インタビュー

「マジック:マナストライク」開発者メールインタビュー

「『MTG』のカードが目の前で戦う」という想像を実体化

1月29日 配信開始

価格:無料(アイテム課金制)

 1月29日に配信が開始されたAndroid/iOS用リアルタイム戦略対戦「マジック:マナストライク」。本作はウィザーズ・オブ・ザ・コースト(以下、WotC))のTCG「マジック:ザ・ギャザリング(以下、MTG)」の世界観やキャラクターをベースに、カードゲームのようなデッキ構築や、タワーディフェンスのような戦略性、そしてリアルタイムでの手に汗握る対戦が楽しめるタイトルだ。

 今回は本作の開発統括ディレクターを務めるネットマーブルモンスターのジャン・ヒョニル氏にメールインタビューを行なう機会を得た。本作の開発経緯から今後の展望まで、ファンにとって気になるポイントを聞くことができたので、その内容をご紹介しよう。

本作の開発統括ディレクターを務めるネットマーブルモンスターのジャン・ヒョニル氏
【Magic: ManaStrike Launch Trailer(Japan)】

――「マナストライク」は、「MTG」のIPを利用したRTSですが、そもそもなぜ「マナストライク」を開発することになったのでしょうか? その経緯を教えてください。

ジャン氏:歴史のある「MTG」のプレインズウォーカーとクリーチャーが、カードの世界を飛び出し3Dで目の前に召喚されて戦ったならばどうだろう? 原作のファンなら一度は考たことのあるこの想像を実体化してみたかったのです。また、WotCも「MTG」の今後の展開について様々な方向性を検討していました。

 TCGという既存のゲーム性を維持したままこれらの想像を表現することはとても困難だと思いましたが、ネットマーブルと開発会社であるネットマーブルモンスターの経験に基づき、上手く作れるジャンルはリアルタイム戦略対戦だと考えました。原作の膨大な種類のカードをもとに、TCGではなく、リアルタイム対戦で十分な楽しみをもたらすことのできる新しいジャンルのゲームをつくる自信がありました。

――「マナストライク」開発の際、WotCはどのような役割を果たしていたのでしょうか?

ジャン氏:「マナストライク」の開発にはもちろんWotCが深く関わっています。このゲームを開発するにあたり、WotCとのコミュニケーションを積極的に行なってきました。

 WotCには、毎週のビデオ会議で念入りにゲームに関する全ての問題を共有し、説明をしました。開発の細かい方向性までは提示しませんが、IPホルダーとしてアートデザインの監修や、「マナストライク」の新しいコンテンツテーマに合ったプレインズウォーカーを提示してもらったり、開発チームが設定した能力や内容が「MTG」の世界観に反しないかを何度も確認してもらいました。

 また、新しいビルドが完成するたびに共有を繰り返しつつ、社内で楽しくプレイをしている姿を写真や映像を通じて提供して、今まではカードだけの世界にいたプレインズウォーカーがカードの世界から飛び出し、3Dで表現されていく過程をお互いに非常に楽しみ合いました。

――プレインズウォーカーやクリーチャーの美しい3Dグラフィックスが目をひきますが、3Dグラフィックスへのこだわり、苦労した点などを聞かせてください。

ジャン氏:アート的な部分では、原作が2Dカードゲームなので3Dで表現するためには難しい点が多くありました。特にファンの中で有名なカードの場合、デザインが複雑すぎて3Dに適していない、または画像だけでは攻撃の形や動きを想像することができない場合が非常に多く、IPホルダーのWotCと多くの意見を交わしながら、作業を進めてきました。企画的には、「MTG」の5つの色の特徴をプレインズウォーカーと限定されたカードだけで表現する部分にかなり多くの時間をかけました。例えば赤の速攻火力や、黒の特徴であるアンデッドと呪いなどの能力を視覚的にどのように表現するべきか、どうすれば原作の世界観を維持し表現できるのか、とても苦労しました。こうして26年の歴史を持つカードの世界観を最大限美しく表現することにこだわりました。

――「マナストライク」の魅力、競合ゲームと比べたときの差別化ポイントは何でしょうか?

ジャン氏:「マナストライク」は、既存の「破壊型」のリアルタイムバトルではなく、プレインズウォーカーを使用し、3分間という限られた時間で戦う簡略化されたMOBAだと考えていただければ良いと思います。プレインズウォーカーを効率的に維持しその能力を活用しながら、5つの属性別のデッキをカスタマイズして様々な戦略を自身で導いていくというプレイスタイルこそが、競合するゲームとの明らかな違いです。ジャンルはリアルタイム対戦ゲーム(RTS)ですが、プレイをしていただければその違いを明確に感じていただけると思います。

――「マナストライク」制作において、最も苦労した点は何でしょうか?

ジャン氏:「MTG」の多くのカードの中から、IPの個性と特徴を維持しながら「マナストライク」特有のゲームの世界観にふさわしいカードを選定し、能力を実装する点が最も困難でした。原作で有名なカードを使用すると、ファンの期待に応えるため、能力と使用コストなどの細かい部分で完璧な考証が必要になりました。

 しかし、別ジャンルである「マジック:マナストライク」で、これらの微細な設定を完全に維持するのは大変難しく、最終的にカードの中で最も重要な特徴を最大限強調し、バランスに影響を与える要素は自由に使用することを決めました。例えば、「夜明けのレインジャー」と「血統の守り手」は、原作とは異なる攻撃力と召喚コストを持っていますが、それぞれ狼男と系統の王に変身する特徴は維持しており、このような部分はゲームをより興味深く作る要素になったと思います。

血統の守り手
夜明けのレインジャー

――「MTG」には、魅力的なクリーチャーが多数登場しますが、どういう基準でマナストライクに登場するクリーチャーを決定したのですか? また、クリーチャーはさまざまな能力を持っていますが、それをどのように「マナストライク」で反映したのでしょうか?

ジャン氏:原作の、「MTG」にはまだ多くのプレインズウォーカーがおり、新しいプレインズウォーカーが次々に登場しています。だからこそ、初回のプレインズウォーカーの選択には、本当に悩みが多かったです。開発チームでプレインズウォーカー選定で大事にしていたのは、「世界観の中での認知度と色を代表することができるか」ということでした。「MTG」という世界観で知られており代表的なプレインズウォーカーか、それぞれの色を代表することができるかを一番に検討をしました。最終的に特定の色だけのプレインズウォーカーが多くならないようにバランスを取っています。この過程では、IPホルダーと多くの話を交わし、WotCからも、どのプレインズウォーカーとクリーチャーが「マナストライク」に最適かアドバイスを受けました。

――韓国では、"紙の"「MTG」の知名度はどれくらいあるのですか?

ジャン氏:韓国国内では「MTG」の認知度は高い方ではありません。一方原作カードへの情報が少ない分、ゲーム性だけで勝負することができる機会になるのではと考えています。

――現在、プレーヤー分布はどうなっているのでしょうか? 北米やヨーロッパ、韓国など、どこが一番多いのですか?

ジャン氏:米国、カナダのユーザーの方々が最も多く、欧州の場合は、ドイツとフランスの順です。欧州と同様の規模で、ブラジル、メキシコなどの中南米圏ユーザーの方々にもたくさんプレイしていただいています。

――「マナストライク」の今後の展開を教えてください。バトルステージにバリエーションが追加されたり、オンラインでの大規模大会、賞金制の世界大会などが行なわれる可能性もあるのでしょうか?

ジャン氏:もちろんです。プレイユーザーの基盤が十分に構築され、eスポーツに十分な量のカードがリリースされたら、eスポーツやその他大会を通じて長期的により多くのプレーヤーに楽しさを提供したいです。

――最後に、弊誌読者へのメッセージをお願いします。

ジャン氏:リアルタイムPvPゲームとして、長く日本のユーザーにも楽しんでもらいたいと思います。短期的な結果ではなく、毎年大規模な大会を開くことができるほど、愛されるゲームになることが希望であり、目標です。ありがとうございました。