インタビュー
コーエーテクモ「DEAD OR ALIVE 6」。新堀プロデューサーに気になったところ全部きいちゃいました!
2018年9月23日 00:00
コーエーテクモゲームスは、東京ゲームショウ2018の同社ブースにて、2019年2月15日に発売予定の激闘エンターテインメントゲーム「DEAD OR ALIVE 6」をプレイアブル出展した。本稿では、新堀洋平プロデューサーのインタビューをお届けする。
―― イベントステージなどを拝見して「DEAD OR ALIVE 6」は初心者を重点的にサポートする姿勢が強いように感じられました。これはそのように作られているんですよね?@@
新堀氏: そのとおりです。「じゃぁ上級者には何もないのか?」と誤解されがちなんですが、そんなことはありません。上級者向けのレンジはきちんと設定されていますし、その一方で初心者に対する窓口も広げています。
―― 初心者をサポートする機能は、上級者にとっても使いやすいものではありますからね。
新堀氏: 初心者が使える機能やシステムは、上級者はよりよく使えるものでもあります。
―― 状況にもよりますが、ホールドにしても使えるならブレイクホールドで確実にやれるほうがいいですからね。
新堀氏: 使いどころが上級者っぽくなると思います。
―― 先日のイベントステージで「必殺技ゲージのようなシステムは意識して取り入れてこなかった」と発言がありました。これはポリシーとしてそうしてきたのでしょうか?
新堀氏: そうですね。ポリシー、生みの親のレベルから。初代「DEAD OR ALIVE」を作った人たちからそういっていました。私も何年か一緒に仕事をして「ゲージが2本あるのは邪道だよね」って感じ。
―― 当時は「ゲージが2本あるとわかりいくい」と?@@
新堀氏: わかりにくいもの、という認識でいました。
―― 当時、2D対戦格闘ゲームで複数ゲージは珍しいものではありませんでしたが、それでも?
新堀氏: そうです。われはわかりにくい、間口を狭くしているという考えです。3D対戦格闘ゲームはそうでしたから。
―― 3D対戦格闘ゲームはゲージ1本でやるべきものだと。
新堀氏: 実はそんなに不思議ではなくて。2D対戦格闘は飛び道具でやりあったりしますが、3D対戦格闘ゲームは間合いが近くて、やりとりが細かい。そのなかで複数ゲージには意識がいきづらいと考えていました。
―― その考えが変わった転機はなんでしょう?
新堀氏: まずひとつは、私が2D対戦格闘ゲームも好きだったこと。もうひとつは、格闘ゲームばかりやらず色々なゲームを遊ぶようにしました。アクションやFPSなど色々やって、「オーバーウォッチ」とか「Destiny」など。特に、今のシューターってゲージがあるじゃん!って。これはわかりやすいなぁと。
―― 確かに近年のシューターはゲージ採用例が目立ちますね。
新堀氏: アルティメットな技も使えるじゃん!って。ずっと「コール・オブ・デューティ」や「バトルフィールド」を遊んでいたんですが「オーバーウォッチ」をやったとき、ヒーローたちの必殺技が「これ面白いなぁ!」って。初心者的には「撃たなきゃ損」みたいなのがあるじゃないですか。
―― 使用をうながすということですね。
新堀氏: そうそう。当たったら倒せる。得。これは面白いなと。あとは弊社のゲームですが「仁王」をやって。
―― 「仁王」は複雑さという点でゲージ1本の対極みたいなものじゃないですか?
新堀氏: そういう意味では、ゲージがたまると“勇気が出る”んですよ。これいけるかも!って。
―― 拠り所になるのは良いことだと。
新堀氏: そうなんです。格闘ゲームでいえば、ゲージがたまったら「勝てるんじゃないかな?」って思ってもらえるかもしれない。今の時代はゲーム画面を見てすぐわからないとダメだなと。ゲームシステムとして知っていればわかるではダメ。よく知らないけど、なんか今凄い状態!ってわかるようにしよう、というのがキッカケです。
―― これだけ普遍化していますし「DEAD OR ALIVE」もゲージ1本増えたところで混乱を招くようなことはないと思えます。
新堀氏: 今のゲーマーはむしろゲージ慣れしているというか。
―― 増やすゲージの数は当初から1本と決めていましたか? 対戦格闘ゲームでは2本以上というのも珍しくなくなりましたが。
新堀氏: 何本もあったらさすがにわかりづらいだろうな、というのがひとつ。もうひとつはジレンマを与えたかった。ブレイクブローとブレイクホールドの2種類があるんですが、これが別々のゲージだったら状況に応じて使えばいい、選ばなくてもいいじゃないですか。でも一緒になっていることでジレンマが生じる。
―― 攻撃で使うべきか、防御に残しておくべきか。
新堀氏: そうなんです。そこのジレンマを生みたかった。ジレンマとわかりやすさ=1本!っていうシンプルな発想です。
―― よくあるレベル1、2、3など段階をつけず、ゲージ50%消費になったわけですね。
新堀氏: 色々考えはしました。パーセントに応じてダメージを変えるとか。
―― やはりそういったアプローチはやりたくなるものですか?
新堀氏: でも複雑化しますからね。パッと見でわからないと。
―― 2D対戦格闘では、その複雑さが普遍化しているように感じられます。
新堀氏: やりすぎになっている面もあると思うんですよ。きいたことないですか?「複雑すぎてついていけない」って。
―― ぶっちゃけ、それで失敗したゲームもいくつか例をあげられます。
新堀氏: ですよね。必要があってそうしているゲームはいいと思いますが、それを超えるようなものはちょっと。まずはゲージを使うことでわかりやすくなったシリーズ最新作を楽しんでいただければと思います。
―― 初心者を重視しているということで、それに準じた施策のようなものはお考えですか?
新堀氏: まずはここ(TGS)がそうです。ワンボタンで遊べるゲームを、まず触っていただきたい。たとえばスマートフォンのゲームは、タップだけで遊べる。今はそれくらい簡単に遊べなきゃダメだろう、というのもある。あと……初心者から上級者まで共通しているのは“見た目が大事”ということ。ネットなどに掲載されたスクリーンショットだけでは伝わらないことも多くて、特に「DEAD OR ALIVE」シリーズはそれが顕著。生で見ると全然違うんですよ!
―― ボタン連打のコンボは爽快で大変気持ちいいのですが、一方で賛否両論もあるかと思います。特に今回はダメージ量に加えて特殊ダウンもある。開発内部などはいかがですか?
新堀氏: もちろんありますよ。トレーニングモードが実装されればわかると思いますが、フェイタルラッシュはコンボ数を伸ばしすぎると補正がかかってダメージが下がる。
―― そこでテクニックが活きる、と。あえて途中でとめて連携したりダブルアップを狙ったり。
新堀氏: そうそう。1で止めていいケースもある。運ぶ目的や精神的にいらつかせたり、色々ありますよ。上級者向けでいえばブレイクホールドでしか割り込めないので、ゲージを使わせるよう仕向けることもできます。
―― そこにたどりつくまで、初心者は連打でいい。気持ちよく遊んで欲しいと。
新堀氏: 他の格闘ゲームを見て思ったんですけど、最初に覚えさせることが多いですよね。
―― そこは武道的といいますか。まず型を身に着けよう、というのは基本になっている気もします。
新堀氏: 以前の「DEAD OR ALIVE」シリーズもまったく同じか、それよりも難しかった。そこは反省点。入口は、下手でも遊べればいいというところにもってきて。対戦格闘ゲームがとっつきやすかった時代に戻したかった。チュートリアル以上の、ちょっとずつ覚えられる仕組みをこれから用意します。
―― 一般的にはクエストをこなすタイプのものはありますが、そのようなイメージでしょうか?
新堀氏: まだ内容が言えないんです(笑)。でも、そういった感じで遊びながら上達できる仕組みを考えています。
―― 初心者重視ということで、最初に触る人におすすめキャラクターはいますか?
新堀氏: 初心者はかすみ、ヒトミ、マリーあたりが触りやすい……かな? パンチボタンで戦えるキャラクターが初心者にはやりやすいと思います。
―― あやねは動きにバリエーションがありすぎて逆に大変でしょうか?
新堀氏: あやねはガチャガチャしていれば色々動くので楽しいと思いますよ。
―― あやねのガチャプレイは難しいのでは? クルクル回って自分で何やってるかわからなくなりませんか?
新堀氏: 制御できなくていいんですよ!(笑)。初心者が上級者みたいに制御しようというのがそもそも無理です。
―― たとえば僕らが教える立場なら「今何がどうなったかわかる?」って……。
新堀氏: それは上級者目線です。初心者は気持ち良く勝てればいいんです! あやねはガチャプレイでも相手がわからない動きをするじゃないですか。だから勝てちゃうんですよ。カッコイイ動きで勝ったんだから、それで楽しいじゃん! というのが私のいいたいことです。
―― 開発内部でガチャプレイ容認の線引きは、もちろんあるんですよね? ノーリスクのガチャプレイが通用したら、さすがにひどい。
新堀氏: そんなわけない(笑)。ちゃんとガードする相手にガチャプレイでは勝てないようになってます。ガードしない者同士が遊んでるときに小難しいことをいったって、面白くないんですよ! 勉強みたいなもの。
―― 教える立場なら、勉強させたくなる。
新堀氏: 先輩、先生、親は勉強をさせたがるけど、子供はしたくないじゃないですか。同じです! 初心者は楽しいことをしたいだけなんです。
―― 対戦格闘ゲームがストイックに競技性を高めてきた反動でもあるんでしょうか。
新堀氏: 我々は超ガチな世界だけではなく、よくわからないけどキャラクターを動かしていて楽しいなあ、というレベルも意識していますので、そういう人たちにもぜひ遊んでいただきたいです。
―― 競技性という点では、昨今の対戦格闘ゲームは“eスポーツ”を念頭に置いているというか、ゆえに先日のイベントステージで新堀さんの初心者を強く意識したコメントが印象に残りました。初心者への重点的なサポートと競技性は二律背反になりかねない面もあります。
新堀氏: ものすごくありますよ。先ほどにいったことと近いんですが……私は初心者がプロゲーマーと戦う必要はないし、極端にいえば上手くなる必要もないと思っているんですよ。楽しければいい。
―― エンジョイ勢でいいじゃん!と。
新堀氏: そうそう。なぜか「上手くなれ!」といってくる人もいるんですけど、みんなが上手くなる必要ないんですよ!
―― ゲーマーの性(サガ)といいますか。上達するのは楽しいでしょ?って。
新堀氏: 上手くなるのは楽しいし、そう作ってはいますが、必要以上にスピードを求めたらダメだと思うんですよね。同じくらいの強さの人と遊べるように自分のペースで遊べるように設計していますし、なにより長く楽しんでいただきたい。だから、そんなにすぐ上達を求めなくてもいいんじゃない? と思います。
―― その考え方は「5」までとずいぶん違いますね。「5」まではとてもストイックにきたと思います。
新堀氏: 「5」は入り口が狭かったと思いましたので「6」は広くしました。楽しい雰囲気を作りたくて……。
―― まず手を伸ばしてほしいですからね。
新堀氏: 「『楽しい』ってなんだろう?」と思ってディズニーランドにいったり。ゲームと関係ないところでも娯楽を探していました。そこで見つけたものは入っています。
―― 異なるジャンルから取り入れたものがたくさんあったんですね。反映されたり、栄養になっていたり……。
新堀氏: それ細かいことをいうと技術が漏れてしまうんですけど(笑)。とりあえず苦手なジャンルを遊ぶと、下手な人の気持ちがよくわかる。時にはゲームのせいにしたり(笑)。これはゲームが悪いのであって俺が悪いんじゃない! みたいな。そういったところは「6」に反映されていると思います。
―― 苦手なものからのアプローチを今やっている人は極めて少ないように思います。
新堀氏: 対戦格闘ゲームは作っている人もどんどん上手くなる。そして、遊び続けているお客さんからの声もいっぱい届く。それと違う“声”を拾わないと。そこから導ける答えは大切です。
―― その姿勢は逆にストイックですよね。
新堀氏: 大変ですよ、寝る時間もないし。でも楽しいですよね。新しいお客さんにこういうのを見せよう、ずっとやってくれているお客さんにはここを見せようとか、どんどん沸いてくる。
―― この流れできかざるをえないのは「やわらかエンジン」の一件でしょうか。「やわらかエンジンが消えた!」と、当時かなり話題になりましたよね。
新堀氏: 誤解を与えてしまったんですよね。新エンジンを作っていたんですが、まだできていなくて。TGS試遊台には70%ほどできたエンジンが入っていますから、コスチュームやキャラクターごとの違いがやってもらえば鮮明にわかるはずです。この服とこの服はどう違うんだろう、とか。
―― 同じキャラクターでもコスチュームごとに変化が生じるんですか?
新堀氏: 違います。同じ動きでも硬い服と柔らかい服は違う。
―― 皮ならピチっとする。
新堀氏: 全部揺れると不自然なので……今、世界は自然さを求めていると思います。我々も「揺れればいい」ではなく、より自然にキャラクターを描く。傷や汗もそうですけど、揺れるところも真剣にアプローチしていますよ! っていうのが70%は伝わると思います。もっともっと上を目指していますから!
―― 現状を踏まえ、より先のステップとして考えておられることはありますか?
新堀氏: 品質をあげていくことですね。質感、物理、ライティング……社内でゲームエンジンを育てながらこのゲームを作っていますので責任重大です。
―― ライティングといえばNvidiaのRTXが連想されますが?
新堀氏: さすがにあれはまだ対応できないかなと思いますが、ハイスペックなものも含めて研究しています。
―― 技術開発面でもがんばっているんですね。
新堀氏: 社内の技術部門のほとんどが「DEAD OR ALIVE」担当ですから。一蓮托生でやってもいいくらい(笑)。目指す高いレベルにあわせて社内全体が動いています。
―― それでは最後に、期待しているファンの皆さんにメッセージをお願いします。
新堀氏: 今まで色々な誤解を与えてすみません、というのがまず最初にいいたいですね。ゲームエンジンが新しくなって見た目も変わってますし、期待されているようなものもしっかり入っている。それが初期段階では実装できずお見せできなかったんですが、プレイアブル出展バージョンにはかなりものもが入っています。ただし! これも完全ではありませんから、もっともっといいものができあがると思ってください。それから、もしよかったらSNSなどで「がんばれ!」とお声がけなどいただけると、開発メンバー一同の元気、勇気、モチベーションにつながります。ぜひぜひ応援のほどをよろしくお願いします。
―― 念のためいっておくと、その真逆の行為はNG! ということで、完成に向けてがんばってください! 本日はありがとうございました。
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