インタビュー

「ファンタジーアース ジェネシス」開発者インタビュー

CBTの反響、そして正式リリースに向けたロードマップ

2018年配信予定

 アソビモとスクウェア・エニックスが共同開発を進める、9月27日配信予定のAndroid/iOS用アクションRPG「ファンタジーアース ジェネシス(以下、FEG)」。PCでの展開を続ける「ファンタジーアース ゼロ(以下、FEZ)」の流れを汲みつつ、システムをスマートフォン向けにカスタマイズしたオンラインアクションRPGだ。

 配信開始に先駆けて8月にはクローズドβテストも開催。「FEZ」プレーヤーを中心に多くの人が参加した。今回は本作を開発するアソビモの河野智幸氏、スクウェア・エニックスの内山スグル氏にインタビューを実施。CBTの反響と製品版に向けた改善点、「FEZ」との違いなど気になる質問をぶつけてみた。

アソビモの河野智幸氏(左)と、スクウェア・エニックスの内山スグル氏(右)

「『FEZ』でできなかったことを凝縮したい」

――まず、なぜアソビモさんとスクウェア・エニックスさんがタッグを組むことになったのか、その経緯から教えてもらえますか。

河野氏:3年ほど前、弊社でIPタイトルの企画があがりまして、こちらのほうからスクウェア・エニックスさんにお声がけしました。弊社としてはこれまでもMMORPGを開発・運営してきた実績があり、そういった土台もあって「ファンタジーアース」シリーズを使わせていただきたいと提案しました。

内山氏:「FEZ」も12周年を迎え、次の展開をどうするか考える時期に差し掛かっていました。以前「メルファリア マーチ」という関連作をリリースしたこともありましたが、あれはタワーディフェンスゲームで、オンラインアクションゲームである原作とは毛色の違うものでした。スマートフォンで本格的なアクションゲームができないものかと考えていたところに、アソビモさんから提案をいただいたのです。

――お互いに両社に対して、どんな印象を持っていましたか?

河野氏:その当時から非常に強力なIPを持っていて、さらにそれらを育てていく力も持ち合わせていますよね。強力なIPがあるから、ファン層も厚くて、総合力の高いメーカーという印象です。

内山氏:アソビモさんのゲームは以前から知っていまして、携帯ゲーム=ソーシャルゲームという流れにとらわれず、ハードコアでガッツリ遊べるゲームを作っている印象でした。そういう意味でも「ファンタジーアース」シリーズを預けても、PCゲームと差別化しつつ、肩を並べるゲームにしてくれるという期待感がありました。

――これまで運営してきた「FEZ」と「FEG」で、どのような差別化を考えていますか?

内山氏:1番は操作性の部分です。PCのキーボードとマウスの操作と、2本の指で行なうスマートフォンの操作ではできることが違いますし、どうやって利便性を高めていくかは課題としてありました。最初は「FEZ」の移植版に近い形、つまりTPSの操作性で作っていたのですが、やっぱりエイムを合わせるのが難しいんですよね。今でこそバトルロワイヤル系のゲームが増えてきましたが、本作はスキルの選択までするので、まったく同じにしても受け入れられないだろうと考え、クォータービューでの操作にしました。

 また「FEZ」でできなかったことを凝縮しようという考えもあります。「FEZ」では育成のパターンも大体決まっていて、今から劇的に変更してもユーザーさんは戸惑ってしまいます。だから「FEG」では育成にも幅を持たせて、より自由な成長が楽しめるようになっています。


モバイル向けにタップとフリック、スワイプに最適化されたクォータービュー視点となった「FEG」

――ということは、新規ユーザーだけでなく「FEZ」プレーヤーもターゲット層に入っていたと。

内山氏:そうなります。せっかくIPを使った作品なので、今も「FEZ」をプレイされている方、かつてプレイしていた方にはぜひ触ってもらいたいです。その一方で、先ほどお話したバトルロワイヤル系のゲームで3D空間に慣れた人にも積極的にアプローチしたいですね。

――バトルロワイヤルというジャンルの盛り上がりは、「FEG」にとっても決して無関係ではないと。そういった市場の変化も意識されているのですか?

河野氏:「FEZ」の流れからは外れないことを第1に考えていますが、いろいろなゲームの良いところは参考にしていく気持ちもあります。

内山氏:今まではPCでしか遊べなかったタイトルが、スマートフォンでも遊べるようになったのは大きな変化ですよね。そのおかげもあって、ゲームから一旦離れていた人が戻ってきて、そのままヘビーユーザーになったり。「FEG」にとっては充分追い風と言える市場になっていると思います。

――恐らく本作では「FEZ」との差別化も考えているかと思いますが、逆に絶対に変えてはいけない「ファンタジーアース」シリーズの軸となる要素はどこだと考えていますか?

内山氏:やっぱり自分はアクションだと思います。他のプレーヤーとの連携はシリーズの基軸であり、アクションで連携をするから、シリーズならではの面白さに発展するのです。「FEG」のプロジェクトが始まった当初は通信環境の問題から「スマートフォンで50対50のアクションゲームは難しいのでは」という意見もありました。だけど僕のこだわりで、「まずはこのシステムで進めてくれ」とお願いしましたね。スタッフの努力もあって、スマートフォンでも変わらない連携を楽しめるようになりました。

戦場は同盟間が拮抗するバランスに

――本作にはエイルザン、アデルヴァル、ケムダーヴという3つの同盟が登場しますが、クローズドβテストではどの同盟が人気でしたか?

河野氏:ケムダーヴでしたね。戦場がケムダーヴのイメージカラーである黄色一色に染まることも珍しくありませんでした。

内山氏:ケムダーヴは魔女レグルスという女の子のキャラクターが盟主なんですけど、それが相当キャッチーだったんだと思います。第一印象に加えて、YouTuberの方だったり、コミュニティを持っている方がケムダーヴを選択したのも人気のひとつだったようです。だから人数はもちろん、プレイする意欲が高い人が集まったのがケムダーヴでした。


3同盟中1番人気だったケムダーヴ。盟主は魔女レグルス
ケムダーヴはレグルスのキャラクター人気もあり、CBTでは圧倒的な強さを誇った。マップが黄色一色に……

――人気があるのは良い半面、3つの同盟を公平にしなければいけないのでバランス調整は難しそうです。

河野氏:製品版では同盟間である程度の人数差が生まれたら、上位層の同盟には入れなくする措置を取る予定です。バランスが取れてきたらまた開放して、均等な人数になる施策を考えています。

内山氏:頑張っている人たちを決しておざなりにしてはいけないと思っています。一般的に強いと言われる人たちも充分に満足できて、なおかつ人数が少ない同盟も楽しめる環境が理想ですし、そうなるように調整します。1回の戦闘にしても、戦場全体の占領率にしても、僅差が一番面白いと思うんです。戦いが一方的に終わるのではなく、拮抗している状況をこちら側で作り出すことが目標ですね。

――確かに僅差での戦いであれば、例え負けても次へのモチベーションに繋がりますからね。

内山氏:そうなんですよ。CBTではケムダーヴが強すぎて、僅差のバランスにできていないのは反省点だと捉えています。僕自身もプレイしたんですけど、ローディング画面の時点で負けが決まっているような状況でしたから……。自分自身でも痛感した問題点ですので、しっかりした施策は絶対に入れます。

――そのほかに、ユーザーからの反響で印象的だったものは?

河野氏:「FEZ」ユーザーの方も多数参加していただきまして、好意的な声から厳しい意見まで、さまざまな反響がありました。ケムダーヴが強すぎた点は私たちだけでなく、ユーザーさんも感じていたのはすでにわかっているところです。あらゆる点でのバランス調整はしなければいけないと痛感しています。

内山氏:ガチャで良いアイテムを当てた人が一方的に攻めている状況がありまして、これは私たちが意図している戦闘ではありませんでした。これに関してはすでにチーム内でも話をしておりまして、1人のユーザーさんが無双するようなゲームにはしないと確約します。もうひとつ、このゲームはあえてシンプルにしているところもあって、「FEZ」未体験の人でも入りやすい内容になっています。その反面、シンプルすぎるがゆえに「FEZ」ユーザーさんからは「もっと戦術性を高く」という声をいただきました。この声をもとに、戦術性を意識したルールなどをリリース後のアップデートで追加することにしています。

――逆にポジティブな内容だと、どんな声がありましたか?

河野氏:グラフィックスでは「FEZ」の素材も使っており、評判の良かったところのひとつです。グラフィックスに凝りすぎると動作が重くなる可能性もありますが、本作に関しては軽快に動かせることも評価の高さに繋がったと感じています。あとはサウンドやキャラクターにも魅力を感じていただいたようで、そこに関しては今後も積極的にアピールしていきたいです。

――キャラクタークリエイトにはどんなこだわりを詰め込んでいるのでしょうか。

内山氏:PCからスマートフォンに落とし込む際の容量は気にしつつも、なるべく「FEZ」に似せることです。「FEZ」のお客様にも遊んでもらいたいく、そうなるといわゆる休眠ユーザーにも触ってもらう必要があるというのがスタート地点でした。かつてのユーザーさんが「FEG」でキャラクターを作ったとき、「そうそう、こんな顔だった!」と思い出してくれるようなパーツを揃えたいと意識しました。

河野氏:現時点でも「FEZ」の顔を再現できたり、いろいろなカスタマイズが可能です。それだけでなくリリース後にもいろいろなパーツをアップデートで追加していく考えです。

――顔のパーツに「FEZ」っぽさが残っているのは、CBTをプレイしていても度々感じました。

内山氏:10年以上前のゲームなので良い面も悪い面もあるとは思うんですけど、あえて残しました。「FEZ」のプレイ経験がある方からは特に好評で、かつての自分のキャラクターを再現できて、懐かしさも感じていただいたみたいです。


「FEG」のキャラクタークリエイト。"「FEZ」っぽさ"が感じられる

――厳しい意見があった部分を改善していくのが最優先とは思いますが、それとは別に皆さんが追加、改善したい要素はありますか?

河野氏:本作では50人対50人の大規模バトルを採用していますが、それ以外の遊びはぜひ追加したいですね。このゲームでできることはまだまだたくさんあると思いますし、スマートフォンだからこそ実現できる遊び方もあると思います。

内山氏:今の話に通じるところで、戦闘時のルールにもっとバリエーションを持たせたいですね。現状はかなりライトな遊びに徹しているので、もっとタクティカルな遊び方を増やしていきたいです。あとはクラスについても、既存の5種類だけでなくもっと種類を増やす予定です。それに合わせて武器のバリエーションも、例えば銃やムチといったものを追加していきたいですね。

 もうひとつ考えていることとして、コミュニケーションの部分では「FEZ」にあった戦場でのチャット機能をやめて、簡単な定型文とスタンプのみにしました。これだけでも充分なコミュニケーションは取れるのですが、やはり細かな作戦の指示はできないんですよね。いかに戦術的な戦い方ができるようにするかは、現在精査しているところです。

――課金に関する方向性についても教えてください。本作ではどこまで無課金でプレイできるように調整しているのでしょうか。

河野氏:まずはスタート地点で差が出ないように調整するつもりで、具体的には☆1の武器を持つユーザーさんが、☆4の武器を持つユーザーさんに手も足も出ない、という状況は避けるようにします。

内山氏:課金によるメリットは、いわゆる時短に該当する部分もあります。無課金の方でも粘り強くプレイすれば、じわじわと強くなる様子を実感できると思います。また、ガチャで強い武器を手に入れた方は戦場でボス的な存在になるので、そのロールプレイを楽しんでもらいたいです。しかしボスはあくまでもボスで、スキルや立ち回りを駆使すれば倒せるはずですし、倒せる難易度に調整します。


「FEG」では武器のレアリティに応じて使用できるスキルの数が増えていく

将来は見ているだけで楽しめる企画も

――初心者がプレイする上で注意する点、コツなどはありますか?

河野氏:こちらとしては誰もが最前線で戦えるバランスにしていますので、まずは自分の役割に徹するのではなく、自由に戦ってもらえればと思います。その次のステップとして、自分がなにをするべきかを考えたり、戦況によって立ち回りを考えることが重要になります。後衛で守りを固める、バフ効果で味方を助けるといった楽しみ方もあるので、いろいろと試して、その人なりのベストを見つけてもらいたいです。

内山氏:初心者の方は最初なにをしていいか分からないと思うんですね。対人ゲームだと理解している人が強い傾向があるのは間違いないので、最初は負けることもあるかと思いますが、なんども挑戦することが大切です。本作に限らず対人ゲームは挑戦、失敗、再挑戦の繰り返しで、成功体験ばかりとはいきません。失敗したときに次どうするかを考えることが成功への近道ですし、私たちとしても再挑戦しやすい環境を整えられるように努力します。初心者の方へのアドバイスを一言でまとめるなら、「失敗体験すら楽しんでほしい」ですね。

――では、育成の面で気を付けたいポイントは?

河野氏:例え負けたとしても回復アイテムや、成長に使うマテリアルが手に入るので、まずは戦場に赴き、場数を踏むことが大切です。あとはイベントやミッションの報酬で成長を促すアイテムが入手できます。イベントに参加しつつキャラクターや武器を強化し、戦場に挑戦するのが大きなサイクルです。

内山氏:武器の強化という点に限って言えば、いろいろと試すのではなくお気に入りのひとつを徹底的に強化していくほうが効率的です。そしてなにより、自分自身が理想とするロールプレイを想像することが大切だと思うんです。タンカーでも攻撃特化なのか、HP特化なのかで使用する装備品も変わってきますし、追い求めるキャラクター像をしっかり定めておくことですね。

――正式リリース後の話になりますが、イベントを始めとした企画ではどんなことを考えていますか?

河野氏:ゲーム内では先ほども話題に挙がった成長を促進するイベントですとか、他作品とのコラボレーションは随時実施したいと考えています。ゲーム外についてもオフラインイベントなどの企画は積極的に行ない、ファンの皆さんの声を聞き、私たちも直接メッセージを発信する機会を作る予定です。またSNSなどを活用して、地方のユーザーさんとも交流が取れる施策も考えております。

内山氏:あとはユーザーさんはもちろん、見ているだけでもワイワイ楽しめるような企画もやっていきたいですね。現在は50対50しかないですけど、今後は小規模な対戦も導入して、チーム戦をやりやすい環境を作りたいです。正直なところ、これはまだ具体的な企画があるわけではないんですけど、個人的に壮大な夢として抱いています。

――正式リリースを期待するファンに向けてメッセージをお願いします。

河野氏:CBTでの意見にはすべて目を通しまして、修正すべき点はリリース時ですべて解決した形で提供します。もちろんそれでゴールではなく、「FEG」でしか体験できない楽しさは常に追求していきますので、ご期待下さい。

内山氏:CBTに参加し、厳しい意見を送っていただいた方たちは、ほぼ全員同じ意見でした。そこは絶対に修正すべき点ですし、全力を挙げて取り組んでいます。ぜひリリース時に再びプレイして頂いて、どんな改善があったのかを実感してもらえると嬉しいです。

――本日はありがとうございました。