インタビュー
「ロマンシング サガ オーケストラ祭」伊藤賢治氏ら制作陣インタビュー
伊藤賢治氏「舞台新作の曲はこれから書きます!」
2020年2月21日 10:34
- 2月16日開催
- 会場:東京芸術劇場
「ロマンシング サガ」4年ぶりのオフィシャルコンサート「ロマンシング サガ オーケストラ祭」は大盛況のうちに幕を閉じた。舞台新作上演も決定し、更なる盛り上がりを見せている「サガ」の世界だが、その「ロマサガ」シリーズの制作陣である総合ディレクター河津秋敏氏、プロデューサー市川雅統氏、そして曲を手がけた伊藤賢治氏の3名にインタビューに応じていただいた。昼公演後の限られた時間ではあったが本公演についてのコメントといくつかの質疑に対する答えを貰うことが出来たので、インタビューの様子と共にお届けしたい。
――本公演を振り返ってのコメントをお願いします
市川氏: 「サガ」30周年第一弾ということでオーケストラコンサートを開催させていただいたのですが、前回とはまた違ったアレンジの曲がすごく多くて、今回はメドレー形式が少なかった分、1曲1曲を楽しめる構成になっていたかと思います。やはりオーケストラは奥が深いと改めて思いました。曲のイメージも前回とガラリと変わりつつも「ロマサガ」の世界を体現しているものが多かったと感じました。
河津氏: 今回は凄く聴きやすかったという印象があります。オーケストラのコンサートというと聴く方もどうしても構えがちになるし、バトル曲が中心になると圧迫感を感じるケースが多いけど、オーケストラの個性とも言えるかもしれないが、柔らかい感じでリラックスして聴くことができました。
伊藤氏: みっちりと(詰め込んだ)プログラムだったので、個人的には喋り足りなかったのが唯一の心残りです(笑)。ですが、型に則ったオーケストラコンサート(ショーマン的な事も含め)のひとつの良い例を残せたのではないかなと思います。
――アンコール最後に伊藤さんがオーケストラをバックにピアノを演奏した感想はいかがでしたでしょうか?
伊藤氏: (オーケストラをバックに演奏したのは)久しぶりでしたね。(FINAL FANTASYシリーズ作曲者の)植松伸夫さん方が企画された 「PRESS START(注1)」 で演奏させていただいたのですが、あの時もアンコールのトリだったことが思い出されて、「今回もトリかぁ」と思いました(笑)。MCは結さんもいましたのでこなすことができたのですが、最後の演奏ということで、全く気が抜けないプログラムでした。でも、指揮の内藤彰さんをはじめオーケストラの方々も含めて私に合わせてくれているなという有り難さもあったので、演奏しやすかったです。
※1「PRESS START」:2006年~2015年の間に開催されたゲーム音楽コンサート。伝説級のゲーム音楽家をゲストに招いて様々なゲームタイトルの演奏を行った。伊藤氏は2010年開催時にトリの「ロマンシング サガ ミンストレルソング(ミンサガ)」で登場し、ピアノを担当していたものを指していると思われる。
――本公演でどの曲が一番良かったでしょうか?
伊藤氏: 難しい質問だなぁ(笑)、まず市川さんからどうぞ。
市川氏: ではまず私がこの質問を受け止めてと(笑)。最近「ロマサガ」シリーズのプロデューサーをさせてもらっている中、特に2019年にリリースした「ロマンシング サガ3」のリマスターが制作に苦労したタイトルだったので本公演で「アビスゲート」のアレンジを聞いて感動して泣きそうになりましたね。アレンジャーさんがオーケストラ編成にあわせて編曲したというのもあるが、今回「サガ」ではなく「ロマサガ」のコンサートでないとやれない曲だと思うんですよね、曲の長さ的にも。アビスゲートの曲は大好きで、リマスター版でも原曲のまま変えなかったのですが、今回のアレンジを聞いて、「あぁ、これだと(リマスター版も)アレンジしても良かったな」と思えるくらい迫力がありました。あと「ロマンシング サガ リ・ユニバース(以下ロマサガRS)」の曲はいつも聴いている曲なので(笑)、いつも聴いているアノ曲がすごい!とユーザのような感想になってしまいました。
河津氏: 確かに「アビスゲート」はなかなか選ばれない曲だと思うので、すごく新鮮であり、オーケストラ映えするよね。アレンジも良かった。私はいつも聴いているという意味では「皇帝出陣」はすごく良かったですね。
伊藤氏: 最近の思い出というのでもあるのですが、舞台(SaGa THE STAGE)ですね。「愛の歌」は自分が手掛けた曲ながらキますね。
市川氏: 口ずさんじゃいますよね、歌詞覚えているので(笑)
伊藤氏: 世界観もシナリオあってのものじゃないですか、それを色々思い出してしまいました。あと一つ挙げるとすれば「ロマサガRS」のオープニングですね。この曲も歴代のロマサガオープニングミュージックにようやく並んだかな、ようやく独り立ちできたかなと思いました。
――本公演自体の質問ではないのですが、「ロマサガRS」のお気に入りのキャラクターや、ガチャで悔しかったことをお聞きしたいです。
伊藤氏: 聞いてくれますか?!(一同笑)ロックブーケが無いんですよ、なかかか引けなくて……。七英雄でプレイしており七英雄はほとんど揃ったのですが、回復系がいないのでどうしてもウンディーネに任せるのですが「なぜロックブーケがいないんだ」と毎回歯噛みしながらプレイしています(笑)。
河津氏: この前クーンのガチャを回してみたらクーンが3体も出てしまって「こんなことがあるのか」とビックリしましたね(笑)
市川氏: 昨年末に登場した「ロマサガRS」のオリジナルキャラであるポルカとリズが、話の盛り上がりを含めて、だんだんキャラが育っていき、その育ったキャラが1周年で登場するのは何か良いなと思いました。また新たなストーリーも公開され、これからどんなキャラクターが出てどんなストーリー展開になるのかなと。ある程度は知ってはいるのですが(笑)、ユーザがどんな反応をするのか楽しみですね。
――初代サガ(魔界塔士Sa・Ga)から出てきて欲しいですよね?
市川氏: 出てほしいですよね! えーと、いやちょっとこれ以上は言えないのですが(笑)
河津氏: 出すにしても、当時のとおり白黒ドットにするのか、いやいや色をつけなくてはなどの話になってしまいますけどね。
市川氏: 初代サガは一番好きなタイトルなのですが、なんといっても今年は「サガ30周年」ですからね。どういう形になるかは分かりませんが、皆さんの前に出てくることもあると思いますので楽しみにしていてください。
――今回はオーケストラ祭として、オーケストラ編成だったが、伊藤さんはかたやロックバンド編成でもライブをされていますよね。この融合した公演というのはあり得るのでしょうか?
伊藤氏: 今のところは考えてはいませんが、私自身の音楽活動30周年というメモリアルイヤーが始まりますので、自分なりの出し方というのは演出含めてやってみようかなと思っているイメージがあるので、そのイメージをもうちょっと固めてからですかね。
市川氏: イトケンさんとは色々話をさせていただいているのですが、去年の11月30日に開催された「ロマサガRS」1周年イベントの中で、ロックスタイルの「イトケンバンド」で公演やらせてもらったのですが、かつてイトケンさんが 「Re:Birth(※2)」 シリーズで「One Night Re:Birth」というタイトルでライブをされていたのですが、前から「何でワンナイトなんだ、何で年1回しかライブしないんですか」とイトケンさんへ思いをぶつけたことがありまして、そしたらイトケンさんから「じゃあお前がやれよ」と言われたこともありました(笑)。
でも、ああいうバンドスタイルでの形式って、ファンの方々は普段ゲーム内での音楽で満足されている方も多いと思うのですが、今回のオーケストラ公演もそうですが、ライブ会場に足を運んでくださる面白さというものがあると思うんですよね。でもオーケストラとロックを融合させるのはホール(会場)の都合や音響的な問題で難しかったりするのですが、それぞれの形式を楽しめる機会はこれからも増やしていこうと思っています。
※2「Re:Birth」:伊藤賢治氏による「聖剣伝説」および「サガ」シリーズのアレンジアルバム。現在4枚のアルバムがリリースされている。
河津氏: 編成が意外と大変なんだよね。両方取り入れると公演時間などの尺が膨大になってしまうんですよね。
市川氏: 今回は PA(※3) がいなくて全部生音なんですよね。だから今回は音の感じ方が違ったかと思っており周りからも好評だったのですが、観客席1階から聴こえる音、2階・3階からの音の聴こえ方も違っていてホール自体の楽しみ方もあるなと改めて勉強になりましたね。
※3「PA」:Public Addressの略。観客全体へ音を伝達するために音声や音楽を調整する役割を担う装置の総称またはそのオペレータ。
――今回発表のあった舞台「SaGa THE STAGE」について伺いたいのですが、今回「ミンサガ(ロマンシング サガ -ミンストレルソング-)」がベースになるとコメントされていましたが、公式ページを見るとビジュアルは元になった「ロマサガ(ロマンシング サ・ガ)」のそれでしたが、ハイブリッドのような形になるのでしょうか?
河津氏: ストーリーのベースは一度「ミンサガ」で広げていますので、そこに基づいたキャラクターやストーリー設定が使われますよという意味合いです。主役が8人なのはオリジナルベースですよという意味でそのビジュアルを使っています。
市川氏: 「ロマサガ」と「ミンサガ」が合わさったようなものであり、「ミンサガ」からのエピソードが入っていたり、「ミンサガ」にしか出てこないキャラクターも出てくるというところまでは言えますが、ベースは30周年ということもあり、舞台の公式サイトでは原典である「ロマサガ」を展開させてもらっています。「ミンサガ」をやりこんだ方じゃないと知らない部分もあるのでそこを舞台でうまく表現したいと思うし、本公演を見ていると「ロマサガRS」で「ロマサガ」を知ってくださった方も増えているような印象だったので、そのような方々に見て頂きたいなと思っています。今日から(2020年2月16日から)チケット発売なので(笑)宜しくお願いします。
――イトケンさんはこれから曲を書くということですか?
伊藤氏: 全く(舞台の曲を担当するとは)聞いていなかったですね(笑)。舞台の話自体も大雑把にしか聞いていなかったので、これからですね。なにせ「ミンサガ」がベースと聞いて「そうなんだ!?」と思ったくらいですからね(笑)。個人的に気になるのはガラハドがどんな扱いを受けるかですね。
河津氏: 「ミンサガ」みたいなアタマではないんじゃないかな(笑)。私だったら「ロマサガ」のガラハドのデザインを採用しますけどね。
――イトケンさんは本公演で1曲だけ(第2部1曲目の「ミンサガ オーバーチュア」)編曲をされていると思いますが、それについての手ごたえをお聞きしたいです。
伊藤氏: 実は本公演の「オーバーチュア」は、当時「ミンサガ」を出したものをそのまま譜面に起こしたものなんです。譜面を見返して当日のリハーサル等で直したりというチェックはしましたけどね。あの曲はフルオーケストラスタイルではなかったんですよ、例えばファゴットが鳴ってなかったりとか。またオーケストラコンサートをやるとしたら、今度はリアレンジという形でお披露目できる場があれば良いなと思っています。
――ありがとうございました。
Photo by Shinjiro Yamada