インタビュー

スマホ用RPG「ソラとウミのアイダ」広井王子氏に色々聞いてみた!

アニメ化直前! 尾道宇宙漁業団育成センター女子部はどうなる?

サービス中

基本プレイ無料アイテム課金制

 2017年9月からサービスを開始した、フォワードワークスのAndroid/iOS用宇宙魚捕獲アクションゲーム「ソラとウミのアイダ(以下ソラウミ)」。基本プレイ無料で、ビジネスモデルはアイテム課金制。

 「ソラウミ」は、地球から魚がいなくなり、宇宙に巨大なイケスを作り魚を養殖する時代。宇宙でその魚達を命がけで捕獲するのが宇宙漁師。近年強まりつつあった“男女雇用機会均等法”により、女性もこの宇宙漁師へと進出することになり、6人の新米宇宙漁師候補生が選ばれ、活動を開始する。

 プレーヤーは、この6人の新米宇宙漁師候補生とコミュニケーションを取りながら彼女たちを育てていくことになる。ゲームは、彼女たちとコミュニケーションを取りつつ物語を進めていくストーリーパートと、宇宙魚を捕まえる宇宙漁業の2つのパートで進行。宇宙漁業では、守護神と共に出漁し、おはじきの要領で守護神を宇宙魚にぶつけて攻撃していく。

 それぞれ背景を持った魅力的な女の子達と、熱い物語の展開が注目を集めているが、2018年10月からのアニメ放送も決定し、それに合わせてますますゲームも進化していきそうだ。このたび、原作を手掛ける広井王子氏に色々と聞いてみた。

【広井王子氏】
【オリジナルゲームアプリ第一弾「ソラとウミのアイダ」プロモーションムービー】

「ソーシャルゲームの運営は、舞台をやっているみたい」

―― 「ソラウミ」のサービスを開始されて、ユーザーさんからの反響はいかがですか?

広井氏: 僕たちが考えていた部分や上手く直しきれなかった部分があって、その部分でのクレームとか、「使いにくいです」という声はたくさんいただいて、そこはすごく反省もしましたし、直している最中です。

 ただ、プレーヤーさんの中には、尾道というリアルな場所があり、その場所がゲームの中でほっこりと描かれていると受け止めていらっしゃる方がいらして、そういったところは狙い通りだったなとは思っています。

―― ちなみに広井さんとしては、ソーシャルのゲームに関わられるのは初めてですか?

広井氏: 初めてです。

―― 逆に言えばリアルタイムにシステムを直すことができたり、いろいろすることができるというのは、ある意味クリエイターとして新しいところだと思いますし、楽しいところもあると思うのですが、いかがですか。

広井氏: 舞台やってるみたいですね。

―― おお!

広井氏: 「サクラ大戦」の歌謡ショウをやっていた頃、お客さんと毎日会いながらウケなかったところを直して次の日に挑むという作業にちょっと似ていて、そこはすごく楽しいです。お客さんが怒っていたりとか、たくさんプレイしていろんな報告をしてくれて、「ここ使いにくいじゃないか」と言う声もすごくよくわかります。

 僕らの目が行き届かなかったところとか、そういう所を直していきながら、よりいいものにしていきたいなと思っています。お客様の声に寄り添っていけたらいいな、なんて思いながら今もやっています。

 それで、(色々直したことで)「こんなに変わったんだ!」ってびっくりもさせたい!!(笑)。

―― そうですよね。ソーシャルゲームはそれができる媒体ですよね。

広井氏: そうなの、パッケージソフトだとリリースしたらもうアウトだから。手を離れるともう終わりじゃないですか。「(ユーザーさんの声を聞いても)そうなんだよね~、そこのところは直せなかったな~」とか「ああ、もうちょっと考えておけばよかったな」とかいう部分が後から出てきても、どうしようもないんですが、スマートフォンのゲームは、お客さんが支えてくれればどんどん良く変えていけるので、そこはすごく違うんだなと思いました。でも、思っていた以上に大変です。

―― 大変というのは、どういうことでしょう?

広井氏: 次から次へと発生する、様々な作業が大変ですね。直そうとした時、瞬時にやらなければならないじゃないですか。毎日毎日、その作業に追われていくということなので、そういった意味で大変ですね。

 でも、そういった所もやはり舞台に似ています。毎日毎日、その日に直して、朝みんなに出てきてもらって直したりしましたから。そういうのもすごく似てますよね。それに対応できるチームワークを作らないといけないなと思っています。

―― 制作チームのチームワークですね。

広井氏: そうですね。「ソラウミ」ではいろいろな会社が入っているので、チームワークを作り上げていかなければと思います。最初の頃は、コミュニケーションなど少しまとまりが悪かったようなところが、今はどんどん良くなってきていますので。

 そこは、フォワードワークスさんがいらっしゃって、よくわかってらっしゃるので、会社間のコミュニケーションなどをまとめていただいてます。僕もその中のパーツですから。瞬時に対応できるようには考えていますね。夜中にもメールが来ますし、そういうのに対して、「そこはすぐ直します」とかやっています。逆に僕からもクレームを入れたりしますから。「ここ直そうよ~」、「よし、ちょっと待って」とかありますからね。

―― 他のソーシャルのゲームの方にインタビューした時に、やりたいこともものすごく山のようにあって、その優先順位をつけるのが大変だと。

広井氏: そうです。全くその通りです。初めて経験して、それが大変です。どこからやるのかという。とりまとめているフォワードワークスさんが大変です。そこを整理しなきゃいけないので。

―― どこからスタートしていくかというところが難しいですね。でも、同時にそうやって伺っていると、やっぱり熱い現場なんだなと思うのですが、

広井氏: 熱いとおもいますよ。本当に。

―― 昔、「MOTHER(任天堂のファミコン用RPG)」の制作を手掛けてらっしゃった方にお話を伺った時に、「4畳半にみんなで集まって、ずっと作り続けていて、あの熱さは最近ではちょっとない」というふうに仰っていたんですね。ソーシャルゲームは、ずっとリアルタイムで運営されているので、同じような熱さを感じますね。

広井氏: あの頃よりもいいのは、今はネットがあるということですよね。デザイナーさんから上がってきた画像を、すぐにラフで直してもらい、「ここのパーツを入れて下さい」と伝えると開発の方に進むという。こういったやりとりが今は早いですから。

 あれが昔だったら、絵を持ってデザイナーさんの所に行かなければならない。ネットで夜中でも何でも対応できるというのは、すごくいいですよね。そこの所はスピードアップできると思うんですね。大事な所は、人と会わなければなりませんが、皆が移動せずに机の所で仕事をできる環境をどれだけ作っておくかということが、すごく大事だと思いますね。それぞれ、仕事の環境が違うので。デザイナーさんは夜中にやってらっしゃるし、そういうのに全部順応していくという。今そのチームワーク作りが、いい感じで回り始めていますね。

―― ゲームの方もそれに合わせて進化しつつあるという感じでしょうか?

広井氏: そうですね。

イケスもどんどん拡張され、オープン当初からするとかなりコンテンツは豊富になっている。ちなみにスクリーンショットは47号イケス「暗黒に誘う渦巻き」

ストーリーはアニメと相互補完関係に

―― ゲームの「ソラウミ」では、世界観など設定が1番はじめにできあがり、それらを土台にしてキャラクターを作っていかれたんだと思います。キャラクター、すごくかわいくて、明るくて、すごくいいなと思いました。プレイしてみて思ったんですが、広井さんらしいなって思ったんですよね。ツボをついた、広井さんらしいところがあるなと感じました。キャラクターの作成で気を付けられたところというのはありますか?

広井氏: 1番最初に、フォワードワークスさんがどうされたいのかを考えました。

 フォワードワークスさんに「これはアプリのゲームなんですか? それともコンテンツなんですか?」と伺うと、「やはりコンテンツです」と答えが返ってきました。そう考えた時に、主人公は少ない方がいいなっていう(笑)。これ、主人公1,000体いたらアニメにならないな、舞台にもできないし、どうにもならないなと思って。そうなると、原作となるゲームから違うものを作るのは至難の業です。そう思った時に、主人公は少なくしようと考えて、6人と決めたんです。

 それと守護神でしょうか。最初の頃は守護神を武器としての考えていたんですね。ところが実際に「守護神」出してみると、プレーヤーの皆さんはキャラクターとしてみていて、大切に育てていく。皆さん守護神に愛着を持っていらっしゃるようで、そこを見抜けなかったのは僕の反省点ですね。きちんと1体ずつ設定しましたが、結果的に記号っぽくなってしまったところが、少し反省でした。今そこのところを直そうとしています。

―― 例えば、「尾道宇宙漁業団育成センター女子部」の女の子たちと、守護神とのドラマなどもあるのでしょうか?

広井氏: それはアニメになりますね。そちらで補完するしかないですね。いまゲームの中でやろうとすると、ちょっと煩雑になりすぎてしまいます。たとえば奥の院を作って、いつもランダムに守護神がでていて、候補生たちの噂をしてるというのならできるんですよ。「あの子、弱い~、ダメだな」とか(笑)。

―― それはそれで、やっぱり楽しいですよね。ドラマの裏側が見えるからこそゲームでやろうと思えますよね。

広井氏: たとえば田霧姫も、すごくドラマが見える絵なんですよね。バッグを持った旅人のような出で立ちで、少しスチームパンクぽくて。そういったところ、将来的に進化させたときに技で活かせないかとか。そういうことも、これからは考えていかなければならないと思っています。田霧姫なんかアニメ1本ぐらいできるキャラクターなんですよ。素晴らしいデザインを作ってくれたと思っています。そういったところを大事にしていく。単なる使い捨てではなくて、ひとつひとつの守護神たちをすごく大事にして、その中からドラマが生まれたらおもしろいなと思っているので、そこは見つめ直しているところですね。

―― それがアニメでつながりができれば……

広井氏: できたら面白いだろうし。

―― プレーヤー側の6人の女の子とつながりができたら……

広井氏: そうなんです、そうなんです(連呼)。

―― ただ単に育てるだけだったら、分断されてしまいますからね。そこにもきちんと補完する道筋を作ってあげる。

広井氏: それがメディアミックスの面白さだと思っています。ゲームの中でできなかったことを、他のメディアでやってもらいたいと思っているんですね。尾道のあの雑踏の音とか、電車がばーっと走ってくる様子、海風が吹いてくるとか、そういうのはソーシャルゲームだとなかなか表現できないんですよね。

 それは、本当は小説がやることですね。小説だと、そういう「地」の部分がすごくよくて、情景が浮かんだりとか、においまでもこう感じられるみたいな小説があったらいいなと思ってます。

 たとえば守護神たちの動きの面白さというのは、もしかしたらアニメの方が全然得意かもしれない。いろいろ広がりがあったらいいなと思っています。

―― キャラクターと言えば方言が非常にかわいらしいと感じます。今後もストーリーがずっと追加されていくと思うのですが、その中でセリフも、基本的には方言にこだわってやっていきたいという感じでしょうか?

広井氏: はい。今回いろんなことがあって、メインストーリーで広島の人たちをあまり扱えなかった。予算の関係もあるし、いろんな制限もあって。男漁師なんかも2人しか出てこない。そのうち1人は千葉ですし。そういうこともあって、「広島在住の漁師たちも増やさなきゃいけないよね」と話をしています。

候補生ごとのドラマも充実している

ストーリーや追加コンテンツは、どんどん用意しています

―― ストーリーをプレイしていて、「男女雇用機会均等法」など、社会派っぽいという印象です。もっと明るい成長譚なのかなと勝手に思っていました。

広井氏: 皆が明るくて、女の子たちもすごくて、最初から漁師たちと打ち解けていて……でもそういうのはウソだよね。漁師の経験も無く素人で尾道に来て、仲良くしているというのは“お客さん”だよね。

 だから最初は彼女たちにとっては厳しい状況の方がリアルで、男の漁師たちも本気で漁師をやってるから辛く当たるわけで、その方が男漁師の気概みたいなものも表現できるし、かっこいいと思った。それをちゃんとリアルに表現した上で、彼女たちが男漁師を見返すために頑張るという。だから今後、色々とストーリーは展開していきますよ。

―― なるほど、先を見越してのストーリーの流れなんですね。それと同時に、やはりコンテンツの進行がもう少し早くならないかなと思う方も多かったりしますよね。運営方針もあって難しいと思いますが。

広井氏: シナリオや守護神など、あんなにたくさん作ったのに足らないんですよ。急遽「シナリオを作れ」と言われて、えらい大変な思いをしたんですから(笑)。

 「ソラウミ」ではコンテンツをどんどん作って、音声の収録などもしていかなければならないコンテンツだということがわかりました。制作側も頑張らないといけないという。ただ、どこかでもっといい方法を見つけようとかは思っています。

 やはりゲームってプレイすると面白いんだよね。だから消費が早いんだと思います。今回は、すごく勉強になった。ぼくの奥さんもシナリオを進めるよりも守護神をすごく大切に育てているんですよ。それを見ていると、「あーこうやってキャラクターに入れ込んでいるなら、キャラクターの物語や守護神の物語を用意しないともったいないなぁ」と思ってます。

 それと、★4を進化させると普通の★5よりも強かったりするんですよ。僕の友達は、★4ですらほとんど持っていなくて★3を進化させてるんですね。けっこう時間がかかると思うのですが、それを見ていると、遊び方にすごくバリエーションがあるから、そういう人たちが楽しめるイケスとかイベントとかをちゃんと用意しなければいけないなと思っています。

 「ソラウミ」は、全面改良しなくても、イケスを色々作っていけばイベント対応が可能ですから、それをうまくやれば、もっともっと楽しくなるかなと思って。それと、「ソラウミ」は尾道が舞台ですから、きちんとお祭りなど季節のイベントを拾おうと思っています。

―― 自分は、アクションゲームが好きということで、「宇宙漁業」ばかりプレイしてしまいます。ストーリー部分と「宇宙漁業」の部分が若干関連が薄い気がするのですが、今後より繋がりが強化されるのでしょうか?

広井氏: 僕もアクションゲームの「宇宙漁業」の方を中心にプレイしてますね。

 以前、台湾に行った時に東京に帰ってくると暇で、僕も本当にゲームが好きだから、ゲームばかりプレイしていました。あるゲームをプレイしていたとき、ストーリー部分は読まないで、10時間ぐらいアクションゲームばかり連続でプレイしていると、ふっと息抜きしたくなる。そんな時に、なにか映像作品を見る気にもならなくて、ラジオを聞いてたんです。その時に「これだ!」って思って。

 「ソラウミ」も、「宇宙漁業」をプレイしてもらって、ラジオを聞くのと一緒で、気付いたときにストーリーを読んでもらい、「ああ、そうか。お前らそうだったのか」と思ってもらえればと。これは、俺の思いだったのですが。シナリオ密着型だと思われているけど、実はシナリオと「宇宙漁業」の部分が密接すぎないところがいいのかなと。

 ただ、シナリオってすごく大事で、将来大事な位置を占めるだろうなとは思っています。

―― 個人的には昼間「宇宙漁業」をプレイして、夜は家でドラマをゆっくり聞くようにしています。

広井氏: そうです。その通りです。そうしていただきたいなと思いました。

ドラマも進行して、現在では先輩宇宙漁師の鍵谷厚志も仲間となっている

尾道以外に宇宙漁師育成センターはできるの?

―― 先ほど主人公は少ない方が良いというお話しがありましたが、候補生は今後増えるのでしょうか?

広井氏: 1年に1人ぐらいしか増えないですよ。

―― どんどん増えるというほどではない?

広井氏: どんどん増えるような事はないです。

 考えてみれば、宇宙漁師育成センターでは漁師候補生を募集しているはずなんです。でもなかなか来ない。そりゃ、漁師になりたいって女の子は少ないですよね。普通の家庭に生まれて、新宿に遊びに行くような子は猟師になりたいとまず思わないですよ。宇宙漁師育成センターに来てる候補生の女の子たちはみんな特殊ですよ。シナリオを読んでいくと、ここに来るべくして来たことがわかると思います。

―― 例えば今は尾道に宇宙漁師育成センターがあるわけですが、他の土地に同じような施設があって、ライバル関係ですとか関わり合いができていくみたいなことは考えてはいらっしゃいませんか?

広井氏: 考えています。

―― なるほど。それもありなんですね。でもあくまでもゲームとしての物語は尾道で展開するという感じですか?

広井氏: 今は詳しくは言えませんし、システム面まではまだ考えていません。ただ構想としてはそういうふうにしたいなあと思っています。尾道以外の土地にも新しい候補生がいて、新しい物語が展開するという、そういうことは考えています。

―― 構想としてはあるわけですね?

広井氏: あります、あります。もう本当に。

―― ちなみに弊社に静岡出身の社員がいて、「漁港も焼津とかあるし、静岡弁の子とかいたらいいのにな」と言っていたのですが。多分そういう人たちって日本各地にいらっしゃると思います。

広井氏: そうですよね。いらっしゃると思います。そういうことをやりたかったんですよ。

 僕は東京っ子だから、方言がすごく素敵に聞こえるんですね。みんなどうしてもっと方言をいっぱいしゃべらないのかなぁと思っていて。大阪弁はよく聞くし、京都もたまに行くから聞くけれど、他の所の言葉を聞いたときはすごく新鮮で、秋田弁とか熊本弁とかなんて素敵なんだろうと思っています。

―― そうやって追加していくことができるのも、ソーシャルゲームの強みですよね。

広井氏: その通りですね。これパッケージソフトで「2」とかつけてリリースするとなると大変ですもの。ベースから全部作り直しですから。「ソラウミ」でしたらベースがあるので、土地だけの話になるので、そこのところはやれたらいいなと思っています。

―― 最後にユーザさんに向けて、メッセージをお願いします。

広井氏: 皆さんの声の中で「がんばれ」という声はちゃんと聞いていますから。それはちゃんと真摯に受け止めて、運営さんも開発さんも皆さんの声を聞いています。

 使いにくい部分とか、そういう面で、スタート時点でものすごく申し訳なかったなと思っていて。もっと使いやすくしたいし、皆さんの声をちゃんと聞いて、その中でできることをきちんとロードマップを作って優先順位をつけてやっていこうと思っています。ぜひ、支えてください。よろしくお願いします。

―― ありがとうございました!

候補生とのデートストーリーも!