インタビュー
ついに募集開始! 「第3回全国高校eスポーツ選手権」キーマンインタビュー
サードウェーブ榎本氏が語る第3回大会への想いと、オンライン開催の秘策とは!?
2020年9月1日 13:00
- 【第3回全国高校eスポーツ選手権】
- エントリー:9月1日~10月16日
- 予選:11月14日より
- 決勝:2021年3月13日、14日
本日9月1日より全国の高校生を対象としたeスポーツ選手権大会「第3回全国高校eスポーツ選手権」のエントリーが開始された。
今年は新型コロナウイルスの影響で、開催告知が遅れに遅れ、一時は開催そのものも危ぶまれたが、無事オールオンラインでの開催が決定した。
競技種目は例年同様、「ロケットリーグ」と「League of Legends」の2タイトルで、エントリー期間は9月1日から10月16日まで。予選は11月から12月に掛けて実施し、決勝は3月13日、14日に行なわれる。奇しくも第1回とほぼ同じ日程となっているが、最大の違いはすべてオンライン大会となる、というところだ。
今年は、ほとんどのeスポーツ大会がオンライン開催となっているが、どの大会も、どのように公平性を担保し、どのように大会を盛り上げ、視聴者に興奮や感動を与えるかに苦慮している。ネットワークは物理的な制約や距離を縮めてくれる魔法のツールだが、万能ではない。競技者にとっても観戦者にとってもお互いの隣に誰もいない環境で、主催社側はどのようにして大会のエキサイトメントを高めていくかという新しい課題に取り組んでいる。
それは全国高校eスポーツ選手権も同じだ。残念ながらオンライン大会となった第3回では、どのような想い、工夫で望むのか。今回は、共催のサードウェーブ副社長であり、同社でeスポーツ事業全般を担当している榎本一郎氏に話を伺った。
サードウェーブ副社長榎本氏がこの2年間でeスポーツについて学んだこと
――榎本さんとのインタビューは、2年前のルフス(LFS池袋イースポーツアリーナ)オープンの前と、今年に入ってeスポーツ部発足支援プログラムを強化した際と、3回目ですね。2年前、当時、榎本さんは就任直後で「自分はeスポーツは勉強中です」というお話をされていたのが強く印象に残っています。まずは、この2年間に、榎本さんが学ばれたことについてからお伺いさせてください。
榎本氏: もう、本当にたくさんあります。特にeスポーツの“良さ”を多く知ることが出来ました。本当の意味でのeスポーツの良さは、もしかしたら私自身もまだ全然分かっていないかもしれない。でも、この世界に実際に身を置いたからこそ体感できたことはあると思います。例えば、eスポーツには『垣根』がない。これは最初から思ってきたことであり、ことあるごとに話してきましたが、この2年間で改めて学んだことの一つです。
過去2回の全国高校eスポーツ選手権で、知的障がいをもつ選手チーム対そうでないチーム、女子だけのチーム対男子だけのチームなど、リアルスポーツの大会では絶対にあり得ないシチュエーションがいくつもありました。eスポーツが垣根のないスポーツであることを目の当たりにし、改めて学びましたね。
しかし今でもまだ、「eスポーツはスポーツなのか?」といった議論があります。これはeスポーツという言葉が世間に浸透し始めた頃からされてきた議論です。「スポーツ」とは、本来“趣味娯楽・競技”という意味ですが、まだまだ“運動”という認識の方も多くいらっしゃいます。しかしながら、eスポーツがスポーツ(競技)であり、垣根のないスポーツだということは徐々にご理解いただき始めたとも思っています。選手権を今後継続して開催することで、もっと多くの方のご理解を得られると思っています。繰り返しになりますが、垣根のないスポーツという点では、eスポーツを超えるものはなかなかないのではないでしょうか。
新型コロナウイルスの影響で、リアルスポーツにはいろいろな制約がある中で、ネットワークを使ったITツールに対する見方が、おそらく大幅に前進した気がします。コロナ禍において、人間の知恵、工夫、ITの活用といったものが大きく変わりました。
例えば、企業間のアライアンスもそうですよね。NTTさんが、eスポーツに特化した会社を作るといったように、eスポーツを自らのフィールドにもってこようとする動きが活発化しています。弊社にも、アミューズメント系、ホテル業界といった、以前にはなかった業種のメディアの方が取材にいらっしゃいます。
観光業界でいえば、GOTOキャンペーンが始まったとは言え、海外との行き来が制限されている今、あらゆるビジネスモデルの変革もしなくてはならない。eスポーツを、「コンテンツとして良いんじゃないか」と関係者が口にしているそうです。このように、以前は興味を示さなかった他業種の方々の中にも、徐々にeスポーツを正しく見てくれる方が増え、その良さを具体的に取り入れていこうと考えていただけるようになったという手応えはあります。
eスポーツが“ITの申し子”のようにもてはやされる中で、いろいろなコラボの申し込みをいただきます。今までのアライアンスは、リアルで会って、我々の理念であるとか、ストラテジーなどをわかってもらった上で、タッグを組んでやっていこうとなりましたよね。実際に会って話す、それが当たり前のスタンダードコミュニケーションだったのが、今はオンラインでやるようになりつつあります。
例えて言うと、以前は名古屋にある会社とのアライアンスで6社集まろうとしたら、普通だったら2週間に1回、スケジュールを合わせられるかどうかでしたが、オンラインなら1週間で3回ミーティングができるんです。「明日あいてる? 30分だけ、もう少しディスカッションの延長をやらない?」といったことができるんです。コミュニケーションの自由度の高さがすごく進歩しているのではないかと思います。
――それは私も感じますね。他社さんとのお仕事がしやすくなった部分もあります。
榎本氏: そのコミュニケーションの自由さを、第3回で活用したいなと思っています。全国高校eスポーツ選手権は、ご存じの通り、野球でいえば甲子園を目指している大会です。eスポーツをプレイする全ての高校生の憧れの場です。
第1回を幕張で、第2回を恵比寿の会場で行ないました。第3回は残念ながら新型コロナウイルスの影響で、オールオンラインでやらざるを得ません。これは仕方のないことですが、今まで散々「高校生の活躍の場だ」、「これが晴れ舞台だ」、「お披露目の場だ」と言ってきたのに、オンラインでも檜舞台といえるのかな……と私は思うわけです。あの大きな会場ならではの緊張感、高揚感、会場の熱気、あれらをぜひ、第3回の決勝にでる高校生にも味わっていただきたいんです。
ですので、我々はオンラインでの開催でも、過去2回に負けない大会にしようと知恵をしぼっています。オンラインをどうやってオフラインに近づけて見せるのか、応援者をどうやって映し込むのかと考えたときに、今、プロ野球の試合等でも行われている「リモート応援」といった、1画面にたくさんの人たちを映して応援している様子を見せるのがあるじゃないですか。ああいったことをできたらいいなと考えています。
――なるほど。「リモート応援」はおもしろいアイデアですね。
榎本氏: もう1つ大事なのは「ルールを守る」という点です。この“ルールを守る”という点には、文字通りゲームタイトルのルール順守の他、eスポーツとしてのマナーも含まれます。これまで全国高校eスポーツ選手権では、予選大会から、全試合に審判を入れるくらい厳格にやってきました。その厳格さを第3回でも維持しなくてはいけない。
実はオフラインで決勝戦をする方法がないか、我々は今も模索しています。東京で一同に会して……という形は無理かもしれませんが、決勝に出る学校の近くのある会場まで選手に来てもらい、会場同士を中継で結ぶとか。会場は小さいですが、少しでも雰囲気を味わっていただければと。
そしてもちろん、先ほどいったリモート応援で、選手達を応援している様子も伝えたい。過去2回、会場に駆けつけてくれた学校関係者、友達、家族といった皆さんの応援は、選手たちの大きな力になりましたからね。他社さんの技術協力があれば、必ず何かできる……、オンラインであっても、リアルスポーツに似たような、オンラインゲームの見せ方がきっとできると考えています。
――素晴らしい話ですね。私、先日加藤さん(サードウェーブGGC2020プロデューサー 加藤祥一氏)にインタビューをさせていただいたのですが、その時も、GGCがオンライン開催になったことは残念なんだけれども、MCや実況解説、アナリストなどの出演者を限りなくグローバル水準に近づけて、さらに演出も工夫したりして、オンラインならではの見せ方で頑張っていきたいとおっしゃってくれて、eスポーツをウォッチしている人間のひとりとしてとても勇気づけられたんですよね。
eスポーツは、今ネガティブな話がたくさんあります。新型コロナウイルスの影響で、グローバル規模で大会の絶対数が減って、スポンサーも減って、ゲームによってはレイテンシの問題などから国際大会ひとつ開けないものもあるという状況です。選手達にとってみれば活躍の場自体が減ってきていて、eスポーツ関係者やコミュニティ、あるいは我々メディア側でいえばeスポーツ系のライターの中にも、懸念している者がいるんですよね。「“また”、eスポーツがしぼんじゃうんじゃないか」と。
榎本氏: 確かに、そうですね。
――ものの見方で、マイナスのことを考え出すとキリがないのですが、今回のインタビューも「第3回はコロナで縮小します、残念ですが仕方ありません」というような話になったら残念だなと思っていたんです。しかし、榎本さんは、現況の中で、いかに成長を持続させるかという視点で大会運営を考えられていたのですごく安心しました。
榎本氏: どちらかというと、この機会に新しい仲間になっていただける方を増やすことばかり考えていますね(笑)。第3回の決勝はオンラインでやるしかないかもしれませんが、嘆いている場合じゃない。「次回、生で観に行きたいな」と感じてもらえる大会にすればいいのだと。
――なるほど、素晴らしい考え方ですね。
榎本氏: だから、応援者もたくさん映し込みたいし、観たくなるようなシーンも増やしたい。良い映像が多ければ多いほど、コロナ禍後、選手を応援するために、実際に会場に観に来てくれるんじゃないかと思っています。生で、実際にあの大会を見てみたいというような演出が今回できたなら、それは成功だなと思います。それにチャレンジしたいと思っています。
――いや本当に驚きました。榎本さん、エネルギーの固まりですね(笑)。
榎本氏: あら、そういう風に映っちゃいますか(笑)。でも、まだまだ先ほど言ったように、2年前と変わらない所があります。もっと頑張らねば(笑)。反対に、嬉しい変化もあります。eスポーツを応援してくれる仲間の人たちの種類が少し変わってきたり。例えばその中に、教育系の人達もおられます。
とある専門学校の方たちからは、現在の高校生たちが卒業後、すぐにeスポーツ業界で活躍するには、どのようなカリキュラムが必要か……という相談も受けます。こういった新しい仲間は大歓迎です。
eスポーツ部のある学校も増えてきました。また、eスポーツ観戦が趣味という高校生も増えてきていると思います。オンラインで見ているだけではわかりませんが、実際にオフラインの大会に出たり、観客として会場に来た時に、大会を支えるスタッフたちがたくさんいることに気づくはずです。スタッフ、MC、実況、色々な人たちを見て、「自分も支える側にまわりたい」と思う生徒さんもいれば、後輩を教えたいと思う生徒さんも出てくると思います。それが訓練、カリキュラムとして整ってくれば、それを勉強して、生活や職業に活かせるようになります。こういったことを教える専門学校が今も多少はありますが、今後はもっと多くなるのではないでしょうか。そして優秀な子はE5(E5 esports Works サードウェーブのグループ会社)に入ることもある(笑)、という世界が来るかもしれない。
――E5がeスポーツ産業の受け皿のひとつになると?
榎本氏: なれたらいいなと。サードウェーブだから、E5とコラボできることって色々あるんですよね。GALLERIAがスポンサードするから、イベントは全部E5に任せてくださいとか。グループ全体で、「eスポーツシーンでお手伝いができますよ」というのをもっともっと作っていこうかなと思っています。
eスポーツビジネスの中で、GALLERIAのブランディングもやるし、E5で質の良いサービスも提供していきたいし、そのためにはもっともっと人が必要なので、「E5で働きたい」というのが、もし育まれていけば、私にとっては、これほど嬉しいことはないです。
第3回全国高校eスポーツ選手権について
――それではいよいよ本題である、全国高校eスポーツ選手権についてお伺いしたいのですが、今回、開催を発表できたことが、ひとつのサプライズだと思うんです。やっぱり春の選抜だったり、夏の甲子園など高校生にとってのメジャー大会が次々に中止になる中で、“eスポーツの甲子園”をどうするんだろうと思っていました。やはり、高校生を危険にさらすわけにはいかないので、中止というのも選択肢の中にあったと思います。そうした中で発表されて、今年ちゃんとやりますと言われ、バトンを繋ぐ決断をしたという、このあたりの判断に到った経緯や、想いを聞かせていただけますか。
榎本氏: 実は、今回、オンライン開催を発表するずっと前に、オフライン会場の候補として、名乗りをあげていただいた企業さんがいくつかありました。その中に、関西の大手企業がありました。その企業が熱い想いを持ってくださっていて、私どもの記事もほぼ全部読んでくださっていました。その企業はeスポーツにかなり注目されていて、関連の商業施設などすべての広告媒体を「全国高校eスポーツ選手権にしたい」とまで言ってくれたのですが、オンラインでの実施が決まり、すべて流れてしまいました。
――それは無念ですね。それは、いつ頃の話なんですか。
榎本氏: プロジェクト的にディスカッションが始まったのが、去年の12月ですね。第2回のオフライン決勝をやる直前くらいですね。あの前後に、向こうからコンタクトがあって「第3回目はいつやりますか」「まだ何も決まっていません」と(笑)。
――あの時は今こんな状況になるなんて想像もできませんでしたね。
榎本氏: その後、春の選抜大会がなくなり、甲子園が中止になり、緊急事態宣言が出るなど、いろいろなことが起こりましたので、どうやったらできるのか、いつだったらできるんだろうかと、ギリギリの調整が続きました。
会場の名乗りをあげてくださっていた関西の大手企業さんがギリギリまで会場を抑えてくれていました。最終的に今回はお断りしたのですが、「いつまででも待ちます」ぐらいなことを言ってくれて我々も救われました。
――そこまできたら、第4回大会の会場は確定じゃないですか。
榎本氏: 契約ごとですから第4回確定まではまだわかりませんが、元々全国を巡回するという案もありましたから、様々な可能性があると思います。
――私も地方出身ですが、高校は全国にありますからね。
榎本氏: そうなんです。文化活動なので、国体のように、全国を周っていくというのでもいい。例えば、大阪で開催となれば、高校生がそこに集まって、たこ焼きや、すじ煮込みなど、大阪のソウルフードや地産品を並べて、親ぼくを深める前夜祭があってもいい。翌日が本大会で、また一泊して翌日大阪城を全員で周ったりしても良いと思うんです。
私は、学生時代に、修学旅行ぐらいでしか地方に行ったことがありませんでした。社会人になったらなったで、私はほとんどの都道府県に行っていますが、地元の特産品は知らない。どこに行ってもコンビニで買えるものを食べていて、何が特産品かも知らずに、バーッとビジネスだけを済ませて帰ってくるわけです。なので、高校時代にそういう経験をしてほしいなと思うんです。
オンラインでの開催が決まった時、その関西の企業の方は、「高校生eスポーツの灯(ひ)を絶対に消さないでくれ」と。「1回でも途切れると、高校生たちはとても不安になる。この全国高校eスポーツ選手権を続けることは、榎本さんが考えている以上に、価値があるし、高校生の希望になるから、この灯は絶対に消さないで」と言われた時に、この人たちとは次何かあったらぜひ一緒にやりたいと思いましたね。
――いやあ、早くも第4回大会の情報まで聞けて良かったです(笑)。
榎本氏: 慌てないでよ(笑)。それは相手もあることだから……。でも、嬉しかったですね、eスポーツやっていて良かったなと思いました。
――それからもうひとつ、今回、サードウェーブは“共催”という形になりました。榎本さんは、第1回を始める時に、文化事業として育てていくためには、私企業は最終的には一歩引く必要があると仰っていました。その具体的な取り組みのひとつがJHSEF(ジェセフ、一般社団法人全国高等学校eスポーツ連盟)の設立であり、今回の共催へのシフトだとみています。今回の共催となった経緯と想いについて聞かせていただけますか?
榎本氏: 共催になることは自ら決めたことです。今回、文科省の後援が正式に取り付けられましたが、「サードウェーブがいるからダメだ」とか何か文科省さんに言われたわけではないのですよ(笑)。公的な政府機関に我々の活動をご理解いただき、後援認定されたと伺っています。
今後、全国高校eスポーツ選手権やJHSEFが、より公器にとなっていくにあたり、JHSEFを毎日新聞社と共同で立ちあげた私たちサードウェーブが、その成長の邪魔をしてはいけない。それは尾崎ともずっと話をしています。新しい高校の文化を創るために、どんどんeスポーツの正しさを啓蒙していくための団体ですから。そのような経緯もあり、サードウェーブは共催という立ち位置です。大会の運営に関しては、引き続き参加していきます。
――いきなり外れると、パタっと大会が倒れてしまいかねませんからね。
榎本氏: 倒れるとまでは言いませんが、大会の重要な所を担っているのは事実なので、その部分はしっかりやらせていただきます。スッキリしましたよね。主催はJHSEFと毎日新聞社、共催でサードウェーブ、そして文科省後援。
――改めて、今回の第3回全国高校eスポーツ選手権のビジョンをお聞かせいただけますか。
榎本氏: 開催の目的である、『eスポーツを日本の新しい文化として育み発展させていく』は、最初から変わっていません。話が繰り返しになるかもしれませんが、第3回に限って言えば、今回コロナ禍で、オンラインとしての良さだけではなく、オンラインだからeスポーツ大会が開催できたよねということだけではなく「やっぱりeスポーツっておもしろいよね、良いよね」というのを、より鮮明に打ち出せるような大会にしたいなと思っています。
――その辺の構想が具体的になるのはいつぐらいですか?
榎本氏: どう観せられるかというのを今後具体的に詰めていくつもりですが、それを事前に発表するかはわかりません。実際に観てくださいという形になるかもしれません。でもこれだけは絶対にお約束できます。選手たちに最大限楽しんでもらえる大会にします。
――9月1日のエントリー開始時点で、綺麗に決勝大会の構想まで明らかになるわけではなさそうですね。
榎本氏: そうですね。そこまでに全部がまとまるのかどうかが、ちょっとわからないですね。
――選手達はオンラインだけど色々やってくれそうだから頑張ろうかというところだと思いますが、一方で、保護者や学校の先生たちは、「参加させて大丈夫だろうか」という疑問を持っている方もいらっしゃると思います。そうした心配する声に対してアピールしたいことは何かありますか?
榎本氏: 先ほども言いましたが、大会を行うには、ルールを守るということが重要です。コロナ禍で、それが難しいとなったら潔く大会は止めますよ。我々としてはそれぐらいのつもりで取り組んでいます。環境面に関してはNTTさんとも相談しながら最後まで諦めないでやるつもりです。
――オンライン決勝の前に、例年同様、オンライン予選があるわけですが、予選に関しては、皆さん自宅から参加するようなイメージになるんでしょうか?
榎本氏: 過去2回と同様、それぞれの学校の部室から参加してもらいます。部活動、部室がないところは自宅からですね。そこは全部のレギュレーションを整えられないので。それは選択自由です。
――なるほど、では特殊な試みを考えているのはオンライン決勝のみなんですね。
榎本氏: そうですね。そこは考えておかないといけない。いろいろな問題解決を担保しなくてはいけないと思います。
第3回大会の募集計画について
――全国高校eスポーツ選手権の主役はあくまで高校生ですが、9月1日からスタートする参加校の募集について、何か施策は考えておられますか?
榎本氏: プレスリリースや新聞で大会の告知をしても、なかなか一般の方には我々の活動が届いていないんです。それは高校生にも、学校の先生にもです。そこに届けるために、全く今までとは違うやり方をしています。
それは、全国の各地方に我々と同様にeスポーツを文化にしたい考えておられるリーダーの方々と協力して、今地元の学校にチラシを配っていただいています。コロナ禍で、地方に直接働きかけることは私たちには出来ませんが、地方にいる皆さんにご協力いただいて学校にアプローチしています。
(チラシを見せてくれる)
――これは高校eスポーツ部支援プログラムのチラシですね。
榎本氏: 先述の地方の方々が学校に対して、「視聴覚室があるから参加できますよ」、「サードウェーブはこんなこともしているんですよ」と説明して歩いてくれています。このチラシを使って、いろいろ活動の輪が広がっています。
――まさに草の根活動ですね。しかし、コロナ禍で、参加校をどう確保するのかと思っていましたが、そういった活動が実を結んでいるなら、第1回、第2回比較して参加校が増える可能性もあるんですね。
榎本氏: 参加校はもちろん増やしますよ。コロナ禍だから、オンラインだからって、参加校がシュリンクするなんていうことはまったく考えていません。
――お話を伺っていると、新型コロナで厳しい状況ながらも、企業、学校、インフルエンサーと味方を着実に増やしながら、一歩一歩、着実に前進しているという印象を、私の中では持つことができましたね。
榎本氏: 実際、仲間は増えているし、相乗効果が出てきていますよね。サードウェーブが、“eスポーツを日本の文化”にと言ってきた中で、高校はなくてはならない重要な要素です。
――スポーツというのはやはり高校生文化の中核的な存在ですよね。
榎本氏: そうです。そこが入り口にもなるし、その子たちがやがて地域の担い手になる、すなわち地域活性化に繋がるんです。だから、OBたちが母校を、商店街や企業が、地元の学校を応援したいという話に結びつくのです。卒業生たちが、地元の企業に入っていますからね。eスポーツをやっていないけれども、後輩の可能性が拡がるんだったら応援しようか」ということで、学校にお金を寄付しているOBもいます。
――それはeスポーツ振興にというお金ですか?
榎本氏: そうです。eスポーツ部の維持や、立ちあげ時の費用ですね。そういう動きが出るのに10年ぐらい掛かるのかなと私は思っていました。これは野球部のOBがバットやグローブ、練習用のボールをプレゼントするのに似ています。ただ、そういうことができるようになるのは、社会人になってお金が稼げるようになって、少し余裕が出てきてからなんです。高校生eスポーツは、立ち上がってまだ数年ですから、もう少し時間が掛かるかなと。でも、今、もう既にそうなっている学校や、地区があるんです。これはすごいことです。
――eスポーツが高校生スポーツとして芽生えてきたという手応えが掴めるエピソードですね。
榎本氏: まだ少しですけどね。でも、とても嬉しいことです。あとは、数がついてきたら完璧です。みんな、ポジティブに考えていただきたいですね。コロナ禍で出来るチャレンジって何か、といった時に、eスポーツのチョイスがもし学校にあれば嬉しいですね。
――私が少し心配していたのは、昨年の計画だと、JHSEFさんが、学校会員さんを募集して、その会員をベースとして参加校を増やして行くと、つまり募集の主体がサードウェーブから、JHSEFに完全に切り替わるというお話しでした。しかし、今年に入ってコロナなどいろいろな影響でそれができてない。JHSEFさんはどうされるのかなと思っていましたが、第3回も募集の主体はサードウェーブのままということですね?
榎本氏: 募集の主体に関してはJHSEFです。我々の役割は共催者として大会を運営していく上での環境を整備・支援することですので、その一環として活動をしています。当然、サードウェーブだけではなくて、毎日新聞社にもJHSEFにも協力をしていただきながらです。地域の協力者もどんどん増えているので、少なくとも、誰が見てもeスポーツに関わる人は、全国高校eスポーツ選手権は文化事業だと感じてくれているはずです。そういう共通認識で動ける人たちが、一生懸命応援してくれる。リアルに応援してくれていますから。それはありがたいことだし、続けていきたいなと思っていますね。
――新GALLERIAが7月10日に発売開始されて、今後はeスポーツもこのマシンで行くと伺っています。第3回大会での使い方について決まっていることがあれば教えていただけますか?
榎本氏: せっかくLEDがマシンに導入されたので、LEDで青チーム、赤チームと、好きなカラーで色分けしたら楽しいし、綺麗だなと思っています。ただ、今回はオンラインなので、会場でこのPCをズラっと並べてお見せすることが出来ない。悩ましいところです。
――先ほどお話しに出たeスポーツ部支援プログラムも、新GALLERIAに切り変わったと伺いました。デザインが変わったことによって、学校や生徒からの反応は変わりましたか?
榎本氏: そこはまさにこれからですね。新規に申し込みいただいた学校に順次届く状況です。届いたらだんだん現場の声が聞こえてくると思います。
――あと応募の締め切りが10月末に延長されましたね?
榎本氏: いったん、8月31日で支援プログラムの締切を設定していましたが、好評につき延長しました。当初、8月末で締切を設定していたのは、実際に活用していただいている学校からの意見をお聞きして、内容の過不足を検討していくためだったんです。でも、今回のプログラムの内容が大変好評で、そのまま10月末まで延長しました。実際かなり好評なんです。6月からNTTの回線付きのプログラムをはじめて、1週間で15校の応募があったりしますから。
このチラシを作ったときからさらに増えていて今の時点で171校(インタビュー当日時点)です。ジワジワ増えてきています。
――そうか、支援プログラム導入校の全てが全国高校eスポーツ選手権の参加校になるわけですね。
榎本氏: はい、参加校になります。支援プログラムの唯一の条件はそれです。無料で利用できるけど、大会には出てくださいねと。
――第3回大会が楽しみですね。最後に大会の主役である高校生アスリート、それから大会を楽しみにしているeスポーツファンに向けて、是非メッセージをお願いいたします。
榎本氏: 新型コロナウイルスの影響下ですが、高校生の可能性やチャンスは、絶対に減らしたくないというのは、サードウェーブの想いとして強くあります。これは社長の尾崎をはじめ、eスポーツに関わるサードウェーブ全社員の高校生に向けたお約束です。むしろ、我々はそのチャンスを拡大させていくお手伝いをしたいと思っています。第3回も毎日新聞社、JHSEFと協力しながら、開催を決定いたしました。
この環境下だから、第3回大会では変えていかなくてはいけないこと、新たにチャレンジしなければいけないことがたくさんあります。特に決勝大会では、多くのアイデアが必要だと思ってますし、出場する高校生にも、過去2回の大会とは違うチャレンジをお願いすることもあると思います。
さらに、高校生を支える教育現場の方たち、並びに保護者の皆さんにもご理解いただけるよう、「ここで活躍できる高校生たちは幸せだな」と感じていただけるように、頑張っている姿を正しくお届けできるように製作側も頑張ります。
高校生たちが活躍できる場として第3回大会をシュリンクさせることなく、コロナ禍で萎縮することもなく実施し、第4回、第5回と発展的に続けていきたい。この第3回があったから、4回、5回に繋がったんだなと言えるような、第3回を作りたいと思っていますので、是非、期待していてください。
――続報を楽しみにしています。ありがとうございました。