インタビュー
「Forza Horizon 4」アートディレクターBenjamin Penrose氏インタビュー
「四季の表現は『Forza Horizon」からの宿願」。「FH4」のアートの魅力に迫る
2018年9月12日 16:00
オーストラリアシドニーで行なわれたXboxのプライベートイベント「Forza Horizon 4 Sydney Drive-In Preview Event」では、「Forza Horizon 4」のハンズオンに加えて、同作アートディレクターBenjamin Penrose氏へのインタビューを行なうことができた。Penrose氏は、E3でのプレゼンを行なっており、開発元Playground Gamesの広告塔として活動している人物だ。
インタビューは15分と限られた時間だったが、本業であるアートに関する話題をメインに、ハンズオンで気づいたことに関する質問や、10月2日の製品版の仕様について、いくつか確認することができた。
ひとつ残念だったのは、「Forza Horizon 4」で実現するとしてきたXbox One Xでの4K/60fpsは見送られてしまったことだ。4K/60fpsが仕様上可能なのはPC版のみで、Xbox One Xでは1080p/60fpsか、4K/30fpsの選択制となる。昨年リリースされた姉妹作である「Forza Motorsport 7」では実現している4K/60fpsだが、「Forza Horizon 4」は、不特定多数のオブジェクトが登場するオープンワールドのゲームであり、さらにハンズオンレポートでもお伝えしたように、ライティングモデルが強化されており、実現は難しかったようだ。
実装まで6年掛かった四季へのこだわり
――「Forza Horizon 3」と「Forza Horizon 4」の大きな進化点は何か?
BenjaminPenrose氏:複数の大きなアイデアがあって、それらを同時に実現していることだ。それによってシリーズ史上もっとも進化した作品が完成した。もっとも大きな要素としてはUKを舞台にした上で、四季を再現するダイナミックシーズンシステムを導入したこと。ダイナミックシーズンシステムは我々が長らく実装を願っていたフィーチャーのひとつだ。
――いつ頃から入れたいと考えていたのか?
Penrose氏:我々がダイナミックシーズンについてディスカッションを開始したのは実は「Forza Horizon 1」の頃だ(笑)。実装するまでに本当に長い時間が掛かったよ。当時は技術的な問題から実装することが難しかったんだ。いつか入れたいと思い続けて、「Forza Horizon 4」のプリプロダクションの段階で、エンジニアリングチームとテクニカルアートチームが最終的に実装することを決断したんだ。
それと同時に、いつか実現しようとしたUKをロケーションに四季を再現することが決定した。四季を盛り込む際に、どのロケーションにするかは重要な問題だ。前作「Forza Horizon 3」ではオーストラリアが舞台になっていたが、誰もがわかる自然な形で四季を取り入れるのは難しい。その点でUKは四季が自然にフィットしたんだ。
我々のスタジオもUKにあるので、四季を完璧に再現することに情熱を注いだよ。四季があるということは、同じロケーションでも4種類のアセット、4パターンのアプローチ、要するに4倍の手間が必要になるということだ。開発するのは大変だったが、その分、ゲームに今までに無い多様性を盛り込むことに成功したよ。
プレーヤーはこのゲームを通じて、UKのリアルな四季を体験することができると思う。しかも、1人でだけでななく、フレンドやチームと一緒に。このゲームでは四季は1週間ごとに入れ替わっていく。自分だけではなく全プレーヤーの季節がだ。春、夏、秋、冬、それぞれのシーズンで、違ったシチュエーションでドライビングを楽しむことができる。
それだけではない。季節によって当然コンテンツも変わるようになっている。各シーズン限定のレース、チャレンジ、チャンピオンシップが存在し、季節によって異なるコンテンツが楽しめるようになっている。1週間に1シーズンだから実時間の1カ月でゲーム内の1年が経過することになるが、1カ月毎にメジャーアップデートを実施し、常に新たなコンテンツを楽しめるようになっている。1カ月後の次の冬では、また異なる冬季レースが用意されているというわけだ。この季節の変更や、アップデートはローンチ直後からスタートしていく予定だ。
――念のためだが、1週間ごとの季節変更は、現実に則った形になるのか? それともランダムで春から秋になったりすることはあるのか?
Penrose氏:現実に即した形になる。春、夏、秋、冬だ。春から冬に戻ったり、春から秋に飛んだりはしない。
「Forza Motorsport 7」同等以上のゲームエンジンを採用
――ハンズオンをプレイして、ゲームエンジンが「Forza Horizon 3」からまた進化していると感じたが、「Forza Motorsport 7」と同じと理解していいのか?
Penrose氏:基本的にそうだが、細かいところで違いがある。たとえば、物理周りの表現やドライビングアシストなどの機能は「Forza Motorsport 7」と同じだ。異なる点は、「Forza Motorsport 7」はトラックレースをメインとしたゲームで、「Forza Horizon 4」はオープンワールドで、ゲームデザインのベースに違いがあるため、よりリアルな世界を再現するためにビジュアル表現に違いがある。たとえば、光の表現などがそうだが、全部細かく説明するのは難しい(笑)。
――E3での発表当時「Forza Horizon 4」は、Xbox Oneでも4K/60fpsを目指すと説明していたが、今回のデモでは4K/30fpsだった。最終仕様はどうなったのか。
Penrose氏:Xbox Oneは1080p/30fps、Xbox One Xは1080p/60fps、もしくは4K/30fpsで、ユーザーが選択できる。PCは上限は設定していないので、パワフルなゲーミングPCなら4K/60fpsやそれ以上も可能だ。
――あなたはアートディレクターということで、たくさんのロケに行ったと思うが、どれぐらいのロケをこなし、どういうところに行ったのか聞かせて欲しい。
Penrose氏:メニーメニー、メニーロケーションだ(笑)。とても数え切れないよ。ひとつ例を挙げるとスコットランドだ。「Forza Horizon 3」で描かれていたオーストラリアは、比較的フラットなフィールドが多かったと思う。「Forza Horizon 4」では、スコットランドの高地や山々をできるだけ正確に再現したいと考えたんだ。高さが表現できれば、クレイジーなジャンプスタントができるだろう?(笑)。スコットランドはあくまで一例だが、全体としてとても素晴らしいマップができたと思っているよ。とても楽しい経験ができるようになっていると思う。
――舞台が変わればオブジェクトも変わるが、どれぐらい新しいオブジェクトを盛り込んでいるのか? デモで少し走っただけでも、UKの古い街並みや、歴史のある教会などが目に映ってとても印象的だった。
Penrose氏:正確な数は数えられないよ(笑)。当然のことだが、「Forza Horizon 3」からすべてのアセットを作り直しているし、固有のアセットから生み出されたユニークな世界だ。建物、木々、道路、カフェのイスやテーブルなど数千ものオブジェクトをすべて作り直している。
――今回も広大なオープンワールドマップを実装しているが、もっとも気に入っているエリアはどこか?
Penrose氏:どこというか、今回ビジュアル的に最も気に入っているのはライティングモデルだ。シリーズ最高のライティングモデルを実装している。ライティングデータは、実際のUKの空から、すべての季節で取られた本物のデータだ。それによって表現されたUKの世界すべてがお気に入りだ。
――今回登場するクルマの中でもっともユニークなものは何か?
Penrose氏:やっぱりMcLaren Sennaだと思う。ロードカーとして史上最速を誇り、側面にガラスが使われているなど、見た目も素晴らしい。
――開発でもっとも難しかったポイントはどこか?
Penrose氏:良い質問だ。それは4つの季節を1つのゲームに盛り込んだことだ。それはマップを作るのに従来の4倍の労力が必要とすることを意味する。四季を再現するためにより多くのツール、テクノロジーが必要となり、アートチーム、テクノロジーチームはすべての手間が4倍になり、チームの規模もさらに拡大した。四季の実現は、我々にとってもっとも大きなチャレンジになったよ。
――Gamescomで「Halo」のショウケースを見ることができた。ショウケースは「Forza Horizon」シリーズの大きな魅力のひとつだが、ほかにどのようなショウケースが用意されているのか?
Penrose氏:今回も色々用意しているので楽しみにして欲しい。たとえばホバークラフトのショウケースは楽しいと思う。スコットランドの山の上を一気に駆け下りてホバークラフトとレースするんだ。湖や川を乗り越えながらね。クレイジーなショウケースだと思うよ。
――「Forza Horizon 4」にも、「Forza Horizon 3」のBlizzard Mountainのような有料のエキスパンションパックは用意されるのか?
Penrose氏:毎週のアップデートのほかにも、無数のプランを用意している。ただ、その内容についてはみんなを驚かせたいから今はまだ話せない。そういう機会を提供できればと考えているが、コミュニティが何を望んでいるのか、その把握が先だと思う。その上でコミュニティが最も望んでいるものを用意したい。
――「Forza Horizon 4」でもさっそくVTOL(垂直離着陸機)がレースに登場したりしていたから、広大なオープンワールドをフル活用したエアクラフトレースが登場しても、私は驚かない(笑)。
Penrose氏:エアクラフトレース!? クレイジーなアイデアだと思う。開発チームに伝えておくよ(笑)。
――日本のゲームファンにメッセージを
Penrose氏:まずはいつも「Forza」シリーズを楽しんでくれてありがとう。日本のコミュニティの多くの方が「Forza Horizon」シリーズを楽しんでくれていると聞いている。今回我々は史上最高の作品を作ることができて、アートディレクターとしてその反応が待ちきれない。フォトモードを使って美しい風景と共に写真を撮って楽しんだり、ペイントなどでカスタマイズして自分だけの1台をデザインしてみて欲しい。そして遊んだ上で、皆さんのフィードバックを待っている。