「狩猟笛」】
補助効果が音符を譜面に並べるだけで発動するようになり、演奏やコンボが非常に行いやすくなった
旋律効果を全て発動しながら大ダメージも狙う事ができる三音演奏は攻防一体の革新的な技だ
「鉄蟲糸技」も強力で特にダメージを軽減しながら仰け反らずに攻撃を行える「スライドビート」は汎用性も高く扱いやすい
他のアクションも性能が高いモノが揃っており、加えて当然既存通り味方の強化も行えるのでチームプレーにも向いている武器へと進化した

 今回は本作について、カプコンで本作のプロデューサーを務める辻本良三氏と一瀬泰範氏の両名に3社合同のオンラインインタビューをする機会に恵まれた。以前実施したオンラインインタビューから数カ月が経ち、いよいよもってその全容が明かされてきた本作。今回は特に踏み込んだことも聞くことができたので、早速その内容をご紹介する。

プロデューサーの辻本良三氏(右)とディレクターの一瀬泰範氏(左)

体験版は大好評!「狩猟笛」の使用率も向上

――体験版配信後の反響はいかがですか?

辻本氏:大変多くの人にプレイして頂けて、特に「翔蟲」を用いたアクション等のフィールド上での遊び部分に関しては非常に良い反響を貰ったと思っています。武器については他シリーズでは使用率の低かった「狩猟笛」の使用率が上がってきているということで、よい反応をいただけている感じです。

――体験版での反響を受けて、製品版での変更点などは発生しましたか?

辻本氏:不具合などが見受けられた部分は製品版で修正しています。細かい所だと意図していない挙動であったり、数値面での調整などを入れるところもありますが、現状では大きくアクションが変わる、などの変更は予定していません。

――本作からの新アクションとなる「翔蟲」、「オトモガルク」などのコンセプト及び導入の経緯などを教えて下さい。

一瀬氏:「翔蟲」や「オトモガルク」は”従来のアクションの中にもう一つ何かシステムを加えたい”という想いから導入したシステムになります。そして今作のシームレスなステージをより生かしたシステムにする上で「ガルクに乗って移動出来たら気持ちよさそう」だったり「翔蟲で壁や崖みたいな高い所に行けたら軽快だろうなぁ」といった発想を合わせて、モンスターの立ち回りやハンティングアクション以外の部分でも楽しみやウリを作りたい、ということで現在のような形になりました。

「翔蟲」「オトモガルク」はどちらもフィールドでの移動をスピーディーかつスタイリッシュにしてくれる本作の新要素となっている。壁や崖に飛び移ったりガルクに乗って広大なフィールドを駆け巡る爽快感は今までにない爽快感だ

――「操竜」についてはいかがでしょうか?

一瀬氏:今までのシリーズでもモンスターに乗る仕組みは幾つかあったと思うのですが、それに代わる新しいアクションを追加しようという話になりまして、モンスターの担当から「翔蟲」を使った「モンスターライド」のような遊びができないかという提案がありました。検討の結果、環境生物やモンスターを利用した形でハンティングアクションを行なうという遊びがシリーズのコンセプトにマッチするということで、「操竜」という形でモンスターに乗れる仕組みを組み込んだ形になります。

「操竜」はモンスターを操り他のモンスターを攻撃できる新システムだ。モンスターを操作して戦わせるというのは初めての試みとなる

「鉄蟲糸技」は「必殺技」というより「特殊技」

――「翔蠱」を用いたアクションや「ガルク」の登場でゲームスピードが飛躍的に上がったように思います。これは意図的なものでしょうか。

一瀬氏:そうですね、前述した通り旧来のシステムから新たな遊びを追加したいという中で「翔蠱」や「ガルク」が生まれたのですが、辻本からも携帯ゲーム機としての「モンスターハンター」を作るに当たり、携帯ゲーム機ならではの軽快さやテンポ感なども大事にしてほしいというオーダーがありました。それにマッチするよう、新たな遊び方として意図的にゲームテンポを軽快にしたというのはあります。

――「翔蠱」によって立体的なアクションが可能になりましたが、アクション面で意識した変化などはありますか?

一瀬氏:モンスターに関しても「翔蠱」を意識したという部分があります。例えば今までだとモンスターの薙ぎ払い攻撃などは距離を取って避ける事が普通でしたが、本作は「翔蠱」を使って相手に近づきつつ空中で停止して攻撃を避け、その後の隙を攻撃できると言ったアクションが可能になりました。「翔蠱」を使う事で遊びの幅が広がるように設計しています。

「翔蠱」での移動は縦横無尽に収まらず空にまで飛びだせるので、攻撃の回避に加えて今までに無い間合いからの攻撃を新たに可能としている

――「鉄蟲糸技」の追加で各武器の立ち回りが飛躍的に広がったように思われますが、これは各武器の弱点をカバーする事を起点に考えていったのでしょうか?

一瀬氏:そこに関しては各武器の足りなかった部分のカバー等もありますが、特徴の伸ばせる部分を伸ばしたり、ものによって変えながら遊びの幅を広げるような形を念頭に検討をしていった形になります。

――どことなく「鉄蟲糸技」は「モンスターハンターダブルクロス」の「狩技」を彷彿とさせますが、いかがでしょうか。

一瀬氏:「狩技」はどちらかと言うと必殺技みたいな感じで、要所要所で使ってもらう一撃必殺のような感じで用意しました。しかし今回の「鉄蟲糸技」は通常技の派生……大剣の溜め切りのような感じですかね。技の途中で変化をもたらしてくれる特殊技と言った感じで作成しています。あと先ほどお話したように、武器の個性や弱点のカバーなど用途を幅広く構成しているので、より特殊技に近い感覚だと思います。

現状確認できている「鉄蟲糸技」でも単純に大ダメージを狙える技、相手の攻撃をカウンターできる技、武器毎の特性やゲージを補強する技などその用途は多岐に渡っている。試遊の手触りとしても確かに「狩技」よりも高頻度で使える点や、自然に攻撃に混ぜやすい点から「特殊技」という表現はしっくりくる

――修練場の仕様が変化してかなり利用しやすくなりましたが、ここまで内容を充実化させた意図はありますか?

一瀬氏:過去作だと集会所に居る間だけ他プレーヤーが見えてそれ以外の場所では見えないような形だったのですが、今回はより世界への没入感を感じられるよう、里内であればプレーヤー同士どこでも行き来できるような設計にしました。修練場もその流れでクエストや友達を待つ間などでも遊べます。修練場からクエストを受けたりも可能なので、そういった利便性と”皆といる楽しさ”を意識してこのような形になりました。

――ちなみにここまで充実させたのは「狩王決定戦」を意識したものですか?

辻本氏:「狩王決定戦」については現状は未定ですが、タイムアタック的な楽しみ方をされる方もいらっしゃると思うので、その助けになればと思います。

今作では他のプレーヤーを待っている際にも里内や修練場などに入る事ができ、オンライン状態の他プレーヤーと共に遊べるようになっている。協力プレイの際に発生していた空き時間を解消できるのは素直にありがたいシステムだ

――これまでの作品以上に今作は「環境生物」にフィーチャーしていると感じたのですが、環境生物はどのぐらいの種類が存在しますか?

一瀬氏:具体的な数は言えないのですが、今回の体験版に出たものが全てではなく、それなりの数を用意しています。各ステージにまつわる生物であったり、どの地域でも見かける汎用的な生物がいるなど、モンスターと同じように多種多様で、それがより「モンスターハンター」自体のコンセプトとなる「狩猟体験」に合っていると思っています。事前に準備してきたアイテムだけでなく、その場にある自然の何かを使って攻略するというような、そう言った要素をゲームに落とし込めたらという想いもあったので、それが「環境生物」や「操竜」という形になった感じです。

「環境生物」はフィールドの様々な場所で発見する事ができ、狩猟をサポートする様々な効果を発揮する。豊富な「環境生物」や「操竜」は自然をふんだんに利用するある種一番ハンターらしいアクションとも言える

REエンジンにより開発段階では”グロ過ぎた”フルフルも。本作の音は”人の声”がテーマに

――「フルフル」について今回初代から17年ほど経ってついに別名(漢字名)が追加されましたが、その理由を教えてください?

一瀬氏:今回久しぶりに「フルフル」が登場するに当たって、今まで別名が無かったモンスターにもつけていこうという流れがありました。

辻本氏:もう17年も別名が無かったことや、実は「モンハン」にはモンスターの別名を使ったグッズなどがあったりもするのですが、「フルフル」だけ当然今まで無くてですね……。このタイミングで付けてあげたくなったというのもあります(笑)。

――「フルフル」は今回かなりビジュアルの進化を感じられて驚いたのですが、こだわりのポイントなどについて教えてください。

一瀬氏:今回はゲームエンジンとして「REエンジン」を採用していまして、表現方法がかなり進化しております。当初上がってきたフルフルのモデルは今よりもグロい……表現的にリアルになりすぎたのでだいぶ抑えたという経緯もあるほどです(笑)。フルフルだけでなく、他のモンスターもより豊かな表現にできたかなと思っていますので、是非じっくり観察して頂いて色々な変化を見てほしいと思います。

最新のグラフィックとなって帰ってきたフルフル。肉感などが昔よりもリアルに表現され、その恐ろしさに磨きが掛かっている。因みにこの度ついた漢字名は「奇怪竜」だ

――新モンスターとなる「ビシュテンゴ」について、着想のエピソードなどはありますか?

一瀬氏:今作のモンスターは今までの単一生物としての構成だけでなく、何かしら別の要素と複合したモンスターデザインをしつつ、和やアジア的な物を取り入れる形にしています。そこからさらにモンスターは「妖怪」というテーマを設けておりまして、「ビシュテンゴ」は猿と天狗を混ぜたモチーフのモンスター設計です。加えてゲーム的な要素で言うと日本のコマ遊びをモチーフに入れたりしていて、尻尾を軸に回転していくような要素をちょっと入れたりと、複合的に様々な要素を盛り込んでいます。

言われてみると確かに天狗のような出で立ちに見え、コマのような回転攻撃も行なってくる。多くの要素を上手く融合させた、非常に遊び心に溢れたモンスターデザインだ

――今作は歌が各場所で流れていたりと、「歌」がキーワードのように感じられますが、その意図やこだわりなどはありますか?

一瀬氏:サウンド担当と話をしている際に、曲の方でも「ライズ」としてキャッチ―な何かを付けたいなとなりまして、そこで歌……人の声というのを題材に扱ってみようと思ったのがきっかけです。なので声自体を楽器の1つに見立てて曲やBGMに取り入れるような形で作っています。全てが歌という訳ではないですが、モンスターの曲にコーラスのような感じで入っているものもあれば、里内ではキャラクターが歌っている設定のモノなどもあり様々です。里で歌っている曲なども百竜夜行の伝承を歌っていたりだとか、ヨモギの歌う曲だとおだんごの作り方の歌のようなちょっと軽いモノだったりと、それぞれにテーマがあったりもしますね。

――試遊した際は里で聞ける歌がモンハン語バージョンだったのですが、こちらは日本語バージョンなどもあるのでしょうか?

一瀬氏:歌自体は基本的にモンハン語で用意しています。というのも、あくまでもBGMなので拠点においては日本語で歌を聞かせるよりは雰囲気を重視して世界観に浸ってもらう事を意識しているからです。ただ実はちょっとまだ答えにくい部分もあるのですが……。里の日本語の歌詞も存在はするので、機会があれば聞いてもらいたいですね。

――強い和のテイストや妖怪をモチーフとしたモンスター、特徴の強いキャラクター達など、本作ではストーリー性なども強く感じました。

一瀬氏:そうですね。今作はNPCのキャラクター性などもより豊かにしてみようという試みがあって、キャラクターの名前やセリフ回しだったりをより目立たせるような作りを意図しております。

里内はもちろんタイトル画面やヨモギのお団子の歌など、本作では随所で歌声を耳にする事が多いのが特徴的だ。日本の和のテイストにマッチした美しい歌声が、各BGMに違和感なく融合している

――DLCやエンドコンテンツなど、「モンハン」と言えばやり込み要素も重要なポイントになりますが、お話できる範囲で現在予定しているものなどはありますでしょうか?

一瀬氏:従来の携帯ゲーム機の「モンハン」シリーズであったようなDLCクエストのようなものは継続して配信して、そこで入手できる特殊な物だったりを用意しようと考えています。また次のイベントなどで詳細を話せるかと思うのですが「百竜夜行」は通常のクエストと同じく基本的には普段から遊べるコンテンツでありながら、ちゃんとやり込んでもらえるような形にしておりますので、そういった新要素などもお楽しみにして頂ければなと思います。

PVでは数多のモンスターに様々な兵器を用いて戦うハンターと里のキャラクターの姿が確認できる。どのようなシステムで行なわれ「ヌシ」がどれ程の強さなのかは想像できないが、やり応えはかなりのモノと予想できる

――本作でお2人が最も注目して欲しいポイントを教えてください。

辻本氏:注目して欲しいのはやはり「翔蠱」の存在ですね。今作のタイトルに「ライズ」とつけたのも「翔蠱」で凄く高い所まで駆け上がったりする、そんな気持ち良いアクションが一番のポイントだからという部分もありますので。

一瀬氏:私も今回の「翔蠱」であったり、新フィールドになったことによる今作ならではのハンティングアクションなどに注目して頂ければと思います。

――最後に、今作で一番思い入れがあったり、お気に入りのモンスターを教えてください。

辻本氏:僕は「フルフル」ですね!久々の登場という事に加えて昔からずっとフルフルは好きだと公言しているので、今回の登場でやっぱり改めて人気があるんだなぁと僕自身も思いましたし、やっぱり好きなモンスターです。

辻本氏のお気に入りは念願の復帰を遂げた「フルフル」。確かに見た目のインパクトで敵うモンスターは早々いないだろうし、1週回って可愛いと感じる人も多い……のかもしれない

一瀬氏:僕はそうですね、今回の新規モンスターは当然どれも思い入れがあるんですけど、実はこの前の海外インタビューで「操竜で楽しいモンスターは居ますか?」という質問に対して「リオレイア」と答えたんですよね。今まではサマーソルトや尻尾で回転する攻撃とかにかなり苦汁を舐めさせられたりしていたのですが、あの技の数々を自分がモンスターに対して使えたりすることが「あぁこの技を自分で操作している……!」という感慨深さを感じられたんですよね。

 もちろん新規のモンスターも「マガイマガド」を筆頭に、より個性的なアクションやシステムを詰め込んだりしているので思い入れがあります。正直どれが一番かは絞り切れない感じはありますね(笑)。

一瀬氏のお気に入りは「リオレイア」。数多くのハンターを苦しめた毒のしっぽ攻撃を自分で繰り出せるというのは今までに無い爽快感だ
その他新モンスター全てに思い入れがあると語る一瀬氏、未だ謎に包まれている「マガイマガド」はどのようなモンスターなのか……非常に楽しみだ

 インタビューでは惜しくも現状では話せない部分も多いと言った感じだったが、PV内にて存在が明らかになっていた「百竜夜行」の名前がやり込み要素の一例として挙げられたのは気になる部分だと言える。PV内では複数のモンスターが同時に存在していた事、里のキャラクターが助太刀するような仕草を取っていたこと、そして「ヌシ」と呼ばれる強大な特殊個体の存在が明らかとなっているなど、かなり特殊な狩猟となる事が予想される。詳しい情報は次の発表の際に明かされるとの事だが、プレーヤーを楽しませる高難易度のやり込み要素としての面もありそうだ。

 最後に辻本氏からアナウンスがあり、何と今作「モンスターハンターライズ」のPC版が2022年初頭を目途に開発が進められているとのこと。まだ開発途中ということで詳細は聞けなかったが、改めて発表できるタイミングで情報を発信していくとのことだ。

 ついに発売を来月に控えた本作。今から楽しみである。