インタビュー
「ダライアス コズミックコレクション」インタビュー前編
タイトー家庭用ゲーム復帰第1弾! 予想外な苦労の連続を乗り越えてのこだわりを聞く
2019年2月28日 15:00
歴代の「ダライアス」シリーズ作品をアーケードタイトルから家庭用タイトルまで、9タイトル13バージョンを一挙に収録するNintendo Switch用横スクロールシューティングゲーム「ダライアス コズミックコレクション」が、2月28日に発売となった。発売はタイト-、開発はエムツーが手がけている。
そこで発売を機に、タイトー及びエムツー両社から、今作品のキーマンと言える皆様にインタビューを行なわせて頂いた。インタビューにご参加頂いたのは、タイトーより外山雄一氏、プロデューサーの小林寛季氏、エムツーより堀井直樹氏、ディレクターの辛島由紀子氏。こだわりのポイントや開発の苦労などをお聞きしたので、じっくりお楽しみ頂ければ幸いだ。
【ダライアス コズミックコレクション】
タイトーの家庭用ゲーム市場への復帰第1弾タイトル。通常版と特装版の2種類のパッケージがあり、通常版には初代の「ダライアス」を筆頭に、4つのアーケード用シリーズ作品を収録。特装版は通常版収録のアーケード4作品に加えて、スーパーファミコンやSega Master System、メガドライブ、PCエンジンといった、家庭用ゲーム機で発売された5タイトルが収録されている。
収録タイトルは以下の通り。
【通常版に収録されているタイトル】
・ダライアス(1987年稼動/アーケード)
OLD バージョン/NEW バージョン/EXTRA バージョン
・ダライアスII(1989年稼動/アーケード)
・SAGAIA(1989年稼動/アーケード)※ダライアスII海外版
バージョン1/バージョン2
・ダライアス外伝(1994年稼動/アーケード)
【特装版に収録されているタイトル及び同梱特典】
・通常版と同じアーケード4タイトル
・ダライアスツイン(1991年発売/スーパーファミコン)
スーパーファミコンバージョン/Super NESバージョン
・ダライアスフォース(1993年発売/スーパーファミコン)
・SAGAIA(1992年発売/Sega Master System)※ダライアスII海外版
・ダライアスII(1990年発売/メガドライブ)
・ダライアス・アルファ(1990年発売/PCエンジン)
・同梱特典
シリーズアレンジCD「DARIUS THE OMNIBUS II -群像-」
公式資料集「DARIUS ODYSSEY -COZMIC ARCHIVES-」
アーケード筐体上部のタイトルパネル「ミニチュアアクリルマーキー」
タイトー×エムツーで挑む「ダライアス」シリーズ移植
――「ダライアス コズミックコレクション」の企画がスタートしたのはいつ頃だったのでしょう?
堀井氏:開発に取りかかったのは、だいたい去年の今頃だったかなという感じですが、話自体はもっと前からですよね?
外山氏:そうですね。私は2017年の11月にタイトーに入社したのですが、前職でもエムツーさんとのやりとりがあったんですよ。それから、その前職を退職することになって。その時にも堀井さんにいろいろと相談して……一時期はエムツー入社も考えたぐらいなんですよ(笑)。
――なんと。
堀井氏:滅茶苦茶嬉しいお話です!本当にうちに来て頂けたら良かったのですが。
外山氏:ありがとうございます(笑)。ですが、エムツーさんにお仕事をお願いできそうな会社に入って一緒に何かを作るというのも楽しいよなと考えて。それで就職活動した結果、タイトーに入社することになったんですよ。
私がタイトーに入った時は社長が山田に代わり、開発ラインを増やしているところで、「ダライアスを復活させよう!」という話もすでに社内に挙がっていたんです。もちろん、その時は今回のような形とはまだ決まっていなくて、新作も含めていろいろな可能性を検討しているという段階でした。
そこへ私が入社して、エムツーさんとなら多くの過去作を収録したコレクションタイトルを出せるのではと考え、その企画書を書いてエムツーさんと相談して……というのが、去年の今頃ですね。
堀井氏:外山さんとのお付き合いはもう長いですから、やりやすいです。外山さんはご自身でもすごくゲームをプレイされる人で、やり取りの言葉もゲーム用語で通じるほどです。なんと言っても「武者アレスタ」を手がけた人ですからね!
――エムツーさん外山さんのお話だと以前に、お花見の席で「○○やりましょう!」という話が盛り上がって……というエピソードがあったりしましたが、去年の今頃ということだと花見はちょっと早いですね。
外山氏:あー確かに。でも、そういうお話ですと、現在タイトーの開発本部長は元セガの植村(植村比呂志氏)なのですが、植村が本部長になったのは昨年の4月1日からなんです。「ダライアス コズミックコレクション」は前任の本部長の頃から企画を進め始めたのですが、最終的にハンコを押したのは植村本部長なんですよね。そういう意味では花見の後にゴーサインが出ているんですよ(笑)。
――なるほど(笑)。タイトー社内に高まっていた「ダライアス」で何かをしようという機運が、外山さんが合流されたことで「ダライアス コズミックコレクション」という形にまとまっていったんですね。
それを経て、できあがった「ダライアス コズミックコレクション」は一気に9作品を収録するという大胆なものになっていますが、企画当初からこれぐらいの収録数を考えていたのでしょうか?
外山氏:企画書からはほとんど変わっていないですね。このあたりのタイトルをズラッと並べようと思っていました。実は企画自体、そもそも特装版のみのところからスタートしているんですよ。でも、さすがに高額のパッケージのみというのはどうかということで、お目当てな人も多いであろうアーケード版のみに収録タイトルを絞った通常版を後から用意したんです。
――そうだったんですか!特装版が基本という考え方でスタートしていたというのは驚きです。できる限りタイトル数を詰め込もうという方向性だったんですね。
外山氏:エムツーさんの移植技術は事前に見せて頂いていたものもありましたので、そこから「これはできるだろう」、「これは難しいのかもしれないな」など考えて、私の方でタイトルをチョイスしてみたんですよ。
で、それをエムツーさんに見てもらったら、「実はこれはそんなに簡単ではない……」とか、「逆にこっちはそんなに大変じゃない」といった予想外の返事だらけでした(笑)。
堀井氏:よくある!
外山氏:その話をしたあと、次の打ち合わせで「ダライアス外伝」が動いているものを見せていただいたので、「あ、なんだ簡単にいけるんだー」って思っちゃったんです(苦笑)。それで、「じゃあ『ダライアス外伝』も入れましょう」と考えたのですが……実は簡単ではなかったんですよね。
――今回のラインナップでは「ダライアス外伝」は比較的新しいものですし、時代としてもグラフィックスが2Dから3Dに切り替わっていく狭間で、2D表現の限界に挑んだ感のあるタイトルですよね。
外山氏:そうですね。アーケードの「ダライアス」は「SAGAIA」を除いて5作品が出ていますが、「Gダライアス」と「ダライアスバースト」はポリゴン世代のタイトルです。なので、今回はポリゴン前の2Dダライアスをまとめたいと考えたんですよ。
堀井氏:企画のコンセプトにそれがあったので、我々としてもちょっとやれるかどうかはわからないんですけど「ダライアス外伝」も挑もうと決めたという感じですね。
でも、「ダライアス外伝」は下手をすると、「Gダライアス」を移植するよりも大変かもしれないんです。「Gダライアス」のようなPS1相当のアーケード基板で動かしている初期ポリゴン作品と、「ダライアス外伝」のように2Dバリバリでラスターごとにエフェクトがかかっているゲームとでどちらが移植しやすいかと言えば、シンプルなポリゴン作品の方なんです。Nintendo Switchというハードは特にですね。
なので、「ダライアス外伝」をやるのはチャレンジだったのですが、面白そうなお祭りなので参加しました。
――「ダライアス」シリーズを前期と後期という区切りで2つにわけるとして、今回の「ダライアス コズミックコレクション」は前期をまとめたパッケージだというわけですね。
外山氏:2Dグラフィックスというところで区切って、「ダライアス外伝」までを前期にカウントしていますね。
実は企画書段階ではプロジェクト名を「ダライアス エインシャントコレクション」と名付けていたんです。3D時代の作品に比べれば2D作品は「古代」だろうということで。でも後に、初代『ダライアス』の開発コードネームが“コズモ”だったことから、今の「コズミックコレクション」に変わりました。
――なるほど。今回は特装版だと9タイトルを収録しているわけですが、それぞれに基板やハードの違いがありますし、先ほどもあった「これはやりやすい」、「これは厳しい」というのがあると思いますが、具体的にはタイトルごとにどんな印象があったのでしょう?
堀井氏:順番に話していくと、メガドライブ版の「ダライアスII」は我々がメガドライブをたくさん触っているのでNintendo Switchで動かせるのはわかっています。PCエンジンやSega Master Systemについては、メガドライブより負荷的には同等かより小さくなるぐらいなので大丈夫。スーパーファミコンは特殊なチップを使っているタイトルだと再現が厳しくなることもあるのですが、今回は2タイトルだけなので、なんとかやれるよねと思えるところです。
一番厳しいのは、やはり「ダライアス外伝」ですね。これはもう頭1つ抜けています。それとは別にアーケードでは「ダライアス」と「ダライアスII」が3画面や2画面のゲームなわけで、基板にVDPが3個載っていて画面出力しているので、それをNintendo Switchでやってみたときに負荷がどれぐらいになるのかは、やってみないとわからなかったりするんですよね。
でも僕は楽観的に、「Nintendo SwitchのCPUならなんとかなるんじゃないか」みたいな感じで辛島にやってもらったんですけども……実際どうでした?
辛島氏:まずはやるだけやってみようというところから始めていったのですが、だいたいのものは動くことは動いてくれたんです。でも、アーケード作品については筐体がすごく凝った作りをしていますから、そこを解析していくのがまず大変でしたね。
「ダライアス」の基板って大きいんですよね。大きな基板にたくさんチップを載せているので、そのチップ同士でデータを橋渡しするような動作を多くしています。担当したプログラマーは調整がすごく繊細で苦労しているという話をよくしていました。アーケード作品はどれも大変でしたね。
――エムツーさんの移植のお話でよく耳にするのは、「とりあえず動くし遊べることは遊べる」という段階からの、その先が重要であり大変ということですよね。
堀井氏:ですね。アーケードの「ダライアス」と「ダライアスII」に関しては動かすだけなら割と早くて、夏になる前ぐらいには動いていて、そこから再現度を突き詰めることができたので流れが良かったですね。実際にやってみるまではどうなるか見通しがつかないところがあるので、ドキドキしていましたねー。
辛島氏:タイトーさんの社内には大量の資料があって、そこには基板の回路図などもあったんですよね。全資料送ってくださいとお願いして捜索して頂いて。それに実機の筐体の調査もさせて頂いたので、非常に助かりました。それがなかったら本当にきつかったですね。
――当時の開発資料などもかなりしっかりと保管されていたのでしょうか?
外山氏:当時の資料なので紙のものがほとんどなのですが残っていました。あとは元タイトーのアオキヒロシさん(※)がしっかりと整理して保管されていたようで、それらも今回の役に立ちましたね。
※アオキヒロシ氏はタイトーにて、ディレクターとして「サイキックフォース」シリーズなどを制作した他、プロデューサーとしても「ダライアスバースト」や「スペースインベーダーエクストリーム」シリーズ、「EXIT」など多数の作品を手がけた
堀井氏:ありがたい限りですよ。タイトーさんは資料をちゃんと残す社風ですね!
外山氏:倉庫の捜索には何度か行きまして。筐体の調査に関しては、厚木にある「厚木テクニカル&ロジスティクスセンター」というタイトーの施設に筐体の修理などを行なっている部門があるのですが、そこに初代の筐体があったのでエムツーさんと一緒に行って調査して。
ただ、「ダライアスII」に関してはタイトーには筐体がなかったので、とある業者さんにご協力頂いて、そちらの倉庫で筐体の調査をさせて頂きました。
辛島氏:他にもタイトーさんからは筐体だけでなく基板やROMについてもたくさんお借りしまして。もうありったけできる限り借りたという感じですね(笑)。
古い基板ですので壊れやすいところもありますし、慎重に扱いましたね。すごく貴重なものも多くありますので、「火事になった時はこれを持って逃げるぞ!」みたいに話しつつやっていました(笑)。
堀井氏:社内で基板での動作をチェックしている風景が笑えるというか、なにしろ「ダライアス」なのでモニターもいっぱい必要なんですよ。基板も大きいですしね。なので会議室の一角が完全に「ダライアス」コーナーみたいになっていました。3画面のゲームの移植って大型の体感筐体ゲームの移植みたいなスペースがいるんだなって今回わかりましたね。
ヨーロッパ市場を席巻していたマスターシステム向けに発売された日本未発売「SAGAIA」とは
――収録タイトルの中には特殊なソフトもいくつかありますね。まずは、ヨーロッパにしか発売されていないマスターシステム用「SAGAIA」ですが、これも企画当初から収録予定に入れていたのですか?
外山氏:ですね。私の知り合い界隈でよく話題に挙がるのですが、マスターシステム後期のゲームってどれもすごいんですよ。「SAGAIA」に限らず「ゴールデンアックス」とか「スクランブルスピリッツ」とか。
堀井氏:すごく良く出来ています!
外山氏:当時のヨーロッパ市場はマスターシステムが非常に普及していたんですよね。セガの奥成氏の説では、他ハードのヨーロッパ進出よりも先にセガがマスターシステムでシェアを獲得していたという話です。
※ヨーロッパ市場でのマスターシステムの人気については、こちらの「SEGA AGES アレックスキッドのミラクルワールド」インタビューにて詳しく触れられている
堀井氏:ヨーロッパは、NES(海外版ファミコン)よりマスターシステムという市場だったんですよね。なので「SAGAIA」を含めて日本には出ていないゲームがいろいろと出ていて、マスターシステム版の「ゴールデンアックス」も見る人が見れば「え、これマスターシステムで動いてるの!?」って言うでしょうし、アレスタの海外版だった「POWER STRIKE II」もよく出来ていました。
「SAGAIA」も、それらに匹敵するすごい出来なんです!これはいろんなところで言っているのですが、今回のイチオシは「SAGAIA」なんですよ!それを言うと呆れられるんですけど、「いや、『SAGAIA』だろ、どう考えても!」って言い張ってます!!
――(笑)。日本のゲームファンとしてはなかなか見られないタイトルですし、かなり貴重ですよね。
堀井氏:僕は当時に秋葉原の輸入ゲーム販売店で9,800円で購入したんですけど、その価格でも満足してましたから!
――1992年頃ですと、今ほど海外のみで売られているゲームを入手するのは簡単ではなかったですし、そもそも存在を知らなかったという人が多いですよね。
堀井氏:そうなんですよ。昨年にあった「ZUNTATA NIGHT」でいろいろと「ダライアス」のお話をさせて頂いたのですが、セガのHiro師匠がマスターシステムの「SAGAIA」の映像を観て、「え、マスターシステムでこんなすごいゲーム動くの?」っておっしゃっていて、「いや、御社のハードですよ!」って思ったりして(笑)。
外山氏:この機会にぜひ遊んでみてもらいたいですね。よく出来ていますよ。
堀井氏:これで伝わる人はもうアラフィフのおじさんだと思うのですが、「SAGAIA」は、MSXに対してのコナミみたいな会社があって、そういうところが作ったものだと思ってもらえばいいかと!
――その例えは解説が必要ですねー(笑)。
全員:(笑)。
※1980年代、コナミはMSXに力を注いでおりSCC音源という専用のゲーム音源を開発するなどして、クオリティの高いゲームをMSXに数多くリリースしていた
――ちなみに、マスターシステムの「SAGAIA」もタイトーに実際のROMが保管されていたのですか?
外山氏:いえ、「SAGAIA」はタイトーになかったですね。アーケードの書類などは結構残っていたのですが、家庭用になると残っているものがあまりなくて、特にライセンスアウトしたものは残っていないようですね。同じようにPCエンジンの「ダライアス・アルファ」もなかったです。
PCエンジンの「ダライアス・アルファ」はBEEPさんからお借りしていますし、マスターシステムの「SAGAIA」は堀井さん達がE3に行かれたときにロサンゼルスのGame Dudeで買ってきてもらったんですよね?
堀井氏:ですね。もちろん僕も個人的に所有しているはずなんですけど、どこにしまってあるのかわからなくなっているので、別で新たに購入しました。
※Game Dudeはロサンゼルスにある有名なゲームショップ。最新のゲームだけでなく、クラシックなハードやソフトを大量に扱っている
※後日、この「SAGAIA」はエムツー駒林氏の私物をタイトー外山が譲り受けていたことが判明
PCエンジンのエミュレータは“なぜか趣味で作ってあった”ので「ダライアス・アルファ」を収録!
――そうして基板やROMを調達していって、その解析や移植に入っていかれたとわけですが、これだけの数を作っていくとなると、どういうラインで、どういうリソースを割り振ってやっていくのかというのが大変だと思うのですが、ディレクターである辛島さんはそのあたりも苦労されたのではと感じます。
堀井氏:アーケードタイトルと家庭用タイトルとで開発ラインをわけて進めていますね。
辛島氏:そうですねー。弊社で移植実績のあるアーキテクチャのソフトについては、まずはNintendo Switch上で動かしてみようというところから始めて。アーケードの「ダライアス」と「ダライアスII」はすぐに走らせていましたね。
家庭用はまた別で、ハードのベース部分から触っていって、Nintendo Switchに順次載せていくというような進行でした。
堀井氏:アーケードの「ダライアス」は、先ほどあった「ダライアス外伝」を夏休みに作っていた話は置いといて、それ以外は新規にフルスクラッチでやっていますね。
家庭用については、以前に弊社が開発をさせて頂いたスーパーファミコンのタイトルをNintendo Switchで動かしていますので、それをベースにその上で「ダライアスツイン」や「ダライアスフォース」を動かしてみて、どんな動作になるのかを見て。「SAGAIA」のマスターシステムは、セガさんでの積み重ねを活かしてその上で動かしてみる。メガドライブも同じですね。
PCエンジンタイトルに関しては、弊社での移植リリース実績はないのですが……なぜか趣味で作ってあったので!
全員:(笑)。
堀井氏:ほら、歴史的にも必ず押さえておかなければならない日本の8bit機ですから!精度はまだ高まってはいなかったものの、ベースそのものはもう作ってあったんです。
――なるほど(笑)。でも、今のお話を聞くと、昨今だと最も移植や復刻の機会に恵まれていないのはPCエンジンのソフトなのかもしれないですね。エムツーさんでも機会がないぐらい。
外山氏:あぁー確かに。
堀井氏:そうかもしれないですねー。そういう意味では今回「ダライアス・アルファ」じゃなくて「スーパーダライアス」を入れてくださいっておっしゃる人もいると思うのですが、この仕事を引き受けた時点だと、弊社のPCエンジン環境はHuカードタイトルを動かすところまでしかやってなかったんです。CD-ROM2はあくまで趣味レベルにちょっと動くぐらいの粗いものだったんです。
外山さんからもPCエンジン系も全タイトルやりたいぐらいのお話をされたこともあったのですが、「スケジュールを考えるとHuカードまでが無難です……!」とお話して、じゃあ「ダライアス・アルファ」を入れようということになったんですよね。
――CD-ROM2となると、また違ってきますか。
堀井氏:CD-ROMからの読み込みと、そのメモリについて対応をしないといけないのですが、そこがまだきっちりとは出来上がっていないんです。機会があればいつかやりたい!
アーケードの「ダライアス」は豪華な作りで、プレイ体験を再現するのにも予想外な苦労の連続!
――アーケードのシリーズ作品の移植についてお伺いしていきますが、どのように移植を進めていったのでしょう?
辛島氏:アーケードでは初代「ダライアス」から順に、まずソフトウェアの動作を確認後に移植精度を高めていき、サウンドなどは後から調整していった……という感じですね。音の再現がやはり一番苦労しています。
堀井氏:アーケードは「ダライアス」、「ダライアスII」、「SAGAIA」という順で進めているのですが、ハードウェアの古いものから作って、初代からIIになったときにIIで拡張されているところをフォローして……というようにリリース順にやっていますね。
辛島氏:同じ作品のバージョン違いも今回は多く収録していますが、初代「ダライアス」ならOLD バージョンからNEW バージョン、そしてEXTRA バージョンというように、やはりリリース順に開発しています。
――タイトーさんが実際に手がけた時系列を順に辿る方が、自然と進化への理解度が高まってスムーズにできるのでしょうか?
辛島氏:それはありますね。新作や新バージョンに移ったときに差分を追って理解して。その差分を追加するところから入っていくという感じですね。
――なるほど。今のお話のようにバージョン違いも、初代「ダライアス」で3バージョン、「SAGAIA」も2バージョン収録されていますが、それらのバージョンも可能な限り収録しようという感じだったのですか?
辛島氏:お借りした実機の基板やROMにはバージョン違いもちゃんとあって、保存状態も良かったんですよね。それで、バージョン違いもできる限り収録しようという方向になりましたね。
外山氏:僕はあまり基板のバージョンなどについては知識がなくて、「ダライアスII」の2画面版と3画面版も大して違いはないのだろうぐらいに思っていたのですが、フタを開けたら全然違うと。初代「ダライアス」と「ダライアスII」は全然違う基板だし、「ダライアスII」の2画面版と3画面版でも全然違うし、3画面版に至っては「ニンジャウォーリアーズ」の基板だって言うので、もう驚いて。
堀井氏:「ダライアスII」の3画面版も入れたかったんですけど、今のお話のとおり全然違う基板なんです。なので入れたくても入れられないという判断になりましたね。
外山氏:「え、『ダライアスII』の2画面版はできるけど3画面版は無理なんですか?」みたいなやり取りをした時もありましたね(笑)。
堀井氏:僕も結構いけると思っていたんですよね。ソフトウェア的に見ると、2画面版も3画面版も同じ作りでやってそうに見えるんですけど、実際は基板が全く違っていて。「これは苦労されていたんだろうな……!」と感じるところがありますね。
外山氏:今回の特装版には「コズミックアーカイヴス」という書籍がついていて、そこでは原作の当時の開発スタッフのお話も載っているんです。そこでは「ダライアスII」のディレクターである藤原さんにもインタビューしているのですが、藤原さんは3画面版を後から作ったことに関して「そんなに手間ではなかったです」っておっしゃってるんですよね。
――ソフトウェアのゲームとしての部分にはそこまで違いはないけど、基板はガラッと違っている……。エムツーさんがそれを収録するなら、もう1枚基板の移植作業を増やさないといけなくなっちゃうんですね。
堀井氏:そうなんです。もちろん「ダライアスII」の3画面版も機会があれば、いずれやりたいとも思うのですが……そこは市場の反応次第というお話になってしまいますね。
そもそもこのエピソードって、初代「ダライアス」や「ダライアスII」が当時すごくヒットして、いろいろとやりくりもしていて、歴史があるということを象徴しているひとつなんですよね。それを外山さんと我々とで企てて1年ぐらいで網羅しようというのは、そもそもおこがましいのかもしれないですよ。
外山氏:確かにね。当時のアーケードゲームはすごく発展している最中でしたから、ハードウェアに対してもすごくお金をかけているんですよね。
堀井氏:そうなんですよねー!「ダライアス」は筐体も本当にすごいんですよ。
辛島氏:弊社のサウンドチームの面々は、「音周りにこんなにお金をかけているのか!」って驚いてましたね。チップとかも贅沢に使っていると感慨深く見ていました。
――アーケードの「ダライアス」は特にその感じがしますよね。削る削らないどころか、もっと豪華にインパクトを……という方向を感じるというか。
堀井氏:そもそも3画面というのが気が狂ってますからねー。
――今の時代に3画面動かすのとは話が全然違いますもんね。
堀井氏:そうなんですよ。画面が3個並んでいて、それを制御するプログラムを書くのだって大変。キャラクターを動かして画面をまたぐときには、キャラクターが2ついる状態になるんですけど、そういうのも制御しながらやっているんですよ。大変だったろうなーと思いますね。
――「ダライアス」の基板の作りって、例えば“基板3枚分を同期させているような構成”なのか、“基板1枚の中で3画面を分割して出力している構成”なのかで言うと、どちらになるのでしょう?
堀井氏:それで言うと基板の作り的には前者なのですが、ソフトウェア面で見ると、メインプログラムが常に3個のVDPを制御している……という感じですね。そんなことを1980年代にやっているんですよ。
原作を開発された皆様は、「3画面のゲームを出そう!」っていう企画が立ち上がった時から、何かすごいことができそうな予感にやる気が出たところがあったんじゃないかって思いますよ。
――新しいチャレンジが楽しかったというような。
堀井氏:当時は僕も中学生か高校生ぐらいですけども、こんなゲームが登場するなんて思わなかったですもの。ゲームセンターでも目立っていましたし、音も凄かったですし。上手い友達が遊んでいる横に座っていると30分は見ていられるし。本当に良いゲームでした。
――(笑)。
外山氏:特装版の「コズミックアーカイヴス」には、当時の技術者である三部幸治氏の話もあるのですが、最初は「3画面を繋げる」という筐体ありきの発想からスタートしたそうで、その筐体でどんなゲームを動かすのかを考えて、結果、シューティングゲームになったそうなんですよね。
小林氏:床にテレビの画面を3つ並べていろいろ試されていたということですよね。
外山氏:テレビを3画面繋げて床に並べてそこに立つと水平感覚がなくなって面白かった……というお話もありましたね。
――3画面ありきでスタートしていたというのは驚きですね。「ダライアス」の筐体は3画面だけでなくスピーカーやボディソニックも特徴ですよね。今回の移植でもやはり音周りの再現が大変だったのではと感じます。
辛島氏:そうですね。筐体ではボディソニックがベンチシートに内蔵されているのですが、その音であったり、左右のスピーカーからの聞こえ方を、できる限り筐体でプレイしているような感覚に近づけるようにしています。そのあたりがやはり大変でしたね。
外山氏:普通のゲームの音は基板の中で完結していて、そこから音を引っ張ってくれば、それが基板の音と言えると思うのですが、「ダライアス」は基板の外にボディソニックやエフェクト用のサブ基板があるんですよね。なので、それを考慮して再現しないといけない。ウェーブショットを撃っているときの音は基板で鳴らしているんでしたっけ?
辛島氏:ウェーブの音にもエフェクトがかかっているので、基板からの音でありつつも鳴らし方はフィルター用の基板を通していますね。
音周りの調査は“基板を探す”というところから始まったんです。実際のアーケード筐体を調査させて頂いたときに、おそらくシートの下に先ほどのサブ基板があるんじゃないかと思っていたんですけど……そこにはなくて。それであちこち探したら足下に収納されていたんですよ(笑)。
外山氏:弊社の資料には基板の回路図があったので、それを事前にエムツーさんに渡していたから、サブ基板の存在は知っていたんです。でも、それが筐体のどこにあるのかは載っていなかったので。
――サブ基板は、あの筐体の足下のところに入ってるんですか?
外山氏:2P側の足下に入っているんですよ。ちなみに「ダライアスII」のサブ基板も同じ場所にありましたね。
――そうなんですか……。足で踏んだりして振動もありそうな箇所ですけども、意外に思えますねー。サウンド周りの苦労については後ほどじっくりお伺いしたいのですが(インタビュー後編でお伝えします)、他にも初代「ダライアス」について苦労された点はどのようなところがあったでしょうか?
辛島氏:やはりグラフィックスの描画が1番のハードルでしたね。基板を再現した3画面分の出力をNintendo Switchの1画面に納めているというものになるので、TVモードだけでなく携帯モードでもちゃんと動作するか、表示に不具合が出ないかなども調整しないといけませんので。
タイトーさんにも、「スムーズにいかないところが出てきたら工数が爆上がりするかもしれないです……!」って事前に話していましたね。
外山氏:初代「ダライアス」の1画面あたりの解像度って横288ですし、Nintendo Switchならいけますよねって思ってはいたのですが……。
――うーん、確かに解像度的には3画面も納まりますよね。
堀井氏:解像度は納まるのですが、ソフトウェアで基板のVDPの挙動を真似てレンダリングさせるところ処理が間に合うのかどうかが心配なんですよね。今のハードウェアだと普通はGPUが載っかっていてGPUにレンダリングさせればいけるのですが、GPUって機種ごとにチップが違いますので。それ用に書き起こさないといけないんです。
PCで開発して動作させている昔のゲームをNintendo Switchに持っていくときに、Nintendo SwitchのGPUで処理させるにはかなりの手間が出ます。それがたくさん必要になってくると工数が一気に増えてしまうので、なるべく発生させたくなかったというお話なんですよね。でも、結果的にそれをせずになんとかなったので、今はちゃんと動いているという感じですね。
――Nintendo Switchのネイティブで動くソフトにしてしまえばできるけど、もちろん手間もかかるし忠実な移植ではなくなる可能性もある?
堀井氏:そうなんです。実機と違う挙動が出てしまう可能性があるので、その移植方法は避けたかったというのがありましたね。
テストプレイは「二代目ダライアス神」と呼ばれるプレーヤーさんをはじめとした全国トップクラスのスコアラーさんにお願いしたのですが、彼らは、永パ防止キャラが登場するのが5秒単位でずれていないかを時計を見ながらプレイして確認されるような人達なので。
――スコアラーとは言わずとも「ダライアス」がお好きな方々は多いですし、その目は厳しそうですね(笑)。
堀井氏:そうですよ、恐ろしいんです! 普通に移植すると、実機とNintendo Switchのフレームレートが違うのでどうしても違和感が出るという事情もあるのですが、そういうところも、トータルのプレイ時間の方を合わせることで違和感が出ないように調整したりしています。
外山氏:「ダライアス」は60フレームじゃないんですよね?
堀井氏:59.94です。Nintendo Switchより若干遅いですね。ですので、そこは全体のプレイ時間が実機と合うように調整をしています。
――なるほど。そこにさらに入力遅延や、ユーザーさんがプレイされるモニターの遅延もある程度想定しないといけないわけですよね。それらも込みで帳尻を合わせつつ、トータルの体感が実機とほぼ同じになるようにされていると。
堀井氏:まさにその通りで、いろいろな要素を加味した上でアーケードと体感が変わらないようにしています。
外山氏:逆に、初代「ダライアス」では「EXTRA バージョン」に、重くなる箇所があるのですが、そういうところもちゃんと同じように重くなるようになっていますよね。
堀井氏:そういう細かなところも再現しています。必死に!
辛島氏:「今回の移植で連射機能を入れたので新たな問題が出た」というところもあったりしました。今回は最大30連射を搭載しているのですが、アーケードの実機ではそんなに連射できないので、本来ありえない弾の出方になってしまうんですよね。そのため処理が通常よりも重くなるんです。ですが、逆にアーケード実機に同じように30連射を搭載させてプレイしてみたところ、同じように処理が重くなってくれたので。そういう意味では実機と同じという解決になりました(笑)。
――搭載した機能で新しい挙動が出てきたものの、それを実機に逆輸入して同じになるか確認されたんですね(笑)。
辛島氏:そうなんです(笑)。
――「ダライアスII」の移植はいかがだったのでしょうか。処理的には初代よりも豪華で重そうという印象があるのですが。
堀井氏:画面数が初代「ダライアス」の3画面から2画面になっているので、そこは楽なんですよね。ただ、ラスター割り込みなどを使った構造が多いので、そこらへんが結構重くなっていそうですが、その辺はプログラマーががんばってくれましたね。
辛島氏:そうですね。「ダライアスII」は動作の再現よりも、基板そのものの捜索が大変だったのが印象深いですね。「ダライアスII」はバージョンによってバグがあって、バグ対策版の基板を探すところから入っているんです。
外山氏:「ダライアスII」は最強装備にしてこれをこうすると止まる……というバグがあるんですけど、今回に収録しているのは対策版なので大丈夫ですね。
辛島氏:ボスにかなり近づいて撃ち込むと音が消えてしまったりなどの、音の割り込み周りが大変で、プログラマーにがんばってもらいました。
その中でも、「コインエラー対策で起きるバグ」を直すのに最後まで手こずりましたね。
――コインエラー対策ですか?
辛島氏:今回はアーケード版の移植にはクレジットを入れるボタンを用意しているのですが、それを連打すると、本来の筐体ではありえない挙動になってしまってコインエラーを起こしてしまうんです。
そこでコインエラーが起きないように対策をするのですが、いくつか試してみたものの、筐体側にも仕組みがあるところなのでゲームが止まってしまうんですよね。このコインエラー周りは最後の最後まで苦戦していましたね。
他にもコイン投入時に音が鳴りますが、クレジットボタンを連打すると音が消えてしまったりもして。結構コイン周りの挙動に悩まされました。
外山氏:コイン投入自体に割り込みがかかるようになっているんですかね?
堀井氏:おそらくそうですね。コイン投入は取り逃しちゃいけないものですから割り込みかかりますよね。
辛島氏:基板の起動時に連打すると挙動がおかしくなるというのもありましたね。「ダライアスII」移植の最後まで、そのあたりの確認と修正をやりました。
堀井氏:そもそもゲームセンターに置いといてもそんなことにならないですもんね。朝に電源を入れてコインを大量に入れまくるなんていうことがないわけで。
辛島氏:「ダライアスII」で苦労したのはそういうところでしたね。海外版である「SAGAIA」も基本的には同じでした。
――なるほど。でも「SAGAIA」のゲーム内容自体はゲームバランスやステージ構成が大きく違っていて、別のゲームみたいになっていますよね。
堀井氏:別ゲームです!
辛島氏:ゾーン分岐が少なくなっていますし、ボスの耐久力もかなり低くなっていますね。「SAGAIA」のバグ報告に「ボスが弱すぎるけどあってますか?」っていうレポートが挙がってくるぐらいでした(笑)。
外山氏:ちなみに、「SAGAIA」は当初は基板で動かすことができなかったんですよね?
辛島氏:そうなんです。ROMをお借りしたのですが基板では動いてくれなくて。ROMデータで移植自体を進めることはできても、やはり実機の基板で動かしているものとの比較は必須です。そこで、「ダライアスII」の基板のROMだけを「SAGAIA」に挿し変えてみたところ動いてくれて、なんとか実機テストができたんですよ。
外山氏:溝の口のMEGARAGEでの「ダライアス」コラボコーナーに「SAGAIA」を設置していたのですが、実は今の経緯で動いてくれたから置く事ができたんですよ。
――なるほど、そんな裏があったんですね。
便利な情報表示ガジェットにもエムツーらしさ溢れるエピソードが!インスト固定のビスはあのゲーセンのビス!
――アーケード版タイトルには、画面外にいろんな情報を表示する「ガジェット」を搭載していますよね。どのような機能になっているのでしょう?
辛島氏:「ダライアス」シリーズは全体を通して「こういう表示があったら嬉しいよね」というのが共通してくるんですよね。例えば、ARMストレングスやルート分岐の表示などです。ただ、例えば「ダライアスII」だとショットのパワーアップゲージがなかったりしますが、そういうところには別のガジェットを入れるようにしていますね。
――基本的なガジェットは共通しているけど、タイトルごとにプラスアルファをしているというわけですね。
小林氏:実際にゲーム画面を見ながらご説明しましょうか。(初代「ダライアス」を起動して)まず、スタート直後は右下に「ランキングタイプ」が表示されたあとに、「曲名」が出ます。
――曲が変わるごとに曲名を表示してくれるのが嬉しいですね。表示もフェードアウトするようになっていて、ちょっとオシャレな感じに。
辛島氏:上には大きくスコア表示を置いて、下には大きくインストカードをキャプチャしたものを表示しているのですが、実はここにも他の移植にはないこだわりがありまして。ガジェットのUIデザインをした久保田のこだわりなのですが……。
堀井氏:「銀色のビスが欲しい!」って言いだしたんです。
――このインストを入れているところを固定している銀色の丸いビスですか?
辛島氏:そうです。それがイメージと違うということで。そこで私が会社帰りに某ゲームセンターへ行って、稼動している「ダライアス」筐体のビスを撮影してきたんです(笑)。
――それっぽい銀色にしたとかじゃなくて、元のモデルがあるんですか!
堀井氏:某ゲームセンターの「ダライアス」のビス!
辛島氏:……の移植!
全員:(笑)。
――他は、ゾーンセレクトにボスも見られるようにしてありますし、上には銀カプセルの数値もありますね。
堀井氏:「ダライアス」は銀カプセルの点数が取ったタイミングでランダムに変わるんですよね。50点から1番高いと51,200点になります。なので、取った銀カプセルのスコアと取った全体数を表示しています。
辛島氏:当初は「銀カプセルの点数が変わるのを見えるようにしたい」ということも話していたんです。1フレームごとに点数が変わるので、「今この瞬間に取れば51,200点だぞ!」みたいな。
――でも1フレームごとに数字が変わっているものは見えるようにされても狙えないですよね。超高速で数字が変わり続けてる(笑)。
辛島氏:そうなんです。なのでそれは諦めて今の形になりました(笑)。
小林氏:続いては「ダライアスII」のガジェットですね。
外山氏:「ダライアスII」のインストカードは、某ゲームセンターさんからお借りして収録しました。「探しているんですけどないですか?」って相談したら、筐体の裏に落ちていたそうで(笑)。
――見つかって良かった(笑)。ガジェットとしては、基本的に「ダライアス」と変わらないですよね?
辛島氏:そうですね。銀カプセルの要素がないので、その代わりにパワーアップゲージやARMストレングス表示のガジェットを入れています。
辛島氏:海外版の「SAGAIA」では、「ダライアスII」だとインストカードを表示していたところに、代わりにパイロットの「PROCO JR」と「TIAT YOUNG」の姿を映しています。
――この2人のグラフィックスはどこに表示されていたものでしょう?
小林氏:これはオープニングデモに登場するものですね。
辛島氏:ですね。今回は時間がなくてやれなかったのですが、デザイナーは「目パチさせたい、表情つけたい」って言ってました。
――リアルタイムにコックピットを映している風にということですね。
辛島氏:被弾したら痛そうな顔をしたりですね(笑)。すごくやりたがっていたのですが、残念ながらその時間的な余裕はなかったです。
外山氏:タイトーに当時の「SAGAIA」のインストが残っていたら、他と同じようにそれを載せていたんですけども。当時のヨーロッパのタイトーが作っていたものなので、何も残っていないんですよね。筐体もマーキーもなかったですから。
外山氏:次は「ダライアス外伝」ですが、こちらは画面が4:3になっていますから、ガジェットのレイアウトに苦労が感じられるんですよ。
辛島氏:他とはUIを全部変えていますね。
外山氏:インストを表示する場所もないですし。
堀井氏:ないですねー。
辛島氏:ゾーン表示はどうしても欲しいですけど、どうしようかとなって(笑)。最初は画面の右にネクストゾーンの2個だけ入れていたのですが、「でもやっぱりカレントゾーンも欲しいよね」となって、左側に分割して入れています。
オプションやランキング機能も充実!セーブデータの大きさはもう限界のサイズに!
――その他のオプションなどの機能はどのようになっているのでしょう?
辛島氏:オプションでは、初代「ダライアス」や「ダライアスII」、「SAGAIA」は画面の境目をを見える設定にもできます。
堀井氏:スコアラーの方とかは画面の境目で位置合わせをしていたりするんですよね。
辛島氏:ルート分岐の時に境目から少し外側にいると当たらないとか、そういう風に覚えてる方がいらっしゃるようです。
――やはりどこか境目が見える方が落ち着きますね。境目を意識して使っている人以外でも、どことなくモニターの色味の違いや境目を無意識に使っている人はいるかもしれないですね
堀井氏:確かに。無意識に位置取りに使っているかもしれない。
外山氏:このオプションも開発の終盤に追加されたのですが、他にも開発終盤になってから追加された仕様が結構ありまして。「なんで仕様が増えるんだ!」って私も上の者から怒られたんですよ(笑)。
辛島氏:その節は本当にすみませんでした!
堀井氏:タイトーさんは仕様を増やすと怒るんですよー。
――(笑)。
小林氏:11月以降は大変でしたね(笑)。「この部分をもう少し詰めたいんです」とエムツーさんからご連絡を頂くのですが、その分だけスケジュールが遅れるという話になるので……。
――発売時期的に年末年始もありマスターアップもそのあたりにあり……というタイミングだったでしょうし、より大変ですよね。
小林氏:ですね。でもこのあたりはもう外山にご判断をお任せして、進行を決めていましたね。
――後から仕様が増えていくというのは復刻系のお仕事ならではという感じはしますね。最初は動かすだけのところからスタートしているけど、後からいろいろと出てくるという。
辛島氏:そうなんです。解析が終わって理解度が進むと「こういうこともできる」というのがわかってきますし、「こういう機能もできるしあった方が良い!」というのも出てくるんですよ。
堀井氏:後からそういうところが見えてくるんですよねー。いつも多方面に心労をおかけしています!
――リプレイの保存と閲覧もできるんですね。
辛島氏:はい、自分のリプレイだけでなく、オンラインランキングから他の人のリプレイをダウンロードすることも可能です。
外山氏:これは“赤いアイコン”は自分のリプレイで、“青いアイコン”はDLしたリプレイですね。
――リプレイは各タイトルごとに5個保存できるようになっているんですね。
辛島氏:本当はもっと多くしたかったのですが、なにしろ収録タイトル数が多いので、セーブの容量も含めてちょっと限界に近いんです。セーブも各タイトル6スロット用意しているので。
小林氏:セーブスロットは当初は3つの予定だったのですが、「ゾーン分岐が6回あるので6スロット欲しい!」という話になって6つになったんですよね。バージョン違いを含めて特装版では13タイトルを収録しているので、13×6で78セーブスロットあるんです(笑)。
――その数字で聞くとインパクトがありますね(笑)。
小林氏:(笑)。その78セーブスロットに加えて、リプレイデータもアーケード版の7バージョンあるので、7×5データなので35リプレイデータが保存できます。なので、記録するものが100以上あるんです。
辛島氏:「ダライアス コズミックコレクション」というひとつのゲームのセーブデータとしてはもう容量がいっぱいいっぱいなので、例えばリプレイデータのサムネイル表示を削るなどして、どうにか実現しています。
――なるほど、ソフト1本分に詰められるだけ詰め込んでいるという感じがしてきますね。
小林氏:そうですね。特装版は入れられるだけ入れています。
――オンラインランキングについてはどのような仕様になっているのでしょう?
小林氏:ランキングは2種類ありまして、アーケードの工場出荷設定で挑む「アーケードランキング」と、設定変更ありの「オールミックス」があります。
僕が確認した限りだと、「SAGAIA」はコンティニューをしてもスコア引き継ぎされるゲームなんですよ。オールミックスのランキングはコンティニューをしてもOKなので、僕の想像だと「SAGAIA」はカンストスコアになるんじゃないかなって思うんですよね。
アーケードランキングは当然コンティニューなしのスコアになりますので、どういうスコアになるかは楽しみですね。
外山氏:「SAGAIA」はプレイした事のある人は少ないと思いますので、横一線のスタートでスコアアタックを始めることになると思いますし、楽しみですね。
辛島氏:「SAGAIA」は「ダライアスII」よりもボスの耐久力がかなり低めになっているので、実はスコア稼ぎが難しいんですよね(笑)。A面のボスなんかはスコア稼ぎを伸ばすのはほぼ不可能なのでは、と思うのですが。スコアアタックの人がどういうプレイになるのか楽しみです。
堀井氏:本当に「ダライアスII」と「SAGAIA」は、同じ素材でも調理の方法が違えば別の味になるなっていう感じですよね。
外山氏:ですね。さらに「SAGAIA」はバージョン1とバージョン2を収録していますが、バージョン1は私たちも動画を見たことがあったのですが、バージョン2は本当に出回っている数が少ないもので、ほぼ全ての人が初めて見るものになると思いますね。
堀井氏:その違いにもびっくりすると思います!
辛島氏:私たちがNintendo Switch上で先に動かしたのはバージョン2だったんですよね。なので……
小林氏:「え、何これ?」って(笑)。
堀井氏:「なんだこれ違うぞ!」みたいな騒ぎに。
辛島氏:慌てて、動画とかを見てみたりしてもやはり違うわけで(笑)。
――改造ROMか!? みたいな疑いが(笑)。
全員:(笑)。
特装版の同梱アイテムはいずれも貴重なものばかり
――特装版の同梱特典についてご紹介頂けますでしょうか。
堀井氏:どれも豪華なんですけど、特にこの書籍の「コズミックアーカイヴス」がすごいんですよ。
小林氏:当初は資料をスキャンしてズラッと載せようという話だったのですが、外山が「せっかくですしインタビューも載せよう!」と発案して。
外山氏:収録しているインタビューは僕がほとんどブッキングしてやらせて頂きました。ただ、元ZUNTATAの小倉さんだけは、「この流れで小倉さんのインタビューがないのおかしくない!?」って石川からツッコまれまして、私も「確かにそうだ!」と思ってお願いしたんです。
堀井氏:(「コズミックアーカイヴス」を読みながら)これは良い本ですよ!「巨大戦艦ができるまで」っていう題名とかシビれますよ!そうなんだよこのプロジェクトは巨大戦艦ができるまでなんだよー!って気持ちに。仙波さん(仙波隆綱氏)もインタビューに参加されているじゃないですか!
外山氏:仙波さんにご協力頂けたのは嬉しかったですねー。これで仙波さんにお会いしてから、改めて「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」を観直したんですよ。仙波さんのお名前がバーンと出てきたところで、また感慨深くなっていました(笑)。
堀井氏:仙波さんはゲームでは「メタルブラック」や「ダライアスII」などをやられていたのですが、アニメーターの方なので、「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」の作画監督などをされているんですよね。
外山氏:機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」に参加されたあとにタイトーに入社されたんです。
堀井氏:すごいですよねー。
――かなり濃い本になっていますね。ページ数も128ページで、1ページあたりの文字の密度がものすごい(笑)。
堀井氏:僕の大好きなSega Master System版の「SAGAIA」だけで8ページもあるよ!最高!!
全員:(笑)。
小林氏:元ZUNTATAのなかやまらいでんさんが同じく元ZUNTATAの小倉さんにヒアリングしていく「SOUND 世界の風景が紡ぐ音」というコーナーがあるのですが、それがなかなか、曲を聴いていた側の視点からは出ないような質問が多くて、作っていたからこその質問ですよね。そういうものが多くて、かなり貴重な読み物になっています。
――サントラCDの「DARIUS THE OMNIBUS II -群像-」も非常に豪華ですよね。
小林氏:参加頂いたアーティストの皆様がすごいことになりましたね。
※※参加アーティスト(敬称略):Hiro (SEGA Interactive)、古代祐三 (Ancient)、石田雅彦、古川もとあき、濱田誠一 (ATOMIC花田)、岩垂徳行、中潟憲雄、下田祐 (ZUNTATA)、MASAKI (ZUNTATA)、土屋昇平 (ZUNTATA)
小林氏:このサントラはZUNTATAの石川が「やりたいようにやる!」っておっしゃられて(笑)。その宣言通りにこだわりのある内容になっています。
ちなみにタイトルの「DARIUS THE OMNIBUS II -群像-」は、1997年にZUNTATA RECORDSよりリリースされた「DARIUS THE OMNIBUS -世代-」の続編という形になっています。この「群像」というタイトルは、元ZUNTATAの小倉さんにつけて頂いています。
――「マーキー(アーケード筐体タイトルパネルのミニチュア)」も嬉しいですね。
小林氏:「ダライアス外伝」にはアーケードのマーキーがないのですが、「ダライアス外伝」のロゴを担当していた方は今も社内におりますので、このマーキーをデザインして頂きました。そこから、それなら「SAGAIA」も欲しいよねということになり、「ダライアスII」のマーキーを元にデザインしていますね。
前編はここまで。インタビュー後編も近日掲載予定なので、お楽しみに。
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